教会の白い死神~リメイク~   作:ZEKUT

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 初めての方は初めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです、ZEKUTです。
 今回リメイクにしたのは前作では少しばかり難しいと思う事が多々あったのと、何よりジーク平子さん枠無理と感じたからです。
 ていうか、このハイスクールD×Dで平子さんに近い人ほぼいないです。みんな個性的すぎぃ……。
 という事でリメイクしてしまいした。
 退屈にならないように多少内容を弄ってますので、良ければ是非読んでみてくださいです。
 


波紋

 場所は名も無い森林。人が寄り付かず、手も付けられていないこの地は札付きの者にとって隠れ家にするには絶好だろう。攻めるは難く、退くは易い。無造作に生え渡った樹木は視界を遮り、生い茂った雑草は足を遅らせる。逃亡戦には打ってつけ、そう算段を立て潜伏した。彼とて鬱蒼とした空間に長々と居座るつもりはなかった。一時の凌ぎでこの場を選んだに過ぎない。元は自身の喰場(テリトリー)で少々食い意地を張り過ぎ、それに感づいた教会が厄介な相手を自分に差し向けてきたことが原因となっている。おかげで動きづらく、碌に次の狩場を探すこともできない。そこで現在の喰場を放棄、しばし身を隠し捜査の網が広がり穴ができたところで、この場から去ってやろうと目論んでいた。

 

 しかし、目論見は容易く瓦解した。

 最悪の追手が目の前に現れたのだ。

 

 最初は索敵に引っかかった追手を殺し、そちらに気を取られている隙に逃走しようと画策していた。相手は一人、小隊なら分が悪いが、単独ならどうとでもなる。問題はいかに迅速に且つ痕跡を残さず戦闘を終了させるか、その一点のみを注視していた。

 逃走経路を頭に描きながら、軽やかな足取りで、のこのこ一人でやってきた相手の面を拝んでやろうと接近した時だった。己の失態を悟った。

 人ならざる力を宿し数百mの距離も鮮明に映す両眼は、一人の男を視認した。

 

 まず目を引くのは真っ白に染まった白い髪とそれを際立たせる白いコート、それだけを見れば巡礼者にも見えないこともないが、問題はその両手に握られたトランクだ。一際異彩の放つソレ、少し学のある者なら相手が何者かなど否が応でもわかる。

 

―――――瞬間、背を向けて駆けた。

 

 恥も外聞も捨て、一目散に逃走を選んだ。未だ距離があるにもかかわらず、短距離走を走るかのように全速力で逃げる。今の彼に逃走ルートを考える暇もない。そんな余分なことに思考を割いては生き残れない。数瞬前まで楽観的に考えていた自身を殴りたくなる。一人でのこのこやってきた?違う、そもアレに小隊など不要だ。あれば機動力を削ぐだけ、足枷に過ぎない。何故単独行動している相手に違和感を持たなかったのか、軽率な判断をしたことに舌を打つ。

 

 チチチッ

 

 鳥の鳴き声を彷彿させる音、徐々に近づいてくるそれを寸でのところで身を捻り躱す。

 

「クソッ!化物か!?」

 

 彼が相手を視認した時、並の相手なら気づかないであろう距離からの視線、それを機敏に察知し正確に位置を補足、逃走する己に攻撃を仕掛けてきた。機転の早さ、攻撃に移る判断、その威力、どれも桁外れだ。これで人だと言うのだからどちらが化物かわかったものじゃあない。

 本来なら牽制に移りたいところだが、それすらも儘ならない。後ろを振り向く時間すら今は惜しいし、樹木を足場に立体起動しながら今も攻撃を続ける相手にそれは時間の無駄でしかない。打つ手が無いことはないが、どれも現状を打破するには至らず、かえって状況を悪化させることは火を見るより明らかだった。

 だからと言ってこのままでは嬲り殺しにあうだけ。

 

「糞が!そっちがその気ならこっちもやってやるよ!」

 

 意を決して反転、先程までの逃げ腰から打って変わり、身を翻し眼前の敵に襲い掛かる。半ばヤケクソにも捉えられる行為、確かにこのまま逃げ続けても消耗し殺されるだけ。それなら打って出た方が賢明だろう。

