戦争ゲーム   作:マンボー豆腐

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第3話

 

 

現実へと帰還したおれを襲ったのは、凄まじい虚脱感だった。

 

「ちくしょう…すごかった…」

 

おそるおそる、パンツの中を確認、よかった平常通りだ、濡れてすらいない。

 

ひと安心だがしかしながら、これはいけない、けしからんと強く感じる。

 

このままでは、いつしか現実をほっぽりだして、彼方で延々堕落した時間を貪るようになりかねない。

 

「よし、今日はもうやめにしよう!それがいい、健康的だ、健全だ!実に素晴らしく理性的、うん」

 

現実であのサービスを受けるには、いったいどこでいくら払わなければならないのだろうと考えながら、おれはゲームを終えるべくハードに手を伸ばした。

 

所詮は束の間の夢、よくできていようと、ゲームはゲームでしかない。

 

「ゲームなんかに負けないぞ!」

 

誘惑に負けることなく、健全なる生活を保つことこそ、固い理性を持った社会人としてのプライドである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「御来店ありがとうございます。今ならすぐに御案内できますよ」

 

「やかましい」

 

ゲームには勝てなかったよ……。

 

「おれは、彼女たちを抱きにきたんじゃない。かつてなくリアルな感触のもとで、空を飛び、情けのいらない敵を撃破する、その爽快感が忘れられなかったんだ。あと人類のためだ」

 

「またまた御冗談を」

 

「おい、勘弁してくれないか。ああ確かに気持ち良かったさ、快楽だけならばいままでの誰とも比較にならんさ、まさしく夢心地だったとも。おれも男だ、そこは認めざるを得ない」

 

「では何故、努めて忘れようとしたのですか、彼女たちの膚の感触を」

 

「きみ、おれの頭の中を覗くのは、少し遠慮してくれないか」

 

「戦闘に支障をきたす可能性がありますからして、拒否をいたしますわ」

 

「くそが。おれがきみの実体を捉えることができたなら、今頃正座させて説教だぞ」

 

「そしてそのままお仕置きですか、意味深な方の」

 

いらいらする、おれは自室のベッドに寝転んだ。

 

「すみません、からかいが過ぎたようですね。あなた様の反応が楽しくて、つい」

 

「なに?」

 

おれはその言葉に、半身をおこす。

 

「楽しくて?そういえば、きみは自らを戦闘補助知性体、とか言っていたな。だからおれはてっきり、きみがAIか何かかと思っていたが、まさかきみ、人間か?」

 

「いいえ、あなた様。わたしは人間とは言い難く、強いて表現するならば、情報生命体とでも言いましょうか。AIとはまた異なりますが、まあ、あなた様からすれば似たようなものでしょう」

 

「なんだそれは。今更だが、きみには人間同様の精神がそなわっているのか?」

 

「おおまかには」

 

「フムン。では、おれが彼女たちに対して抱えている負の感情を、理解できるのか?もしそうならば話は早い」

 

「負の感情、でございますか。愛をうたう彼女たちに対しての?」

 

「そのうたわれている愛が、問題なんだ。だってそうだろう、おれは、確かに彼女たちを作り上げた。しかし、それは外見などの一部分を、素の状態に書き加えた程度でしかない」

 

おれはNPCに、実在としての動き方を教えたはずがないし、ましてや臭いや体液の味や膚のハリや陰部の形状などなど、考えてすらいなかった点も大量に存在する。

 

「互いを知らないんだ、おれと彼女たちは。現実でも一目惚れだとか刷り込みだとか吊り橋効果だとか、そういった事例はあるにしても、彼女らのそれは異常にすぎる」

 

聞いたところによると、NPCは、自分達の意識も体も、ごく最近に発生したものだと自覚している。

 

おれが現実のようになったこの世界で、最初の任務に参加させられる前らしい。

 

「自我、と言うべきかはともかく、彼女たちにも個々の精神があるわけだろう。なのに、実質初めて会うおれのような男にのみ、嬉々として性を捧げるという。不気味だよ、はっきりいって。おれは王様でもなければ美男ですらない小市民だ。性交渉は恋愛か、一時の過ちか、さもなくば対価を払ってサービスしてもらうかだ。無条件で与えられるものではない、少なくとも現在の俺にとっては。だから気が引けるんだ、笑顔の裏が全くの未知だから」

 

