あまり小説と言うものになれておりませんので、どうか温かい目で見て頂けたらと思います。
「何で追ってくるの!?アカリはただ食べ物探してただけじゃん!!」
太陽に照りつけられた砂の大地で、逃げ惑う少女は悲痛な叫び声をあげた。
もう、かれこれ10分は逃げているだろうか。
後を追う五頭の野犬は、むき出し牙で目の前の獲物をかみ砕かんと、うなり声をあげて追いかけてくる。
食べ物も無いこの砂漠での捕食者のしつこさはアカリも身をもって理解している。
命が掛かっているのだからそうなるのも容易に頷けるし、まったく仕方の無い事である。
だがそれはこちらも同じで、生きるためには逃げ切らなくてはならない。
しかし、人間の足と犬の足では勝負は目に見えている、距離はじりじりと詰められていった。
やがて、二頭が左右から距離を詰めて来た、両側から足止めして残り三頭で仕留める作戦だ。
ならば、とアカリは右方向へ進路を変えた。
野犬たちもそれに習う形で方向転換。
後2mに近づこうという所、野犬達はスピードを上げた。
あと数秒で牙が届きそうという所。
そこで、アカリは急ブレーキをかけた。
獲物の想定外の動きに思わずつんのめる野犬。
「悪く思わないでねっ!!」
振り向きざまの鼻面に、アカリは大量の砂をぶちまけた。
「ギャウンッ!」
悲痛な叫び声が上がり、三匹が大きく跳ねた。
視力を失った哀れな生物は、目に入った異物を取ろうと必死で前足で目を掻く。
残るは二頭。
涎を垂らした二頭は、うなり声を上げながらとびかかってきた。
「かかってこいやー!!」
アカリは背負ったザックを両腕に持つと、とびかかってきた二頭の横面にその側面を叩きつけた。
ガンッと大きな衝撃が走った。
モロに攻撃を喰らった二頭は盛大に吹っ飛び、地面に叩きつけられた。
きっと、脳震盪を起こしたのだろう、天と地の違いが分からなくなった彼らの足が、虚しく空を掻いていた。
「…はぁ……はぁ……」
もう追っ手は居ない。
命のやり取りの緊張から解放されたアカリは、ビリビリと痺れる腕でザックを背負った。
やがて日も落ちるだろう、そうすれば野良犬よりも危険な生物が出て来る。
そうならないうちに拠点に帰ろうとアカリは北東の方角へと歩を進めた。
~~~
太陽は既にその身を完全に隠してしまっていた。
さっきまで眩しい程に光を放っていた台地も、そのなりを潜める。
空に掲げられたまん丸い月の光照らされた砂だけが、キラキラとその名残を映す。
アカリは目の前には巨大な箱が鎮座している。
その箱中心に埋め込まれた黄色いパネルが薄闇をぼんやりと照らす。
アカリはパネルについた9つのボタンを順に押していった。
[→enter]
[welcome back!]
黄色いパネルは緑色へと変化し、電子音と共に扉が迫り出した。
やがて、扉はゆっくりと開いた。
「おかえりなさい、無事で何よりです」
同居人であるエイレーンが扉の先に立っていた。
ピンクがかった髪を黒いシュシュでまとめた彼女は、曇った笑顔と相まって、やや薄い雰囲気を醸し出している。
その口が、何かを言いたげに少し開く。
「ただいまぁ…エイレーン」
アカリは少しバツの悪い顔をした。
黙って出て行ったことに対してエイレーンはきっと怒っているだろう。
出迎えに来たのもそれに対して何かを言いたかったからか。
冷たい風が吹きつけた。
薄着のエイレーンはブルっと体を震わせると、アカリに室内に入るよう促した。
「座りなさいアカリさん、お説教です」
エイレーンは回転イスに腰掛けるとアカリにイスを出した。
ああ、きっとこの説教は長くなるな、アカリはげんなりした。
確かにアカリにもエイレーンの言いたい事は理解できる。一人で外に出ることはとても危険だ。
しかしそうも言っていられない状況であることも事実だ。
思えばエイレーンの説教を聞くのも何回目だろうか。
聞き飽きた説教がアカリの疲れ切った思考を睡眠へといざない始めた。
少しくらいなら寝てもばれないだろうか。
アカリはゆっくりと目を閉じた。
~~~
私がまだ小さかった頃
“普通”の家庭に生まれた私は様々な習い事をし、勉強し、“普通”の女の子として育った
毎日学校に通い
毎日友達と遊び
毎日夕方に道場で稽古をし
親の愛情を余すことなく享受していた
ごく普通の少女だった
異変が起こったのは私の誕生日の日
私は妹と凄く些細な事で喧嘩した
怒った私は家出をし
家の近くの“秘密基地”に逃げ込んだ
そこは災害時に使われる避難シェルタ―で、近隣住人共用の場所
エイレーン初めて出会ったのもこの時だった
1000℃の鉄球を熱するためには木造の家じゃなくてここじゃないと…うんぬんかんぬん
目が本気で何だか怖い人だと思ったのを覚えている
その時だった
突然大きなサイレンが響き渡り
茫然としている間に爆発音が響き渡った
かなり長い時間だった
私はパニックになり、エイレーンの背中にしがみついた
しがみつかれたエイレーンは何となく状況を察したらしい
息を潜め、辺りが静かになるまでじっと耐えていた
半日以上そうしていた気がする
でも、流石に外に出なきゃいけないからって
扉を開けた
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「起きなさい!」
頭に衝撃が走り、夢現から一気に現実に引き戻される。
「いった…うぅぅううう……」
「寝るとはいい度胸ですねアカリさん」
涙目で頭を抑えるアカリの前で、エイレーンは手刀を構えていた。
眉毛は少しつり上がり、眉間にもシワが寄っている。
「げっ…バレてた」
「ずっと前からバレています、お説教開始時から寝ていましたよね?」
「……えへっ…そこもバレてたの?」
ごまかす術が見つからいアカリは、何とかその場を取り繕うべくごまかすようにエヘッと笑う。
あからさまにごまかしきれていないその様子に、エイレーンは少し呆れた様子で溜息をついた。
「まあいいでしょうまずシャワー浴びてきてください」
「えっ?いいの?」
「はい、もう言いたいことは言い終わりました」
「やったー!!」
「終わったら循環装置稼働させてくださいね?」
「はーい!りょうっかぃぃぃぃ」
エイレーンの返事も待たず、アカリはシャワールームへと駆け出した。
器用にも服をその場に脱ぎ捨ててゆく。
「本当にお転婆ですね」
アカリの脱ぎ散らかした服を拾い集めながらエイレーンはポツリと呟いた。