爆発にしばらく唖然としていた市民たちは、やがてゆっくりと歩き出した。
「声が…」
流れる風の音に乗った微かな声。
その声に誘われて歩く様子はさながら眠りから覚めた子羊ようで、ぼんやりとした様子で一点に向かって歩いてゆく。
何千もの大軍。
それほどまでの数が一斉に1点に向かって歩き出したのだ。
そんな彼らを見つめる六つの目。
「あいたぁはあー、血がっ!」
「砂食べちゃった…」
「髪の毛焦げたお…」
へばりついた砂を全身にまとったベイレーンたちは、満身創痍と言った様子でボロボロになったトラックの下から這い出た。
地上約一キロ地点で芯を貫かれたミサイルは、落下しながら爆発。
幻覚剤が発火する程の熱量を持った爆風は幻覚剤を周囲に弾け飛ばしながら、地上を半径約500メートルの円状に撫でた。
「でもまあ、結果オーライだったな」
「うん、うまく広がってくれたし燃えずにも済んだし」
「うっはぁ!焦げくっさー!!」
極度の緊張から開放された三人は思い思いに伸びをしながら一仕事終えた様子を五感で感じ取る。
やがて均等に爆散した幻覚剤がその効果を徐々に発揮し始めるだろう。
そこから色々な手段をつかって彼らを宇宙エレベーターに乗せてしまえば良い。
そんな事をぼんやりと考えたベイレーンは、ふと空が暗くなっているのに気が付いた。
「あれ?」
思い違いかと首を傾げ、太陽の位置を確かめるようにぐるりと空を見回すがその肝心な太陽が見つからない。
「なんで…さっきまで青空がだったのに…」
通常ではありえない現象に、ヨメミも萌実も思わず身構え空を見上げる。
”何が起こったんだ”
そんな疑問が三人の頭の中に浮かんだ、まさにその瞬間だった。
地の果てまで震わせる程の地響きが鳴り、市民たちが一心に向いていたあの一点で、蒼くて眩しい光が空に”弾け飛んだ”。
その様子はさながら一筋の光の矢。
ただまっすぐで、それでいて強い輝きを持った蒼い光の帯は、黒く塗りつぶされた空を真上に貫き真っ二つに分断した。
『再生の時です』
微かだけどしっかりと聞き取れる程に鮮明な声。
芯の強い真っすぐな声に、頭がガンと殴られた様な衝撃が走る。
「アカリ…」
誰かが発したその言葉は空に霧散し、その先の言葉が脳裏でグルグルととぐろを巻く。
言われずとも容易に理解できる。
たった今、彼女ははるか遠い過去の先へ旅立っていったのだ。
蒼い軌跡を残しながら、力強く、跳び出していったのだ。
「綺麗…」
自分の口から発せられたのか、それとも他の誰かが言った言葉なのか。
そんな事すら考えず、その場の全員が見上げて釘付けになってしまう程に、天は美しい軌跡をその黒に浮き立たせていた。
『また、会いましょう』
耳に届いたその言葉を皮切りに、やがて蒼い光の帯は二、三、炎のように揺らめき、ガラスが弾けるように一気に弾け飛んだ。
きらきらと舞う蒼いきらめき。
やがてそれは緩やかに広がり、光のカーテンを映し出す。
「オーロラ…」
刻々と変化する優美な揺らめき。
蒼い光のカーテンは、やがて消える最後の最後まで、ただただ美しくその姿を映し出していた。