とある少年と救済の戦斧と完成品   作:征嵐

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 その少女の話をしよう。彼女は、かつて恋をしていた。

 

 

   ◇   ◇   ◇

 

 

 「マスター。準備はいい(G e t R e a d y )?」

 

 絹糸のような銀髪。髪と同じ銀色の、悪戯っぽい輝きを湛えた瞳。白と水色を基調とした、スレンダーな肢体を見せつけるドレス。彼女は、その全てを"美しい"と形容すべき容貌に獰猛な笑みを浮かべ、ほっそりとした美脚と腕に力を込め、背後に擁する少年へと問う。

 

 「あぁ、構わないよ···存分に。」

 

 少年は短く返し、脱力する。その瞳には、自分の立つ大地の遥か上方、天空を多い尽くす()()の群れが映っていた。蒼いはずの空は、羽虫の纏う、加護の付与された甲冑の色をしていた。つまり、黄金に光輝いていた。

 

 「いいね? グラム。打ち合わせ通りに。」

 「えぇ。予定通り、全て堕として合流するわ。」

 

 少年の体を銀色の液体が覆っていく。それは身体にフィットするように纏わりつくと、徐々にその暑さを増していく。最終的には、全身をくまなく守る全身鎧(フルプレート)となった。次いで、鎧の背中に切れ目が入り、三対の翼が生える。羽虫どもと数は違えど、揃いの色と形だということが、グラムとしては気に入らないが、少年には自力で飛行する術がないのだから仕方ない。

 

 「よし···GO!!」

 

 グラムが跳躍し、少年は飛翔する。羽ばたくという動作を要する少年に先んじて、初速のままに音を超えてグラムが羽虫の群れへと刺さる。

 

 ──羽虫、羽虫とは言ったが、それは彼ら魔界の住人から見れば、だ。客観的に、その羽虫はこう呼称される。「天使」と。

 天使とは、文字通り天の──神の使いである。単身で都市一つを滅ぼす存在であり、寿命による死を超越しているとされる。その群れ──軍が、かつては不可侵であったはずの魔界の空を覆っていた。もはや数えることのできない太古に成立した平和は、天界勢力の尖兵によって崩壊し、第三の世界であり中立地帯である人界も巻き込んだ大戦争となり、そして。

 

 「この戦いで、おまえ()を殺すッ!!」

 

 少年が吼える。グラムはその声を聞き、笑みを深める。

 

 「えぇ、いいわマスター!! 貴方の望みだもの。そうしましょう!!」

 

 クールなグラムらしからぬ喚声。戦場に酔ったのだろうか。

 

 グラムが一瞬で天使の群れを通り抜け──その布陣に大穴を開ける。大盾を持った天使が密集し防御陣形を取る前に、その腕を、その胸を、その首を、その翼を、その実体のすべてを切り裂いて跳び抜けた。開いた穴を他の天使が埋めるより速く、少年が飛び抜ける。彼が狙うのは天界、神の首級ただ一つ。追撃など無い。それを許さないために、グラムがここに居るのだから。

 

 「無粋よ、散りなさい。」

 「何っ!?」

 

 少年を追おうと羽ばたいた天使の悉くが、グラムの持つ禍々しくも美しい、枝分かれした刃を持つ大剣によって切り伏せられる。跳躍にしてはあり得ない長さの滞空時間の中で、振られた剣閃は一度だけ。羽を切られ、首を断たれた天使は、少年を追おうとした、かなり距離のある天使を含めて30人ほど。一撃多斬、一刀延鉄。秘奥の域にある剣技で以て、戦いの幕が切って落とされた。

 

 「さぁ、遊びましょう?」

 

 獰猛に笑い、音を置き去りに()()する。天使の持つ武器は決してその肌には触れず、グラムの持つ大剣の刃は一撃で複数の天使を墜とす。キルレートにすれば、その値は1:100では収まらない。だが、空を埋める天使の数は、それこそ万では収まらない。億か、兆か。殺しても殺しても補充され、空の蒼も、大地の緑も見えない。視界を埋める、加護の付与された武器防具の黄金が目に痛い。

