これは酷い、と思うでしょうねぇ…(白目
タイトルが難しい(切実)
無事神主から教師にジョブチェンジした恭矢は、明日くる時間を聞き、人里にあるという空き家に向かっていた。
「まさかすぐに雇ってもらえるとはなぁ。期待に応えられるように頑張ろう。今の時点で一番いい候補は…、人里の空き家だな、下見に行っておこうか。」
青年移動中───
空き家に向かっていると、里の入口あたりが騒がしいことに気付く。
「何かあったんですか?」
「よ、妖怪が出たらしい。しかも下級なんかじゃない、確定で中級以上の力を持ってるらしい。警備のやつらがなんとか食い止めてるがいつまでもつか…。」
「そんな!?」
里のものたちでは対処出来ないため、博霊の巫女を呼びにいくそうだ。
だが、呼びに行って霊夢が来たときには警備員たちは食われてしまった後になるだろう。
そんなことは見過ごせない。
「…俺が時間を稼ぎます。ですので、その間に霊夢さんを呼んできてください。」
「む、無茶だ!ただの一般人が戦える相手じゃない!」
「そうですね、だから時間を稼ぎます。あと、俺は元神主の明日から教師の、一般人ですよ。」
村人の引き留める声を聞きながらも妖怪がいるであろう外に向かって駆け出す。
こうしている間にも警備員たちが必死に戦っているのだ。そう思うと、霊力で身体能力を強化し、更にスピードをあげて走っていった。
里の外に出ると、血の臭いが漂ってくる。
そちらに向かって走っていくと、一人の警備員を残し、全員倒れていた。残りの一人も満身創痍といった状態で今にも倒れそうである。
「大丈夫ですか!?」
「あん、たは…。」
その一人は、奇しくも昨日恭矢を門で呼び止めた門番だった。
倒れている人を含めても一番傷が酷い。体は切り傷だらけで、腕に至っては原型が分からないほどに切り刻まれている。
「これは、酷い…。」
「気を、つけろ、
そこまでいうと、限界を迎えたようで気を失ってしまった。
癒しの効果を込めてある札を使い、警備員を囲むようにして結界を張る。そしてその場を即座に離れる。この場にいれば警備員たちに被害が及ぶと考えたからだ。
不意に前方で何らかの力が膨れ上がることを感じる。
札を構え神経を最大まで研ぎ澄ませる。
そして、
漆黒の鎧を纏い、腰に刀を携えた武者のような風貌だ。その正体に、恭矢は確信に近いものを覚えながらもその名をよぶ。
「っ、夜叉!」
夜叉─
古代インド神話に登場する
眷属となってからも性格などは変わらない、ただ鬼神と呼ばれる強さを持つ正真正銘の化け物だ。
ここにいる夜叉は恐らく、妖怪として怖れられ生まれた夜叉であると推測されるため、鬼神とまではいかないが、絶望的な状況であることに変わりはなかった。
「オレニ何ノ用ダ?」
夜叉が話しかけてくる。こちらとしても時間を稼ぐことが目的であるため、答える。
「いやなに、旧インド神話の鬼神様がどうして人里を襲うのか気になってね。良ければ教えてもらえるかな?」
「カカ、オレノコトヲ知ッテイルノカ。ナラオレガ
抜刀術と呼ばれるものだ。咄嗟に結界を張るが、一太刀で斬り捨てられ、頬に一筋の傷が付く。かなりの使い手だろう。
「ドウシタ?ソノ程度デハナンノ意味モナイゾ?」
「ああ、確かにこの程度の結界じゃあなんの意味もないな。なら、
「ナニ?」
「最初から全力だ!四佐『四神結界』」
恭矢が宣言した瞬間、夜叉を中心に結界が広がり、結界内に
「これならどうだ、頼む皆!」
『四神結界』
───中国に伝わる、天の四方の方角を司る霊獣を霊力で顕現させるもので、使用者の霊力により、四神が顕現した時の強さも変わってくる。
夢祀の家系、
今の恭矢の実力だと、ほぼ全ての霊力を注ぎ込んでようやく発動するというレベルの術式である。
「ムッ!?」
襲いかかる四神に対し刀で対抗する夜叉だったが、玄武の堅固な甲羅で阻まれ、生まれた隙を朱雀の焔による爆撃と青龍の圧縮した水流に貫かれる。よろめいたところを白虎が凄まじいスピードで切り刻んでいく。
四神の完璧な連携にボロボロになっていく夜叉だったが、流石に紛い物とはいえ旧インド神話の鬼神というべきか、ギリギリのところで耐え続ける。
しかし、確実に夜叉を追い詰めてはいたものの、恭矢の霊力も凄まじい勢いで減っていた。
夜叉を倒しきるか、恭矢の霊力が尽きるか、何分何時間にも感じられる戦いだった。
