『アルデバランに向かってボックスは無事に射出されました』
何処からともなく聞こえた音声に、エイレーンは強張った肩から力を抜いた。
終わった。
そして全てが始まったのだ。
これからの未来、アカリは一人で世界を変えようともがき、残された自分たちも生き残るためにもがく。
そのスタートラインに立つための下準備を終え、人として生きるための可能性を探る旅が始まったのだ。
「あと何回、アカリさんは同じ世界を行きかうのでしょうね」
『あと……数回で済めばいいですね』
含みを持たせたシステムmiraiの言葉にエイレーンも何処か納得したように頷く。
「そうですね、ところで前回はどんな感じで?」
『前回は……』
「………」
『一人を犠牲に過去に送り出した…といいますか、コンピュータの代わりに一人を犠牲にしてやっと送り出しました』
「………」
『それ以前は更に酷い状況でした、そもそも彼女を送り出す理由も、最初の世界で生き残った唯一の存在だからってだけで…』
「つまり、貴方は全てを見てきた存在なのですよね」
『はい、そうですね』
「どうですか?世界はマシになっていますか?」
『ええ、少しずつですが…良くなってきています』
「そうですか…それは良かった」
安堵のため息をついたエイレーンはふと空を見上げた。
「アカリさん」
『なに…なんですか?』
「ありがとうございます、きっと私達は知らずに貴方に助けられていたんでしょうね」
『………まあ…そうとも言えますけど…』
「?」
『結局、大切なところで世界を変えたのは私では無いから』
「そう…なんですか」
『うん、歴史を変えて行ったのは全てエイレーン達だったよ』
「………」
『本当にギリギリ崖っぷちの勝負を、皆が勝ち取っていった結果なんだよ』
「そう…でしたね」
『でもまだ足りないかな』
「ええ、そうなんでしょうね…」
頬に手を当てたエイレーンはなんとはなしに目元を擦った。
「で、ここから先、アカリさんは何を?」
『私は……ここから先は手伝えない』
「それは…」
『今までは記憶の蓄積があったから大丈夫だったけど…この先は私も分からないから』
「未来が分からないから手のつくしようがないと?」
『そうだね、それもあるし…この世界はやっぱりエイレーン達のものだから』
「そうですか……それは…残念です…」
『うん、だけど皆を見守り続ける事は出来るから、だから………』
「………」
『だから……う~ん……なんていえば良いのかな…』
「まるで星のようですね」
『星……そうだね、私は星みたいなものだから』
『みんなに触れることは出来なくなるけど、でも時々思い出して欲しいな』
「ええもちろん、」
『………じゃあ、そろそろ』
「はい、またいつか」
『うん、またいつか』
「『きっとまた会いましょう』」