 彼の両腕から火球が投げられる。空気が揺れるほどの高温の塊、掠るだけでも皮膚を焼くであろう礫、躱さねば人の身では一溜りも無い攻撃だが、そんなこと目の前の彼にとっては常。当たればタダじゃ済まない?なら当たらなきゃいいだけだよね?そう言ってのけるのが彼だ。

 迫り来る火球を一瞥すると、身動きの取れない空中でありながら曲芸染みた身のこなしで身体を捻り、その隙間を潜り抜ける。常軌を逸した回避行動に思わず攻撃した本人が驚きに身体を強張らせる。当たるとは思っていなかったが、それでもあのような奇怪な動きで躱されるとは予想だにしなかった。余りに人間離れした動きに面くらい攻撃の手が緩まる。そのラグの隙を突き、二撃目の雷鳴が放たれた。チチチッと音をたてながら迫る攻撃、この距離で躱すことは不可能と断じ、防御魔法陣を構成、前方に展開する。衝突する雷撃に両腕が焼け、苦悶の表情を浮かべる。その甲斐もあってか、五体満足で防ぐことができたが、肝心の敵の姿は見えない。

 

「どこに―――――」

 

 言い終える前に言葉が途切れる。視界が回転する。クルクルと回る世界に?を浮かべるが、視界の端に地面に伏した己の身体を映すと理解した。同時に意識は深い闇に消えていく。

 

「はぐれ悪魔レイノール、駆逐完了」

 

 抑揚のない淡々とした声が燃え盛る森林に木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□■□■

 

 

「はぐれ悪魔レイノールの討伐任務、この短期間で終わらせるとはな。お前の実力を顧みれば当然のことだが、無事に務めを果たしてくれて何よりだ」

「恐縮です」

「現状、教会で遊ばせておく戦力は欠片たりともない。だが、中にはそんな中でもふらつき歩く阿呆が居るのだから困ったものだ。皆が皆お前の様に従順であればどれだけ楽なことか」

 

 教会の祭壇前、そこで二人の男が事務的な会話をしている。

 片方は司祭服を身に付ける老君、片方は白髪の白いコートを身に纏う成年。

 老君はこの場にはいない飄々とした青年の事を思い出し不快気に眉をしかめる。

 

「まああのボンクラはどうでもいい。それよりもだ。お前が留守にしている間、少し厄介なことが起きた。神の子を見張る者(グリゴリ)の幹部コカビエル、奴が教会で保管していた聖剣の内幾つかを盗んでいった。詳しい詳細は省くが、追撃部隊は壊滅、今はフリードがバチカンの警戒に当たっている。現在使える戦力は極僅か、他の手練れも各地で出払っている」

「聖剣の奪還が任務でよろしいですか?」

 

 青年の言葉に老君はニヤリと笑う。

 

「察しが良くて助かる。今一度堕天使からの襲撃が無いとも断定できん以上、本土の守りは動かせない。故に単独での戦闘能力に秀でたお前に仕事が回ってきた。聖剣は速やかに回収せねばならん。それにしても最近の警備体制はどうなっておるのだ。悪魔に侵入されたと思えば次は堕天使だ。どう手を抜けば教会内に侵入した悪魔を見落とし、堕天使に聖剣を奪われるのやら。そう思わんかね?」

「…お答えしかねます」

「まあいい、お前に言い渡す任務は聖剣の奪還だ。あくまで聖剣の奪還が任務だが、支障をきたすようなら鴉を狩ってきても構わん。必要ない(・・・・)と思うが、同行に土地勘の利いた奴を一人とデュランダルを使う奴がいる。片方は良いが、デュランダル使いは死なせるな、貴重な適合者だ。最悪デュランダルだけでも回収してこい。あれが他に渡るのは替えの利く聖剣の比にならん」

「わかりました」

 

 司祭から言い渡された任務内容はこうだ。

 コカビエルは現在日本の駒王町に潜伏中、駒王町には魔王の妹が在住しており土地を管理している。悪魔側に今回の経緯を大まかに説明し、不干渉の約定を結ばせる。その後、聖剣エクスカリバーを回収、邪魔が入れば一狩りしても問題なし。