金が目的ならば、話は早い、割り切って金額の交渉にのぞめるというのに。

 

「ふむん。なるほど、確かにほいほいとはいきませんね」

 

「そうだろう、そうだろう」

 

エロゲーではないのだし、無心に求められるほどの度胸もおれにない。

 

「安心の一助となるかはともかくですね、彼女たちがこうなった理由のひとつをわたしが仄めかしてさしあげましょう」

 

「いや説明をしろ」

 

「それは、プライバシーの侵害というものです」

 

「きみが言うか、それを。おれに対して」

 

「あはは」

 

「わはは、くそが」

 

「彼女たちは、あなた様に節操がないせいで、統一感に欠けます」

 

「ああ、たしかにな」

 

「その形も違えば、彼女たちの精神の元となる、あなた様のイメージもまた、多様です」

 

「そうだな」

 

「彼女たちは危惧しました、自分達の差異が必ず軋轢を生み、遠からずホームの維持に支障をきたすと」

 

「一応だが、彼女たちが個々に新天地を目指すとかの選択は」

 

「ありません、ここは切り離された時空間ですので、出入りには条件がつきます」

 

「そうか」

 

「そこで彼女たちは、散々に議論を重ねた結果として、あなた様を一種の指針としたのです。彼女たちに共通して存在する、あなた様に対する感情を利用することで、ホーム全体の纏まりを得たのです」

 

「ばかな」

 

「そうですね、しかし結果として彼女たちは折衝に成功していますし、彼女たちを調整する労力も抑えることができたので、わたしとしては問題ありません」

 

「ううむ、ではやはり、彼女らは無理を?」

 

「いえ、元々あった感情を増幅し、凍結したので、精神への負担は最小限といえます。し、彼女たちの好意は本物ですよ」

 

「あー、なんだろうな。こんなんで、安心してしまいそうな自分がいる。きみ、なにかした?」

 

「さて、どうでしょう。ただ、わたしの話を何故か素直に理解しようとするあなた様のソレに関しては、生来のものでございますよ、ええ」

 

「それは…いや、もういい、また今度にしよう。気が滅入ってきた」

 

「そんなあなた様に、ひとつ朗報でございます」

 

「ほう」

 

「勘違いしているようですが、あなた様を性的な対象と見ていないNPCも居ります」

 

「ばっきゃろう!」

 

そういうことは早く言って欲しかった、切実に、頼むから。

 

「いやあ説明が不足してしまいました、テヘペロというやつでございますなはははは」

 

こんちくしょうめ、彼女をぶん殴るにはどうすればよいのだ。

『CATシステム』の応用とかで、なんとかできないものか?

 

想像してみる。

 

――対海賊課だ!――

 

次元を越えてやってきた広域宇宙警察監査機構・対宇宙海賊課のラテルに撃たれ、アプロに喰われ、ラジェンドラに笑われてしまったところで、フムンなるほど、おれは考えるのをやめた。

 

 

 

< コラボステージ:沿岸部迎撃戦 >

 

 

 

深夜の欧州を飛んでいるのに、風情も何もありはしない。

 

ちらりと視線を横にしても、美しいはずの海は月明かりで辛うじてぼんやりと判別できる程度にしか見えない。

 

勿論、それはそれで美しいのだし、絵になるが、ヘルメットの暗視モードをオンにして眼下に点在する瓦礫の山をしってしまえば、ただただ悲惨だ。

 

そんな感傷をぶち壊してくれる美声が、おれの後席から聞こえてくる。

 

「ははぁ、それで今回はオイラの出番ってわけか」

 

コールサイン『チョッパー』の彼、モデルは『ACE COMBAT 5』に登場した『アルヴィン・H・ダヴェンポート』である。

 

彼は作中屈指のムードメーカーだったが、どうやら我がホームのNPCも陽気なアニキらしい、おれともすぐに友達のような感じになってくれた。

 

おれはチョッパーと共に、複座の戦闘機にて出撃している。

 

『F‐14D』だ、当然だな。

 

とはいえゲーム、現実のトムキャットとはまるで別物なのだろう。

 

しかも「さくら」の和風カラーリング、紫地のスペシャルなアレである。

 

「へっ、たしかにホームの連中ときたらよう、あっちこっちでアンタの話ばっかりだぜ」

 

「そうか。内容によっては、話題になるのは悪くないんだがな」

 

「まっ、俺はアンタをどうこうしようって気はないぜ。ただ、邪魔もできねぇから、そこんとこは勘弁な」

 

「ああ、もちろん」

 

嗚呼、出撃時に女性NPCがチョッパーに向けていた、あの眼といったら!

