IS~インフィニット・ストラトス~自由の戦士と永遠の歌姫   作:剣の舞姫

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ネトゲ楽しいw


第三話 「女尊男卑」

IS~インフィニット・ストラトス~

自由の戦士と永遠の歌姫

 

第三話

「女尊男卑」

 

 IS学園入学後、最初の授業は山田先生によるISの基礎知識になった。

 ISに関して、女子は殆どが大なり小なり勉強はしているだろうが、これはその復習も兼ねた授業なので大事な事だ。

 

「は~い、ここまでで何か質問はありますか?」

 

 凡その基礎知識となる所を進行していた山田先生が質問はあるかと振り返った。

 そして、数多くいる生徒達の中から小さく手を上げている生徒を見つける。その生徒とはIS学園初の男子で、史上初の男性IS操縦者となった織斑一夏だ。

 

「はい、織斑くん? 何でしょうか?」

「えっと…そ、その……」

「はい?」

「ひ、非常に言い難いのですが…殆ど、全く解りません……」

「……え?」

 

 一瞬、山田先生は一夏が何を言っているのか理解出来なかった。

 確かに一夏は男子で、今までISに触れる機会なんて無かったのだから、理解出来ない所が多少あっても可笑しくはなかったのだが、基本的にIS学園に入学する者には入学前にISの基礎知識が書かれた参考資料が配布されている。

 配布資料を読んでいれば少なくとも基礎知識の中の、それこそ基礎の基礎くらいは解る筈なのに、それが解らないとは如何いう事なのか。

 

「ま、全く!? これっぽっちもですか!?」

「はい、全く、これっぽっちも、です」

「織斑」

 

 山田先生では荷が重いと思ったのか、教室の後ろで授業を見ていた千冬が一夏に声を掛けた。その口調と表情は心なしか厳しい。

 

「入学前に配布された参考資料があっただろう…あれは読んだか?」

「え? 参考資料ってあれだろ? あの馬鹿みたいに分厚いやつ…あれなら読まずに間違えて古い電話帳と一緒に捨てちゃった」

 

 その瞬間、千冬の持つ出席簿が一夏の頭に落ちて、本当に出席簿で頭を叩いた音なのだろうかと思うほど激しい音が教室に響き渡った。

 

「馬鹿者、表紙に必読と書かれてあっただろうが! 後で再発行してもらうから、一週間以内に覚えろ、いいな?」

「い、いや…一週間であの厚さはちょっと」

「私は、やれと言ったぞ?」

「……はい、やります」

 

 千冬の鋭い眼光が一夏を射抜き、逆らう事は許さないと言葉に出さずとも語っていた。一夏は退路を断たれたのか、項垂れながら了解の言葉を返すしかない。

 

「ヤマト、後でこの馬鹿に基礎知識を叩き込んでおけ、同じ男同士の方が捗るだろう」

「わかりました」

 

 一夏には後で配布される資料で勉強してもらう事にして、授業は取り合えず通常通りに進んだ。ただ、その間、一夏は内容が全く解らず頭から煙を出していたのは・・・言うまでも無いだろう。

 

 

 授業が終わって休み時間になり、キラとラクスは頭を抱えている一夏の所に集まっていた。

 

「悪いなキラ、迷惑掛けて」

「気にしないで、友達が困ってるなら力になるのは当然だよ」

「私も協力しますわ。頑張りましょう?」

「ほんとにサンキューなキラ、クライン」

「あら、私もラクスで宜しいですわよ? 私ももうお友達でしょう?」

「そっか、なら改めてサンキューなキラ、ラクス」

 

 心優しい友人二人に心が和む一夏と、それを見て微笑むキラとラクスだったが、その三人の間に割り込んでくる者がいた。

 

「ちょっとよろしくて?」

「んあ?」

「ん?」

「はあ?」

 

 話しかけてきたのは金髪の長い髪の少女、見た感じだとヨーロッパ系の人間だろうか。

 

「まぁ!? 何ですのそのお返事! 私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度があるのではないかしら?」

「悪いな、俺、君が誰なのか知らないし」

「いや、一夏…自己紹介聞いてなかった? イギリスから来たセシリア・オルコットさんだよ」

「ああ~…自分の事で精一杯だったから聞いてなかったかも……で? そのオルコットさんが何か用か?」

 

 ふてぶてしい態度だが、別にそれでも構わないだろうとキラも一夏も思った。

 セシリアからは何処かキラと一夏を見下しているような雰囲気を感じられ、相手が見下しているのなら、別に敬意を払う必要など無い。

 

