エイレーン達が外に出る頃には太陽は既に地平線の向こう側を跨ごうとしていた。
日中は比較的生き物の少ない砂漠だが、夜はその限りではない。
砂の中や、コンクリートブロックの影に隠れていた動物達も、日が落ちれば獲物を探すために動きを活発化させ始める。
そんな彼らから身を守るための道具は無いのか?、というエイレーンの要求に対し、外に飛び道具を用意していました、と人口音声。
半信半疑で外に出て扉とは反対側を覗いてみると、確かに一抱え程の大きさの金属製の箱が落ちており、中には機関銃、ショットガン、ライフル等々が詰め込まれていた。
「まさかここまでの”飛び道具”とは…」
せいぜい弓、若しくは手投げ槍レベルだろうと高を括っていたエイレーンは、驚きを通り越して感動すらしていた。
「うわぁ…国境あったら今頃警察に捕まってるよぉ…」
後ろから覗き込むべノも若干引き気味だ。
銃とは無縁の人間からしたら当たり前の反応だろう。
もし、今が緊急事態では無かったら慌てて別物を用意するように求めていただろうが、今の状況では現実的に無理だ。
「照明弾、後はピストルですね、小回りが利くようにしましょう」
ガチャガチャと重い鉄隗を探り、エイレーンは照明弾を、べノはピストル持った。
威力の高いものでは無く、使いやすいもの。
この二年間で常人では考えられない程の適応能力が身についた二人は、無意識に最適な武器を選んだのだ。
「行こう、お姉ちゃん」
「はい、行きましょうか」
それぞれの獲物を握りしめた二人は、トラックの荷台に飛び乗り、腰を下ろす。
『では出発します、なるべく危険生物の少ないルートにしてありますが万が一もあります、十分に警戒をしておいてください』
運転席のスピーカーの音声に獲物をしっかりと握りしめた二人を乗せ、トラックはほの暗い砂漠の中を北東へと進んでゆくのだった。
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ガンガンと痛む頭を抑え、アカリは窓の外を仰ぎ見た。
既に太陽は沈み込んでおり、外は闇に包まれている。
そんな様子が、アカリには自分と何だか重なっているように思えるのだ。
「ぜぇ……はぁ……」
息をする度に喉に痛みが走り、全身は鉛の塊になったのかと思うほどに重い。
「明日までの命なんだから…」
そう言い聞かせるようにつぶやいた言葉が、部屋の中で虚しく反響する。
寂しい。
言い表すならその一言なのかもしれない。
日に日に心を締め付けてゆく感情。
その締め付けが急に強くなった瞬間、アカリはふいに涙が出そうになるのだ。
本当に、自分は何がしたいのだろう。
そんな事を思う自分が居た。
いや、正確には、そう思う演技をする自分がいた。
そう思う事で、自分は他人とは違って心が無いんだと自信に言い聞かせていたのだ。
分かっている。
そんな事をしたって何も変わらない。
心の締め付けは緩まないし、締め付けられた心も強くはならない。
でも、意地っ張りの自分は今の今までそんな事すら認めようとしなかった。
「どうして…?」
どうして死ぬと分かった瞬間にこの締め付けは強くなるのだろう。
寂しいって思ってしまうのだろう。
自分の奥底の気持ちが、そうしようとしているのか。
そうしなきゃいけないのか。
………
もし…
もしも寂しいって言ったら、この世界は変わるのかな。
この世界全てが夢の世界で、私は一人の皆と変わらない少女でしたって。
自由に笑って、沢山の人と笑いあって。
そんな事が……。
出来るのかな…。
「…寂しい…」
淡い期待に紡がれた言葉は、部屋の中に霧散した。
その言葉は誰の耳にも届かず、ましてや現実を夢にする事もない。
ただ暗い部屋に、”私”が一人ぼっちで
「あ…な……何で……今更……」
耳に届いた本当の感情が、奥底に眠る感情をチクリと突いた。
突かれた感情は膨れ上がり、さらに別な感情を刺激する。
負の連鎖。
湧きあがる感情。
気が付けば視界はぼやけ、地面に雫がぽたりと落ちた。
涙なんて流したってしょうがない。
そう言い聞かせても、壊れた涙腺は動きを止めず。
パンパンに膨れ上がった感情が、声となって身体から出ようとする。
もう耐えられない。
ぐじゃぐじゃになった思考は、リミッターというものをとうに失っていた。
気が付けば、大声を上げて泣く自分がいて。
そんな自分が赤ん坊のようだと、ぼんやり思う自分がいた。