 聖剣を集めるのは面倒だが、実にシンプルな内容だ。

 

「では任務に向かえ。頼んだぞ、有馬貴将」

「承りました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□■□■

 

 有馬貴将

 当時の教会では異例の齢13にて教会の戦士として就任。

 就任僅か一年にしてはぐれ悪魔討伐数は50を越え、Sランクのはぐれを駆逐。

 ヴァスコ・ストラーダと組み、彼の下で数々の功績をあげる。

 その後、ヴァスコ・ストラーダの意向によりペアは解散、単独で数々の討伐任務をこなす。

 教会の特殊任務に参加、任務中に最上級悪魔が乱入、編成部隊の主力が戦闘不能、圧倒的強者を前に為す術はなかった。当時23歳の有馬貴将、今回の任務で最年少だった彼は、聖剣エクスカリバーをふんだんに使い捨て最上級悪魔に致命傷を与え撃退に成功、本来の目的である特殊任務を単独で終わらせた。

 その他にも世界各地を転々と移動し危険性の高いはぐれ悪魔を潰して回った。

 その実力は教会の最高戦力として数えられ、信頼は厚い。

 

 基本的に寡黙で、人を寄せ付けぬ雰囲気を醸す彼だが

 

(教会マジブラック、人手不足だからと言ってほぼ二十四時間労働とかやってらんないっすわー)

 

 心の中ではノリが軽い奴だ。

 

 これは一人の男によって本来とは大きく乖離した物語だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□■□■

 

 

 白いコートを着用した二人の少女、一人は栗毛色の髪をツインテールで纏めた活発そうな印象を受ける少女、もう一人は対極に凛とした雰囲気を醸す青髪に緑色のメッシュの入った特徴的な髪をした少女。

 これから仕事で国外に赴く彼女らだが、その心中は穏やかではなかった。

 

「ねえ、ゼノヴィアは聞いた?」

「ああ、些か納得しがたいが話は聞いたよ。同行者が一人増えるそうだな」

「そうそう!それだけなら別にいいんだけど、でもあれは納得できないわよ!」

「それについては全面的に同意するよ。何故私達がサポートに回らなければならない」

 

 彼女たちが不満を口にするのも無理はない。今回の聖剣奪還任務、本来ならこの二人で取り掛かるはずだった。それが出発直前で指示の変更

 

 人員を増員する、そのサポートに回れ

 

 具体的な説明などまるでなく、有無も言わさず下された指令、組織の末端である彼女らがそれに意を唱えるわけにもいかず渋々と頷いたが、内心酷く憤慨していた。

 今回の任務に失敗は許されない、その事は重々理解しているし、人員の増員に異論はない。万全の態勢を整るに人は多い事にこしたことはない。しかし、だからと言ってサポートに回されるのは納得いかなかった。まるで君達では実力が不足している、暗にそう指摘しているように聞こえ酷く腹が立った。未だ若いといって侮られているような気がしてならなかった。

 自慢だが二人は聖剣エクスカリバーを扱うことができる稀有な存在として、自身の実力に並々ならぬ自信を持っている。多くの悪魔を屠り、数々の功績を上げ教会に貢献してきたという自負している。聖剣エクスカリバーの恩恵もあるが、それを活かす剣技も十分に備わっていると思っている。確かにコカビエル相手では分が悪いのは認めるが、別にコカビエルと事を構えなければ成功の芽はいくらかあった。それを言うこと事欠いてサポートとは不満の一つや二つ出る。

 

「まあいいさ、幸いサポートの範囲についての説明は無かった。私達の判断でサポートに取り掛かれば問題ない。その結果聖剣の一つや二つを回収してしまったとしても何ら問題ないはずだ」

「あんた偶に方向性がぶっ飛んでるわよね」

「それについては否定させてもらおう。私はただ主の為に剣を振るうだけだ。その過程で少しばかり寄り道をしても我らが神はお許しくださるさ」

「私、やっぱりあんたの信仰心が分かんないわ」

「プロテスタントに理解されるとは思っていないさ」

「古臭いしきたりに縛られるカトリックにそう言われたらお終いね」

 

