※
< コラボストーリー:UFO研究倶楽部 >
※
カールスラントは…否、欧州全域は、ネウロイによってかつてない危機をむかえている。
もはやどこの戦場でも喉から手が出るほどに配備を望まれるウィッチたちは、貴重だからと出し惜しむ余裕などないために、次々と送り込まれていった。
彼女、エルザ少尉もそのひとりであり、数日前に地方都市上空で撤退戦の殿の一員として勇敢に戦った。
しかし、その日に体験した出来事を、ありのまま報告した…せざるをえなかった結果、エルザは『特別な任務にあたってもらうため』前線から一歩退いた
田舎の駐屯地に送られてしまった。
針葉樹林のなかに、簡易的な格納庫や施設を急造した、航空機の拠点としては必要最低限のものであり、防備も脆弱で施設の多くはテントですませてある。
そんな場所に送られ、少しでも人手が欲しいはずの前線から離されたことを不服とは言わず、直接的な戦闘でなくとも貢献できるのだからと、同じく駐屯地におくられた、共に地方都市上空で戦い抜いた者たちと、言い渡された任務や訓練に励んでいた。
今日も午前中から、与えられたばかりの偵察用機材を携行するウィッチと、予備機材などを抱えたウィッチ、護衛のための戦闘機2機による異種編隊が針葉樹林を切り開いて造った簡易滑走路から飛び立って行く。
エルザはその編隊を見送ったあと、そのまま滑走路脇に立ち、新たにこの駐屯地へ送られてきたウィッチを出迎える。
「ん……来たな、時間通り」
聞き慣れたストライカーユニットの駆動音。
滑走路は上空からでも分かりにくいだろうに、迷わず降り立ち格納庫まで走行した彼女にすかさず整備員が駆け寄り、軍用の四輪自動車に牽引された架台へストライカーユニットを固定、彼女が地に足つけるのをエスコート。
それに愛想よく礼を言ってすぐ、エルザの元へ駆け寄ってきて、二人は互いにカッチリとした挨拶を交わす。
ウィッチはうら若き乙女ばかりだが、それでもやはり軍人なのだ。
「では、シルビア軍曹。ついてきてくれ」
「はい、エルザ少尉」
エルザの案内で配属の手続きや駐屯地各部署への挨拶をしてまわったあと、ふたりは食堂として使われている大きなテントで昼食をとった。
メニューは軍用の缶詰ひとつ、ビスケット2枚、煮沸消毒された水。
「どうだ、ここの食事は豪勢だろう。清潔な水、豆の缶詰だけでなく、ビスケットもある。しかも2枚」
「本当だ、すごい!」
自然と手早く食べ終えてから、エルザはシルビアを宿舎に送り届けた。
ウィッチを含むパイロット用テントのひとつで、寝袋が並ぶなかに空いたスペースがあり、そこの簡易ベッドへシルビアの寝袋を敷くのだ。
「さて…案内はこれで終わりで、質問があればこの場で答えるのだが、その前にひとつ聞かせてほしい」
「はい、少尉」
「ここに送られた、ということは君も…遭遇したのだろう?怪異とも既存兵器とも違った未知の、飛行物体を」
シルビアは、思わず喉を鳴らした。
「遭遇…しました。あの、少尉も?」
「ああ、そうだとも。ここに集められたウィッチとパイロットは全員、遭遇している」
「そうなんですか!?」
「ま、御上の方々がどのようなお考えなのか知らないが、しかしこの状況、我々こそが鍵となるやもしれん」
シルビアは、キョトンと首をかしげた。
「参謀本部に、理解ある方が居てね、自分の叔父なのだが…その方が、非公式の倶楽部を発足したのだ」
「倶楽部、ですか?」
「活動目的は、君も遭遇した、未知の飛行物体を操る者たちとの交流だよ」
エルザは、ニヤリとした笑顔で手を差し出した。
「我々、UFO研究倶楽部は、同じ境遇である君の入会を切に求めている。なに、入会に際して特別なことは何もない、ただここでなら『宇宙人』とやらについて語り合っても気狂い扱いされたり、白い目で見られることは無いのさ。それにこれは、我々の『特別な任務』にも通ずることだよ」
