IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第76話

「ぐぅぅっ!!まだまだぁ!!」

 

アリーナでは一機のISが凄まじい速度で飛行を行っていた。ウィングと直結した大型のバーニアによって得られる推力は通常時の最大出力を上回る為、慣れる為の訓練を行っている。スロットルワークその物の使い分けは出来ているが、前の機体での慣れが大きいのが機体に身体が慣れずに練習を繰り返し続けている。

 

「じゃじゃ馬だなっ!!「黒鋼」がどんだけ使い易いのか分かる!」

『ではやめますか?』

「冗談、言うなよ!!」

 

アリーナ内を縦横無尽に飛び周るIS「勝鬨・蒼銀」を操るカミツレ、受領したISに一日でも早く慣れる為に努力し続けている。以前使用していた「黒鋼」と比較しても「蒼銀」の機体出力はかなり高くそれが生み出すスピードは凄まじい物があった。ディバイダーを直結させた場合の出力は正に暴れ馬、直線的な機動ならばまだしもそれを使っての高機動戦闘は難しいと言わざるを得ない。

 

「楽しいな……楽しいって思ってるよ俺はっ!!!」

『カミツレのその姿勢には関心を向けざるを得ませんね。訓練を続行します』

「おうっ!!!」

 

カミツレにとって「蒼銀」を使うという事は喜びに満ちていた。今までの努力が正当に評価されてイギリスが開発してくれたこの機体こそ、自分の努力と苦労の証明でもある。自分専用に開発されたISを動かすことに深い喜びを覚え、動かし「蒼銀」の操縦を少しずつ会得している自分に充足感が感じられている。笑顔を浮かべたまま悔しがりながら全力で挑戦を続けている。

 

「だぁぁっ~…つ、疲れた……」

 

訓練終了後、ISスーツからラフな私服へと着替えたカミツレは自室のベットに倒れこむかのように崩れ落ちた。今までの物とは全く違う高出力ゆえの操縦の難しさを感じているカミツレは、唯ひたすらにその出力になれようとしていた。真耶が組んでくれた「高出力機体マスターの道」という訓練メニュー通りに行っているがついつい楽しくなってしまったのか、2倍以上のメニューをこなしてしまった。オーバーワークもいい所だが気持ちのいい充足感に満たされている。

 

「カチドキ、俺の操縦評価は?」

『47%に上昇しています。前回の41%より6%増です』

「そうか……まだまだって事か」

 

腕前が上がっているのは間違い無いがカミツレはそれで満足はしていなかった、まだまだ上を目指すべきなのだと自分にいい聞かせながら前へと進もうとする意志を持ち続ける。自分を評価してくれたイギリスの為、自分を守ろうとしてくれているセシリアと乱の為に、自分に出来る事をやり続ける。それが自分にとって最善の道なのだ、だから努力はやめない。前に進み続ける―――。

 

「だけど、流石に休憩だ……疲れた……」

 

その疲れに身を任せて眠りに付こうかと思った時、自室の扉を軽くノックする音が聞こえてきた。それに片目を開けながらあくびをしながら立ち上がる。眠気覚ましにキンキンに冷やしてあった緑茶を一気飲みする、冷たい感触が一気に頭を貫いて眠気を吹き飛ばした。扉を開けてみるとそこには師である真耶が立っていた。

 

「真耶先生でしたか、なにかご用ですか?」

「ええ少し。弟子にお説教を」

「え"っまさか……」

「ええっ知ってますよ、あれほど自分の身体を労わりながら弁えた訓練をしなさいと言ったのに何ですかあの訓練は!?正座してください、少なくとも2時間は覚悟してもらいますからね!!!」

「うっ……はい……」

 

怒っている真耶を前にしたカミツレは大人しく彼女を部屋へと入れつつ正座して真耶の説教を甘んじて受けた。自分が訓練メニューを勝手に増やして行ったのは事実、言いつけを破ってしまったのも確かなのでこの説教は当然と言える。それに―――真耶は怒ると恐いという事を知っているので逆らう事は絶対に出来ないのだ。それも説教を受ける理由でもある。

 

 

―――3時間後……

 

 

「そういう訳なんです!!分かりました?もうあんな訓練をしちゃ駄目ですよ」

「はい……すいませんでした…」

「声に力が無いですよ。全くもう…勝手に2倍メニューなんてするからそんな目に合うんですよ?」

 

もう疲労困憊と言いたげなカミツレはフラフラとしてしまっている、そしてそのまま倒れこむようにしながら眠りについてしまった。そんな弟子を見つめる師匠は溜息を付きつつも笑みを浮かべながら、彼をベットへと寝かせてあげながら頭をそっと撫でる。

 

「もう、手が掛かるんですから……」

 

そんな事を言う真耶の顔は笑っている、手の掛かる子ほど可愛いという奴だろう。初めての弟子という事もあって真耶は本当にカミツレの事を大切に思って接している。先程の長い説教の大半も身体を気遣って欲しいという事を口を酸っぱくするほどに繰り返していた、専用機を手にして嬉しいのも分かるが専用機を手にしたばかりの代表候補生は訓練に熱を入れすぎて怪我をしたという事も少なくない。それを分かって欲しかったのである。まあ3時間も掛けて語ったのだからきっと分かってくれているだろう。

 

「それに、今日はこれを渡しに来たんですからね」

 

真耶は持っていたファイルを机の上においておく、そこに入っているのは実家への帰省の許可証。彼が望んでいた実家へと帰る為の許し、幾つか条件が課せられてはいるがそれでも帰る事は出来る。弟子が望んだのだから真耶も全力で許可を取り付けた、家族と会って英気を養って欲しい。

 

「これからも、まだまだ頑張りましょうね。カミツレ君」

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