ミライから来た少女   作:ジャンヌタヌキさん

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書き途中かもです


3.4話. [出会い]

太陽は既に地平線を潜っていて、遠くでは獣の唸り声がする。

 

無人のシェルターを見つけられたのは不幸中の幸いだった。

 

疲れ切った萌美は、硬いコンクリートの上に腰をおろす。

 

伸ばした脚が、待っていたかのようにピクピクと痙攣を始めた。

 

エイレーンの端末は、13km程先に赤い反応を示している。

 

「明日は長丁場になるね」

 

萌美は独り言のようにつぶやくと、手元のライトを消し、白外套を被るようにして眠りについた。

 

~~~

 

シンと静まり返ったシェルターの扉がゆっくりと持ち上げられる。

 

月明かりに浮かび上がった人影は、シェルターの中を物色しながら、ゆっくりと梯子を伝って降りてきた。

 

人影は、光の無い真っ暗な空間にゆっくりと降り立つ。

 

辺りは物音ひとつせず、人影の仄かに荒い息遣いが聞こえるだけ。

 

人影は手に持ったライトで周囲を照らしながら、シェルター内をゆっくりと歩きまわる。

 

壁際を照らす光が、地面に転がった白い何かを映し出した。

 

人影は訝し気にソレに近づく。

 

ライトがゆっくりと”ソレ”の全身をなぞるように照らしていく。

 

「っ!」

 

人間の足が光の中に浮かび上がった。

 

ライトの光が動揺したかのようにチラチラと揺れる。

 

呼吸音はもう聞こえない。

 

コンクリートと靴底の摩擦音だけが静かな部屋を反響する。

 

ライトは再び壁際の白い部分を照らした。

 

「なあに……?」

 

突如、ガバッという音と共に、ソレはめくれ上がる。

 

めくれ上がった先に、血の気の無い白髪の少女の生首が浮かび上がった。

 

「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

あらん限りの叫び声をあげた人影は、動揺のあまり手に持ったライトを床に落とす。

 

甲高い音を立てて落ちたそれは、カチリと音を立て、消えた

 

辺りは再び闇に包まれる。

 

震える吐息だけが辺りに響き、やがてそれをかき消すようにガサゴソと音が鳴った。

 

数秒間の沈黙。

 

そして、カチッという音が響き、ライトアップされた少女の生首が空中に浮かび上がった。

 

「いぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

再び絶叫が狭い空間を震わせる。

 

生首はゆっくりと口を開く。

 

「どなたですか?」

 

「………」

 

影は答えない。

 

「あれ?もしもーし」

 

生首(萌美)はライトを影へと向けた。

 

白目をむいたつり目に、つり上がった眉、そして半開きの口がぼんやりと浮かび上がる。

 

体躯が小さいわりに、顔は大人びており、女性とも少女とも見て取れる。

 

萌美は顔の前で手を振った。

 

「………」

 

反応なし。

 

「気絶しちゃったのかな」

 

萌美は踵を返すと、再び地面に横たわった。

 

~~~

 

外では今頃太陽が昇り始めただろう。

 

目を覚ました萌美は、深夜の侵入者には目もくれず準備を始める。

 

疲れは残っているが、それでも歩くには問題は無い。

 

「…おい…」

 

白外套を羽織り、ザックを背負った萌美は梯子に手を掛けた。

 

「おい!無視すんなお!!」

 

「あ、起きたんだ」

 

萌美はにこやかな顔で振り返った。

 

目を覚ましたらしい昨夜の侵入者が、少し怒った顔で萌美を見る。

 

「お前!おいらを見捨てて何処に行くんだお!」

 

「わかんない」

 

「わかんないって…」

 

萌美はポケットから端末を出すと、侵入者に向けた。

 

「今からここに行くよ」

 

端末に目を走らせた侵入者は、したり顔でニヤリと笑った。

 

「…やっぱり」

 

「ぅん?」

 

「このシェルターに居た時点で怪しいとは思っていたが、お前もオイラと同じ目的みたいだな」

 

「あ、そうなんだ、じゃあ一緒に行こう」

 

萌美はあっけらかんと言い放った。

 

「私萌美だよ、貴方は?」

 

「…お前、随分と物分かりがいいな…」

 

「だって協力出来るならした方がいいじゃない」

 

「単純明快だな、おいらはベイレーン、宜しく」

 

「宜しくね、ベイレーン」

 

ベイレーンから差し出された右手を、萌美は軽く握り返した。

 


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