IS~インフィニット・ストラトス~自由の戦士と永遠の歌姫   作:剣の舞姫

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タイトルの意味は、まぁわかるでしょう。


第六話 「自由に挑む嘗ての騎士」

IS~インフィニット・ストラトス~

自由の戦士と永遠の歌姫

 

第六話

「自由に挑む嘗ての騎士」

 

 キラとセシリアの試合が終わり、30分の休憩時間が設けられた。

 既に一夏と白式の初期化《フォーマット》と最適化《フィッティング》は終わっているのだが、流石にキラに休み無く連続で試合をさせるというのは学園側が問題だと言うので、キラはピットに戻ってから一度シャワーを浴びに行っている。

 

「それにしても、キラ……強かったな」

「ああ、射撃の腕もそうだが、近接戦も相当の腕だ。二刀流は難しいと言われているのに、更にそれを実体を持たないビームサーベルでこなしてしまうとは……」

 

 キラが射撃型だと聞いていた箒は、その近接技能の高さに一種の憧れの様なモノを抱いていた。剣道をやっている身であるからこそ、箒にはキラの剣の腕がどれ程のモノか理解出来るし、それが箒自身の剣の腕を大きく上回っているという事に気付いているのだ。

 

「一夏、お前の機体は近接ブレード一本しか武装が無い」

「ああ」

「正直、ヤマトの射撃能力は桁違いだ、神業の如き射撃の嵐を潜り抜け、懐に潜り込まなければ勝負にはならん」

「だけど、懐に潜り込んでもビームサーベルの二刀流が待っている、か……勝てる気がしねぇな」

 

 射撃も格闘も完璧、キラに苦手な距離は存在していなかった。寧ろ射撃型なのではなく全距離対応可能の万能型と言っても過言ではないだろう。

 

「ヤマトの機体は恐らく高速機動全距離対応型だろう……いや、あの誘導兵器を見ると広域殲滅も可能かもしれないな」

「高速機動か……あの速度に追い付けなければ接近戦は出来ないな」

「何とか足止めでも出来れば良いのだが・・・」

 

 誘導兵器を扱いながら自身も攻撃や移動が出来るほどの並列処理能力が高いのだ。正直な話、キラの機動を止める術が見つからない。

 

「やあ一夏、そろそろ時間だよ?」

「キラか・・・ああ、わかった!」

 

 キラがシャワーから戻ってきた。

 時計を見ればもう一夏とキラの試合の時間が迫っていて、そろそろアリーナに出ていないと不味い。

 

「じゃあ、先に行くから」

 

 再びキラがストライクフリーダムを展開すると、カタパルトまで移動する。

 ストライクフリーダムの足がカタパルトに固定されたのを管制室から見ていたラクスがマイクに口を近づけ、発進の合図を出した。

 

『進路クリアー、X20Aストライクフリーダム、発進どうぞ!』

「キラ・ヤマト、フリーダム! 行きます!!」

 

 キラが発進して、先ほどと同じ鮮やかなバレルロールをしながらVPS(ヴァリアブルフェイズシフト)装甲を展開してアリーナに出るのを見送り、白式をカタパルトへ移動させる。

 そして、いざ発進というところで一夏はキラの発進時の発進コールを思い出して、何となくだけど気合を入れる為に真似をしたくなっていた。

 

「えっと、確か名前を言って、機体名を言うんだよな……」

 

 キラが言っていたのを思い出しながら、言うべきセリフを頭に纏める。

 

『カタパルト接続、進路クリアー、白式、発進どうぞ!』

「よっし! 織斑一夏、白式! 行くぜ!!」

 

 キラの真似だが、確かに気合が入った一夏はカタパルトに引かれ、アリーナに飛び出た。

 既にアリーナ中央には宙に浮かびながら背中のスーパードラグーン兵装ウィングを広げて、両手のライフルを構えたストライク・フリーダムを身に纏うキラの姿があり、一夏も白式の武装である近接ブレード、雪片弐型を構える。

 

「じゃあ、始めようか一夏」

「ああ、勝てないまでも、一撃くらいは入れて見せるぜ!!」

 

 圧倒的に一夏の方が劣っているのは理解している。

 だけど、それでも一撃くらいは入れるという意気込みで向かって行く。そんな決意が瞳に力強さを与えていた。

 