 

「ところで、なあ、どうすんだいあのウィッチ」

 

「そうさな」

 

現在、おれたちは、目標である大型ネウロイの出現を待っている状態だ。

 

作戦領域には飛行型どころか地上型すら見当たらないが、彼女によると、出るらしい。

 

人類側も、カールスラント北側から中心部への迂回攻撃を警戒しているらしく、夜間にも哨戒機をとばしているのだ。

 

「歌でもうたうか、案外仲良くなれるかもしれん」

 

「おっ、良いねえ」

 

とはいえ深刻な戦力不足によるものか、今夜の担当はウィッチがひとりきり。

 

なにかあれば応援がくるのだろうけど、今のところはウィッチに対して沈黙したままのおれたちを、遠巻きに監視しているだけだ。

 

高度と速度が違いすぎて、接触ができないというのもあるだろう。

 

最初に彼女が、人類の味方であることや、大型ネウロイ出現の可能性大なりと伝えてくれたらしいのだが、ウィッチや上司も頭をかかえているのかも。

 

「オホン、では一曲」

 

「よっ、まってました」

 

せっかくだからウィッチにも聞こえるようにして、チョッパーの美声を楽しんでいたら、ヒステリックな叫び声。

 

「―――!!」

 

悲しいかな、おれには意味がわからない。

 

しかしチョッパーには通じたようだ、流石、英語音声付きゲームが元なだけある。

 

「――」

 

「―――!」

 

だからぁ味方だっつってんだろうが、なら所属を言いなさい、だから宇宙人だって、ふざけないで!(以下繰り返し)

…みたいな感じではないかと、想像を膨らませていたおれは、突然レーダーがとらえた反応に気付き、割り込む。

 

「チョッパー、これじゃないか?」

 

「なあ、俺にはこいつ、地上目標に見えるぜ」

 

「おれもさ。けど違うのならなんだ、こいつは」

 

「ご安心くださいまし」

 

彼女だ、なんだ?

 

「それは確かに今回のターゲットにございます」

 

「―!?」

 

「とりあえず、嬢ちゃんには逃げるよう言っておくぜ」

 

チョッパーが、きっと英語なのだろう言語でウィッチに語りかける。

 

おれは目標に向けて出力全開、兵装の安全装置を解除。

 

「しかし、聞いていたのは飛行型のはず…んんっ!?」

 

ゼロから一気に高度が上がった。

 

どうやら目標は飛び上がったらしい、めちゃくちゃだ。

 

「あなた様、ターゲットは地下から出現し、ほとんど垂直離陸をしたようです」

 

「「ウソだろ…」」

 

チョッパーと驚きの声が被る。

 

「そりゃ、人類が苦戦するわけだぜ」

 

さてどうしたものかと、つい操縦管から手をはなして頭…というかヘルメットを叩いた、その瞬間。

 

「あなた様!」

 

甲高い電子音。

 

敵から狙われている、という警告。

 

 

「あ」

 

 

機体を動かす、その前に、視界は赤い光で満たされた。

 

 

「っい゛」

 

 

映画のような叫び声など、とても出せない。

 

真っ黒だ、何も見えない、瞼や眼球がそもそも消えた気がする。

 

声どころか息ができない、喉が溶けてくっつく感触。

 

四肢は、どこかに行ってしまったらしい。

 

なにもできない、考えることすら。

 

おれは……。

 

 

 

 

 

「ご安心ください、あなた様」

 

 

 

 

< 任務失敗:強制帰還 >

 

 

 

 

 

 

「…あ、は、あああっ!?」

 

 

気が付けば、必死に声をしぼり出しながらもがいていた。

 

「お父さん、おちついて!」

 

「パパ、パパ!」

 

強引に、柔らかいモノがおれをおおった。

 

息が、息をしないと、息が……呼吸が、できる?

 

「はっ、はっ、はっ、はっ」

 

「大丈夫よ、大丈夫だから」

 

音がきこえて、光もあって、鼻も使えるし、指に力を込めることができる。

 

なんだこれは、どういうことだ?

