ミライから来た少女   作:ジャンヌタヌキさん

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3.6話. [勧誘]

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目を覚ますと、見覚えのある顔が視界に飛び込んできた

 

紫色の瞳に、銀がかった白髪

 

「萌美…さん?」

 

少女は首を振ると、エイレーンに白い布の様なものを差し出す。

 

「あたしはヨメミ」

 

白い布を受け取りながら、エイレーンはあ、そうですか、と返す。

 

どうやら着ろと言う事らしい、エイレーンは素直にそれに従う。

 

「って…ここどこですか!!??」

 

白装束に袖を通しながら、エイレーンは激しくツッコミを入れた。

 

そんなエイレーンにヨメミは困ったように首を傾げる。

 

「まあ、とりあえずそれ着てから話そうよ」

 

「あ、そうですね」

 

ヨメミの言うがままに、エイレーンは白装束を羽織り、前をヒモで留めた。

 

「で、元の場所に戻りたいんですけど」

 

そう切り出したエイレーンに、ヨメミは首を横に振った。

 

「ごめんね、色々あってそれは出来ないんだ」

 

「えっと…」

 

エイレーンはふと空を仰いだ、それは出来ないという事はつまり。

 

「帰れないのですか!?」

 

ヨメミは頷く。

 

突然の帰宅不能宣言に、エイレーンはアタフタと慌てた。

 

「こっこまります!!私には帰るべき場所が…」

 

「ごめん、でも人類の為なんだ」

 

「へっ?」

 

エイレーンは、ヨメミが冗談でも言っているのかと思った。

 

しかし、どこからどう見てもヨメミの顔は真剣そのもの。

 

「ここはね、人類が生き残れるように保護、管理してるんだよ」

 

保護、管理。

 

まるで絶滅危惧種への扱いだ。

 

「我々はレッドデータブックにでも載ってるんですか…」

 

エイレーンはゲッソリとした顔で言った。

 

過保護にも程がある。

 

そんなエイレーンの言葉に、頷くヨメミ。

 

「あたしもそう思うよ、でもしょうがないんだ」

 

「しょうがないって……」

 

「じゃあ、植物も生えないこの世界で、どうやって生き延びればいいと思う?」

 

ヨメミの問答にエイレーンは、ええ…、と引いた。

 

「そんなの生き延びられないに決まっています」

 

植物の無い世界と言う事は、循環のない世界と言う事だ。

 

人間の出す汚染物が、やがて人間に害として降りかかる。

 

感染症が発生してしまったらそれで終わりだ。

 

「集団感染症のリスクを考えたら、集団生活なんて寿命を更に縮めるだけだと思うのですが」

 

ヨメミはフム、と考え込む。

 

数秒の熟考。

 

「……確かにそうだね」

 

あっさりと折れたヨメミを、エイレーンは驚いた表情で見つめた。

 

ヨメミは続ける。

 

「でもね、それは何十年も集団で生活したらの話だよ」

 

エイレーンは眉をしかめた。

 

「十年と経たずに死滅するという事ですか?だったら確かに…」

 

「逆だよ、数年集団生活するだけで地球は再生するの」

 

「………」

 

ヨメミの顔は、全く嘘をついている様には見えない。

 

「根拠を持って言っているんですよね?」

 

ヨメミはコクリと頷く。

 

「ここに居る人たちは皆納得して、ここに居るよ」

 

エイレーンはそうですか、とだけ言う。

 

「でも、私には帰らなきゃいけない場所があるんです、家族を見つけてから協力でもいいですか?」

 

ヨメミはコクリと頷いた。

 

「じゃあ、その前に詳しい話を聞きに行こうか」

 

ヨメミは立ち上がると、エイレーンについてくるように促す。

 

軽い溜息をついたエイレーンは、渋々と立ち上がった。


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