「良い瞳をしてるね、そういう気持ちは戦いには必要な事だよ」

「そうか……なら、最初から最後までキラに一撃だけでも入れるつもりで全力を出し切る!!」

 

 試合開始の合図が出た瞬間、ストライクフリーダムの両手に握られたビームライフルから連射されたビーム数十発が白式に迫る。

 迫り来るビームの嵐を今の一夏が出せる最高スピードで避けながら、接近しようとしたのだが、その移動する先々にビームが、まるで読んでいたかのようなタイミングで迫ってくるのだ。

 

「き、キラ!? お前まさか未来が見えてるとか言わねぇよな!?」

「未来は見えないけど、これくらいは射撃の基本だよ?」

 

 ビームライフルだけでなく、スーパードラグーンまで射出してビームの嵐を降らせるキラ。

 一瞬で何百という数のビームが降り注ぐ中、一夏は何とか接近を試みるも、かわすので精一杯になり、遂にはかわし切れずに被弾が増えてしまった。

 

【白式、シールドエネルギー残量170】

「も、もうこれしか残ってないのか!」

 

 このままではキラに一撃浴びせる事も出来ずにシールドエネルギーが0になって負けてしまう。何とかキラに接近出来ないかと思って周囲に目を向けた。

 相変わらずドラグーンは素早く移動しながらビームを発射していて、とてもではないが斬りに行くのは無理、ビームの嵐の中を残りのシールドエネルギーで突っ切るのは不可能、打つ手無しに思えたが……。

 

「一か八か!!」

 

 見えた。キラの発射するビームの嵐の中に、一箇所だけ白式が通れるだけの隙間が存在していたのだ。

 

「いっけぇええええええ!!!!!」

 

 スラスターを全開で吹かして隙間を突っ切る。その隙間からストライクフリーダムまでは殆ど距離が無い。

 

「おおおおおおおおおおおおっ!!!!」

単一仕様能力(ワンオフアビリティー):零落白夜、起動】

 

 一か八か白式の単一仕様能力(ワンオフアビリティー)、零落白夜を発動させる。試合が始まる前に姉から聞いた白式の最強の能力、バリア無効化攻撃。

 相手のバリアを無効化させて直接機体に攻撃をする事でISの絶対防御を発動させる。そうすれば相手のISは大幅にエネルギーを消費して、シールドエネルギーも大きく削れる。

 千冬が言っていた、今の一夏がキラに唯一勝てる可能性のある奥の手であり、嘗て、千冬を世界の頂点に立たせた切り札だと。

 

「っ!」

 

 一夏の咆哮によって白式が黄金のオーラを纏い、零落白夜が発動する。その能力を知っているキラは此処に来て初めて焦りの色を見せた。

 

「ちょっと、手加減し過ぎたかな」

 

 迫り来る一夏、雪片弐型が実剣からエネルギー刃に変わったのを確認して、キラはストライクフリーダムの腰に装備されているクスィフィアス3レール砲を展開して発射した。

 

「うぉあっ!?」

 

 命中したレール砲、零落白夜によって残り40まで減っていたシールドエネルギーが今の一撃によって0になってしまう。

 

【白式、シールドエネルギーエンプティー、勝者キラ・ヤマト】

 

 シールドエネルギーが0になった事で零落白夜は強制解除され、呆然とした表情で一夏はキラの顔を見ていた。

 

「お疲れさま、最後の追い上げは凄かったよ。僕も驚かされたから」

「くそっ、結局一撃も入れられなかったのかよ・・・」

「あはは……でも、良い経験にはなったでしょ? ビーム、射撃の嵐の中を如何戦えば良いのか、ヒントにはなるんじゃないかな?」

「そっか……今日の戦いを振り返って攻略法を考えれば次は対処出来るな!」

 

 キラにとっては全力の20%程度しか出していない試合だったが、一夏にとっては良い経験になった筈だ。

 

「それに、雪片弐型は千冬姉が使っていた武器の後継機なんだ……千冬姉の名前を汚さない為にも、俺はこの雪片弐型と一緒に強くならないとな」

「大丈夫、一夏なら必ず強くなるよ」

「なら、キラに頼みがある」

 

 真剣な表情でキラの顔を見る一夏に、キラもまた真剣に聞き返した。

 

