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エルザ達は、作戦に際して基本的に以下の編成でのぞむ。
ストライカーユニットに取り付けられた発電機を動力源とし、長時間の映像撮影が行える偵察機材を携行・操作するウィッチ。
予備フィルムと予備機材などを携行するウィッチ。
拳銃程度の武装しかないウィッチらを護衛する、通常動力の戦闘機2機。
この飛行隊は、映像をおさめたフィルムを無事に持ち帰ることを最優先とし、またウィッチの稀少性と生存性を考慮して、2機の戦闘機は囮の役割も与えられている。
与えられているからといってエルザは、囮になってもらう気など微塵もない。
勿論、フィルムは必ず無事に持ち帰るし、本当に最悪の場合は決められた通りにフィルムを持った者を最優先とする覚悟はあるのだが、しかし彼ら彼女らは戦友だ。
せっかく、絶望的な戦いを生き残ってきた仲だ、喪いたくないと強く思う。
思いながら、危険に身を投じなければならないのが辛いところだと、出そうになる溜め息をこらえるエルザは現在、シルビアと2機の単座戦闘機と共に、茸雲が立ち上る未知の戦場に向かっていた。
風が強いうえ、なれない機材と編成だが、この地域を覆っていた雨雲は徐々に流され、雲より下を飛んでいるエルザ達にも時折日の光が届くようになってきており、少なくとも撮影には好都合である。
「B4より各機、8時上方から不明機2、高速で接近」
前方、遠くに見える白く眩い爆炎や飛び回る機影を撮影しながら飛んでいたところ、B4と名乗る、隊の4番機である単座戦闘機から、他の3機へと通信。
方向を時計に見立てて、2機の正体不明な飛行物体の接近を報せた。
来たか、シルビアは思いながら、機関銃のように大きく重たいカメラを向ける。
「B2よりB1、2機のエンブレム確認。宇宙人です」
「B2、間違いないか」
「ありません、以前見たものと同じです」
「B1、了解。各機、接近中の2機への発砲を禁止とする」
2番機のウィッチであるシルビアは1番機のエルザへと、得意とする魔力を用いた視力の強化で、不明機…ファーンⅡに描かれたエンブレムが過去に見たソレと一致していることを伝え。
エルザは皆へ、攻撃しないよう伝えた。
(目的地が変更された時は何事かと思ったが、なるほど…運が良いのか、悪いのか)
程無くして、2機が「へ」の字形に並んで飛んでいるエルザ達の横に並び、同時に通信。
微かな雑音の後、初めて聞く若い女性の声。
「目的を言いなさい」
なんとなく冷淡かつ怜悧な印象。
空のルールなどまるで無視した、いきなりな問いであるが、だからこそエルザは宇宙人と確信を得た。
「ネウロイに関係すると思われる事柄を撮影している」
予め想定されていた通りに答えると、女性は沈黙。
エルザ達は息を飲んだ。
可能性の1つとして、いきなり攻撃してくることすら想像され、そうなれば自分達に祈る暇はあるのだろうかとすら考える。
(我々と同じ様な航空機ならば、ここまで考えてしまわずに済んだのかもしれないが…改めて見るとやはり、彼女達は恐ろしい存在だな。少なくとも、未知であるうちは)
すぐ近くに並んでいる2機の航空機は、以前に見た物よりもさらに奇抜で、いったいどうやって安定させているのかと言いたくなるような形状をしているのだ。
優美な曲線を描く胴体、それをのせ、支えているらしい複雑に組み合わされた幾枚の翼。
実験的に作られた複葉機など、機体形状の一部分だけならば、過去に例があるのかもしれないが、どれも超高速で高高度を自由自在に飛び回れる程の完成度ではないだろう。
しかもプロペラや飛行魔法でもなく、おそらくは後端から吐き出されている炎によって推進力を得ている。
何も知らず、これも怪異の1種と言われれば信じていただろう。
それに、何より、片方にはどう見ても、パイロットが居ないのだ。
同じであろう機体の、同じ場所に、片方は人影があって片方には無い。
(…そういえば、古代には魔力で動かす人形があったという話を聞いたことがあったな)
そんなことを考えていると、沙汰を伝える女性の声。
「主様から許可がおりた。我々に敵対しないかぎり、好きになさい」
言って、2機のファーンⅡはアフターバーナーを焚き、飛び去っていった。
気圧差が生じて白い雲を纏うほどの、急旋回をおこなって。
「許可、だとよ」
3番機のパイロットが溜め息混じりに言う。
「いや、それより見たか、あの機体。あれは、すごい」
興奮ぎみに、4番機パイロット。
「自分は航空機の設計を学んだことがある、だから分かるんだ。ちくしょう、いったい、どんな頭をしていたらあんな設計ができるというんだ」
「機体も確かに凄いがな、連中が使っている兵器も相当だぜ。あんな、敵を追っかけて爆発するロケットなんて、自分は聞いたことがねえ。あの青白い爆炎もだ、威力が異常だ」
3番機の言葉に、シルビアは空と陸を繋げて見せた光を思い出す。
「矛先がネウロイで幸いでしたね」
「まったくだな」
シルビアに同意しながら、エルザはふと、斜め上に視線を向ける。
(一瞬だが、光が反射した…)
その先、遥か高高度の深い色をした青空に、銀色と青色をした何かが見えた。
正確なサイズはともかく、船のように大きく、翼らしい翼は殆ど無い。
ネウロイでは無さそうだが、そうなると宇宙人の物としか考えられず。
(まさか、あれも?)
