教会の白い死神~リメイク~   作:ZEKUT

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 後二話ぐらいでこれは終わらしたいです。
 終わればいいなー……


旋律

 駒王町から少し離れた場所に存在する廃教会。グレモリー眷属にとって因縁のある場所にて、二人の少女は死神に懺悔をしていた。

 

 

「大変申し訳ありません!」

「本当にごめんなさい!」

 

 

 ひんやりと冷えた地面に身体を伏せ、平身低頭ただひたすらに謝罪を続けるゼノヴィアとイリナ。そんな二人を困った様に見下ろす有馬。

 彼女らがこうして土下座することになった経緯は数時間前に遡る。

 

 

 

 

 少し時間が遡る。

 自身の奇行によって有馬に見放されたことを知らない二人は、グレモリー眷属であり、イリナの幼馴染である一誠に誘われ、ファミレスで食事をとっていた。最初こそ、幼馴染とはいえ悪魔から施しを受けることを渋っていた両者だったが、注文したメニューを口にした途端態度は一変し、料理に舌鼓を打っていた。

 その後、満足するまで食べ続けた二人は一誠から一つ頼みごと、お願いをされた。今回の聖剣奪還任務の協力、もしくは悪魔側の行動を黙秘してほしいとのこと。

 その言葉に二人は難色を示した。当然だ。今回の聖剣奪還任務、二人だけなら成功率の低さから相手の提案を承認してもよかった。だが、今回の自分達はあくまでサポート、メインである有馬の許可なくそのような提案を飲むわけにはいかない。一拍置き、イリナは申し訳なさそうに一誠の提案を拒否する。こちら側にも事情があり、易々と提案を受け入れるわけにはいかない旨を伝える。そこを何とか!と食い下がる幼馴染に首を横に振る。

 何度か食い下がったところで、先程の粘り具合から一転、あっさりと身を退く。まさかの対応に同席している白髪の少女は不安な面持ちで先輩である少年を見上げる。そんな後輩の不安を物色する様ににっかりと笑みを浮かべる。

 話は以上だな、と離席する二人にまたも待ったをかけたのは一誠だ。今度は何だと後ろを振り向くと、一枚の紙を突き付けられる。不可解に思いながらもその紙を受け取ると、そこには今まで彼女らが注文したメニューの名前がずらりと書かれている。これが何かわからぬほど、彼女たちは浮世離れしていない。

 

 

―――――今まで注文したメニューの代金、別に俺が払うとは言ってないぜ?

 

 

 転生悪魔である一誠は、実に悪魔らしいイイ笑顔を浮かべながら、容赦ない言葉を突きつけた。

 ふざけるなと激怒するゼノヴィアだったが、確かに彼は食事を誘いはしたが、会計は自分達が持つとは一切明言していない。一誠は彼女の怒声を涼しい顔で受け流し、わざとらしく口を滑らせる。

 

 

「あー、聖剣の奪還任務手伝いたかったなー。幼馴染だし、力になってあげたいと思ったんだけどなー」

「くっ……!?やはりそう言う魂胆だったか!悪魔め!」

「い、イッセー君!私、今困ってるんだけどな~?」

「確かに幼馴染の為に会計持ってあげたいけど、誰かさん達が注文しまくったせいで俺一人じゃ払いきれないなー。どうしたものかなー?このままじゃ警察に通報されちゃうかもなー」

「ちょっ!それシャレになんないわ、イッセー君!?」

 

 

 任務に赴き、その行先で警察にお世話になる。有馬の補助を命じられた彼女らからしたら笑い話にもならない。心底くだらないことだが、二人からしたら死活問題だ。

 この状況を打破する方法は二つ、悪魔の要求を呑むか、有馬に助けを乞うか。二つに一つだ。しかしどちらを選んでも何かを失う事になる。悪魔の要求を独断で許せば、有馬だけでなく教会にも迷惑をかけ、逆に有馬に助けを求めれば、それは間接的に教会へ伝わり二人の評価が下がることは間違いないだろう。どちらを選んだとしても無傷ではいられない。まさに悪魔の契約だ。

 イリナとゼノヴィアは究極の選択に頭を悩ませ考える。どちらを選択すれば傷口を浅くできるのか。

 そして二人が選んだ選択は―――――

 

 

「……そう、だな。一本だけならいいだろう。君らにできるならな。ただし!そちらの正体はくれぐれも!くれぐれもばれないようにしてくれ!私達も悪魔と繋がっていると上に見られるのは困る。困るんだ……」