 

 「···邪魔よ。」

 

 首のない天使を踏み台に、新しく踏み台を作る。手近な踏み台が無ければ、諦めて空気を蹴って加速する。

 

 だが、殺せども殺せども数は減らず、天使は怒り、攻撃は苛烈になる。

 

 「あれは空気を蹴って移動している。動きは直線にしかならん!!」

 「同胞の死を無駄にするな、動きを予測するのは容易いぞ!!」

 「はぁ···。」

 

 グラムは不満だった。天使の防具も武器もその肉体も、まるで斬り応えのない、神鉄とは思えない軟らかさ。斬り結ぶことも叶わないどころか、自分から接近することすら出来ない天使の技量。戦力分析もマトモにできない。そのくせ、数だけはやたら多い。マスターたる少年が、人間はどれだけ簡単で単純な作業であろうと、ドーピングしない限り30分で集中が切れる。それを強制されようものなら発狂すらしかねない、と言っていたのを思い出す。

 

 「面倒ね···。」

 

 もはや何度目かも分からない単調な動作で、グラムは跳躍する。30メートルほど空中を駆け、300人ほどの天使を墜とす。不意に、視界に煌めくものが映った。

 

 「捕ったぞ、魔剣──!!」

 

 グラムが胡乱な目を向けると、長剣を振りかぶる天使が居た。喜びと憎悪と殺意を宿した双眸には、グラムを殺したと確信したという光が乗っている。数十か、数百か。何度も繰り返せば、軌道くらい読めるようになるだろう。なって貰わねば困る。

 

 グラムは()()()()、その一閃を回避するとカウンターの一撃を叩き込んだ。

 

 「なっ···!?」

 「あれは···。」

 「悪魔か···!!」

 

 グラムの背中に生えていた小さな羽が成長し、そのサイズをグラム本人をも超えるものにしていた。空気を叩く音を立て、足場なく空へ立つ。

 

 「いいえ、違うわ。私は──龍よ。正確には、その因子が入っているだけなのだけれど。」

 「···総員!!」

 

 漆黒の翼をはためかせ、グラムが大剣を掲げる。隙だらけの動作だが、突っ込む天使はいない。どころか。

 

 「防護陣形、急げッ!!」

 

 盾を構えて密集しだす始末。これでは、もはや的にしかならない。

 

 「あら、撃たせてくれるのね。ありがとう。そしてさようなら。お別れよ。」

 

 グラムが一際愉しげに笑い──放つ。

 

 

 BLAZEDRIVE:完全世界ファーヴニル

 

 

 天使の群れが一掃され、空に蒼が戻る。今頃地上は大惨事だろう。降り注ぐ神鉄の甲冑の残骸と、赤い血液。文字通りの血と鋼の雨だ。肉体的にも精神的にも非常に危険だ。

 

 「さて、と。マスターと合流しなくちゃね。」

 

 羽を鳴らし、グラムが飛翔する。傍に居るべき主の下へ。

 

 

 

   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 「あぁ、あったわね。そんなことも。」

 

 遠い記憶を思い起こし、少女は一層、胸中の思いを募らせた。

 

 

 

   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 「マスターさん。」

 「ん? なに?」

 

 暗い地下道を、暗順応した眼だけを頼りに進んでいると、数歩先行していたジャガーノートが足を止め、さらに片腕を上げて静止の声を上げた。

 

 「···厄介ですねー。」

 

 ジャガーノートが戦斧を握る。苦笑に歪められた彼女の表情からは、焦りや恐怖は窺えない。むしろ、彼女の目は輝いている。宿る感情は、興奮か、高揚か。なんでもいいが、とりあえず。

 

 「さっきの奴?」

 

 もしそうなら、ジャガーノートがここまで感情を露にすることも、「厄介だ」などと漏らすこともなかっただろうが、一応聞いておく。ジャガーノートはやはり首を横に振ると、微かに振り向いた。

 

 「マスターさん。出来るだけ遠く離れてください。」

 「···は?」

 