シルビアは、何の躊躇いもなく、その手をとった。
「自分は、『宇宙人』と名のるあの人たちに、命を救われました」
予想以上の経験に驚き、エルザの目が見開かれる。
「あの人たちが何者なのか、ぜんぜんわかりません、でも怪我の処置をしてくれた彼らの手は暖かかった。着ているものや、身に付けているもの、乗っているものは何れも知らないものですが、でも彼らは自分にも解る言葉で優しく励ましてくれました」
握る手に、力がこもる。
「けど誰も、信じてくれなかったんです。大型ネウロイだって、彼らが撃破したのに…そんなことありえない、妄言はやめろって…」
「うん」
「だから、自分だけでも、いつかまた彼らに会って。勲章とかは無理だけど、キチンとお礼がしたいんです!」
「シルビア、皆が君と同じ気持ちだよ。歓迎しよう、ようこそ我らがUFO研究倶楽部へ!」
※
< コラボステージ:敵拠点強襲 >
※
おれは今回もカールスラントの上空を飛んでいる。
『ADFX‐01 Morgan』という架空の戦闘機で、搭載する兵器の火力は中々のものだろう、当ゲーム比では。
キャノピー越しに見下ろす、重苦しい雨雲の海の下では、ネウロイの攻撃に文字通り決死の覚悟で対処している、カールスラント軍の防衛線がある。
眼下といってもかなり離れているし、肉眼では当然見えやしないが、しかしディスプレイに表示される画像や、通信機が頼んでもいないのに拾い上げてくる音声によれば、今すぐにでも全速力で向かい加勢したくなる。
「いけませんよ、あなた様」
だが、もう何度も彼女に止められていた。
「わかっている」
説明された通り、確かに、彼らカールスラント軍からすれば味方かどうかも確信できないおれたちが突然参戦しても、戦線を維持するための高度な連携が乱れるだけで、それは物量を練度で抑えている彼らにとって致命的。
局所的にネウロイの数を減らしたところで、もはや反撃の余力が無い戦線の不利は覆らない。
だから、今回の任務は前線に押し寄せるネウロイではなく、その後方。
荒野に隠され、前線へネウロイを送り込んでいる、小規模な巣。それを攻撃するのだ。
「わかっては、いるんだがな…なんとかできそうに思えてならない」
通信機から聞こえてくる彼らの言葉は解らない、だが伝わってくるのだ、震えながらも立ち向かうその勇気が、あっけなく散ってしまう悲しみが!
「なに、いつも通りでよいのです、あなた様。モブキャラクターの声など、いつものようにストーリーを盛り上げるスパイスとして楽しめばよいのですよ、あなた様。いつもそうしていたではありませんか、ねえ、あなた様」
「…そうだったが、しかし…」
言いかけて、通信が入る。
雪風だ、スーパーシルフの、サヤカが操る。
「雪風よりチキンブロス、洞窟から地上型ネウロイが多数…いや無数に放出されています」
サヤカの声と共に情報が表示された。
強風のためか、必要性はあまりないと判断したか、はたまたあえて散布しないといったネウロイなりの策なのか。
とにかく有毒な霧が薄いため、可視光画像でも判別可能な、小さい丘の裾野にポッカリと空いた複数の穴から、蜘蛛を大きくしたかのようなネウロイがぞろぞろと這い出ている、らしい。
その他、不自然な電磁波が発せられていたり、規則的な振動音がしていたり、地表付近の大気の流れが周辺と大きく異なるなどなど。
雪風が妖精をも捉えるべく備えている高度な偵察システムが多角的に、巣の位置を突き止めたのだ。
「ここで間違いなさそうだな」
「雪風より全機、目標ポイントマーク、誘導準備完了」
視界に、目標である巣の位置を示す円形の線や相対距離などが表示され、ロックオン可能となった。