───だが、哀しくも先に力尽きたのは恭矢であった。
不意に結界が解け、四神が消滅すると同時に霊力が尽きた恭矢が地面に倒れ伏す。
一方で、夜叉もボロボロではあるものの、まだたっていた。
「ナカナカニキイタゾ、小僧。」
「そりゃ、どうも…。」
「ダガ、オレノ勝チダ。」
「そう、だな…。」
(俺は時間稼ぎすらできやしないのか、せめて霊夢さんが来るまでは持ちこたえる筈だったのになぁ…。)
恭矢が他に使える術では、相手にならないものしか無かったのだ。全力で結界を張れば、自分の身は守れても、最大の目的である里の防衛と警備員たちの安全は確保出来なかったのだから、恭矢の取れる方法では最善といってもいい選択だった。
だが、それでも届かなかった。
「サラバダ小僧、キサマハヨク戦ッタ。」
恭矢の息の根を完全に止めようと、夜叉が刀を構え振りかぶる。
(結局は、こうなるのか。折角仕事が決まって人付き合いも良い感じだったのに…。人生、ままならないものだなぁ。)
恭矢が諦め目を閉じた瞬間、
「諦めてんじゃないわよ!ご飯作りに来てくれるんでしょうがぁ!」
「グゥッ!?」
霊夢の声が聞こえるとともに重いものが吹き飛ぶ音が聞こえてきた。
目を開けると、お祓い棒を構えた霊夢が、そこにたっていた。
「キサマガ博霊ノ巫女カ、ソコノヤツヲ助ケニ来タノカ?」
「ええ、貴方ね、人里を襲おうとした鎧の化け物ってのは。随分とボロボロじゃない、恭矢にやられたのかしら?」
「フン、ナカナカニ強カッタガ、オレニハ届カナカッタ。ソレダケダ。」
「そう。」
「次ハキサマガ相手カ。」
刹那、身を起こした夜叉が抜刀した刀が霊夢に迫る!
───が、
「えぇ…?」
「ナ、ニ…?」
「甘いのよ、あまり博霊の巫女をなめないで欲しいわね。只でさえ弱ってるのに私に勝てるはずがないでしょ。」
───お祓い棒一本に防がれていた。
「流石ニ無理ガアルダロ…!?」
「うっさいわね、
「メ、メタ「うっさい!」ガハッ!?」
「さっさと諦めなさい。」
圧倒的だった。自分が必死に食らいついて全力を出しきって、尚届かなかった夜叉を、赤子の手を捻るかのように簡単に捩じ伏せていた。
「悔しいな…。」
生まれてから、出来ることは全てこなし努力を続けてきたからこそ今の自分があった。しかし、
「コノオレガ勝利ヲ諦メル?否、否ダ!オレハ、ワレハ勝ツ、戦イ続ケルコトコソガ我ガ生涯ナノダカラ!」
敵わないと知って尚、それでも夜叉は霊夢に挑んだ。
己の信念を貫き通したのだ。
「あんたの意思はよく分かったわ。でもね、ここは幻想郷、あんたの意思だけを尊重する訳にはいかないの。私が守る対象である人を傷付けた。これだけで滅する理由は充分よ。」
「オオオオオオ!!!」
「霊符『夢想封印』」
虹色に輝く霊力弾が夜叉を包み込む。
光が消えた後には、夜叉の姿は見えなかった。
───恭矢は、夜叉の在り方に感銘を受けていた。人を傷付けたことを許す訳ではないが、最後まで誇りを持って戦い続ける強さに憧れを抱いた。
「貴方は、立派な武人だった…。」
「さてと、終わったし帰ろっと。恭矢ー、無事?」
「はは、これで無事に見えるなら医者に行くことをオススメしますよ。」
「それもそうね。はい、これ。」
「うわっ、なんですか?」
不意に恭矢になにか投げられる。
それは夜叉が使っていた刀だった。
「あんたがあそこまで弱らせてくれてたんでしょ?正当な報酬よ、受け取っときなさい。多分それ、かなりの業物じゃないかしら。」
「………ありがとうございます。」
「いいわよ別に。…その代わり、傷治したらご飯作りに来てよね。」
「ハハハ、早いこと傷治さないとなぁ…。」
───強くなりたい。
そう思い、刀を握りしめ、人里に里に戻ろうと…
「あ、家見に行くの忘れてた…。」
「今かよ。」
霊夢のツッコミを聞きながらも、今度こそ戻っていった。
夜叉さんマジ武人、霊夢さんマジつええ(;・ω・)
夜叉さんのキャラが最初と真逆になりました。
最初は人を痛め付けて楽しんでる最低なやつだったのになぁ…。
投稿が追い付かなくなってきました…。
ペース落ちそうだけど、ここで落としたら只でさえ内容酷いのに、強みすらなくなる…。
内容素晴らしくて毎日投稿されてるかたは神だと思います(´・ω・`)