「これで5万とはとてもお買い得な値段設定ですわね♪」
「お嬢様にお喜びいただき、感謝の極みでございます」
極上コースのラスト、お嬢様の願いを叶え終わったカミツレは若干俯きながら答えるのであった。ケーキを全てはいあーんで食べさせあい、社交ダンスを共に踊り、写真撮影は願いと共にし終わった。ヨランドからしたらもっと金を払って何度も体験したい物であった。因みに願いはお姫様抱っこした上での写真撮影だった。しかも持っていたロケットに納められ首から下げられている。カミツレにとっては色々と試練な時間であった。
「ま、まさか5万をあっさり払うなんて……」
「想定外にも程があるよ……しかもダンスもマジで上手い…」
「美人で素敵でお金持ちでダンスも完璧、どれか欲しいよ。主にお金が」
「俗物過ぎるわよアンタ」
「……」
「ほ、箒…セシリアが怖いぃぃっ……!!」
「私も怖い一夏ぁ……!!」
「……」
「「ヒィッ!?後ろにもいたぁっ!!?」」
ヨランドの行動に阿鼻叫喚な教室内、あっさり5万という大金を出す財力に美人という完璧美人の登場にざわめく。そしてハイライトが消えたセシリアと何時の間にか教室内に入ってきた乱に脅える一夏と箒。この状況をカオスと言わずして、何をカオスと言うのだろうか。
「それではツェレ、また後でお会いしましょ♪」
「はいお嬢様……ヨランドさん、二人を刺激しないでください……」
「フフッ♪」
そう言ってドレスを翻して去って行くヨランドを見送ったカミツレだったが、自分に注がれる二人の視線に冷や汗をかいてしまう。同時にガタガタと震えている一夏と箒も同時に目に入る。一瞬、思考が停止し掛けるが乱へと手を差し伸べた。
「……さあお嬢様、お席へとご案内いたします。本日のおすすめは「執事のご褒美セット、メイドと一緒コース」でございます」
「―――っ!それじゃあ是非お願いするわ、一緒のメイドはセシリアで!!」
「―――っ!畏まりましたわ!!」
という咄嗟のファインプレーで二人の機嫌を上手く取ったカミツレはそのまま仕事を続行するのであった。因みに一夏と箒はこの時、セシリアと乱の死んだ目と表情が二人揃ってトラウマになったのは余談である。
「もう直ぐ時間だけど織斑君か杉山君、どっちが先に休憩する?」
そんなこんなで働き続けているといよいよ男子の休憩時間が回ってくる、と言っても片方は出ていないと苦情が出るかもしれないので交替交替に休憩する形式になる。なのでまずどちらが休むのかを決める必要が出てくる、一夏は慣れない仕事に苦難しながらも頑張っている。そして以前カミツレに相談を乗ってもらったからと自分が残ると言おうとしたがカミツレがそれを遮った。
「いや俺が残ろう、セシリアと乱ちゃんと一緒に回る約束をしたからな。二人の休憩時間と合わせるとなると、後の方が都合がいい」
「そ、そうなのか?でも休まなくて大丈夫か、特にカミツレはあの極上の一件以来なんかコース注文抱えてるんだぞ」
「極上に比べたら普通の「執事のご褒美セット」なんぞ紙みたいなもんだ」
色んな物の重さがな、と付け加えつつ窓から外を見るカミツレ、そんな友人を見る一夏は何処か遠い所に行ってしまっているような哀愁を覚えた。そして何故かカミツレにはこれからも頑張っていただきたいという思いを強く持った。
「……多分、俺が今成人してて煙草吸ってるなら吸ってる自信あるわ」
「想像したら凄い似合っててシュールだぞ」
今更だが一夏は凄く理解した、カミツレは色んな意味で酷く重い物を背負っているのだと。そして自分も何れその重い物を背負う運命のあるのだろうという事を直感した。
「まあそういう事だ、休憩に行って来い。篠ノ之連れてな」
「えっ……!?」
背中を叩きながら小声でカミツレは言葉をぶつけてくる。
「進展させて来い」
と言われ一夏は一瞬思考が凍り付いてしまうが応っ!と力強く返して箒を誘いに行く。着替える時間も勿体無いとそのままの格好で教室から出て行く二人を見送ると溜息を付きながら、水をいっぱい飲む。
「やれやれ…世話が焼けるな……どうせだ、そのまま告白でもしちまえ」
「杉山君ご指名は入りました~!」
「今行くって此処はホストクラブじゃないぞ」
「な、なんかカミツレに気を遣われちゃったな……今度飯でも奢ろうかな」
「そ、そうだな。なんだかで杉山には世話になる事もあるし……」
廊下を共に歩く一夏と箒はカミツレへの感謝を思い浮かべながら学園祭を楽しむ事にした、しかし周囲から燕尾服のイケメンと大和撫子というに相応しい容姿を持った箒がメイド服でいるので注目を浴びるには十分すぎる要素になっている。
「それにしても凄い人だな……箒そのさ、手を繋いだほうが逸れなくて済む、よな?」
「う、うむそうだな…逸れてしまってはまずいものな……」
ぎこちなく重ね合い触れる手、その体温に互いはドキドキしながら廊下を渡っていく。互いの鼓動が聞こえそうなほどに高鳴っている、一夏は矢張り実感していた。自分は彼女の事が好きになっているのだと、そして今この時に凄い安心感と心地よさを覚えていると。箒も同じであったが普段の一夏とは違った様子に胸の高鳴りと期待を抱く。
「(気付かなかったけど……箒の手って凄い、すべすべしてるんだな……それに温かい…)」
「(なにか何時もと違うが…これはこれで……こんなに大きな手だったんだな一夏……温かい…)」
何処か甘酸っぱくも初々しい二人はそのまま校内を歩き続けて行く、そして何処かに行こうと提案しあう度に同時に言ってしまい赤くなって顔を背けては改めて言葉を紡ぎだす作業を何度も続けていた。
「ほ、箒その……た、楽しいな……」
「そ、そうだな一夏……」
「「(ああっ幸せ……)」」