「チェエエエエエストォォオオ!!!」
「セイヤァァァァッッ!!!」
低い重低音と激しい金属音と火花が空中にて花を咲かせながら周囲に爆音を響かせる、その中心点に立っているのはカミツレと乱であった。夏真っ盛りな季節も遂に終わりを迎えて始まってしまった新学期、残暑が猛威を振るう中で行われている授業で激突をしていた。初の授業となった実践訓練は1組と2組の合同となっている、その中から二名を選出してのある種の代表戦の亜種が行われている。そんな激突は以前真耶とカミツレ、鈴とセシリアのタッグ模擬戦と違い、候補生達ではなく全生徒を釘付けにするような物が繰り広げれていた。
「ぐっ……まだまだぁっ!!!」
「やぁぁぁぁっっ!!!」
激しい剣戟を繰り返しながらも一手一手相手の動きを予測しながら行われる高度な心理戦を含んだ戦い、それも生徒達を魅了している理由の一つではある。がそれ以上にひきつけているのはカミツレの「蒼銀」が理由でもあった。「黒鋼」はカスタムが施されているとはいえほぼ「打鉄」といっても過言ではない物だった。しかし「蒼銀」は名前こそ、以前の物を受け継いではいるが「黒鋼」と異なり完全なオリジナル。それを操るカミツレの姿は最早一人前の操縦者に映っていた。
カミツレの二人目の恋人こと乱の専用機は鈴の「甲龍」と同系の兄弟機とも言える「
「今だっ!!」
そんな機体を操る彼女の鋭い一撃によってバランスを崩した「蒼銀」に好機を見出した乱、切り札とも言える武装をきった。龍の口が大きく開くと内部から巨大なレーザーが発射されカミツレへと迫っていく。が、カミツレは手にしていた「
「げっマジ!?」
「スパークルエッジ」は対レーザーコーティングが施されており、レーザーに対して強くなっている。それを利用し、強く蹴りだす事でレーザーを斬りさくという事が可能になっている。本来は太刀で切り払うという目的で使われるので、カミツレの使い方が正しいという訳ではない。が有効に使われたのは事実である。
「さてと、行くぜっ!!」
動揺している乱へと向けて「瞬時加速」を発動したカミツレは一気に距離を詰めていく。それに対応する為に射撃で牽制を行い距離を保とうとするが、瞬間的にカミツレの姿が消えてしまう。一瞬、ハイパーセンサーも捉えきれずにロストしてしまい乱は混乱するが遅れて捕捉情報が表示された―――真上だ。
「―――っ!!?チェストォォォォ!!」
それに何とか対応しようと乱は出力を限界まで引き上げながら、瞬時に身を翻して真上へと向き直しながら青竜刀を振るった。それによって本来対応出来ない筈のカミツレの攻撃に対応してみせた乱だったが、ほんの僅かに反応が遅れてしまった影響でカミツレの一撃が炸裂すると同時に試合終了を告げるアラームが鳴り響いた。
―――カミツレの勝利であった。
「んにゃぁぁぁ…悔しいぃぃぃっ……あとちょっとだったのにぃぃっっ……!!」
「まあまあ。俺が言うのもなんだけど本当に危なかったよ、まさかあそこで反転されるなんて思わなかったからさ」
カミツレの勝利で終わった実践訓練、それの後片付けもそんな一同は食堂で食事を取っていた。各々がそれぞれ好きな物を頼んで食べている中で乱は悔しそうな声を漏らしながら、麻婆豆腐を突いていた。そんな隣の従妹に溜息を漏らした鈴は少し意地悪な顔を浮かべた。
「情けないわね、それでもアタシの「
「うっ~……」
「でもあれってなんだったんだ?すっげぇ速度で反転して、カミツレを迎え撃とうとしてたよな」
「うん。まるで「瞬時加速」を反転に使ったみたいな凄いスピードだったよね」
「あれだけ速く反転されると、私のティアーズの死角取りも意味が薄くなってしまいますわね」
「あれは乱がアタシの「超速零速」に対抗して作った技「
項垂れている乱が生み出した技術は鈴の物に対抗しての物、互いをライバル視して自分の実力を高め合っている鈴と乱。そんな乱が操縦技術に凄まじいスロットルワークによって発動する「超速零速」に対抗する為に開発した技術「爆発反転」である。乱の飛び抜けた操縦技術と警戒心、そしてその高い運動性と出力を組み合わせて発揮される反転技術。これを使用すると通常では考えられないレベルの速度での反転が可能になる。
鈴の「超速零速」はスピードを瞬間的に0からMAXにするという物、これを利用して相手の死角に回り込んで攻撃するのが十八番でもあり必殺級の戦術。それに対応する為に乱が編み出したのがこの技術である。本来であればカミツレにも当然対応出来る筈だったのだが…彼はあの場で「
「まあ多分次はあっさり対応されるだろうからな、だから俺はまだまだって事だよ乱ちゃん」
「むぅぅ……ならそういうことにしとく、でも次は負けないからね!!」
「ああっ分かってるよ」
そう言いながら笑顔を浮かべる乱に笑い掛けるカミツレ、それを見つめる一夏は少し首を傾げつつ隣にいる箒に声を掛ける。
「なぁカミツレってちゃん付けで呼んでたっけ……?さん付けじゃなかったっけ」
「年下だから変えた、とかじゃないか?」
「うーんでもなんかそれだけじゃないような……なんか親密になっているような気が…言うのであれば恋人に近い何かを……気のせいか?」
それを聞いた箒は思わず持っていた箸を、ラウラはフォークを、セシリアはナイフを、鈴と乱はレンゲを落とし、カミツレはコップを持ったまま硬直してしまった。
「えっな、何……?皆こっちを見て……?」
「一夏お前病気か!!?お前がそんな事を理解出来る訳がない病気だな病気で間違い無いな!!」
「いや失礼だな箒!!?」
「ラ、ラウラ保健室の番号って何番だっけ!?」
「いや救急車だ!!に、日本の救急車は何番だ!?110!?119か!?いやそれとも177か!!?」
「うぉい、誰が緊急患者だ仏独コンビィ!!ラウラなんか間違ってるぞ色々と!?」
「一夏、あんた遂に頭が可笑しくなって……」
「お姉ちゃん……これが、世界の破滅なのね……」
「そこまで言うか!?」
「千冬さん大変です!!あの織斑が、織斑が、乙女心を理解しています!!?至急応援を!!」
「真耶さんお急ぎを!!あの織斑さんが、織斑さんがぁ!!!」
「流石に酷くありませんかぁあ!!!?」