真・恋姫無双~鈴々伝 作:硝石
私が鈴々となって数日経ったが、幸い少女の記憶と経験が遺されていたので部屋に置かれていた蛇矛を駆使することで苦労せずに狩りや採集を行うことができた。驚いたことにこの少女、動物の解体まで難なくやっていたようなのだ。現代では動物の解体をするのは一部の人間しかやることはないので非常に助かっている。
しかし、いくら調理ができるといっても調味料の数が少ないのが私の頭を悩ませた。私の住んでいるところは近くに小さな村しかないので、時折来る行商人から動物の肉等と物々交換で塩くらいしか得られない。そのためどうしても調理法が限定されてしまうのだ。
だが、一番私の頭を悩ませたのは食事のことではない。
「暇すぎて死にそう」
そう、この時代には娯楽の数が極端に少なかった。現代では当たり前に有るテレビやラジオ、漫画やゲームといった娯楽の数々がこの時代には全くない。無論、都市部や華の都洛陽などに行けば書物等は存在するのだが、こんな田舎ではそんなもの手に入ることはない。
学生時代にこういった時代には男女交際が一番の娯楽であったと何故かドヤ顔で語っていた教師がいたが、あながち間違ってはいなかったということだろう。
あまりの娯楽の少なさに絶望していた私だったが、一つ朗報があった。近くの村に住んでいる一人の老人が唯一読み書きができるということらしい。飯の種にもなるし何より暇つぶしにもなるだろうと動物の肉を手土産にその老人の家へと向かった。
「こんにちはなのだ。お爺ちゃん読み書きを教えてほし「嫌じゃ」
せめて最後まで言わせてほしいと思ったが、理由を聞くと真っ当な理由だった。
「どうしてなのだ?」
「儂はたとえ子供でも礼儀を知らぬものは嫌いでのう。それに何じゃその口調は!目上に対する礼儀がなっとらん!」
ようやく板についてきた鈴々節が完全に裏目に出たことを悟り、慌てて口調を直して頼みこむ。
「―失礼しました。私は張飛、字は翼徳と申します。どうか読み書きを教えて戴けないでしょうか」
「ふむ。及第点、というところじゃな。三日に一度、朝からここに訪ねて来い。お主の未熟な礼儀とともに鍛えてやろう。但し、来るときは儂の身の回りの世話をすること。よいか?」
「はい。よろしくお願いします、先生」
意外とすんなり了承してくれた老人に驚き、ただの頑固爺だと思っていた自分を恥じつつ、これからの生活に期待を膨らませていた私だったが、ある一つの考えが頭をよぎった。
(これから敬語と鈴々節の使い分けか…)
私は軽い頭痛を覚えた。