 いつもの棒読みではなく、真摯に、真剣に懇願され、絶句する。

 

 逃げろ、と。今、彼女はそう言ったのか? 確かに僕は強敵に相対したとき足手まといにしかならないが、それでも、補助くらいは──

 

 「はぁ。言い方を変えますねー、マスターさん。···貴方は邪魔なのでー、取り敢えず逃げて貰えませんかー?」

 「···。」

 

 癪に障った。──勿論、嘘だ。 彼女が本気でここから離れて欲しいのは分かった。が、次の「邪魔だ」という言葉には、確固たる意思が籠っていなかった。籠っていなかったのは、「心」ではない。むしろ、罪悪感が多分に込められていた。彼女は、ここに僕がいると戦い辛いが、ここにいて欲しい。

 

 ···え、なにそれ。すごい悩むんだけど。僕としてはここで死ぬのは御免だし、僕が足を引っ張ってジャガーノートを殺すのはもっと御免だ。かといって、彼女の言う通りに逃げてしまっては、いざというときに『秘密兵器』を使えなくなってしまう。

 

 「マスターさ──」

 「──無粋よ、ジャガーノート。」

 

 言葉を重ねようとしたジャガーノートに、新しい声が被せられる。闇に沈んだ地下道の奥から、硬質な足音が響いてきた。

 

 「久し振りね、マスター。まぁ、貴方は覚えていないでしょうけど。」

 「きみ、は···?」

 

 通路の奥から現れたのは、白と黒を基調としたのドレスに身を包んだ銀髪の、「絶世の」と頭に付くくらいの、つまり、ジャガーノートに並ぶ美少女だった。

 

 「···衰えたわね、ジャガーノート。まるで、そこらの魔剣もどきのよう。」

 「そういう貴女もー、随分な劣化ぶりですよー?」

 

 旧友に会ったかのような口振りで、二人の少女が言葉を交わす。そこには敵意や害意の類いは一切なく、純粋に朋友との再会を祝い、戦友の弱体化を悲しんでいた。

 

 「全く、どこかの誰かに釣られたのかしら。以前のような力は、振るえそうにないわね?」

 「そうかもしれませんけどー···でもー···。」

 「えぇ。そうね。」

 

 苦笑いを浮かべていた二人が、一転して微笑を浮かべる。

 

 「悪くはないですよねー。」

 「悪くないわ。新鮮よ。」

 

 同時に言って、彼女たちは、いや、銀髪の少女が、音を置き去りにして加速した。

 

 「ッッ!!」

 

 銀髪の少女がいつの間にか手にしていた大剣を振るい、ジャガーノートが一瞬遅れてそれを戦斧の柄で防ぐ。金属音と火花を撒き散らしながら、なおも少女の会話は続く。

 

 「安心なさい、殺しはしないわ。」

 「なんの気休めにも、なりません···ねっ!!」

 

 ジャガーノートが戦斧を振るい、銀髪の少女を弾き飛ばす。──いや、弾き飛ばされる寸前に自分から跳躍していた少女は、ドレスを巻き上げて華麗に着地した。間合いは10メートルほど。地下道とはいえ横幅も高さも十分にあるこの空間であれば、両者の技量とコンディションが全てだ。

 

 「落ち着いてくれ、二人とも!! と、言うか君は誰なんだ!! 僕を知っているのか!?」

 「マスター···いえ、後にしましょう。この戦いが終わったら、という奴ね。」

 「そうですねー。マスターさん、どちらかが死ぬような事にはなりませんからー、余波に巻き込まれないように、離れていて下さいねー?」

 

 死亡フラグじゃないか···。

 

 「っ!!」

 

 次に先手を取ったのは、戦斧という長物を扱うジャガーノートだった。暴風を起こす一閃は、そのまま並の家屋を断ち切るほどの威力を纏って、銀髪の少女の首へと疾る。

 

 銀髪の少女は無言で大剣を掲げ、その禍々しくも美しい刃でそれを流し──いきなり軌道を変えた戦斧の刃をすら、弾いた。

 

 「流石に、この程度じゃあ取れませんよねー。」

 「···それで?」

 

