上手く書けた自信が欠片も無いが、取り合えず投下してみました。
後で書き直しか訂正を入れる可能性大です。
夜闇を照らす閃光、光と雷が夜空を飛び交う。
戦闘開始から十数秒が経過したころ、コカビエルは血沸き肉躍る戦いに没頭していた。光の槍の高出力版、光の大槍による投擲も通じず、光の大群による絨毯爆撃も地形を歪めるだけに留まる。過去に教会の暴力装置と闘った時でさえ、ここまで完封されることはなかった。
普通なら心が折れるか、逃亡の二文字が頭をよぎるだろうがこの戦闘狂は違った。
敗色濃厚、形勢不利、絶体絶命―――――それがどうした!
まばたきした瞬間、一秒先の未来にも死ぬかもしれない圧倒的緊迫感。これこそがバトルジャンキーであるコカビエルの望んでいたものだ。
「ハハハッ!イイ、イイゾ!もっと楽しませてくれ!?」
命を危険にさらしているにもかかわらず、歓喜に身を震わしながら吠える。
長年燻り続けていた火が、ここにきてかつての業火へと姿を取り戻した。
やがて、二人はどちらからともなくその動きを止めた。疲労によるものではない。過去の大戦を生き抜いた猛者と数々の死線を潜り抜けてきた傑物である二人ならば、たとえ一晩中でも戦っていられるだろう。だが、他の者達は別だった。
「はあ、はあ、はあ……」
息絶え絶えの状態で、今も尚結界を張り続けるリアスとその眷属たち。有馬とコカビエルが戦闘を始めてから、彼女たちは周囲に結界を張り、町に被害が出ないように尽力していた。
最初こそ援護に回ろうとしたが、それは叶わなかった。
―――――砲弾の雨あられのように振り続く光は、着弾と同時に突風を巻き起こす”堕天使幹部”
―――――迫り来る光を割き、常闇を駆ける蒼雷を放つ”白い死神”
世界が違った。
今までリアスたちが戦ってきた敵が雑多に見える程、この闘いは次元が違った。ノータイムで投擲される光の槍は自身の最大出力に相当し、大槍は掠ればそれだけで消滅しかねない威力を秘めている。
これだけの攻撃を掠り傷一つ負わずいなし続ける有馬は、悪魔である彼女たち以上に化物じみて見えた。
数秒も経たず自信喪失したリアスは、下僕である一誠の助言により結界を展開することを決めた。赤龍帝の籠手の能力の一つ、
コカビエルと有馬の戦闘は尋常でなかった。倍増した魔力が湯水のごとく消費され、瞬く間に結界を維持することすら困難に陥った。
「埒があかんな」
これでは満足に戦う事すら敵わないと考えたコカビエルは、これまでとは一転して接近戦に切り替える。
有馬もそれは望むところと果敢に挑みかかる。
手数、と言う点だけであればコカビエルに利がある。両手に握られた光剣に十枚の翼。数的有利な状況を作りだし、苛烈に攻めたてる。
同時攻撃、時間差での連撃、普通なら手数足らずで幾重もの傷がつけられる剣戟。絶え間なく続けられる攻撃、それをナルカミ一つで捌き、僅かなタイムラグを見つけては反撃を繰り出す。
恐らく、端から見ているリアスたちにはコカビエルが圧倒しているように見えるだろう。だが、本人からしたら冗談のようにしか思えない剣捌きに、慄然とするしかない。
―――――倍以上の物量、この間合いで何故ひとつたりとも当たらない!
秒間二十以上の攻撃をどうすれば剣一つで凌げるのか。
自身でも成し得ることのできないことをなぜ人間である有馬がやってのけれるのか。
徐々に増えていく傷に焦りと動揺が走る。それが思考を鈍らせ、攻撃の冴えを曇らせる。
その綻びを見逃さず、有馬は畳みかける。トランクのスイッチが押され、中から槍の形状をした武器、IXAが取り出される。
転瞬、今までの防戦から一変。鋭い刺突が突きたてられる。
「ぬおっ!?」
打って変わった攻撃に、攻守が逆転する。
ナルカミ一つでも捌ききれなかった。そこに間合いの広いIXA、単純な手数が倍に増えたことで攻撃の苛烈さが増す。
IXAの連突、ゼロ距離から放たれるナルカミの雷撃。攻撃の始動、繋ぎに違和感も無く、一つの技として成立しているように感じる連撃に、さしもコカビエルは後手に回らざるを得なかった。
一つ一つが全て致命傷狙いのものでは無いとしても、その全てが戦闘力を削がれるような箇所ばかりだ。
また一つ、また一つと裂傷が増えていき、皮膚だけでなく肉まで削られていく。
「が……!俺の、翼を……っ!」
IXAの一振りにより右翼を両断される。
痛烈な一撃に強面の顔が歪み、唸り声をあげる。
このままでは呑みこまれる!