「わ、私を知らないなんて…イギリス代表候補生にして入試主席の、このセシリア・オルコットを!?」

「なあキラ、代表候補生って何だ?」

「国家代表IS操縦者の候補生、読んで字の如くね」

「ふぅん、何か凄いのか? それ」

「そうですわね、代表候補生は簡単には選ばれないものですわ。各国ごとに人数に限りがありますし、IS適正レベル、教養、技術、それぞれが優れていなければ代表候補生になれません。更に代表候補生の中でも特別優秀な人間には国家や企業から専用機…つまり専用のISが支給されているのですわ」

「そう! つまりはエリートですわ!!」

 

 一々イライラする事を言うセシリアだが、キラもラクスも、なるべく視界に入れないようにして、スルーしていた。

 

「へぇ、エリートねぇ」

「そうですわ! 私のような選ばれたエリートと同じクラスになれたのは正に奇跡! その幸運をもう少し喜んでいただける?」

「そうか、それは光栄だ」

「うん、光栄だね」

「光栄ですわね」

「……馬鹿にしていますの?」

 

 キラ、ラクス、一夏の棒読みの賛辞に不満を持ったセシリアが不機嫌だと言わんばかりの表情で、主にキラと一夏を睨みつけた。

 

「……(ああ、なるほど、女尊男卑の影響なんだ)」

 

 セシリアはキラと一夏を見下していたのではない、男という存在そのものを見下していたのだ。

 

「だいたい、何も知らないくせによくこの学園に入学してこれましたわね。男性初のIS操縦者と言うから少しは期待していたのに、ヤマトさんはそれなりの知識はあるご様子ですが、織斑さんは期待外れですわ」

 

 明らかに一夏を馬鹿にしていた。口にはしていないがキラの事も、馬鹿にしているのは態度に出ている。大方、同じ男なのにキラの華奢な身体で、IS操縦も大した事はないと思っているのだろう。

 だが、セシリアは考え方がやはり子供だ。

 一夏がこの学園に入学出来た事に知識は関係無い。男性初のIS操縦者という事で様々な国家・企業・組織が一夏を狙っている。

 もしIS学園に入学していなければ今頃、彼は間違いなく実験のモルモットになっているか、解剖でもされているかのどちらかだっただろう。

 

「まあでも、私は優秀ですから、織斑さんの様な方にも優しくしますわよ? 解らない事があればまぁ、泣いて頼まれれば教えて差し上げても宜しくってよ? ヤマトさんも流石にエリートである私ほどの知識は御座いませんでしょうし・・・何せ私、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

「あれ? 俺も倒したぞ教官」

「僕も倒したよ」

「私の実技試験はオペレーターのものでしたから、関係ありませんわね」

 

 ラクスの実技試験はオペレーター希望だったので、オペレーターの基礎技能の試験と、ISを動かせるかどうかの確認だけだったので、この場合は関係無い。

 キラは教官を務めた山田先生を相手にストライクフリーダムで開始3秒後に完勝している。

 

「はぁ!?」

「倒したっていうか、いきなり突っ込んできたのをかわしたら、壁にぶつかって動かなくなったんだけど」

「特に強いとは思わなかったし、苦戦する程じゃなかったかな僕の場合」

「私だけと聞きましたが……っ」

「女子の中ではってオチじゃないのか?」

 

 恐らくそうだろう。態々一般入学枠のセシリア達女子生徒と、特別入学枠の一夏とキラを一緒にカウントする訳がない。

 

「あなた方も教官を倒したっていうの!!?」

「え、えっと…落ち着けよ、な?」

 

 セシリアが詰寄ってきたが、椅子に座っている一夏は避けられない。

 キラは立っていたので少し後ろに下がれば問題無かった為、一夏の冥福でも祈っていた。

 

「こ、これが落ち着いていられ……っ!」

 

 そこでチャイムが鳴った。休み時間が終わり、次の授業が始まる合図だ。

 

「話の続きはまた改めて! 宜しいですわね!?」

 

 そう指差しながら宣言して自分の席に戻ったセシリアの後姿を眺めながら、キラとラクスは一夏に自分達も席に戻ると伝え、席に戻っていった。

 

 

 一日の授業が終わり、それぞれが寮の自室に帰宅する中、キラとラクスは再び千冬に呼ばれて職員室に来ていた。

 

「悪いな一日に何度も呼び出して」

「いえ」

「どうされたのですか?」

 

 一夏の事なら朝に聞いた。他に何の用があるのだろうか。

 

