「今日という日を楽しみにしておりました!」
「全くよね!!本当に今日は楽しむわよセシリア~!!」
「ええ勿論ですわよ乱さん!」
「二人とも元気だな…」
週末の日曜日、天気は快晴なり。良い天気となった日に出掛ける三人の男女、カミツレとその恋人であるセシリアと乱である。セシリアは落ち着いた薄い紫色と青の上着でコーディネートを行い自らの気品と美しさを高めつつも、愛らしさも強調している。その関係もあるのかセシリアをみるカミツレの視線は何処か照れている。乱は赤いズボンに白のシャツとポーチ、シンプルだが夏を意識しつつも自分の活発さをアピールする事に成功している。カミツレの視線は何処か眩しそうにしている。
「二人とも本当に可愛い服だな、ファッションセンスがあるって凄いな」
「褒めていただき嬉しいですわ♪」
「えへへ~カミツレさんに褒めてもらっちゃった♪でも、私達一つ不満な事があります」
「そう、それはカミツレさんの服ですわ!!」
「あ~……やっぱり?」
薄々思っていたが二人が自分を見る目は何処か不満げだった、それが何か漸く分かった。それは自分の服装の事であった。自分が今来ているのは青いジーンズに黒い無地のシャツという服装で、二人に比べるとかなり浮いている印象を受ける。といっても元々大した服を持ってきておらず、どれを着ても変わらないという現状があった為に適当にしたのだが……流石にまずかったようだ。
「そうです、カミツレさんは元が良いのですのからもっとお洒落に気を遣うべきです!!」
「俺が?ははっそりゃいいすぎだって、元が良いって言うのは織斑みたいな奴の事を言うんだよ」
「そんな事無いです!!あんな奴なんかよりもずっとカッコ良いです!!」
「まずはカミツレさんの服ですわね!!」
「そうね!!それじゃあ早速行きましょう!!」
「あっおいちょっと待ってって引っ張んないでってああぁっっ!!!?」
杉山 カミツレ。この日になるまで女子との買い物の経験はなく、女子が買い物の時に発揮する力の事は知らずにいた為に二人の迫力に圧倒されるまま連行され、二人が見立てた服を着せられる事となった。やや暗めのライダースジャケットに青のTシャツ、上質のデニムを見立てられた。何処か自分ではないような感覚を覚えるカミツレだが恋人二人は大満足のご様子なので、そのまま着て歩く事になった。因みに元々着ていた物は宅配便で学園に送られてしまった。
「それで俺への頼みって一体何なんだ?結局、知らずにショッピングモールまで着いちゃったけど」
三人がやってきたのはIS学園から程よい距離にある大型のショッピングモール、此処になければもう市内にはないとすら言われるほどに品揃えが充実している『レゾナンス』。国内だけではなく海外の一流ブランドまで取り扱っているほか、レジャーにも手が抜かれていない。そんなショッピングモールを進んでいくカミツレ一行だが、なにやら先程から二人が不穏な笑いを零しているのが妙に気になる。そして笑顔のまま振り向いてくる二人。
「カミツレさん仰ってくださいましたよね、自分で良ければ力になる……そう仰ってくれましたよね?」
「つまり、自分で何とかなる範囲だったら聞いてくれるって事ですよね?」
「お、おうそういう事だけど……」
途端に嫌な予感がしてきた。てっきりカチドキに言われた通り「服を選んで欲しい」という事だとばかり思っていたがなんだか違う気がしてきてならない。猛烈に嫌な予感がしてならない……出来る事ならば全力疾走でこの場から逃げ出したいのだが、ガッチリと両手を掴まれてしまっているのでそれも出来ない。
「今度の臨海学校で」
「私達が海で着る」
「「水着を選んでください!!」」
「……予想、斜めを行ったっ……だと!?」
『(実はそうじゃないかと思ってましたが、面白そうなので黙ってて正解でした)』
そのまま呆然とするカミツレを引きつれて女性物の水着売り場へと突撃して行く二人、カミツレはもう死にそうな顔を作りながらそれに着き従っていく。
「これなんて如何でしょうかカミツレさん、私のティアーズのように美しい青ですわ」