一度仕切り直すべく、大きく後ろに後退する。
「遠隔起動」
が、地面から突如隆起した物体に腹を貫かれる。
「ごっ…!」
「解除」
IXAの遠隔起動が解除され、コカビエルの身体は宙へ投げ出される。
追い打ちをかけるようにナルカミの遠距離モード。態勢は最悪、回避は愚か、防御すらままならない状態。いや、既に意識は消失しているかもしれない。
死人に鞭打つような容赦ない攻撃。
これで終わった。
リアスたちもそう思っていた。
だがただ一人、彼だけは感づいていた。
「ナニカ、来る!?」
リアスたちの張った結界を容易く破壊し、現れたのは
「白い、竜……?」
誰かが呟いた。
同時に龍のけたたましい咆哮が響く。
鮮血が空を舞う
□■□■
同時刻、廃教会にて待機の指示を与えられたゼノヴィアとイリナ。そこに一人の少年が訪れた。
「数時間ぶりだね」
現れたのはグレモリー眷属であり、ゼノヴィアに敗北の苦渋を飲ませた男、木場祐斗。彼は奪い取った聖剣を携え、再び彼女たちの前に姿を現した。
「貴様……!よくも私の前に現れてくれたな!」
怒気を露わにし、殺気立ちながら睨めつける。
全力ではなかった、奥の手は切っていなかったなど言い訳にもならない。ゼノヴィアにとって、悪魔に後れを取り、剰え聖剣を奪われるなど恥ずべき失態だ。今度は後れを取らないと意気込んでいたところに待機命令。己の失態が招いた結果とはいえ、屈辱だった。だからこそ、木場がこの場に現れたことは僥倖だった。相手にどのような思惑があっての行動かは知らぬが、此処で会ったが百年目。先日の借りを返させてもらおう。
ゼノヴィアは相棒に視線だけで下がる様に言う。
その視線の意図を汲み取ったイリナは嘆息しながらも数歩後ろに下がる。
「元気そうでよかったよ。できるだけ傷を付けないように気を付けたつもりだったけど、うん、目立った外傷も無くてよかった」
「随分と余裕だな。一度私に勝利したことで余裕でもできたか?」
「余裕か、そうだね。今まで僕には余裕が無かったかもしれない。目先の事に捉われ、本質を見失っていたんだからね。だからこそ、僕も前に進むために過去と決別しなければならない。本当なら、有馬貴将と立ち会いたいところだけど、生憎と今の僕にはそれほどの力はないからね。今回は君達で我慢するさ」
「まるで次があるような物言いだな。安心しろ、お前に次はない。二度戦い戦績はイーブン。そして、これが最後だ!」
ゼノヴィアは虚空に手を翳し、奥の手を切った。
「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」
その言霊に呼応する様に時空が歪み、一振りの聖剣が出現する。
「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。デュランダル!」
これこそが彼女の切り札。ローランの歌に登場する英雄ローランが扱っていた不滅の刃、聖剣デュランダル。切れ味において他の追随を許さない聖剣は、神々しい程のオーラを撒き散らしながらゼノヴィアの手に収まる。
「こいつは私でも扱いに困るほどの暴れん坊だ。精々一太刀目で死んでくれるなよ?」
「ああ、精々君の期待に答えられるよう頑張ってみるよ」
「抜かせ、悪魔が!」
両者が地面を蹴り、刃を振り下ろす。二本の聖剣が衝突し、教会が振動する。
耳をつんざくような音を奏でながら激しい鍔迫り合う。ギリギリと鬩ぎ合う中、両者は胸中相手に悪態をつく。
―――――重い!
―――――巧い!