 売り言葉に買い言葉、剣呑な空気が流れようとした時だった。

 

「遅れたか?」

 

 無機質な挨拶、その癖嫌に鮮明に聞こえた声に二人は思わず向き直る。

 色素の抜けた白髪、白いコート、両手のアタッシュケース、教会広しと言えどトランクを持つ人間は一人しかおらず、彼のことを知らない人間は居ない。

 

「あ、有馬……」

「貴将………」

 

 有馬が現れたことで先程までの不満が霧散する。自分達がサポートに置かれた理由が理解できたからだ。

 教会最高戦力の一人である有馬貴将が赴くのだ、生半可な実力者と組めばかえって足を引っ張るだけ、だからこそサポート。

 呆気にとられる二人を気にかけることなく問いかける。

 

「二人が同行者か?」

「……ッ、ああ、私達が同行させてもらう。あ、有馬さんの噂はかねがね聞いています。よろしくお願いします!」

「よろしく」

 

 若干気後れしながら緊張の籠った返答、それに反応を示すことなく平坦とした口調で返事を返す有馬。

 

「あ、有馬さん!私のこと覚えてますか?」

 

 やや緊張がかった様子で話し掛けたのはツインテールの少女。有馬は彼女を一瞥すると、ああ、と思い出したように頷いた。

 

「トウジさんの娘さんか」

「覚えてくれてたんですね!有馬さんの話はパ—―—、じゃなくて父からよく聞きました!そんな人と一緒に任務ができるなんて夢のようです!よろしくお願いします!」

 

 やたらと興奮した語意で話す少女とは対極に、相方は彼女があの有馬と接点があったことに驚きを隠せない。

 正確には接点と言えるほど上等なものでは無い。上司からの家族紹介で幼かった頃の彼女と一度だけ顔を合わせたことがあった、その程度のか細い繋がりだ。この話を切り出されなければ有馬も思い出すことはなかっただろう。

 そんな二人の空気が面白くないのか、小さく咳払いし、蚊帳の外だったもう一人が自己紹介を始める。

 

「自己紹介が遅れました。私はゼノヴィア、破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)の所有者です」

「改めまして、柴藤イリナです。擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を使ってます!よろしくお願いします!」

「有馬貴将、よろしく。そうか、君達はそれを使ってるのか」

「有馬さんも使ったことがあるんですか?」

 

 有馬のなんとなく呟いた言葉にいち早く反応したのはイリナだ。この任務を機に、今まで教会で噂されていた眉唾物の話の一つでも聞ければと、真相を確かめるべく無邪気に問いかける。

 

「ああ、一回使ったことがある。盾に使ったけど簡単に壊れたな」

「た、盾?てか壊れた!?」

「そっちは使いやすかったけど、すぐ折れたっけ?」

「お、折れた!?しかもすぐ?」

 

 どこか懐かしむように呟いた有馬だが、聞かされたゼノヴィアとイリナには何を言っているか意味が分からなかった。

 聖剣エクスカリバーと言えばアーサー王伝説に出てくる聖剣の代表格だ。かつて起きた三つ巴の大戦で砕け、七本に分かれた弊害で本来の性能に程遠いとはいえ、その性能は折り紙付きだ。それを盾に使って壊れた、すぐ折れたなどと聞かされ正しく意味を理解できる柔軟な人間はそういない。しかもタチの悪い事に一切虚飾が混ざっていない事実なのだから始末に負えない。

 

「それより行くぞ」

「は、はいッ!……イリナ、聖剣はそんなに簡単に壊れる物だったか?」

「そんなこと知らないわよ。少なくとも私は今まで折れたことも壊れたことも無いわよ」

 

 ゼノヴィアとイリナにとって不吉極まりない経験談、二人は自身の武器に一抹の不安を覚える。

 

―――――戦闘中にポッキリ折れないよな?

 

 一瞬有馬に聞いてみようかと考えるも、返答が怖くて聞けない二人だった。

 

 

 

 




 早々に若干修正しました。
 申し訳ないです。
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