ちなみに蠢いている地上型ネウロイもだが、基本的には無視することになっている。
雪風も…FAF語なのだろう、効率を重視した情感の欠片もない英単語の連続のような文章で、おれの決断を促してきた。
そなえはできている、行動せよ、と。
「よし、では…チキンブロスより、爆撃隊、攻撃を開始しよう」
今回、まず隠されたネウロイの巣へ爆撃を行い、彼女曰く本体を炙り出さなければならない…らしい。
「ウォードック、了解」
「スケルトン、了解」
激しい戦いが予想されるため、今回は連れてくるNPCを増やし、複数のチームに分けてある。
そのうちの2つ、おれと共に攻撃するウォードックとスケルトンのリーダーからの返事。
ウォードックは『ACE COMBAT 5』に登場するキャラクターがデザイン元で『アルヴィン・H・ダヴェンポート』がリーダー、二番機は『ハンス・グリム』で。
スケルトンは『エリア88』に登場するキャラクターがデザイン元で、リーダーは『グレッグ・ゲイツ』、二番機は『バクシー・マローン』である。
四人とも戦闘攻撃機化させた『FA‐1 ファーン』に地中貫通型爆弾を搭載している。
おれは全機の現在位置と目標の位置を確認して、スロットルレバーを握る手に力を込める。
前に押し出すようなイメージ。
レバーは微かに動き、圧力を感知、機体はエンジン出力をあげた。
目指すは下方、遥か地上のポイント。
「パパ、グッドラック」
おれよりもさらに頭上で、今回は戦闘中の情報収集に専念しているナナが一言だけ伝えてきた。
チラリとふりかえると、一瞬だけキラリと反射光が見えた。
さすがは『メイヴ』とナナ、フェアリイ空軍が誇る妖精女王。
おれが見やったタイミングで機体を傾け、陽の光をとどけたらしい。
ヒュウ、ウォードックリーダーの口笛。
「やいやい、やい。お熱いこった」
さらにスケルトンリーダーのやっかみ。
「よせ、シリアスにいこう」
「そうですよ」
おれの言葉に、ウォードック2が同意。
「敵の戦力は未知数なんですから」
「しかしよう、若いの」
すかさず、スケルトンリーダー。
「気を張りすぎちゃいけねえのも、確かだぜ。力みすぎてちゃ、よけれるモンもよけらんねえ」
一理ある。
「ハーピーより全機、方位280ならびに320より飛行型ネウロイ接近、交戦に入ります」
『戦闘妖精少女 たすけて!メイヴちゃん』に登場する『ファーンⅡ』に似せたNPC、ミユキからの通信。
レーダーの表示範囲を拡大、遠いが、多数のネウロイがこちらへと向かっている。
しかし、コースは変えない。
巣への攻撃に際して、飛行型ネウロイへの対処はハーピーチームに任せているからだ。
ハーピーチームを構成するのは、ミユキが従える、複数の無人戦闘機、フェアリイ空軍の『FA‐2 ファーンⅡ』だ。
全力の機動を行えばパイロットを死に至らしめるほどの高機動性を誇るこの機体は、無人機としての運用が考慮されていて、人間の手で動かさずとも高度な戦闘を行える。
巣の周辺に飛行型ネウロイを近寄らせないよう、ハーピーチームは一切無駄なく、一子乱れず、飛行型ネウロイを叩き落としていた。
加えて、巣から出現するかもしれない飛行型ネウロイにそなえて、数機がおれたち攻撃チームの上を飛んでいるのだ。
確かに、肩の力を抜いた方が良いだろう。
「チキンブロス、ロック。ロックオン」
発射ボタンに指をそえて『MPBM(多用途炸裂弾頭ミサイル)』という、よくわからんがポリ窒素を主体とした効果範囲と威力に優れる架空兵器を発射…しようとした瞬間、猛烈におぞ気がはしった。
……巣からの対空砲火は未だ無い、蠢いている蜘蛛のような地上型ネウロイは、単純に射程外なのかもしれない、だが巣の方は?
