IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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誰だこいつら


第88話

「そろそろ休憩時間も終わるし戻るか」

「そ、そうだな十分満喫出来た事だし……」

 

再び手を繋ぎなおした燕尾服のイケメンとメイド服の大和撫子、先程まで二人で学園祭を満喫していたからかその顔は緩んでおり笑みに溢れている。本来一夏のような存在を周囲が放置する訳がないのだが…初々しい二人の空気に当てられたのか、幸運な事に誰にも声は掛けられずに二人は学園祭を堪能する事が出来た。そして残念ながら時間がやって来てしまった。少し落胆したかのようにしつつ教室へと向かって行く。

 

「でも楽しかったな箒」

「ああ、こうして遊ぶのも悪くないな」

 

お互いに笑いを浮かべながら足取りは軽い、そのまま教室へと戻ろうとしたが一夏はある物を発見した。

 

「あっちょっと待って貰ってもいいか箒、買いたい物がある」

「何を買うんだ?」

「直ぐに済むからちょっと待っててくれ」

 

そう言って廊下の端で出されている露店のような出し物に立ち寄るとそこの生徒と色々と会話を挟みながら、何かを購入して箒の元へと戻って来た。

 

「悪い待たせた!」

「いやそれほど待っていないが……一体何を買ってきたんだ?」

「あ~その…折角の学園祭だし何かプレゼントしたら良いかなっと思ってさ。だから、これ」

 

何処か押し付けるようにしながら渡されたのは紅色の石がはめ込まれた綺麗なアクセサリー、ブレスレットであった。

 

「こ、これを私に……?!」

「うん……い、いやだったらその…」

「ううん大切にする……っ…有難う、一夏っ……!」

「お、おう……」

 

心から嬉しそうな表情を浮かべた箒に照れる一夏、そんな箒は思い切って一夏の腕に自分の腕を絡ませた。一夏は思わず触れる柔らかな感触に大きく心臓を鳴らしながら、顔を赤くしたまま教室へと歩いて行く。幸せそうな箒と共に教室に帰還した時、カミツレに笑いながら肘で突かれたが悪い気はしなかった。

 

「篠ノ之、嬉しそうに何かを胸に抱いてたぞ。なんかやったのか」

「何もしてないぜ、ただ…気持ちを石に込めただけだ」

 

一夏がプレゼントしたブレスレットに嵌め込まれている石は紅色に輝く石、即ちそれが示すのはルビー。ルビーは愛の象徴とも言われている宝石、自分の気持ちをルビーに込めて箒に送った。遠回しだが、君に愛を抱いているとも言うべき行為に相当するのかもしれない。それに箒には、ルビーという石が一番に合うような気がするのである。何故かは分からないがあの綺麗な紅色の石の輝きが、酷く似合っているような気がした……。

 

「あの唐変木の朴念仁がねぇ…やれやれ、今度は校内デートじゃなくて正真正銘な物を買いに行って来いよ」

「わ、分かった……その時は、相談に乗ってくれ……」

「俺もそこまで詳しい訳じゃないからな」

「そ、それでもいい!!」

「分かったよったく……まあ友達の恋ぐらいは応援してやるか」

 

何とか取り付ける事が出来たカミツレの協力に心から安堵する、そんなカミツレも休憩時間に入り彼の恋人達と共に学園祭を巡る事になるのだろう。

 

「セシリア準備、出来た?」

「はい出来ました。では参りましょう」

「エスコートさせていただきますお嬢様」

 

そう言いながら見事な手捌きでセシリアの手を取りながら教室から出て行くカミツレを一夏は思わず見送った。あんなにスムーズにエスコートが出来るなんて羨ましいなぁと素直にカミツレに尊敬の念を抱いた。自分も何時か、箒を確りとリードしてデートの一つをやってみたい物だと思いながら箒の方へと視線を向けるとそこには…自分がプレゼントしたブレスレットを愛しげに見つめながら微笑んでいる箒の姿があった。

 

「ぁっ…」

 

丁度窓からの光が箒を照らすように入り込んで、ブレスレットが輝いた。鮮やかに光る紅玉に光を受ける箒は何処か優雅な美しさと不思議な色香を放って自分の理性の一部を破壊した。魅入るように見つめてしまい、一瞬何もかも忘れてしまったが背後から頭を軽く叩かれて正気に戻る。

 

「おい何を呆けている」

「えっへぇっ!?お、織斑先生!?」

「巡回ついでに来てやったぞ、ほれ席に案内してみろ執事」

「しょ、承知いたしましたお嬢様……どうぞ此方へ……」

 

巡回でやってきた千冬を席へと案内するが、如何にも姉をお嬢様と呼んで席へと案内するのに凄まじい違和感と抵抗を感じる。しかしそんな事を口にしたら確実に怒られるので口にしない。

 

「それで此処のおすすめは何なんだ?」

「本日のおすすめは此方のケーキセットと「執事のご褒美セット」でございます」

「ああ、話に聞く執事に食わせるセットという奴か。杉山ならともかく、実の弟にそんな事をしても面白味に欠けるな……」

「ま、まあそりゃ確かに……」

「ではそうだな……持ち帰りのカップケーキセットを頼む。セレクトは抹茶とケーキとバニラだ」

「畏まりました」

 

千冬の注文を請け負った注文を伝え、注文のカップケーキセットを千冬の元へと持っていく。

 

「お待たせしました、ご注文のケーキセットです。御代は450円になります」

「うむ。これでいいな。それと一夏、お前篠ノ之に何かプレゼントしたな?」

 

姉の悪戯的な笑みに目を見開いてしまった、何故それが分かったのだろうかと混乱していると千冬は本当なのかと……と素直に驚いていた。どうやらカマを掛けただけだったようだ、しかし一夏の反応は余りにも露骨でバレバレであった。最初こそ驚いた千冬だが次第に嬉しそうに頷いていく。

 

「そうか、そうか……お前も遂に…そうか」

「ち、千冬姉勘弁してくれよ…」

「ハハハッ悪い悪い。それと少し職員室まで来れるか?お前達の出し物の書類に不備があってな、代表者のサインが抜けていてな」

「えっマジで!?い、行きます!!」

「では行くぞ。心配する事はない、時間は掛からんさ」

 

そのまま一夏と共に教室から出て行く千冬は横目で箒を見ると笑顔で此方を見送っている姿が映った。どうやら本格的に一夏と良い仲になっているようだ、あの朴念神で唐変木な鈍感神が……驚きで満たされるがそれでも弟の事なのだから喜んでおこう。

 

「一夏、避妊はしろよ」

「ブフォッ!!?いきなり何だよ千冬姉!!?」

「ハッハッハッハッ気にするな、杉山の代わりにからかっただけだ」

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