インフィニット・デスロイヤル   作:ホラー

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総理の命令

 その頃、ここは国会議事堂。日本の未来を担う政治家達が日々、舌戦や反論、国民による意見や海外からの案件などで体力を消耗させながら話を繰り返していた。

 しかし、何れも打開策が見いだせないまま何日、最悪、何年も引きずることになっている。

 政治家達が無能だからではない、それぞれの思惑があり、国民を想う者、名声が欲しい者、中立の立場を取りながら隙を狙っている者が何人かいる。

 どうなるのかは、誰もに分からない。が、何れ、未来が、日本の未来が明るくなるのならば彼らの存在は必要だろう。一部を除いては……。

 

「ああ、分かった。ああ、マスコミには織斑一夏は一時的な事故を負い、命に別状はないと伝えてくれ」

 

 ここは、議事堂にある、とある一室。そこは高級感あふれるソファーや机、高そうな絵が額縁に入れられている。観葉植物、難しそうな、歴史がありそうな書類や本が入れられている本棚。

 しかし、それ以上に天井近くの壁には沢山の額縁が並べられるように飾られていた。何れも壮年の男性だが古い順からは白黒、茶色、最後はカラーといった写真だった。

 何れもバラバラであるが皆、この日本を背負い、何年も日本を支えてきた偉大な人物達だった。否、中には人望もなく、これと言った功績を残さず、心半ばで散った者もいるだろう。

 生きているかどうかも分からないが彼らは確かに歴史に残り、刻まれている。この日本と言う国のリーダー達、つまり、内閣総理大臣達。

 歴代であるが彼らの写真は今、この部屋に飾られているのは、この部屋が総理大臣の部屋だからだった。そして、この部屋には一人の壮年の男性がいた。

 紺色のスーツを纏い、凛とした表情で電話に対応している。政治関連、というわけではない。その内容は痛ましくも、日本全土を揺るがしかねない衝撃的な事件の内容だからだ。

 警察に任せればいいがそれはできない。彼にとって、重要なことかつ新たな問題でもあったからだ。彼は一通り伝えると、そのまま受話器を置いた。

 

「ふぅ……」

 

 男は椅子に凭れ掛かる。疲れた、と言う訳ではない。この問題を解決する案が無いかを考えていた。これは世界中が怒りに任せ、何をしでかすか分からない。

 同時に、ある問題を解決する案が遠退いてしまう。その問題はIS学園の生徒会の二人が懇願してきた問題。小さな問題ではなく、大きな問題。一人の少女を助ける為には外交しなければならない。

 もっとも、その問題は彼女の意見を尊重し、実行しなければならない。それ以上に最近、起きた日本の事件を片付けるのが先だと言うことも忘れていなかった。

 男はそれらで悩むが一人で解決できる問題ではないことを、彼自身も分かっていた。

 

「疲れているようだな、一義」

 

 近くから声が聞こえ、男は反応し、声がした方を見る。そこには一人の男が立っていた。全身黒いコートで覆われ、真っ白い顔をしているがスキンヘッド。しかし、無数の針を頭に刺していた。目も黒く、どこか不気味な男だった。

 

「よせよ……ピンヘッド」

 

 男は男を、ピンヘッドと呼んだ。その表情は険しく、怒りさえも感じる。

 

「私はただ、お前を気遣う発言をしただけだ」

「疲れているようだな? それだけじゃ、労る言葉とは言えねえぞ?」

「一義、それは別にいいだろう?」

 

 ピンヘッドは男を一義と言う。そして、一義。彼の名は藤間一義。この国の総理大臣である。彼はピンヘッドに対し、あることを言う。

 

「それより、貴様は先のことを知っているか?」

「……織斑一夏、瀕死の重傷」

「正解、まあ、俺たちにとって、最悪な展開だ」

 

 一義は軽く頭を抱える。一夏とはジェイソンを連れているプレイヤー。一義も同じプレイヤーであるが最悪な展開だった。織斑一夏は日本の、IS界にとっても重要な存在。

 彼は死にかけているが世界が黙ってはいない。日本もこのことを指摘され、忙しくなる。一義から見れば、脱落以前に国全体が大規模なデモが起きる可能性が高いのだ。

 その為には、一夏のことでマスコミや多方からの説明を一向に引き受けなければならない。嫌とは言わないが彼は。

 

「目の前にはプレイヤーが死にかけている。後ろ、つまり、後は問題しか残らない」

「ふん、お前がそう思っても、私はプレイヤーが減るのは好都合だ」

「……一言余計だ」

 

 一義は微かに怒る。ピンヘッドの発言は一夏が死ぬことを期待しているかのように思える。一義はそのことを指摘しようとしたがピンヘッドはある物を渡す。

 

「それよりも、これを」

 