 戦斧というフロントヘヴィな得物で、直撃寸前で軌道を変えるという短剣のような得物で行うフェイントを行使したジャガーノートの技巧。それを自身で「この程度」と評した本人も、「まだ本気じゃないのだろう?」と問う銀髪の少女も、互いの、そして自信の実力に失望しているように見えた。

 

 「この狭い空間じゃあブレイズドライブも使えませんしー、そうですねー。」

 「と言うか貴女、どうしてそんなに殺気立っているの?」

 

 ジャガーノートが思案に耽るより早く、グラムが口を開く。困惑したのは僕とジャガーノートだ。いきなり斬りかかってきておいて、何故も何もあったものではない。あったものではないが、確かに、この地下道において殺気を放っているのはジャガーノートだけだった。

 

 思えば、確かに大剣を持つ少女は、「殺さない」と明言していた。···じゃあとりあえず大剣を仕舞えと思った僕は間違っていないはずだ。

 

 「貴女こそ、いきなり斬りかかってくるなんて、どういうつもりなんですかー?」

 「ほんの挨拶──というか、確認ね。ジャガーノート、私は貴女を信頼していたのに。」

 「ッ···!!」

 

 意味の分からない、脈絡もない一言に、ジャガーノートが怯む。一瞬だけ明確な憎悪と憤怒をその銀色の双眸に宿した少女は、そのまま──腰を折った。

 

 「···?」

 

 ドレスの裾をつまみ、ふわりと持ち上げる。そのまま軽く脚を曲げて頭を下げる、宮廷儀礼に則ったお辞儀。じめっとした地下道であっても、背後に禍々しい大剣が突き立っていても、恋に落ちそうなほど綺麗な所作だった。

 

 「私は"魔剣"──魔剣グラム。貴方の帰還を待っていたわ、マスター。」

 「あ···っ?」

 

 セピア色の記憶が脳裏を掠める。彼女の愉快そうな笑顔、呆れた顔、澄まし顔、泣き顔、拗ねた顔、笑い声、泣き声、怒声。知らない筈の記憶が、一瞬のうちに流れ去る。残ったのは懐古の念──ではなく、疑問。僕は一体誰なのかという高次の、そして哲学的な疑問──ではなく、もっと単純な「どうしてこの少女は僕を知っているのか、さっきの記憶はなんなのか」という疑問だった。

 

 「···まだ駄目ね。それに、スキルの方もまだまだだし。」

 「えーっと?」

 「貴方が気にすることは別にあるでしょう? 探していた男はこの先よ。」

 「え、あ、うん。ありがとう?」

 

 走り出し──グラムの横を通り過ぎる。その一瞬で、グラムと魔力経路(パス)が繋がっているのが分かった。

 

 魔核と接続した覚えもないのに魔剣を従えるのは、これで2人目か。と、実感の持てない感慨を抱いてみたり。···あれ?

 

 「ジャガーノート?」

 

 ジャガーノートが付いてこないことに気付く。依然としてグラムと相対したまま、戦斧を握っている。

 

 「おーい、ジャガーノート?」

 「···。」

 

 こちらの声が聞こえていないらしい。彼女の双眸は、真っ直ぐにグラムを見据えており、その瞳には、未だ衰えない敵意を宿している。まぁ、ついさっきまで刃突き付け合ってた奴がいきなり仲間になっても戸惑うよね。うん。僕も戸惑ってる。だから諸々の疑問を押し込めて仕事に戻ろうとしてるんだけど。あのー、ジャガーノートさん?