そんな馬鹿なと思いつつ、ネウロイという前例を思い返して、エルザはひきつった笑い顔。
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ひたすらに攻撃を繰り返し、眼下の地面はクレーターと土砂でスッカリ地形が変わってしまった。
「とんでもなく環境破壊だな」
現実では、戦争が野生動物などに与える影響を研究している人達がいるらしいが、この世界ではどうなのだろう?
それどころではない、といった感じだろうか、ネウロイが暴れまわっている現状では。
「なあに、連中をコテンパンにノシちまえば、いつか良くなるさ」
「俺もそう思うぜ、旦那」
スケルトンリーダーとウォードックリーダーの声に、ユキも加わる。
「戦争ですから、しかたないと思います!」
「ありがとう…」
言いながら、攻撃するべく機首を下へ向けた、その時。
「雪風より全機、目標が激しく振動している」
どうする気だ、口にする前に、視界の隅に様々な数値が表示された。
「なるほど、わからん」
「目標は、地上へ出るものと予想」
サヤカが続けて、ようやく理解。
「おい、きみ、きみが言っていたのは、これか」
「そうでごぜーますよ、あなた様」
「きみ、けっこう茶目っ気あるよね」
いや、そんなことより、つまりこれからが本番であるようだ。
「爆撃隊、退避!上昇して!」
「なっ、くそっ!」
地表の土砂が、数十ヶ所で起きた小規模な爆発により、突き上げられるようにして舞い上がり、そこからビーム攻撃。
「ぬわあああん!?」
我ながら情けない悲鳴をあげながら、フラッシュバックする恐怖に凍り付いてしまいそうな体を必死に動かして、回避機動。
上昇と加速をしながらの、右捻り、左捻り、グニャグニャと蛇行し、中途半端な宙返りをS字を描くように繰り返したりする。
「ぁひっ!」
しかし所詮は素人、片側の主翼が半分くらい吹き飛んでしまった。
こういう場合の正しい対処方など、サッパリわからない。
ただ、ほとんど無意識に操縦管を固く握り、機体の姿勢を保とうとする。
「う、うわ…」
鳴り響く警報、激しい振動。
「ご安心ください、あなた様、直に安定いたします」
「あっあっ…ほんとだぁ…」
「今回の場合ですと、操縦性に多少の悪影響はありますが、機体性能は殆ど変わりありません」
「つくづく、娯楽性を重視したゲームで良かった」
死ぬかと思った。
いや死なないらしいけど、死ぬかと。
「そうだ、皆は無事か!?」
おれは限界高度ギリギリまで上昇し、雪風が示した目標の予想射程を大幅に越えているが、ウォードックやスケルトン、それに待機している他のチームや偵察に来ているらしいカールスラント軍はどうなのだろうか?
「雪風よりチキンブロス、被弾した者は他にありません」
「え…ウィッチ達も?」
「はい」
「そうか…まあ、それは、良かったナ…」
ドジを踏んだのはおれだけという事でホッとしたところ、彼女が嗤った。
それも、ひどくわざとらしく
「ぷー、くすくす。一番無駄に動き回ったあなた様が、ぷふーくすくす」
「きみ、さぁ…」
茶目っ気だしすぎ!
「ええいクソ、目標はどうなってる」
「下を御覧ください、あなた様」
恐る恐る、機体をひっくり返して、視界の一部を拡大。
「あれか」
巨大なネウロイがそこに居た。
重厚な4脚に支えられた、亀の甲のような胴体から、2対の板状の器官が突き出ている。
顔らしきものは無く、どちらかといえば機械的。
所々、ぼんやりと赤く光るラインが走っている。
「フムン、もっとこう、架空生物めいた見た目を想像していたが。これはこれで、格好いいじゃないか」
「随分とでけぇな、適当に落としても当たるんじゃねえか?」
「確かに。スケルトン、ちょっとやってみてくれ、無理をしない範囲でな」
「よっしゃ、いくぜスケルトン2」
「あいよーっと」
軽い返事とともに、スケルトンチームはひっくり返るように急下降。
さらに最大出力で加速しながら機体を回転させ、不規則なコースで目標へ。
当然、目標はビームによる迎撃を試みる。
「ほんとよ、こいつ良く動く機体だわ!」
「まったくだぜ!」
だが、目標…というかネウロイのビーム攻撃は発射の際、僅かに予兆がある。
たとえば今回の目標は、発射直前、火点というか砲口へ幾筋かの細く赤い光をためるように集束させてから発射している。
ビームなので弾道は直線、狙いは正確。
発射する部分も、体表面のどこからでも撃てるように見えるが、実は定められた点からしか撃っていない。
なので、自機の位置や進行方向に対応した予想射線を表示することができる。
とはいえ当然、目標もビームの向きをある程度変えて命中させようとしてくるのだが、スケルトンチームは持ち前のクソ度胸で、針の穴を通るようにビーム攻撃をすり抜け、距離を縮めていった。
「ここだ!」
スケルトンが、遠すぎてロックオンできていない貫通爆弾を1発放った。
「よっ!」
やや遅れて、スケルトン2も。
自由落下していったそれは、目標に激突する前に、ビームで破壊されてしまう。
「けっ、野郎、しっかり撃ち落としやがった」
「爆弾じゃあ、ちと厳しいぜ」
「ありがとう二人とも。これでは、無理に爆撃しても仕方がないな」
「そのようですね、いやあ、困りましたね…どうしますか?」
ウォードック2の、全く不安そうでない口調のフリを受け、答える。
「よし…ケリはモゲラでつけるぞ」
嗚呼、一度言ってみたかったんだ、この台詞をドヤ顔で…。
「シルバーチーム、出番だ」
おれは、待機していたNPCたちに声をかけた。
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