ミライから来た少女   作:ジャンヌタヌキさん

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3.9話. [再会]

「あー…お疲れ様です、こちらはあと少しで終わりですよ」

 

一息つきながら、エイレーンは入ってきた二人に声をかけた。

 

入って来るなり嬉しそうに手を振った萌実とは対照的に、手を縛られたヨメミは、少し悔しそうに唇を噛んでいる。

 

顔は似ている割に、対照的な二人だ。

 

「どう?調子は?終わりそうかな?」

 

「経った今終わったお」

 

やり切った表情のベイレーンは、軽く息を吐く。

 

「お疲れ様です、ではべノちゃん、そろそろ逃げましょう」

 

その言葉にべノはコクリと頷く。

 

「私が先導するから皆ついてきてね…」

 

なまなざしのべノは、顎で皆に付いてくるように促し、床に開いた穴にゆっくりと入ってゆく。

 

穴の先は暗く塗りつぶされており、微かに空洞音が鳴っている。

 

よほど広い空間が広がっているらしい。

 

「行きましょう皆さん」

 

エイレーンは闇の中へと足を踏み入れた。

 

~~~

 

「ミライ様、侵入者が数名紛れ込んだ模様です」

 

付き人の口から発せられた言葉はアカリの予想していた通りの言葉。

 

この辺りの難民はあらかた救助したと思っていたが、それでも足りないらしい。

 

「では連れてきてください」

 

その言葉に、付き人は深々とお辞儀をし、柏手を打つ。

 

すると、倉庫の面影が残る鉄の扉がゆっくりと横に開かれた。

 

扉の先には三人の姿、そのいずれも白い布を身にまとっている。

 

「入りなさい…」

 

鎖につながれた三人は、引っ張られる形で歩を進める。

 

アカリは思わず息を飲んだ。

 

三人組の中央の顔が、アカリのよく知る人物の顔だったからだ。

 

紅みがかった髪を二つ結びで肩に垂らし、白く抜けた肌にけだるそうな目。

 

エイレーンだ。

 

(生きていてくれたんだ…)

 

何度探しても見つけ出せなかった親友の姿が目の前にいる。

 

その嬉しさに、思わず腰を上げかけ、止めた。

 

愛は平等でないといけないのだ

 

自分が人を平等に愛さなければ、やがて均衡は崩れてしまう…

 

皆に悟られないようグッと堪え、アカリはいつものように余所行きの笑顔を作った。

 

「よくおいで下さいました、今から貴方達はここの市民です」

 

口からすらすらと常套句を流し、三人の目を平等に見る。

 

「これまで多くの辛い経験をなさったとは思いますが、安心して下さい、ここは…」

 

「アカリさん!!」

 

口から漏れ出る言葉を遮るように、悲鳴にも似た絶叫が辺りに響き渡った。

 

絶叫の主であるエイレーンは、恐怖の表情を浮かべ、こちらを見つめている。

 

「アカリさん?…アカリさんですよね…?」

 

シン、と静まり返った空間に、独り言の様な言葉が漏らされる。

 

アカリは喉の奥がギュッと縮こまるのを感じた。

 

覚えていてくれていたという喜びと、彼女を無視しなければならない苦しみ。

 

何とも言えない歯がゆさに、奥歯を噛みしめた。

 

「私はミライです、ソール様の化身」

 

目の前のエイレーンの酷く混乱した表情を浮かべ、こちらを見つめている。

 

(止めて…そんな顔で見つめないで…)

 

目を反らそうとするが、しかし反らしたくない自分もいる。

 

目をそらしてしまったらエイレーンは忽然と消えてしまうのではないかと、不安になってしまうのだ。

 

「……ソール様がこの世界を救済するまで、あなた方を見守るのが私の役目です」

 

「人類の救済のためにはあなた方が…」

 

「アカリさん!私を忘れてしまったのですか!?」

 

(駄目、これ以上は耐えられない…)

 

アカリは手を伸ばすと追い払う仕草をした。

 

「申し訳ありませんが、ご退去ください…」

 

その言葉に従うように、脇に控えた白装束がエイレーンの方を両脇に抱える。

 

「アカリさん!?ねえアカリさん!?これはどういうことですか!?」

 

必死に訴えかけるエイレーンの目に、胸の奥がズキリと痛む。

 

「……連れて行って下さい……」

 

両肩を抱えられたエイレーンは、力を失ったかのようにうなだれた。

 

だが、連れていかれるのは嫌なのか、駄々っ子のように身をよじらせ抵抗する。

 

が、抵抗虚しくやがて扉の向こう側へと姿を消した。

 

「……今日から貴方方は市民です、ソール様の言いつけを守って生活するように…」

 

アカリはそれだけ言うと、逃げるように席を立った。

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