 

 「···ジャガーノートさーん。ジャガノちゃーん。ジャガノー。」

 「···。」

 

 勝手に考えた渾名を呼んでみる、が、無視。つらい。

 

 いいもん···なんかグラムも動きそうにないし、二人も魔剣が居れば大体の敵はなんとかなるだろうし···。あ、敵はこの先に居るんでしたね。ははっ。

 

 「はぁ···。」

 

 気分消沈。しょぼーん。

 

 

 

   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 「殺しはしない、と、そうは言ったけれど。」

 

 マスターたる少年の背中が見えなくなってから、グラムはジャガーノートに向けてそう切り出した。彼に敵対していた男は既にミンチ。ジャガーノートを向かわせる必要も、自分が行く必要もないが故に、冷静に。ゆっくりと。そうしなければ、胸を焦がす激情が溢れ出てしまうから。

 

 「正直、自制も限界なのよ。貴女を壊したくて仕方がないわ。」

 「···。」

 

 ジャガーノートが戦斧を一層、その手が白くなるほど握り締める。

 

 「ねぇ、ジャガーノート。マスターが()()()()()のは、誰のせい?」

 「それ、は···。」

 

 グラムの目には憎悪が、そして、ジャガーノートの目には後悔が、雫となって溜まっていた。

 

 「ふぅ···ごめんなさい。」

 「···ぇ?」

 

 グラムが唐突に踵を返し、背中を見せて謝罪を口にした。ジャガーノートが瞠目するのに構わず、グラムは言葉を続ける。

 

 「あんなことが出来る魔剣は、貴女の他に数人しか居ないけれど···少なくとも、貴女の様子を見て、下手人が彼の魔剣じゃないってことは分かったわ。」

 「っ?」

 

 どうして断言出来るのか。そう目で問うジャガーノートに、グラムは笑って答えた。

 

 「同朋の仕業なら、憎悪とか憤怒を宿すモノよ。後悔に涙を流したりはしないわ。」

 「私がやった、とは、考えないんですねー?」

 「そう思っていたわよ? 貴女が彼を守ろうと、私の前に立つまでは、ね。」

 

 劣化の著しい状態で、かつて彼の右腕として暴威を振るったグラムの前に立った。グラムも衰えていなければ、数秒と保たずに魔核を砕かれていたであろう愚行が、主を守ろうとする意思に基づいていたことを、グラムは理解していた。それに、いくらジャガーノートが魔核を覚醒させようと、全盛期の主に害為すことなど出来はしないと、そう思い直して。

 

 「それで、誰の所為なのかしら?」

 「それ、は···。」

 

 

 

   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 「うげぇ···なんだこれ···。」

 

 グラムに言われた通りに道を往くと、切り刻まれて内容物を撒き散らした「人だったもの」があった。

 

 「死体···と、書類? というより何かのレポート?」

 

 運良く防水のカバンに入っていたお蔭で赤く染まるのを避けられた紙束をペラペラと捲ってみる。ははっ、意味わからん。というか暗号化? されてるでござる。数字しか書いてないもんこれ。乱数表か何かに照らさなきゃ···。

 

 「まぁ、順当に行けばこっちだよね···。」

 

 地下道の最奥にあった赤染めの部屋には、上に向かう階段があった。

 

 「いや、でも流石になぁ···。」

 

 本拠地に繋がってて、フル武装のお仲間と「あっどうも」する可能性がある以上、一人で行くのは不味い。というかマーガレットさん遅くなーい?

 

 「よし。待とう。」

 

 ジャガーノートとグラムが来るか、マーガレットさんが来るか。とりあえず一人じゃなくなってからにしよう。そう決めてから数分。仲良く談笑しながらジャガーノートとグラムが現れた。うーん、百合? ···うーん!? さっきまで殺気立ってたよね? ···あ、洒落っぽい。いやいや、そうじゃなくて。

 

 「お待たせしましたー、マスターさーん。」

 「この上に行くんでしょう? ほら。」

 

 すい、と、グラムが僕の左手を、ジャガーノートが右手を引いて歩き出す。

 

 ···仲良くなったのはいいことだよね。うん。はいそこ、無理やりいい話にするなとか言わない。

 

 「そういえば、マスター。」

 「なに?」

 

 振り向いたグラムが心底愉しそうに笑う。

 

 「本格的な、対魔剣戦闘の用意はいいかしら?」

 「···はい?」

 

 階段を上り切り、先にあった木製の扉をジャガーノートが叩き壊す。

 

 地下の暗さに慣れた目に、刺すような光が飛び込んできた。

 

 

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