 

「あなた様」

 

だれだ、いや、彼女だ。

 

「御安心ください、あなた様は、生きています。怪我のひとつもないです」

 

「パパ」

 

おれの背中が、優しく撫でられる。

 

この手つきは覚えがある、たしかそう、ナナ。

 

「お父さん」

 

おれの頭が、丁寧に撫でられる。

 

この手つきは覚えがある、たしかそう、サヤカ。

 

 

「ご安心を、あなた様。言いましたでしょう、死ぬことはないと。あなた様はちゃんと生きておいでです」

 

深呼吸を繰り返すこと…どれくらいたったか。

 

少し落ち着いてきたおれは、ここが医務室のベッドだということを、遅蒔きながら認識した。

 

心底心配そうにおれを見守るナナとサヤカ、その他数名のNPCたちに自然と感謝しながら、おれは彼女の声に耳を傾けた。

 

「おい、これはその、どうなっているんだ」

 

「あなた様は先程、ネウロイの攻撃によって非常に死に近い状態に陥ってしまい、ホームへ強制的に帰還、あちらの時間も停止中で、現在は再出撃のための準備期間となっております」

 

「死んだんじゃないのか」

 

「いいえ、あなた様。死ではありませんし、あなた様という個体の同一性、連続性はキチンと保たれておりますよ」

 

「よくわからんが、とにかくおれは生きている、そうなんだな?」

 

「そうです。では、再出撃についてですが…」

 

「まて、そういえば、彼はどうした」

 

それにはナナが答えてくれた。

 

「パパ、あのひとはコッチ」

 

 

案内されるがまま…といっても同室だが、奥のカーテンで仕切られたスペースへと誘導される。

 

 

「こりゃあ…」

 

なかに入ると、大量のシリンダーが整然とならび、その中のひとつで、彼は眠っていた。

 

「どうなってる」

 

彼女が答えた。

 

「治療中と考えていただければよろしいかと。任務中に脱落したNPCはこのように、あなた様が任務を成功させるまで眠りにつくのです。任務が成功すれば、すぐに復帰いたします」

 

思わず足腰の力が抜けてしまい、へたりこみそうになったおれをナナが支えてくれた。

 

やわらかで、良い香り。

 

「では、乗っていた機体は?トムは、死んだのか?」

 

「そちらについても、ご安心ください。消滅などしていませんし、現在修理中のようなものでございます。任務が成功したあかつきには、まったく同じ状態に戻ります」

 

大きな、大きなため息。

 

「では、再出撃についての説明を行いますが、よろしいですか」

 

おれはナナに支えられ、ベッドに戻りながら、説明をきいた。

 

そして、ついでとばかりに、おれとほぼ同じタイミングで、あのウィッチも撃墜されたことを知らされた。

 

「死んだ、のか」

 

「いいえあなた様、ご安心ください、まだ間に合う可能性がございます」

 

 

 

 

 

< 再出撃 コラボステージ:沿岸迎撃戦 >

 

 

 

 

空は、高くなるほど暗くなる。

 

宇宙に近くなるのだから当然で、しかし実際、現実といっていいほどに現実的な感覚で漆黒から群青を見下ろしていると、そんな当たり前のことが世界の真理におもえるほど神秘的にうつる。

 

「雪風、こちらアークバード。現在の状況を報せ」

 

「アークバード、こちら雪風。目標と交戦中、敵の射出した小型ネウロイ殲滅は間も無く完了」

 

遥か下方にいるはずの『FFR‐41MR メイヴ』に乗り込んだナナとサヤカと、この機体を操っている男性型NPCの、おれが解るように行っている会話を聞きながら、とても大きなこの機体にしては狭く感じるコクピットの一席で、ややアナログな印象の操作パネルを凝視する。

 

「チキンブロス」

 

副操縦席に座る別の男性型NPCが、おれに声をかけた。

 

「まもなく大気圏に突っ込む。照準システム、起動せよ」

 

視界のアナウンスに従い、スイッチオン、ディスプレイに

大型レーザー砲の状態などの様々な情報と、現地の地形図とシンプルな照準用カーソルなどが表示。

異常無し。

 

「起動した、システム正常」

 

「了解、下降開始」

 

大気機動宇宙機『アークバード』が、その白い巨体を沈ませてゆく。

 

大気圏を利用して、目標である大型ネウロイのいる方向へと、優雅かつ迅速に滑る。

 

