IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第71話

簪との邂逅から二日、約束の時間まで自室で真耶と千冬から渡してもらった簪についての資料に目を通しているカミツレ。簪のこれまでの事と教師二人の主観なども書かれている、矢張りあの二人はいい先生だと思いながら目を通し続ける。

 

IS学園1年4組の生徒。生徒会長である更識 楯無の実の妹で日本の代表候補生である専用機持ちである……が現在彼女の専用機は開発が中止されてしまっており、現状彼女が引き取り学園で開発を続行しているとある。普通ならあり得ない事だが資料を読んで見ると元々開発は「倉持技研」という機関が行っていたのが、一夏がISを起動させた事で其方の専用機開発に人員などを全て取られて実質的に開発が凍結されてしまったという。

 

「おいおい……」

 

これに簪は怒り、「倉持技研」に抗議するが政府からの命令で逆らえないと言ってそれ以上相手にしなかったらしい。「白式」の完成後は「倉持技研」自体が一夏のISのデータの解析やそれらを生かした新型のIS開発に着手してしまい、全く開発再開がされなかった。これに激怒した簪は抗議をしたが相手にされなかった、その為に自らの力でISを作る事を決意し「倉持技研」に掛け合って未完成であった自分の専用機「打鉄弐式」を引き取って今も学園の整備室で作業を続けているとの事。数ヶ月を掛けて、現在では9割の所まで自力で完成させていると真耶の物に書かれている。

 

「……凄いな」

 

それを読んで思ったのが政府と「倉持技研」とやらのなんという身勝手さ、その開発を担当した技術者連中も普通に考えても、技術者としてあるまじき行為である。一瞬、一夏に対して何か思ったがこれは彼に責任はない。簪からしたら一夏も十分恨めしいだろう、彼女から見たら一夏も専用機開発を妨げた原因とも言えるので何とも言い難いが、彼に責任はなく政府と機関が余りにも酷すぎる。そして次に思ったのが、彼女の優秀さ。

 

その時点で専用機である「打鉄弐式」の完成度は7割が精々だった、本来は然るべき機関の元で完成させるべき物をIS学園とはいえそこの整備室で9割まで完成させているという点。開発には金も時間も掛かり、国からの補助を受けなければまともに開発すら出来ないという事を千冬から聞いた。そこをIS学園の特異性や整備課の先生にお願いして援助して貰っていたとしても、それら以外を全て自分でやっているという事になる。設計からシステムの構築、デバック……到底自分には出来ない事ばかりだ。それならあの時自分が使っていた物に興味を示すのも当然だ。

 

「それで……こっちは真耶先生のか『更識さんは内気でちょっと人を寄せ付けないタイプの子ですが、真面目で優しくて優秀な生徒。特に演算処理、情報解析、空間認識、整備能力は代表候補生としてはトップレベルで将来有望で国家代表も狙える子』…流石真耶先生だな。正確な分析と評価だ。んでこっちが…千冬さんか『優秀な生徒だが前述した通り、政府との間に確執があり奴が政府の命令で動くとは思えない。加えて言うならば姉の楯無とも仲が良くはなく、奴自身は姉を嫌っている傾向が強い』……そうなると本当に……」

 

二人の信頼し信用出来るコメントに思わず呻き声を出してしまう、あの時の涙は本物だったのではないかという疑念が浮かび上がってきてしまう……そうすると彼女には本当に申し訳ない事をした事になる。必ず謝ろうと心に誓いながら「倉持技研」に凄まじい嫌気を感じた。余りに酷すぎる、腐っているとすら言ってもいい。

 

「ふざけてんだろここっ……!!」

 

元々専用機の開発を引き受けていたが、政府から命令が着たので其方を優先した。それは上からの命令であって拒否出来なかった。ここまではまだ良しとしよう、この場合別の所に依頼しなかった政府が悪い。だがその後、開発を再開するのではなく『新型の開発をするから再開はしない』とは余りにもふざけている。『こっちの開発をやる方が有益だし実績になるから、そっちの開発なんてやらない』と言っているような物だ、怒りしか感じられない。これは簪にも話を聞いてみる必要があるが、カミツレの中ではもう決まっている様な物だった。

 

「カチドキ、倉持技研について検索だ」

『了解、検索中―――終了しました。倉持技研、日本政府直属のIS研究機関です。現日本代表のISの製作や政府から強いバックアップを受けている事によって、国内では一二を争う機関です』

「……リチャードさんやヨランドさんに連絡出来るか、もしかしたら力を借りるかもしれないってメール打ってくれ」

『了解。メール送信……完了です』

「ご苦労さん。にしても流石に酷すぎるだろ……なんだこれ―――」

『ヨランド・ルブランよりメール受信』

「早いなおい!?」

 

ヨランドからのメールには自分を頼ってくれて嬉しいや、例えどんな事でも言ってくれて良いという事が書かれていた。そしてその約15分後にリチャードからも可能な限り力になろうというメールが返ってきた。ヨランドの余りの早さには驚きを隠しきれないが……頼りになるのは間違い無いのだから喜んでおこう。後、何故こんな超短時間でメールを打てたのかという事に関しては考えないようにしよう。

 

「さてそれじゃ……会いに行くか、簪さんに」




―――この作品、完結するまでに何話使うんだろうか。

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