 

 

 二人は悪魔の要求を呑み、それを隠し通すことに決めた。

 それがさらに傷口を開く愚行であるとわかっていながら選ばざるを得ないことに歯噛みする。

 

 

「よっし、なら契約成立だな。賢明な判断をしてくれ俺は嬉しいよ」

「ッ……、どの口で言う!」

「嗚呼、昔はあんなに純粋だったイッセー君がこんな悪魔になっちゃうなんて……!」

「一食の恩って奴だ。悪く思うなよ。という事で協力者を呼ばせてもらぞ」

 

 

 数分後、一人の悪魔が到着した。

 

 

「……話は理解したよ。聖剣使いに承諾を得る必要があるのは遺憾だけどね」

「随分な言いようだな。貴様がはぐれならここで斬り捨ててもいいんだぞ?」

「まあまあ、ゼノヴィア。で、貴方はやっぱり聖剣計画の事を恨んでいるのね。でもね、あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に上がったわ。その結果、私やゼノヴィアみたいに聖剣を扱うことができる人材が生まれたの」

「そんな事はどうでもいい……!いくら綺麗事で覆おうとも、事実が消えるわけでも、ましてや死んでいった同士の事が無かったことになる訳じゃない!お前たちからしたら意味のある犠牲だったかもしれないが、僕らからしたら、あれはただの虐殺に他ならないんだ!」

「見解の相違だな。私なら主の糧になるなら喜んでこの身を捧げる。それが信徒の本望だろう?」

「流石教会の狗、狂ってるね…!」

「それは教会に対しての挑戦状か?先程の手合わせで力の差ははっきりしたはずだが?」

 

 

 互いの視線が交わり火花が散る。

 教会に才を認められ、光を見て育った彼女(ゼノヴィア)。教会の闇を垣間見、復讐の灯を胸に抱き悪魔となった(木場祐斗)。始まりは同じだが、その過程は大きく異なる二人。価値観が合う筈が無かった。

 早くも剣呑な雰囲気が醸す。このままでは店内で剣戟を躱しかねない程の尋常ならぬ空気。

 

 

「はあ、少し落ち着いてくれ。ここで騒ぎになるのは二人とも本意じゃないだろ?」

「……赤龍帝、君には一食の恩がある。今回は君の顔を立て、剣を収めよう」

「そりゃどうも」

「まあ、彼の言い分もわからないことではない。あの事件は教会内でも最大級に嫌悪されたものだからな。事件の犯行者はバルパー・ガリレイ、皆殺しの大司教と呼ばれている男だ。事件後は教会から追放処分が下され、今では堕天使側の住人になったと聞く。聖剣が絡んでいる以上、今回の事件にかかわっている可能性は十分にあるだろう」

「なるほど、今回の事件にかかわってるかもしれないか。ならあの時の清算を一気に払うことができそうだ」

 

 ブツブツと不気味に呟くその姿は、さながら幽鬼のように見える。

 一拍して木場が思い出したかのように問いかけた。

 

 

「さっきの情報は助かる。でも……僕が求める情報は一つだけ。有馬貴将、この町に居ることは知っている。一緒に居ないってことは別行動だろ、今は何処にいる?」

 

 

 木場の言葉に先程まで剣呑だった空気が更に悪化し、殺伐としたものに切り替わる。

 イリナとゼノヴィアは見るからに警戒した様子で目を細める。言外に何処でそれを知ったと視線が語っている。

 

 

「どこでそれを知った、いや、それはいい。一つ聞くが、それを聞いてどうするつもりだ?」

「どうもこうも無い。今度こそあいつを倒し、同士達の無念を晴らす」

「はっ?」

 

 

 木場の思いがけない一言に、二人は思わず間抜けな声が漏れる。初めて目の前の男の意図が読めない。いや、理解ができなかった。

 この男は何と言った?有馬を倒す?同士達の無念を晴らす?

