IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第85話

『ええっ学園祭当日はわたくしも参りますわ、ツェレに会うチャンスですもの』

「そう言ってもらえるのは光栄なんですが…代表としての仕事とか大丈夫なんですか?」

『無問題ですわ。それに国家代表と言っても常に仕事がある訳ではありませんから大丈夫です』

「まあ…ヨランドさんがそれで良いなら良いですけど…」

 

カミツレは一人で静かに過ごしていたが喧しく鳴り響く着メロ。放送を見てから一目惚れした『HYPER MUTEKI』の変身待機音が部屋中に響いたので携帯を手に取ってみると相手はヨランドであった。学園祭の当日には絶対に顔を出すから宜しくして欲しい、という物であった。会えるのは嬉しいが、美人が自分に会いに来てくれると言われると如何しても照れてしまう。

 

「来てくれたら俺は嬉しいですよ。ヨランドさんは俺にとっては尊敬する人ですから。それと出来る事なら俺の操縦をまた見て欲しいですね」

『ツェレェ……!!わたくしも是非とも見たいですわ、成長し続ける貴方の力をっ!!こうなったら学園に数日、いえ最低でも1週間は滞在しますわ!!』

「えっ本気ですか!?」

『本気も本気!!本気と書いてマジと読むレベルでマジですわ!!』

 

顔こそ見えないが間違いなくヨランドの目は輝いている事だろう。彼女にとって自分は唯一無二の弟子というポジションで心から接する事が出来る男という事なのだろう。しかし本当に弟子とだけ思ってくれているのだろうか最近凄い不安になっている。セシリアや乱という恋人に加えて、束に夫になって貰うとさえ言われてしまっている身としてはヨランドの言動や行動に不安しか覚えない。

 

『フッフッフ……そうと決まれば早速政府を抑え込んで認めさせなければ……』

「いやちょっと待って下さいよ今なんか聞き捨てならないワードが聞こえましたけどぉ!!?」

『あらツェレったらわたくしの言葉の一つ一つに耳を立てていますの、もうエッチですわね♪』

「いや何処がですか!?今抑え込んでとか言ってましたよね、絶対仕事ありますよね!!?」

『ええまあ……政府首脳陣との食事会とかその他色々と……』

「やっぱりあるんじゃないですか!!!」

 

自分の為に行動を起こそうとしてくれているのは非常に嬉しいが、仕事があるならば其方をしっかりと優先して欲しい。自分は別にそこまで優先されるほどの事ではないのだから。

 

『まあわたくしの事など気にしなくても良いですわ、では会える時を楽しみにしてますわ。それでは!!』

「あっちょっと待ってくださいヨランドさん!!おいちょっとぉ!?……切れた…」

 

ほぼ一方的に言いたい事を言い尽くして切ってしまったヨランド、カミツレはやや呆然としながら携帯を通話から切った。そして心の中でフランス政府の皆さんに対して深く謝罪するのであった、自分のせいで彼女が仕事を放棄するような事になっているのだから…いや希望を捨てるには遅い、全ての仕事を纏めて片付けた上で休みを取り付けて来る事だってありえる。それに賭けるとしよう、うん……。

 

「カミツレ君、ナターシャよ。今大丈夫かしら?」

「あっ大丈夫です、今開けますよ」

 

カミツレが扉を開けるとそこには食事会に招待したナタルと随伴してきた千冬と真耶の姿があった。一応彼女ら二人も招待しているが、妙にくたびれているように見える。

 

「千冬さんに真耶先生……?」

「学園祭の準備で私たちも大変でな……頼む、美味い料理を作ってくれ……」

「情けない師匠とは思いますけど許してくださいぃ~……」

「二人から凄い聞いたわよ、カミツレ君の料理は最高だって。これは期待しちゃうわよ」

「やれやれ、そう言われたら腕を振るうしかないじゃないですか……さっ中へどうぞ。直ぐに作りますから」

 

中へと入った三人はテーブルに着くのを見るとカミツレは気合を入れてバンダナとエプロンを装着した、元々歓迎の為の料理会はカミツレ発案ではなく千冬の発案であった。折角教師仲間になるのだからそれを祝おうという事らしいが、実際はそれにこじつけて料理を食べたいという物であった。しかし期待されたのであれば応えたくなるのが性。ストックされている野菜などを使って存分に美味しい料理を作るつもりである。

 

「さてと……やるか!!」

「カミツレ、出来るまで野菜スティックを摘んでてもいいか?腹ペコで死にそうだ……」

「お昼から凄い仕事の山でしたもんね……私も摘みたいです」

「もう、一瓶だけですよ?」

「一人か」

「三人で、です!!一人一瓶って俺の分が消え失せるじゃないですか!!!」

 

冗談だと言いながら冷蔵庫から野菜スティックが入った瓶を出して三人はそれを摘み始める。中身はかぶ、きゅうり、にんじん、パプリカ、セロリとなっている。程よい塩味とぽりぽりとした食感で食欲が更に刺激されてしまう。

 

「んっこれ美味しいわね。この野菜のポリポリ感……癖になるわ」

「だろう?私も作って貰っているが、これがまた美味いんだ」

「本当ですよねぇ~。これだけ美味しいのに身体に良いなんて最高です♪」

「昔、一夏が家でやった事あるがここまでの物ではなかったな」

「そうなんですか?」

「ああ、矢張り野菜の質の影響だろう。カミツレのご実家が作る野菜は兎に角美味だ、漬けても焼いても揚げても煮ても最高なんだ」

「へぇこれは、ますますお腹が減る話ね……それにしてもこれ止まらないわ。お酒が欲しくなっちゃう」

 

そんな言葉を漏らすほどに嵌ってしまっている一同、スティックが残り一本となった時全員が同時に手を伸ばしぶつかりあう。その時、三人の間に火花が走った。

 

「二人とも、今日は私を祝う為の食事会なんでしょ?ここは私に譲るのが筋なんじゃないかしら?」

「知らんなぁ私はお前が来るよりもずっと前に、カミツレの料理を食べているんだ。これの権利は私にある」

「私だって、カミツレ君の師匠として弟子の料理を食べる権利はあります!!」

「「「……」」」

 

火花を散らす三人の美女、凄まじい威圧感を放ちながら互いを牽制し合っている。元世界最強に世界的に名が知られている元代表候補生、元アメリカ軍所属の軍人と中々にカオスな事になっているがやっている事は野菜スティックの奪い合いという酷くみみっちい事で争っている。そしていよいよそれが高まろうとした時、最後のスティックがひょいっと取り上げられてカミツレの口の中に収まった。

 

「「「あっ!!?」」」

「争う位ならこれが一番ですよね(ぽりぽり)」

「ううっ……」

「チッ……」

「しょうがないわね……」

「なんで不機嫌になるんですか……ほら、もう直ぐ出来ますから配膳手伝ってください」

 

やや不機嫌となってしまった三人だが料理が完成し、食事会が開始されると直ぐに笑顔に戻っていた。もう野菜スティックの事なんて頭の中から消え失せていた。

 

「んっ~美味しい!!」

「流石カミツレ、いつもながら美味だな」

「最高ですぅ~♪お仕事の後にこんな美味しい物が食べられるなんて……」

「お代わりは自由ですからどんどん言ってくださいよ」

「「「勿論!!」」」

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