挨拶回りは大切なのだ。
白玉楼を出発し、人里に向かう………筈だったのだが、
「ここ、どこ…?」
絶賛迷子中である。
「白玉楼に戻る道も分かんなくなったし、とりあえず歩くか。歩けばなにか見つかるさ。」
この状況でも楽観的な恭矢は、森に入っていく。
そこが魔法の森と呼ばれる、幻想郷でも危険な部類に入る場所とも知らずに…。
ザク、ザク、と土を踏みしめる音が辺りに響く。
「なーんか、嫌な感じがするんだよなぁ…。とりあえず結界張ってるから大丈夫だとは思うんだけど。うわっ!?」
不意に恭矢がその場から後退する。
その瞬間、地面が弾けた。
弾けた地面から、恭矢の背丈を余裕で越える異形の怪物が数匹出てくる。
「ニンゲンダ、ニンゲンダ!」
「これは、やばいかも…?」
「ニクゥゥゥ!!!」
獲物を見つけた喜びからか、異形の怪物、否─下級妖怪たちは叫びをあげる。
「ガアァァア!」
「コロス、ニク、コロス!」
「ハラヘッタァァア!」
「ちょっ、今の状態で妖怪と戦うとか聞いてないんだけど…!?」
恭矢は外の世界でも、人間社会の影に潜む妖怪を退治することはあった。
だが、所詮は忘れ去られ弱った下級の妖怪ばかり、大した強さは持ち合わせていなかった。
しかし、ここは外の世界で忘れ去られたものたちが住む幻想郷である。
幻想郷では、下の下に位置する下級妖怪ですら、恭矢が外の世界で退治してきた妖怪の数倍は強い。
しかも、気付けば周囲を囲まれており、逃走は困難であることが窺える。
「くそっ!只でさえ道具が心許ない状態だってのに!やるしかないか………!」
札を構えると同時に痺れを切らしたのか妖怪たちが一斉に飛び掛かってくる。
即座に周囲へ弾幕を放ち迎撃する。
放たれた弾幕は、前方から襲いかかってきた妖怪に直撃し吹き飛ばす。
しかし、吹き飛ばした次の瞬間には、別の妖怪が襲いかかってくる。
(右、左、右、右、上、左、右、上、左!)
殺意がこもった攻撃を、ひたすらに避け、どうしても避けきれないものには結界を張り対処する。
なんとか耐えきり、今度は恭矢が攻勢に出る。
「くらえ…、スペル!波紋『夢の境界線』!」
全方位に弾幕を放つ。放たれた弾幕は少し進んだあとに弾け、その周囲にいた妖怪を纏めて吹き飛ばす。
続けて、霊力を込めた札を放ち、残った妖怪にダメージを与える。
「よし、これなら戦える…!」
自信の予想以上に、妖怪にダメージを与えられることが分かったためか、恭矢に一瞬の隙が出来る。
しかし、戦闘中にその一瞬は命取りだった。
「ガハッ!?」
突然、背中に鋭い痛みが走る。
咄嗟にその場から飛び退くが、激痛に膝をおる。
「ぐ、なに、が…。」
攻撃を受けたであろう場所を見ると、周囲にいる妖怪よりも一回り以上大きな妖怪がいた。
その爪は赤く染まっており、先程恭矢を襲った痛みがその爪によるものだと理解する。
「嘘だろおい…!」
先程ですらギリギリの状態だったのだ、それに加え大きな傷を負い、新たに現れた妖怪も相手にしなければならない。
背中に走る激痛に気を取られ、気を持ち直したときには目の前に爪を振りかぶった妖怪がいた。
(くそ…、ここで終わりなのか…。)
覚悟を決めて目を閉じる。
「あれ…?」
だが、いつまでたっても痛みがやってこないことに疑問を覚え、閉じていた目を開く。
───そこには、現在進行形で蹴散らされる妖怪と金髪の美少女が二人いた。
「そっちに行ったわよ魔理沙!」
「了解だぜアリス、くらえ、マスタースパーク!」
魔理沙と呼ばれた白黒の服を身に纏った少女はその手に持つ、箱のようなものからレーザーを放ち妖怪を吹き飛ばし、アリスと呼ばれた少女が残った敵にトドメをさす。
見惚れるほどのコンビネーションだった。
ほんの数分で妖怪を殲滅した少女たちは、恭矢に駆け寄ってくる。
「おい、大丈夫か!?」
「あんまり、大丈夫じゃないかも、です…。」
「これは…、あの妖怪にやられたのね。すぐに治療しないと危険ね。私の家がこの近くにあるから、とりあえず運びましょう。」
「すみ、ません…、ありがとう、ございます………。」
感謝の気持ちを伝えるとともに、安心感と激痛により、意識が闇の中へと落ちていった。
────夢を見た。
幼い頃の自分が神社の掃除をしていた。
ふと、その背中に優しげな声がかけられる。
幼い頃の自分は、その声を聞き振り返る。
声をかけてきた相手の顔を見る前に、恭矢の意識は浮上していった。
さあ、夢から覚める時間だよ────
と、声が聞こえた気がした。
「知らない天井だ…。」
恭矢が目を覚ますと、ベッドに寝かされていた。
見覚えのない場所に恭矢が困惑していると、不意に扉が開く音がした。
「あら、起きてたのね。」
「貴女は…。」
「アリス・マーガトロイドよ、無事で何よりだわ。」
「あ、俺は夢祀 恭矢と言います。先程は危ないところを助けていただき、ありがとうございました。」
「気にしないで、私は魔理沙の用事を手伝ってただけだから。」
「魔理沙さん、ですか…。」
「おう、私のことだぜ。改めて自己紹介させてもらうぜ、私は霧雨 魔理沙、普通の魔法使いだ。運が良かったな、恭矢。」
「ええ、本当に助かりました、霧雨さんもありがとうございます。」
「へへ、気にすんなよ。あと、霧雨さんはやめてくれ。魔理沙でいいぜ。」
魔理沙さんは活発な元気少女、アリスさんはクールな知的少女といったところだろうか。
対照的な性格ではあるが、二人とも心優しい女の子だ。
実際、こうして助けてもらっている。
「まだあまり動かない方がいいわよ、とりあえず背中の傷は塞いだけど、体力は回復してないでしょうし。」
「治療までしていただけるとは…、本当にありがとうございます…。」
「だから気にすんなって言ってるだろ?ほら、とりあえずお粥作ったから、これでも食べてろ。」
「ありがとうございます、いただきます。」
大人しく手渡されたお粥を一口───
「旨い…!」
絶妙な塩加減と少量入っているキノコの旨味が合わさってお粥とは思えない旨さになっている。
あまりの旨さに、数分で完食してしまった。
「ごちそうさまでした、美味しかったです。」
「おう、お粗末だぜ。」
食事のお礼を伝え、魔理沙さんと談笑していると、不意にアリスさんが口を開く。
「ところで、貴方はここで何をしていたの?」
「あ、言ってませんでしたね。俺は外来人なんですよ。幻想郷に住むことを決めたので、仕事と住む場所を探すために人里に向かうところだったんです。」
「ん?人里はこっち側じゃないぜ?」
「………え?」
どうやら、道に迷う以前の問題だったらしい。
という訳で、今回登場したのは東方projectの二大主人公の一人である魔理沙と、七色の人形使いことアリスさんでした!
これからも頑張って投稿しますので応援、お願いいたします(^^)