「い、いやそれセクシーすぎないか……?き、際ど過ぎるというか…」
「あらいけませんわ、こういった物は海ではなく……二人っきりの時にこそ必要ですわね♡」
「グフッ!?や、やめてくれセシリア!?」
「でも可愛いですから一応買っちゃいましょう」
「……ご自由に」
「カミツレさんこれなんて如何でしょ?アタシはやっぱりビキニが一番だと思うんですよ!」
「い、いやそこで俺に同意を求められても……」
「あっそこのスリングショットって奴が良いんですか?」
「ち、ちちち違うから?!い、今のは唯視線をずらしただけでそれが良いって訳じゃないから!!」
「もう、言ってくれればそのぐらい着るのに……カミツレさんのイケズ♡」
「……あんまり俺を虐めないでくれ……」
水着一つ選ぶのに神経をすり減らしながら付き合ったカミツレ、本当は逃げたしかったのを我慢しながらそれに着き従った。周囲からは暖かい目で見られるのに耐えながら、二人が水着を試着するというのを必死に止めながら適当な物を選んだ自分のを含めた三人分の代金を支払って早々に水着売り場から離脱した。
「はぁっ……もう二人共、時々変な事で俺を困らせるの止めてくれよ……」
「ふふっやっぱりカミツレさんってば初心な所ありますね」
「そんな所も魅力的ですけどね♪」
「なんだかすっげぇ疲れたな……ハァ……」
ベンチに腰掛けながらジュースを飲むカミツレとその隣で座りながら買って貰った水着を大事そうに抱える二人、何だかんだ言いつつもカミツレは二人に似合う水着を見繕っていた。苦手なジャンルではあるが、頼まれたのであるならば確りと成す男でもある。それに感謝の念を浮かべつつ、彼の肩に頭を預ける。
「やれやれ……そう言えば後1時間もすれば昼食時だな……折角だから何か食べていくか。二人とも何かリクエストある?」
「強いて言えば……和食でしょうか?」
「あたしもですね」
「和食か……それじゃあその辺りを探して―――」
「なんだ、お前達も来ていたのか」
と言いかけた途端にこちらに声が掛けられた。其方を見ているとそこには普段見慣れたスーツではなくラフな服装と伊達眼鏡を掛けている千冬と真耶の姿があった。
「千冬さんに真耶先生、お二人も買い物ですか?」
「ああそんな所だ。水着のサイズが合わなくて買い直しだ。お前達もか?」
「ええそんな所です」
「そうだ、丁度良い。おいカミツレ少し付き合え、お前ら借りていくぞ」
「「え"っ!?」」
「はい!?」
ちょいっと肩脇にカミツレを担ぐかのように鮮やかな手捌きで彼の肩に腕を掛けるとそのまま連れて行ってしまった。それを止める事も出来ずに二人は呆然として、見送ってしまった。
「ちょちょっと先輩良いんですか!?」
「何、後で詫びはする。昼飯は私が奢ってやるから勘弁しろよ」
「待ってくださいよ!!?何で俺が!?」
「男からの目線も必要という物だろう、真耶も弟子に水着を見繕って貰うのも師匠らしい事だろう」
「それは、確かに……じゃあカミツレ君お願いしますね!」
「ちょ真耶先生!?」
完全に味方だと思っていた真耶すら止める事がなかった、そしてもう入りたくないと思っていた女性水着売り場へとどんどん近づいていく。なんとか脱出しなければ……!!
「か、勘弁してください!!俺もう二人の水着選んでて、もう入りたくないんですよ!!?」
「ほほう、それならば審美眼にも期待が出来るな。これは安心出来るな真耶」
「そうですね先輩!」
「い、いやぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」
カミツレの悲鳴が水着売り場へと消えていくのをただただ見送るしかなかった二人、相手は千冬もいるのだからしょうがない。ただただ、恋人の安全を祈る事しか出来なかった……。そしてカミツレは二人に売り場を連れ回されながら水着をまた選ぶ羽目になった……。
「……もう、水着なんて大っ嫌いだ……」
『予想通り面白い結果になりました。博士に送信しておきます』
カミツレがコーディネートされた服は、仮面ライダー鎧武の劇場版で紘汰さんが着ていたような奴と思ってください。
表現力なくてすいません。