 この一言の何処に関連性があるのかわからず、困惑を隠せない。

 

 

「……すまない、意味が分からない。何故、有馬さんを倒すことで無念を晴らすことに繋がるんだ?」

「決まっている。あいつさえいなければ、僕達が処分されることはなかったッ!有馬貴将を倒すことで、僕達を処分した教会が間違いだったという事を証明する!」

 

 

 聖剣計画の事情を知る彼女らからしても、当事者である彼の言葉は何処か的外れな感じが否めない。

 木場の物言いでは、有馬があの計画に携わっていたように聞こえる。

 しかし当時の事件について記載された資料に、有馬がかかわっていたという情報は一切無い。彼が嘘を吐いているのか、はたまた上からの圧力によって事実がもみ消されたのか。

 どちらが真実であるか彼女らに判断はできない。しかしこれだけは、はっきり言える。

 

 

「悪い事は言わない、やめておけ。下級悪魔が、ましてや私に勝てないお前が挑んだところで死ぬだけだ。私にとってお前が死のうが生きようが気にする事ではないが、そんな雑事に、あの人の貴重な時間を浪費させるな」

 

 

 有馬は多忙な身だ。教会の本部であるバチカンは愚か、支部にすら留まる時間はごく僅か。大半の時間は任務にあてがわれており、プライベートなどあって無い様な極少量の時間のみ。日々仕事に忙殺される毎日だ。

 瞬間、堰を切ったダムのように感情の荒波が木場から溢れ出す。殺意と怒り、憎悪に苦悩、それらが一緒くたになった剥き出しの感情。端正な顔が歪み、フルフルと体が震えだす。

 

 

―――――今、こいつは何と言った?

 

 

 下級悪魔である自分が教会屈指の実力者である死神を倒すことが限りなく不可能なことは理解している。先日手痛い手傷を負い、見逃された時の屈辱を思い出すと自身の無力さに腸が煮え繰り返る思いだ。先程の戦闘でも逆上し、冷静でなかったと言い訳をしても目の前の少女に負けたことも事実だ。それは甘んじて受け入れよう。だがその後の言葉は聞き捨てならない。雑事、雑事と言ったのか、こいつは?あの時の出来事を取るに足らない雑事だと、切り捨てるのか?

 沸点の限界を超えた思考は一周回って冷静になる。怒りが無くなったわけではない。沸騰した鍋に蓋を置くように、彼もマグマのように煮えたぎる激情に蓋をしただけだ。

 かつて無いほど冴え渡った思考もどこか他人事の様に感じる。彼は先程までの怒気の孕んだ声音とはかけ離れた平坦な口調で言った。

 

 

 

「僕が死のうが生きてようが構わないなら知ってる情報を教えてくれないかな?あいつがこの町に居る間にケリを付けたいんだ」

「ふんっ、殺されるのが関の山だろうが、生憎とも私達も暇じゃない。此方に手を出すなら、ここでお前を狩ってもいいんだぞ?」

「いいね、今の僕ならイケそうな気がするんだ。外に出よう、此処じゃ邪魔が入る」

「お、おい木場――――――!」

 

 

 制止も空しく、両者はただならぬ様子で外へ出て行く。

 嫌な予感がした。直感、虫の知らせ、そんな感覚に似たナニカが一誠の中で警報を鳴らしていた。

 そして予感は最悪の形で的中した。

 

 

禁手(バランス・ブレイク)制約された破滅の剣(ティルヴィング)。これが僕の想いを具現化させた、死神を殺す為の復讐の魔剣だ」

 

 

 戦いは圧倒的だった。

 焔を操る訳でも、風を操作する訳でもない。眼前の敵を斬る、ただそれだけに特化した魔剣。その刃に触れたもの全てを斬り裂く抜き身の刃、それを覆うようにどす黒い瘴気が際限なく噴き出す。木場の心象を具現化したかのような魔剣。尋常ならぬ切れ味は所有者の殺意、身体を蝕むような禍々しい瘴気は憎しみと言ったところだろう。

 新たな力を得た彼はゼノヴィアを圧倒した。騎士(ナイト)としての速度、本来のそれを超えた圧倒的加速力、激情に駆られながらも尚磨き上げた剣技に翳りを見せず、一度臨界点を突破した感情は荒波の様に荒々しくされど漣の様な静寂も兼ね備えたものに変貌を遂げた。

 かくして、ゼノヴィアはなす術も無く敗北を喫した。幸い、命に別状も無く、目立った傷は見当たらなかったが、破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を失った。有馬を誘き出す為の餌として木場に奪われたのだ。

 予想に反してあっさりと決着のついた戦闘。両者とも目立った傷が無いにもかかわらず、観戦していた彼らは喜べずにはいられなかった。

 こうして、悪魔の手に一振りの聖剣が渡ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回、有馬さんやっぱ有馬さんでお送りするです。
 お楽しみに!
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