IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第75話

「これより『勝鬨・蒼銀』の稼動テストを始める。カチドキ、サポート頼むぞ」

『了解しました』

 

機体の最適化と一次移行が済んだ事によっていよいよ動かす段階にはいったカミツレはアリーナへと飛び出し、機体の具合を確認する事になった。軽く出力を上げてまずは円を描くかのようにしながら飛行を開始していくが、以前の「黒鋼」と違い全体的に出力が高い為か速度が速い。気持ち的には以前と同じように軽く吹かしているつもりだが…矢張り扱い易さ重視だった「黒鋼」とは出力が段違いになっている。思い切って出力を上げて「黒鋼」のフルスピードまでカチドキに出力を調整してもらうが、それでもまだ最大出力ではなかった。

 

「すげぇっ……これが、訓練機のカスタムだった「黒鋼」と「蒼銀」の差……!!」

『以前と比べて出力が数段高いですね、スロットルワークは慎重にお願いします』

「ああっ。これは慣れるまで掛かりそうだな……!!」

 

あくまで扱いやすい「打鉄」をカスタムしていた且つ装甲を増やし最大速度を落としていた「黒鋼」とは操縦性が全く異なる、動かし易かった機体が何時の間に速く力強くなっているような感覚でやや振り回されている。しかしカミツレの表情は笑っていた、クリスマスの子供のような笑みを浮かべたまま高い出力を維持したままで飛行を続けている。次第にそれに慣れて行っているのか動きが洗練され始めて行く。ヨランドに鍛えられた甲斐があったという物だろう。

 

「武装のチェックに入ろう」

『了解しました。多連装ライフル「スターダストmkⅣ」展開します』

 

その手に展開されたのは上下に銃口が付いているライフル、セシリアや自分が使っている物に比べるとやや異質な造りに、少しじっと見つめてしまった。マガジン式なのかライフルにはマガジンが装填されており、カミツレの目には残りのマガジン数が表示されている。

 

『「スターダストmkⅣ」は「ブルー・ティアーズ」に搭載されている「スターライトmkⅢ」より発展した新型のライフルです。mkⅢは本体よりエネルギーを供給しレーザーを発射しますが、スターダスト型はエネルギーがチャージされたマガジンを装填し、そのエネルギーでレーザーを発射します』

「継続戦闘能力を高めたって訳か……」

『はい。スターライト型より威力は落ちますが、IS本体のSEを消費せずに攻撃を行えます。加えて実弾の発射を行う事も出来、対応力と継戦能力に優れたライフルとなっています』

 

マガジンのエネルギーは12発、そしてマガジン数は6個。計72発のレーザーを発射しつつも実弾を発射可能、全面的に「ブルー・ティアーズ」に不足していた面を補っていると言えるライフル。セッテンィグされたターゲットに照準を向けてトリガーを引く、レーザーが瞬時に標的を貫いた。反動はISの操縦者保護機能とパワーアシストが抑え込んでくれるので無理なく使う事が出来る。

 

「……いい銃だ」

『私も同感です。他にも発射の際にエネルギー量を調節する事で威力が大きく低下しますが、レーザーマシンガンとしても使用が可能です。ロマンを形にしている名銃と判断します』

「同感だ、こいつは良いな……」

 

大きさは「黒鋼」に搭載していた物より大きいがこれだけの機構を有しているのならば十分許容出来る。むしろよくもまあこれだけの性能に出来ていると感心するレベルで凄い。思わず興奮で口角が上がってしまう。ライフルを一度消しつつ次はブレードを展開する、ブレードはやや赤みが掛かっている刀身をしており「黒鋼」のものよりやや大きめの太刀である。

 

『次に「スパークルエッジ」は近接用のブレードとして開発されています。特出すべき機能はありませんが一部を取り外して小太刀として使用可能です』

「へぇ~……簡単に二刀流が出来るのか、これもシンプルだけどいい武器だ」

 

スターダストに比べるとやや見劣りするかもしれないがシンプル故に追求された性能がそこにある、純粋にブレードとしてはかなり優れている一品と言える。この以前のブレードよりも溢れる重量感、何より太刀という男心を擽る響きにカミツレはご満悦。

 

「次はえっと……ディバイダーだっけ?」

『はい』

 

視線を周囲に向けて見ると直ぐにそれは見付かった。「黒鋼」のシールドのように浮遊している物が「デイバイダー」と名付けられた防御兼推進システム、防御というのは分かるが推進システムというのがよく分からない。

 

『この「ディバイダー」はそれぞれに大型バーニアが搭載されています。「蒼銀」はやや防御寄りとなっていますがこの「ディバイダー」をウィングと同時使用する事で機動力を更に向上させる事が出来ます』

「まだ速くなるのか……」

『それだけではありません。この「ディバイダー」は連結する事で大型のシールドへと姿を変えますが、連結する事で内部に搭載されている多連装レーザー砲が使用可能となります』

「すっげっ……」

 

思わずそんな言葉しか出て来なかった。「ディバイダー」だけで三役をこなす事が出来る複合兵装、多くの武器を使い分けるのではなく多数の機能を持った一つを使用するというのは大きく異なる。何より持ち変えのタイムラグをゼロに出来るのは大きい、加えてその場の状況に応じて適切な武器のチョイスの判断は自分に出来る気がしないので普通に有難い。

 

『但し、ディバイダー内部の砲は「蒼銀」から直接エネルギーの供給を行います。チャージに時間が掛かる上にエネルギーの消費が激しいので多用は出来ませんので注意を』

「了解だ、決め手としては十分すぎる」

『では最後にBT兵装「ヴァンガード」についてです』

 

カチドキの言葉と共にウィングから複数のパーツが飛び出していく。それはティアーズよりも鋭角で攻撃的なイメージを抱くような形状をしている。ティアーズに小型のブレードを付けたというのが適切な表現なのかもしれない。

 

『「ヴァンガード」は全6基。「ブルー・ティアーズ」と同じくビット型の武器であり、オールレンジ攻撃を可能にしますが異なる点は子機にブレードが装備されている事です』

「ブレードが……?」

『はい。以前カミツレとセシリアがコンビネーションにて使用したブレードビット、それを採用した結果がこの「ヴァンガード」となります』

「……あっあれか!!」

 

覚えている、学年別トーナメントにおいてティアーズがブレードを押し出すような形で誕生した即席のブレードビット。それを実際に完成された物がこの「ヴァンガード」となる。

 

『射撃により後方からの攻撃だけではなく、前衛(ヴァンガード)として敵に切り込む事を可能にしているBT兵器です。こちらのコントロールは私の方で行いますのでご安心を』

「ああっ頼むよ……凄い、これが俺の専用機……「勝鬨・蒼銀」……」


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