「IS学園の学生は基本的に寮に入る事になっているのは知っているな?」

「「はい」」

「それで、束からの要請もあったが、私も考えてな。お前達には相室になってもらう」

「僕とラクスがですか?」

「そうだ。ヤマトとクライン、二人が一夏の護衛だと聞いているからな。二人揃って同じ部屋の方が何かと都合が良いだろう」

 

 なるほど、確かにその方が都合が良い。お互いに別々の部屋で、同室の人間が居ては護衛の事で話をするのに不便だ。

 

「二人の部屋は一夏の部屋の向いにある。これが鍵だ」

 

 千冬が差し出してきた二本の鍵を受け取ったキラとラクスは、それを失くさない様に確りと鞄の中に入れる。

 

「それとな……お前たちは20歳以上とは言え、この学園の学生だ。淫行には充分気をつけておけよ?」

「っ!? せ、先生!!」

「ははは、すまん。だが本当に気をつけろ? 本来なら男女同室は問題があるんだ。何かあればお前達を別々の部屋にしなければならなくなるからな」

「……わかりました」

 

 言いたい事は理解出来るのだが、何故か釈然としない。

 千冬は至って真面目な顔をしているが、その瞳の奥ではキラとラクスをからかって面白がっているという感情を隠しきれていないのだ。

 

「それでは失礼します」

「ああ、明日も遅刻はするなよ?」

「それでは」

 

 職員室から出て二人は寮に向かった。

 IS学園の敷地内にある学生寮、食堂や大浴場も完備した小さなホテル並の大きさを誇る寮の一室、一夏の部屋だと言う1025室の向いにある1035室、そこがキラとラクスの部屋だ。

 部屋の中に入ったキラとラクスは部屋の設備に驚いた。千冬から聞いた話だが、二人の部屋は特別仕様になっており、部屋にあるパソコンは他の部屋のパソコンより高性能なキラに合わせた仕様となっている。

 更に部屋の壁は完全防音に優れており、窓も特殊対弾ガラスになっているため、いざという時の要塞も兼ねた作りになっているらしい。

 

「僕は早速パソコンを確認するけど、ラクスは如何する?」

「私はシャワーを浴びてきます。少し汗をかいてしまいましたから」

「そう」

 

 荷造り等は既に女性の業者が終わらせてくれている。ラクスはクローゼットから着替えとバスタオルを取り出してバスルームに入っていった。

 それを見送ったキラは早速パソコンを起動、メールを設定すると束の秘密アドレスにメールを送り、イギリス政府のデータバンクにハッキングを開始して、今日話しかけてきたセシリアの事を調べ始める。

 

「セシリア・オルコット、15歳、イギリス名門貴族オルコット家の長女で、イギリス代表候補生。使用ISはイギリスが開発した第三世代兵器であるBT兵器の試験機を搭載した射撃型IS“ブルー・ティアーズ”、BT兵器はビットと呼ばれる誘導兵器の事か……フリーダムのドラグーンみたいなものかな」

 

 ただし、ブルー・ティアーズに搭載されているBT兵器、ブルー・ティアーズは射撃しか出来ない。

 フリーダムのドラグーンは射撃の他にもビームソードを展開して近接戦にも使えるので、どちらが高性能かと問われれば、言うまでも無い。

 

「それに、イギリス本国でのデータではブルー・ティアーズを操作している時は他の動作……攻撃も移動も出来ないみたいだ。特殊な空間把握能力は持ち合わせていても、それほど高くはないようだね」

 

 キラやラクスの世界の誘導兵器、ドラグーン……カオスやレジェンドに使われていた空間把握能力に依存しない第二世代のドラグーンの様な物でなければ、セシリアにはBT兵器は使いこなせない。

 セシリアの特殊な空間把握能力はキラやムウ、ラウ・ル・クルーゼ、レイ・ザ・バレル、プレア・レヴェリー、モーガン・シュバリエといった高レベルの空間把握能力を持つ者たちと比べると大幅に劣る。

 

「まあ、こんな所かな」

 

 パソコンの電源を落とし、キラは窓から外を眺め始めた。夕暮れに照らされるIS学園の敷地全域が見渡せて、良い景色だった。

 

「明日はどうなるかな……?」

 

 今日のセシリアの態度を見る限り、恐らく明日にでもセシリア関連の事で何かが起きる気がする。

 

「……」

 

 だが、そんな事は関係無い。何があろうと、キラにはラクスと、相棒であるストライクフリーダムがいる。

 だから、特に大きな心配も無いだろうと考えを締めくくり、そろそろシャワーを浴び終わるだろうラクスの後にシャワーを浴びる為、自分のバスタオルと着替えを用意するのだった。




次回はセッシー無謀な挑戦状を叩きつける。
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