 ピンヘッドはある物を取り出し、それを一義に投げた。一義はそれを受け取ると、眉間にしわを寄せる。

 

「これは……?」

 

 一義はピンヘッドに対し、訊ねる。それは紫色の、禍々しくも血の涙を流している髑髏のペンダント。不気味としか思えず、更には持つ者の性格を表しているようにも思えた。

 全ての持ち主が悪人でもなく、善人でもない者だっている。これは誰の者なのかは、一義には分からない。しかし、ピンヘッドがなぜ、これをもっているのかを気になっていた。

 

「それは、フレディのプレイヤーが持っていたISだ」

「なっ!?」

 

 ピンヘッドの言葉に一義は驚愕する。フレディと聞いて、誰かを思い出した。が、そのプレイヤーであり、ゲーム史上、快楽殺人鬼でもあろう夢見一彦はもう、この世にはいない。

 脱落した、敗死したと言い換えればいいだろう。それは昨晩であるが彼を倒したのは、殺したのは一夏でもなく、一美でもなく、一也でもない。

 殺したのは一義、否、ピンヘッドである。そう、一彦を殺したのはピンヘッドだった。昨晩の事件もそうだが、数人の殺人鬼を引き連れたのは彼だったのだ。

 あの痛ましい事件を引き起こした張本人に対し、死を与えたのは彼だったのだ。ピンヘッドは何も言わないが一義は軽く目頭を押さえる。

 

「ふぅ……仕方ないとは言え、また一人、脱落したな」

「ああ。が、お前から見れば、好都合か?」

「……まさか? それは違うな」

 

 一義は目頭を押さえるのを止めると、ISの物を懐にしまう。表情は険しいが何を考えているのかは彼にしか分からない。

 

「奴は許されないことをした。いくら子供とは言え、多くの人間を殺した」

「……子供達か?」

「子供達? 違うな、あれはクズどもだ」

 

 一義は辛辣なことを言う。総理大臣と言え、あるまじき発言だ。しかし、そう思われても、一義はそう思わないだろう。彼はいじめと言う物を嫌っていた。

 あの事件が起きても、世間が同情する者ばかりとは言えない。いじめと言うことが世間で明るみとなり、被害者ならぬ、加害者ともなっているのだ。総理とは言え、一人の人間だ。

 一義はいじめをしていた子供達に同情など、しなかった。彼の発言にピンヘッドはさすがと言わんばかりに何も言わない。

 

 「……それよりも」

 

 一義は何かを思うようにピンヘッドを見る。彼は無表情であるが頭に刺さっている幾つものピンが彼の不気味さを引き立てているが一義は訝しむ。

 

「他のプレイヤー達の様子は? 奴等が今、何をしている?」

 

 彼の言葉にピンヘッドは軽く頷く。

 

「今の所……否、今のお前には政が先だ」

「……そうだな」

 

 一義はゆっくりと立ち上がると、窓の方へと向かい、外を視る。外は青空かつ、街の風景がよく見える。此処は国会議事堂の上の階にあるからだ。しかし、彼は総理大臣としてでもあるが多忙を極めている。

 今の時間帯は休憩時間でもあるが僅かしか無く、一分一秒、無駄に出来ない。これが終われば、総理大臣としての藤間一義が再開する。総理大臣として、国を背負う者達を統べる者としての義務があった。

 彼はそれを重く受け止める覚悟もあるが今は休憩時間を有意義に使いたいかつ、一義個人としても望んでいる事だった。彼は窓の外を眺め続けているが何処か哀しそうで、何処か微笑んでいる。

 哀しい笑みとしか言えなかったが日本を思い、国民を思っているからだろう。一義は日本が好きだった。この地で生まれ、この地で育った。

 同時に日本を明るくしたい、不要な物は全てを排除してでも、日本と言う国を世界一、安全な国として認めてもらいたいのだ。

 しかし、この国は腐敗し、未来がどうなるのかも分からなくなっていた。一義はそれを良しともせず、日本を変えたい一心でゲームに参加したのだ。

 彼、藤間一義の願いは『日本を安全な国としたい』だった。その為には犯罪者でも容赦しない。一義はそう考えていたが彼は何かを思い出すように、ピンヘッドに命令した。

 

「ピンヘッド、織斑一夏のいる病院の、織斑一夏のいる病室に数体の殺人鬼を配置させろ」

 

 一義はピンヘッドに命令した。それは織斑一夏を守ると言う意味でもあった。本来ならば殺すはずだが守ることにしたのだ。彼は日本にとって希望か絶望かは分からないが今は守ることに専念させようとしていた。

 その言葉にピンヘッドは目をつぶるが、口を開いた。

 

「了解した。では、ナースやハントレスーー更にはレッドピラミッドを配置させよう」

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