ロビンと一緒に西の海に帰ってきた。
社長から指令が出たのだ。
”西の海”で『殺し屋』の異名で知られている賞金稼ぎ。ダズ・ボーネスというやつをスカウトして来い・・・と。
めちゃくちゃ有名人で、俺も名前を聞いたことがある。
賞金稼ぎなら、向こうも俺とロビンのことを知っているのだろう。
何より賞金稼ぎなら、BW(バロックワークス )のことも耳にしたことくらいはあるかもしれない。
スカウトした賞金稼ぎに、スカウトをするように指示を出していたから、社員も結構な数が集まってきている。
「クロス。ダズ・ボーネス はあの酒場にいるそうよ」
聞き込みを続けているとすぐにダズ・ボーネス は見つかった。
有名人ということもあるだろうが、ロビンがハナハナの実の能力で、目や耳を咲かせて情報収集をしているのが大きい。
「失礼しまーす」
そう言って酒場の扉を開けた。
酒場自体は綺麗だが、客の面子がすごい。どこぞのギャングやら海賊共が騒ぎ立てている。
スカウトする時は結構酒場ですることが多いのだが、大体海賊が多いか海兵が多いかのどちらかだ。
海兵が多い酒場は、気づかれると面倒なのでスカウトに向いていない。
そういう意味では海賊共が多い酒場で良かったと思う。
ただ、海賊が多くても面倒であることに変わりはないが。
「おい・・・あいつ小さな巨人じゃねぇか!?」
「本当だ!隣にいるのは悪魔の子だぞ!」
「巨人ではないが、小さくもねぇな!以外にひょろっちぃけどよ・・・」
「最近は小さな巨人の意味を込めて、小鬼って呼ばれてるらしいぞ・・・!」
俺たちに気づいた奴らが、ヒソヒソとこちらの様子を伺いながら喋っている。
どこの酒場でも同じだ。
挑戦してくる馬鹿もたまにいるが、今日は早くダズ・ボーネスを勧誘したいから勘弁だと思う。
久しぶりにサウロに会いたいし。
つーか、小鬼って何だよ!すごく弱そうじゃないか。
ダズ・ボーネスはカウンターで一人で酒を飲んでいた。こちらに気付いてはいるようだが。
とりあえず話しかけようとカウンターに向かう。
「おいお前!3億の首らしいな!俺たちの為に死んでくれや!」
歩いている途中、身の程をしらない馬鹿共が俺の前に立ちはだかった。辺りが一瞬だけ静まり返った。
やはりこういう馬鹿はどこにでもいるんだな。
「あ、あいつら!最近、億越えの賞金首ばかり狙っているゴリアテ一味じゃないか・・・!」
「いや!流石に3億は無理だろ!」
「けど7人いるうちの一人一人が億越えを相手にできるらしいぞ・・・」
「なぁ、小鬼さん。表に出ろやぁ!俺たちに倒されてくれよぉ!そして、ニコ・ロビン!そんな奴と一緒にいねェで俺たちと楽しいことしようぜぇ」
ゴリアテというやつがニヤニヤとこちらを見ている。
いや、ロビンのことを舌舐めずりしながら見てやがる。後ろのやつらもニヤニヤしていた。
よし、こいつら、殺す。
俺は、ゴリアテの左腕を掴んだ。
「ん?なん・・・」
ブチブチブチィ!!