「爆撃隊回避!回避!」
突如鳴り響いた、被ロックオン警告音。
同時にサヤカの叫び。
「ぬっ!?」
発射ボタンから指をはなし、機体をおおきく捻る。
直後、一条の赤色光。
「雪風より全機、目標、地表部に地対空砲を展開」
目標ポイントの周囲にぐるりと8つ、敵地上目標を示す、円形の線や相対距離、『AA GUN』などの文字が表示された。
「あなた様、上昇したほうが身のためというやつですわよ」
「そうらしいな」
上昇しながら、機体をかたむけ、地上に目を向ける。
ウォードックとスケルトンも、ビームを辛うじてかわしながら上昇していた。
「あなた様、爆弾やミサイルでは敵の対空砲に撃墜されてしまうかと」
「うん…チキンブロスより、ユキ」
おれは、上空で待機しているNPCを呼んだ。
前の任務の時と同じ『インフィニット・ストラトス』に身を包んでいる。
予定では、彼女らのチームの出番はまだなのだが…。
「予定を変更し、単騎で対空砲を黙らせてほしい、できそうか?」
「まかせてください!」
言いながら、ユキは一瞬で加速、音を置き去りにして、螺旋状に降下していった。
ユキの姿が、視界の隅に小さく表示される。
盾を前面に構え、時にビームを受け止めながらも、その小柄な体格からは想像もつかない勇敢さでもって、ほとんど減速せず地表へと到達。
「ひとぉつ!」
まるで植物の蕾のような対空砲を、速度が乗った脚部で踏み潰し。
「ふたっつ!」
間髪いれず次へ、手にしたビームライフルで撃ち抜き。
「みっつ!」
近くにいた地上型ネウロイがビームを放つより前に、氷上をすべるような機動で次の対空砲へと向かい、撃ち抜く。
「よっつ!」
対空砲がユキへとビームを撃つが、盾で防がれ、カウンターに被弾、爆散。
「いつぅつ!」
ユキの速度は衰えない、すれ違い様に盾で殴り付け、打ち砕く。
「むっつ!」
被弾位置を予想、踊るように半身をひねってビームを回避、曲芸的姿勢でビームライフルを発射した。
「ななぁつ!」
足元狙いの着弾、しかしISお得意の直角に曲がる回避機動、地上型ネウロイはユキの未来位置を予測しきれず、ビームライフルの発射をゆるしてしまう。
「やあぁっつ!」
眩しい笑顔で、ユキは対空砲を蹴り抜いた。見事、対空砲は爆発四散。
「はは…すごいな」
おもわずこぼれたらしい、スケルトン2の声。
「ありがとう、ユキ。戻ってくれ」
「えへへ…がんばりました!」
「よし、爆撃隊、つっこむ。ウォードック、スケルトンは予定通り時間差だ」
「まってました!やるぞ、グリム!」
「了解です!」
「さっきは出鼻くじかれちまったからな」
「つぎはこっちの番だぜ」
ガラあきの目標へ、アフターバーナーをたいて、全速力。
すぐにロックオン。
「チキンブロス、発射」
重たそうなMPBMが、まっすぐ目標へ向かう。
すぐに機体を傾けながら上昇、念のための回避機動。
フェアリイ空軍の空対空ミサイルにくらべれば、ずいぶんゆっくりに思えるが、さほど間をおかずに着弾、起爆した。
「うっ!」
凄まじい規模の爆発、独特な白い爆炎が、バイザー越しにも関わらず、あまりに眩しい。
有毒な霧も吹き飛び、少し遅れて衝撃波、ゲームには無かった現象。
機体が揺さぶられる、だが、こちらはそれだけだ。
「うへ…随分と派手な花火だぜ」
スケルトンリーダーの呟き。
ちょっとした茸雲の合間に見えた地表には、大きなクレーターができていた。
「ウォードック、投下!」
「スケルトン、投下」
そこへ目掛けウォードックとスケルトンは、一斉に貫通爆弾を投下。
誘導され、コースを微調整しながら吸い込まれるように着弾、地中で爆発したために多量の土砂を巻き上げた。
「雪風より爆撃隊、目標健在、攻撃続行せよ」
サヤカの声を聞きながら旋回、違う方向からアプローチ。
「対空砲は?」
「沈黙しています」
と、サヤカ。
「ですが、油断しないでくださいね」
「もちろん…チキンブロス、発射する」
※
※
※