「アークバード、こちら雪風。目標のコアの位置を特定した」

 

声と同時に詳細な情報が送られてきた。

 

目標の機体先端からやや後ろ、内部のある一点が、再生時のみ急激な温度上昇をし、目標にながれる微弱電流も、電磁波などにも変化がみられ、その他、現時点で収集したあらゆる情報が、そこにコアがあると言っているらしい。

 

「アークバード了解。チキンブロスへ、照準開始せよ」

 

「了解」

 

視界のアナウンスにしたがい右手のマウスらしきものを操作、ほんの僅かな動きで大きく動くためにシステムの補助があるとはいえ慎重にカーソルを動かして、シンプルに表示された目標の点へと動かす。

 

「チキンブロスへ、射撃開始ポイントまで、10秒」

 

動かしながら右手の人差し指のボタンで画面の表示の縮尺を細かく調整、巨体ゆえか雪風がうまく誘導しているのか、単調な動きの目標の小さな小さなポイントへと、カーソルを合わせた。

 

「7、6…」

 

左手の、発射操作用のグリップを握り直し、側面についているセーフティーレバーを親指で弾くように解除。

 

カーソルをぴったり重ね合わせ続けようとするが、焦ってずれる。

 

深呼吸、瞬きも忘れ、集中。

 

再度、しっかり重ね合わせる。

 

左手の親指でロックボタンを押し込み、システムに追従させるが、ちょっとしたことでロックが解除されてしまうので、こんどはおれがシステムを補助するかのように操作し続ける。

 

「3、2…」

 

トリガーに、そっと指をかけて。

 

「発射!」

 

発射。

 

 

自動で、一定時間まで照射は続けられる。

 

しかしおれは気を抜くつもりはない、指は離すが手は添え続ける。

 

様々な波長の光をとらえる望遠カメラが、遥か下の様子を映し出した。

 

モノクロに立体化されたその中で、目標の大型ネウロイは、アークバードの照射しているレーザーで貫かれている。

 

「アークバード、こちら雪風、命中を確認した」

 

コアがあるとおもわれる点を中心に、見事ポッカリと大穴が空き、さらに下の地面の一部がガラス化した。

 

「レーザー砲、冷却開始、エネルギー再充填中」

 

「安心しろ、チキンブロス」

 

優しい声に、酷使した瞳から涙が滲む。

 

「アークバード、こちら雪風、目標の撃破を確認した」

 

ディスプレイに、崩壊し、砕け散ったネウロイが映っている。

 

「なあ、きみ」

 

「なんでしょう」

 

「成功か?さらに増援とかは?」

 

「ありません、成功ですよ、あなた様」

 

ふっと、力が抜けるがしかし、間髪入れずに指示しなければ。

 

「シー・ゴブリン!」

 

「まかせろ旦那!これより墜落地点に向かう!」

 

ネウロイからなるべく離れた丘の影に潜んでいた、架空の救難ヘリ『HH‐9B』に乗り込んだ海兵航空隊のチームが、まだ辛うじて生きているというウィッチの元へ全速力で飛び立ち、駆ける。

 

その様子をカメラや雪風のもたらす情報で見守り続け、やがて通信機から、今にも消えてしまいそうな、か細い少女の声。

 

「―?」

 

当然ながら、意味は不明。

 

しかしながら、命をとりとめた少女の言葉を、彼女が通訳してくれた。

 

「ありがとう」

 

「あの宇宙人の御二人は、どうなりましたか?」

 

おれは無意識にヘルメットに包まれたままの頭を抱えながら、天をあおいだ。

 

「その娘に伝えてくれ、二人は…おれと彼は無事だと。またいつか、あらためて自己紹介をしようじゃないか、と」

 

「かしこまりました」

 

 

この気持ちは何だろう、達成感か、爽快感か。

 

足が震えるのは、安堵だろう。

 

限りなくリアルな死の恐怖を味わわせてくれたネウロイを撃破したからか。

 

おれは今後、まともにネウロイと相対できるのだろうか?

 

よくわからないままで、人類とネウロイの闘争に参加していることに今さら恐れおののいているおれを乗せて、アークバードは上昇を始める。

 

「ご安心ください、あなた様ならば、すぐにでも恐怖に打ち勝てますよ」

 

きっと彼女は何かをするのだろう。

 

それに期待してしまっている、自分がいた。

 

 

 

 

 

 

 

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