「俺を、鍛えてくれ……お前に頼めば、俺は強くなれる気がするんだ」

「……そう、なら明日から放課後は一夏の為に空けとかないとね」

「っ! サンキュー!!」

 

 ピットに戻りながら、一夏はキラに弟子入りする事が決定する。

 ストライクフリーダムと白式、夕方の時間になり、夕日に照らされる二つの白い機体は・・・キラキラと、幻想的に輝いていた。

 

 

 翌日、朝のSHRの席で山田先生がクラス代表の発表を行っていた。

 あの後、結局、セシリアVS一夏の試合は行われ、一夏の善戦虚しく敗北という結末に終わり、本来なら一夏がクラス代表になる事は無い筈なのだが。

 

「と、いうわけで! クラス代表は織斑一夏くんに決まりましたぁ!!」

「……は?」

 

 何を言っているのだこのおっぱい眼鏡は、などと思っていた一夏だが、その内容を理解していく内に如何いう事態なのかを悟った。

 

「はあああああああああああっ!!?」

 

 その瞬間、一夏の頭に出席簿が落ちる。

 

「静かにしろ馬鹿者」

「い、いや千冬姉! 何で俺が!!」

 

 再び出席簿が一夏の頭に落ち、その痛みに一夏が悶え苦しんだ。

 

「織斑先生だ、何度も言わせるな馬鹿者」

「お、織斑先生……なんで俺がクラス代表なんでしょうか? 俺、キラにもセシリアにも負けたのに」

「僕もセシリアも辞退したからね」

 

 キラの言葉に一夏は思いっきり身体ごと振り返る。何故キラがそんな真似を仕出かしたのか、それを問い詰めなければならない。

 

「一夏、君はまだまだISの初心者なんだ。だからこそ、伸び代が大きい。クラス対抗戦は一夏にとっては良い経験になると思うよ?」

「その通りですわ、一夏さんはまだまだISの素人、これからクラス代表として代表戦などを通し、実戦の中で腕を磨いて頂ければ今以上に強くなれますから」

「い、いや……確かにキラとの試合は良い経験になったし、また試合とかはしてみたいと思ってたけどさ」

「それに」

「それに……?」

 

 他にも何か理由があるのか、と聞き返す一夏に、キラは女性なら誰もが見惚れる最高の笑顔を浮かべる。

 

「僕が面倒臭いって思ったから断ったんだ」

「それが本音かああああああああああああああああああああ!!!!!!」

「おりむー呼んだ~?」

 

 クラスメートの一人、のほほんさん(本名が本音)が何か言っていたが、それを華麗にスルーしてキラに詰寄る一夏だが、キラは変わらず微笑んでいるだけだった。

 

「い、いや! だからって何で俺!? つか、何でセシリアまで辞退するんだよ! やりたがってただろ!?」

「申し訳ございません一夏さん、私も今のままでは代表に相応しくないと思いまして……キラさんに教わりたい事が沢山ありますし」

「そ、それじゃあ……」

「他に立候補者はいない。大人しくクラス代表になれ」

 

 千冬の言葉がトドメとなり、一夏は絶望した。箒を見ても、気まずそうに目を逸らされてしまい、味方は誰一人としていない。

 

「そ、そんなぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

「だから、静かにしろ馬鹿者」

 

 最後に出席簿が一夏の頭に叩き落され、クラス代表を巡る争いは終結を迎えた。

 クラスは笑いに包まれ、キラもそれを微笑みながら見ていたが、ふとラクスがキラの裾を引っ張るのに気が付く。

 

「どうしたの?」

「明日の放課後、千冬さんがお話があるそうですわ」

「……わかった」

 

 それだけで、ラクスが何を言いたいのか理解出来たので、キラはそっとポケットに忍ばせてある“とある物”を服の上から撫でた。

 

「戦いが、迫ってる……そんな予感がするね」

 

 歴戦の英雄たる勘が、キラの脳裏で静かに警報を鳴らしている。まだまだ先の話かもしれないが、でも確実に迫ってきているであろう、戦いの予感。

 そんな予感を表には出さず、今はただ……クラスメート達の顔を、平和だからこそ見られる光景を、ラクスと共に静かに微笑みながら眺めるのであった。




次回は平和なお話、キラとラクスのカップル疑惑が真実に変わります。
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