木場はゼノヴィアの一撃の重さに半ば呆れながらも称賛を贈る。どうにか鍔迫り合いの均衡を保ててはいるが、いずれ押し切られることは必定。
対するゼノヴィアは木場の受けの巧さに苛立ちが募っていた。力では勝っているにかかわらず、押しきることができないもどかしさ。ならどうするか、決まっている。今の力で押し潰せないのならそれ以上の力を加えるまでのこと。
ゼノヴィアは両腕にさらに力を加える。徐々に増していく重さにこのままでは押し潰されると結論を下した木場は鍔迫り合いの力を逸らすことで相手の体勢を崩し、返す刀で切り払う。
容易く体勢を崩されたことに驚嘆するも、迫り来る斬撃を防御するために力技でデュランダルを引き戻す。
体勢を崩されながらも強引に立て直す機転の良さに舌を巻きながら、彼は自身が持つ得物に内心舌打つ。
木場は本来持ち前の俊敏性と技量で立ち回る技量特化の剣士だ。得物も取り扱いやすいロングソードがメインで、現在使用している破壊の聖剣の様な筋力を必要とする武器を得意としていない。
「どうした!その程度か!?」
思わぬところで苦戦を強いられている木場を知る訳も無く、ゼノヴィアの攻めは徐々に苛烈さを増していく。
威力を散らす様に受けているが、一撃一撃が重く、下手に受ければ両腕はイカレ、最悪武器ごと斬り落とされかねない。幸い、技量は此方が上回っており、太刀筋も愚直でわかりやすい事が唯一の救いだろう。
このまま防戦一方では敗北することを察した木場は聖剣を大きく振りかぶり地面に叩きつける。元々耐久性に乏しかった廃教会の床は容易く陥没し、大量の砂塵を撒き散らす。
「
目晦ましからの奇襲。
地面から咲き乱れる剣山がゼノヴィアを襲う。
「この程度!デュランダル!」
膨大な聖なるオーラが込められたデュランダルの刀身を地面に突き立て、蓄積されたオーラを爆発させる。
暴力的なオーラは魔剣を砕き、砂塵を振り払う。
しかし開けた視界に敵の姿はなく、変わりにイリナの声が木霊する。
「ゼノヴィア、上!」
仲間の掛け声に反応し、すぐさま上空を見上げる。
「もらった!」
そこには破壊の聖剣を振りかぶった木場の姿が見える。
今から回避では遅いと悟り、デュランダルを上段に構え衝撃に備える。
が、しかし。
振り下ろされた斬撃はデュランダルをすり抜け、聖剣は木場の腰に引き戻されていた。
――――しまった!?
初撃は囮、本命は隙だらけの中段。
数瞬遅れで相手の目論見を理解したゼノヴィアだったが、この体勢から取れる行動も無く
「僕の勝ちだ」
強烈な打撃が腹部に炸裂した。
「ガッ!?」
「ゼノヴィア!?」
イリナの悲鳴と共に勢いよく吹き飛んだゼノヴィア。腹に抱えていた爆弾が爆発したような衝撃にチカチカと点滅する視界の中、彼女は奇妙な違和感を感じていた。
先程の攻撃、本来なら上半身と下半身が泣き別れになることが必定の一撃。それが切傷も無く、あるのは鈍器でぶたれたような鈍痛のみ。
違和感の正体、それは視界の端に移る木場の姿で理解した。
一撃目こそ斬撃だったが、二撃目は刃を切り返す手間を惜しみ聖剣の腹による打撃に切り替えたのだ。更にただの打撃では効果が薄いと判断し、破壊の聖剣の効果を使用し破壊力を増幅。結果、爆弾が爆発したと錯覚するほどの衝撃が彼女を襲った。
状況を把握した彼女が感じたのは圧倒的屈辱だ。
あの場面で切り返しの手間を惜しむ理由は無かった。十全に整った体勢、虚を突かれ硬直したゼノヴィア、一歩踏み出せば届く間合い、これだけの要素が揃えば切り返しの時間など容易く生まれる。にもかかわらず、切り返さなかった。
最初から殺すつもりはなかったのか、はたまた途中で情でも沸いたのか。
「それにしても、居もしない存在の為に身を粉にしていたなんて、お互い滑稽で笑えるね。まるで
自虐的な笑みを零しながら漏らした一言。
痛みに悶絶しながらも聞き捨てならない言葉に掠れる声で問いかける。
「な……に………?」
「ああ、やっぱり君達も知らなかったんだね。なら教えてあげるよ。
真実とは、時に残酷なこともある。
少年から告げられた真実、信じるか否かは彼女たち次第。