ミライから来た少女   作:ジャンヌタヌキさん

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3.5話. [目的]

何キロほど歩いただろうか。

 

立ち尽くす二人の前には、大きなビルと、アスファルトの道路が伸びていた。

 

目を凝らすと白い人間らしきモノがごちゃごちゃとうごめいている。

 

「着いたのかな?」

 

萌美の言葉に、ベイレーンはコクリと頷く。

 

「ここだ、間違いない」

 

「そっか」

 

萌美は頷いた。

 

「じゃあ、ここでお別れだね」

 

「………え?」 

 

ベイレーンを置いて歩を進めようとした萌美の袖をベイレーンは慌てて掴んだ。 

 

「ちょ…ちょっと待つ、お!」

 

「?」

 

首を傾げた萌美に、ベイレーンは慌てた様子でまくしたてる

 

「お、お互いに協力した方が…」

 

「でもベイレーン何だか悪い事企んでいるでしょ?」

 

萌美の指摘にベイレーンはぎくりと固まった。

 

「い、いや違う!悪い事ではない、お!」

 

「じゃあ何するの?」

 

「何って……」

 

ベイレーンは何か言葉を探すように空を目で追った。

 

「あー……地球再生と言うか…」

 

「再生?」

 

「うん、そうだな…ええっと…お前、この地球に何で植物が生えないと思う?」

 

萌美は首を傾げた。

 

「全部燃えちゃったからじゃないの?」

 

「そうだな、全部燃えたから、ってのも合っているお」

 

「ふんふん」

 

「だが、正確には全部燃えていないんだお」

 

萌美は困ったような顔を見せた。

 

「べいれーん、もったいぶらないで教えてよ」

 

ベイレーンはいたずらっ子の様な笑みを浮かべた。

 

「宇宙にあるんだお」

 

「うちゅう?」

 

「そう、最近空から降ってくるようになった食糧があるだろ?」

 

ベイレーンが言うのは、食糧投下システムの事だ。

 

ごく最近、宇宙ステーションのネットワークを介して投下が知らされるようになった。

 

そのシステムのお陰で、萌美たちは何とか生きていられるのだ。

 

「そう言えば最近落ちて来るようになったね」

 

「そう、その食糧は何処から落とされるのか疑問に思ったことは無いか?」

 

「ないよ?元々備蓄してあるものを落としているのかなって思ってたもん」

 

萌美の答えにベイレーンはうんうんと頷く。

 

「そうだな、その説もあり得るが、おいらは別の仮説を立てたお」

 

「それって?」

 

「宇宙で植物が育てられているからだお」

 

「……へぇ…」

 

萌美はぼんやりと合図値を打つ。

 

”一体宇宙の何処に植物を育てる環境があるのか”

 

そんな疑問が、萌美の脳裏をよぎる。

 

ベイレーンは、そんな萌美の疑問を察したらしい。

 

「じゃあ、話を変えるお」

 

「遺伝子保管室と言う箱が宇宙ステーションにはあるんだお」

 

「へぇ?初めて聞いた」

 

「まあ、植物の種が一杯保管されてる箱だと思ってくれればいいお」

 

「ふんふん」

 

「で、おいらは考えた」

 

「土と水さえあれば、その箱を手に入れるだけで、前みたいに植物が生えて元に戻ると」

 

「うん、そうだね」

 

萌美は軽く頷く。

 

実に理にかなった話で、全く間違ってはいない。

 

「だから、宇宙ステーションのネットワークを通じてその箱を切り離そうとしたんだお」

 

「切り離せなかったの?」

 

「ロックが掛かっていて地上に落とせなかったんだお」

 

「ふぅん…」

 

「………で、おいらはそのロックを掛けた奴をログを辿って探したんだお」

 

「見つかったの?」

 

「見つかった、ロックを掛けたのはSolというシステムだったお」

 

「ソール?」

 

「そう、そしてそのシステムに縁のある場所が、あそこなんだお」

 

ベイレーンは活気に満ちた旧都市を見た。

 

萌美もつられてそちらを見る。

 

「オイラの目的は、あそこにあるコンピュータからソールシステムの情報を抜き取る事だお」

 

「ふぅん…」

 

萌美には何だか現実的では無い話のように聞こえた。

 

「乗り気じゃないようだな」

 

ベイレーンの言葉に、萌美はコクリと頷く。

 

「友達を助けるのを優先したいから」

 

「なら、その友達を助けるのをおいらが手伝うってのはどうだ?」

 

「だったらいいよ」

 

萌美の答えに、ベイレーンはふっ、と笑った。

 

「交渉成立だお、これから更によろしく、萌美」

 

「うん、宜しくね」

 

萌美は差し出された右手を軽く握った

 

「それで、何かいい策はあるの?」

 

ベイレーンは頷きながら、端末を取り出した。

 

「既にオイラの仲間が内部にいる、そいつと今から連携を取る」

 

「おっけー」

 

萌美は力強く頷いた。


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