「だから、カッ君……コアのお父さんになってくれない……?」
「えっ―――」
身体を重ねている束は自分の瞳を見つめながらそう言った。思考が凍りつき見つめている束の目を魅入られた見つめるカミツレ、輝きながらも真っ直ぐ見つめてきている。僅かに赤らんだ頬に荒い息、柔らかな感触とプロポーズのような言葉がカミツレの理性を興奮へと誘惑しているようだった。千冬との物とは違う、あれは前もって話をした結果すると決めた物で彼女にとっては娯楽でもあった。だがこれは違う。
「君にはその資格がある、束さんも君と結婚したいと思ってる」
「―――っ」
「資格があるからじゃないの。言葉を交わして一緒に行動して絆を深めていった君に、惹かれてる……初めて私の子供を人間と同じ視線で見てくれた……それが堪らなく嬉しくて、喜ばしくて、たまらない……」
緩んでいく束の服、そこから見えている豊満な胸はカミツレの胸板に押し付けられて変形している。心臓が高鳴って鼓動を早めていく、だがそれが自分の物なのか束の物なのかもう分からないほどに身体は密着してしまっている。
「もう、こんな世界は終わっても良いって思ってた…もう希望なんてないと思ってたのに……君が現れてくれた……」
涙ながらに語る束、今の世界にISは兵器として蔓延してしまっている。誰もがそうだと認識しており改めようとしている人すらいない。その引き金となってしまった「白騎士事件」に問題があるが、彼女はずっと世界に冷たい視線を投げ掛け続けていた。人類の新たな扉を開く一部、宇宙の感動を分け合う為の子供たちが兵器として使われ、何も理解せずに偉ぶる女達の権力になってしまっている。それが我慢出来なかった。
「カチドキが、話してくれる君は本当に魅力的だった……子供の話を私も熱心に聞いてた……」
対抗戦の前から自分を相棒として扱い一個人のように扱うカミツレ、対戦後の休みには一人で修理を一日中掛けて行っていた。その際も仕切りに話しかけ続けていた、初めての戦いは大変で疲れたけど充実していた。お前のお陰であの結果だった、有難う、これからも有難う、お前さえ良ければ相棒と呼ばせて欲しいと言っていた。そしてこの言葉が印象的だった。
『なあ、篠ノ之博士ってどんな人なんだ?良ければ教えてくれよ、お前あの人の子供みたいなものだろ?』
そう、この言葉が嬉しかった。ISを自分の子供と言ってくれた事が嬉しかった、ISを人間のように言ったカミツレにその時から興味を惹かれていた。ずっと、カチドキから話を聞いていた。カチドキも嬉しそうに話していた、何時か直接話したいと思っていた。そしてあの日、願いが叶った時思った、自分は彼が好きなんだと。
「私は、君の事が好き……この気持ちに嘘なんてない」
「束、さん……っ」
「このまま、私に身を任せて……?」
更に強く絡ませて来る指と密着していく身体、そしてもう後数センチで触れそうな唇に潤んだ瞳。ぞくぞくと庇護欲と性欲が高まっていくのが自分でも分かった、このまま彼女の言う通りにこの激情に身を委ねてもいいのかもしれない……と。
「君は、ただ快楽に身を委ねてくれればいいの……私が全部、導いてあげるから……それでね、一緒に、幸せになろうよ……?」
「ぁぁっ……」
迫ってくる目を閉じた束、迫ってくる毎に心臓が張り裂けそうなほどに高鳴っていく。このまま、委ねていいのではないかと思いつつ瞳を閉じて任せようとする自分がいる。それもきっと良い事なのだろう……だがカミツレは顔を逸らし、束の唇を頬で受け止めた。束は不服そうに顔を上げて見つめてくる。
「如何、して……?」
甘い香りが香ってくる、フェロモンだろうか。何か分からないがそれが更に自分を誘惑してくる、しかしそれを必死に振り払いながら彼女ごと身体を起こし上げて片手を彼女の肩においた。荒々しい息を整えながら、カミツレは言う。
「―――っ俺には、俺にはもう恋人がいるんです……だから、束さんの申し出は受けられません……!!」
「でも、でもカッ君には一夫多妻制度が適応されるんでしょ……?他の子が居ても私は許容するよ……?その位、私は認めるよ……?」
「そうじゃ、ないんです……!!束さんはその、俺にとってはISの開発者だとかそんじゃなくて……俺の相棒のお母さんなんですよっ……!」
必死に言葉を纏め上げて言った言葉、それに何処か可笑しいと思っているカミツレだがそのまま続けた。
「いきなり相棒が俺の子供になるとか、困るしそのそれに……束さんと俺は全く交遊とかそう言うのがなかったし…それなのにいきなり結婚って、その……失礼って言うか、どうせ結婚するならお互いの事とか、全部を知ってからしたいし……」
束は一瞬ポカンとしながらもその言葉に笑った、なんて良い子なんだと思った。カミツレの結婚観はやや古いがそれ故に純粋で相手の事を尊重している。結婚するには互いの事を知らなければならない、それに則れば確かに束もカミツレも互いの事を知らなさすぎる。だからまずは、知る所から始めたいとカミツレは言っている。それが一時しのぎの為なのかは分からないが、束はそれを気に入った。やっぱり自分の目に狂いなんてなかったと自信が持てる。
「そっか、それじゃあチャットとかデートしてからにしようか結婚は」
「……するって決めないでくださいよ……俺にだって決める権利ぐらいは」
「ううん、私は絶対に君とするよ。誓うから」
そういうと束はカミツレの額にキスを落として笑みを浮かべた。そして思いっきり抱きしめてからいった。
「絶対に私の相手は君だから、その時を楽しみにしててね。未来の私の旦那様!」
そう告げるとそのまま束は走り去っていった、額と身体が覚えている暖かな感触。去って行く束の姿、まるで嵐をその身で受けたかのような感覚があった。それでも何故か笑いを浮かべて星空を見上げた。
「カチドキ、やっぱり束さんってお茶目だな」
『そうですね、お父様』
「早いわ言うの」