ゴリアテの肩から腕を引っこ抜いた。血はベクトル操作で流れないようにしているが、相当痛いだろう。
「ッギャアアああああ!!!!」
「こ、こいつ!!やりやがった!どんな力してやがる!!」
「てめぇ!!親分に何しやがる!お前ら!!かかれぃ!」
そういってゴリアテの後ろにいた6人が一斉に剣を持ち上げて俺に向かってきた。ゴリアテは苦しそうに地面に這いつくばっている。
「超・重力(グラビティ)」
ベクトル操作で、その6人にかかる重力を上げていく。
その6人は地面に倒れ、身体中から血を吹き出し、地面の中に落ちていった。
「「「はぁ!!???」」」
「ヤバい!あいつはヤバすぎる!!何をしたらあんなことになるんだ!!?」
周りの観衆共が喧しい。
俺はそのまま、ゴリアテの頭をつかんだ。
「や、やめてくれ!やめてくれぇえ!あ、あやまる!か、金も払う・・・!」
「全方向(オールベクトル)」
ゴリアテの頭部は弾けとんだ。
頭と左腕のない死体がその場に崩れ落ちる。
「「「「「う、うわぁあああああああ!!!」」」」」
その光景を見ていた客は一斉に店の外に逃げていった。
店の中には、ダズ・ボーネスしか残っていない。
「クロス・・・やり過ぎじゃない?」
「あいつら、ロビンのことを厭らしい目で見やがったから我慢できなかった、すまん・・・悪いな、店主!これで許してくれ!」
店主に札束をドサリと渡して、俺とロビンはカウンターに座った。
「か、勘弁して下さいよ旦那!!」
「ごめんなさいね・・・死体はちゃんと片付けるから・・・ブランデーを2つもらえるかしら?」
店主はビクビクしながらも、酒の準備をしている。申し訳ないことをしてしまった。
「俺に何か用か・・・?小さな巨人・・・!悪魔の子・・・!」
「いやまぁ、ここまで騒ぐ気は無かったんだが、ちょっと話があってな。"殺し屋"ダズ・ボーネス」
「BW(バロックワークス)って知ってるかしら?」
「・・・あァ、知っている。つい先日勧誘された・・・そいつは殺したけどな」
「・・・そう。是非入って欲しいのだけれど」
「それとも俺たちを殺すか?」
「・・・いや、そいつは無理だろう・・・なんで俺なんだ?」
「・・・冷静沈着で、動揺せずに相手を殺せるところと・・・ボスは兵力と言ってたわね・・・あとはネームバリューと言ったところかしら」
「・・・お前ら程、悪名高くはないが・・・良いだろう。BWに入ってやる」
「助かるわ。じゃあこの電伝虫とエターナルポースを渡すから、なにかあったらまた連絡するわ」
そう言ってロビンがアラバスタの"永久指針(エターナルポース)"を渡した。
「・・・了解。なぁあんた」
「ん?なんだ?」
「さっきのあれ、どうやったんだ?」
そう言って、ゴリアテの死体を指差した。
「あぁ、俺は悪魔の実の能力者なんだ。ただ、こういうご時世だからな。・・・お前の能力を教えてくれるなら教えてやっても良いけど」
「・・・俺は"スパスパの実"を食った"全身刃物人間"だ」
「結構簡単に教えてくれるんだな」
「同じ組織に入るんだ・・・くだらねェ馴れ合いをするつもりもないが、それくらい教えても良いだろう?」
「なるほど、一理あるな。俺は"ベクベクの実"を食べた"ベクトル人間"だ。さっきのは、頭部から下にかかる力の、ベクトルの向きを全方向に変換して、ベクトルの大きさを大きくしただけだ。触らなくても壊せるが、触った方が威力が高い・・・これでいいか?」
「・・・反則じゃねェか、そんなの」
「あぁ、気に入ってるよ。じゃあまた会おう」
そう言って俺とロビンは死体を回収して酒場を出た。
酒場を出てすぐに、死体を海の方向に向かって投げ飛ばした。
「能力を教えて良かったの?」
「俺の能力を知った方が、変な考えを起こさなくて良いと思ったからな」
「それもそうね」
店の外に出た俺たちを遠巻きで見ているやつらが沢山いた。
さっきの観衆たちだろう。
もうこの島には長居できそうにない。
「よし、ロビン。一旦サウロのいるとこに行くか!」
「ふふっ、久しぶりだものね。私も楽しみ」
それから俺たちは、サウロのいる島に向かった。
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「デレシシシ!久しぶりだで!デレシシシシ!」
「「ただいま!」」
「おめェ達、懸賞金がまた上がったでよ!まだまだ上がる余地があるんだで!海軍も見る目がないでよ、デレシシシ!」
「ふふっ、元中将がそれを言うのね」
「デレシシ!しばらく見ねェ内にだいぶ辛辣になったでよ、ロビン!デレシシシシ!」
サウロもロビンも嬉しそうに笑っている。
俺たちは1週間滞在することにして、サウロに今までのことと、これからのことを報告したのだった。