メツブレイド2 ~小僧と俺の楽園への旅~   作:亀ちゃん

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ネタ小説が、ランキングに乗ってしまっていいのかわかんないけど……ありがとうございます!!



第三話:メツとセイリュウ

「う、うーん……」

 どれくらい眠っていただろうか。レックスは、意識を取り戻し、瞳を開ける。そこには、頬の筋肉が異常に発達している男の顔が映っていた。

「目が醒めたみてぇだな、小僧」

「メツか……うう、頭が痛いな」

 レックスは草が生い茂っている地面で寝ていた。決して鍛え上げられた固い膝の上ではない。

「地面でずっと寝てたからな。生憎俺は、野郎に膝枕するなんていう気色悪ぃ真似はできねぇ性質でな」

「別に膝枕してほしいなんて言ってないよ……それはそうと、ここはどこ?」

「さぁな、ただの森としか言えねぇな。大方どこかの巨神獣にでも流れ着いたんだろう」

「巨神獣……ーー!」

 その言葉を聞いてレックスは、先程の激闘を脳裏に蘇えらせた。そうだ、あのときじっちゃんは、砲撃を受けて墜落したんだ。

 レックスは飛び起きて、ぐるぐると周囲を見回す。しかし、そこにはメツ以外には存在しなかった。まさかじっちゃんもニアももう、死んでしまったのでは……?

 ーーいや、まだそう決めるのは早い。レックスは息を吸って、メツへと向き直った。

「まだこの近くにいるはずだ。探そう!」

「そうだな。だが気を付けろ、この辺りにはモンスターたちが生息してるからな」

 そういうとメツは己の持つ武器をレックスに渡した。レックスは頷くと、森の奥へと歩みだした。

 モンスターたちを倒しつつ歩き続けると、大きな生物が横たわっているのが見えた。もしやとおもいレックスは駆け出すと、果たしてそこにはじっちゃんがいた。じっちゃんの表情は、とても苦しそうだ。

「じっちゃん!」

 レックスが駆け寄ると、それは酷い惨状だった。体のあちこちに血が付着しており、木々の枝などが刺さってしまっている。最早動くこともままならないほどの重症に、メツは顔をしかめる。

「ーーっ、待ってて今傷薬だすから!」

「お前の薬なんぞ千人分あっても足りんわい」

「っ、でも!」

「これもまた運命。泣くな、レックス」

 優しく諭すようにいうじっちゃんに、レックスは涙を浮かべる。自分があんな仕事を受けなければ、じっちゃんはこんなに傷つかなくてすんだ。後悔がレックスを絶望と失意のどん底へと突き落とし、ぐっと目を閉じる。

「無理なこと、いうなよ……」

「別れは一瞬、エーテルの流れに導かれて、また巡り合える……お前と過ごした時間はとても楽しかったぞ。また会おう、レックス」

 そういうと、じっちゃんーーいや、セイリュウの体がだんだんと青い光に包まれていく。消えていってしまうのだろう。レックスは手を伸ばし、じっちゃんと叫ぶ。

 だが、レックスの指先は、宙を掠めた。セイリュウは青い粒子となって砕け散り、大気中へと消えていく。レックスは必死に、じっちゃんの欠片を拾おうとしたが全て消え去ってしまった。

 じっちゃんが居なくなり、すっかりスペースが空いてしまった。それを見た瞬間、レックスは膝を崩して大粒の涙を流した。

「うわあああーーっ!! じっちゃーーーーん!」

「……」

 メツもこのときばかりはレックスに茶々をいれず黙って腕を組んで見つめていた。

「じっちゃん、じっちゃーーん!」

「泣くなというとるじゃろうがレックス」

「うっううっ、ううう……!」

「……あん?」

 どこからか聞き覚えのある声がするが、腕を地面に叩きつけながら喚くレックスは気づいていないようだ。

「レックス!」

「うわあああああーー!」

「レックスッ!!」

「じっちゃーーん!!」

「――小僧、顔あげてみな?」

「……え?」

 突如投げかけられたメツの言葉にレックスは叫ぶのをやめて、顔をあげてみる。すると――いつの間にか小さな白い竜がいた。何かの間違いかと思い、レックスは腕で涙をぬぐう。しかしそこには確かに、先ほどまでいなかった小さい竜がいた。ということは――

「え、えええええええええーーっっ!? じ、じっちゃん――なのか!?」

「当り前じゃ! 見てわからんのか」

「い、いやわからないよ……」

「ったく、趣味の悪いじじいだな」

「失礼な奴じゃな! わしは全身の代謝を最大限にして身体維持をした結果、幼生体に退行しただけじゃ! 尤もすべての巨神獣ができることでは……ん? レックス、お主怒っておるな?」

 セイリュウが問いかけるとレックスはプイッとそっぽを向いてぶっきらぼうに返す。

「別に。なんかただわんわん泣いていた自分が、アホらしくなっただけだよ」

「やっぱり怒っとるではないか」

「んなことより、どうすんだよ。ニアってやつ探さなくて大丈夫なのか?」

「あ、そうだよ! ニアを探さなくちゃ」

「ニアというのはお主と一緒におったドライバーのことかの?」

「ああ。そういえばじっちゃんは行方を知らないの?」

 背に乗せていたじっちゃんならなにか知ってると思い尋ねたが、小さい首をふるふると横に振っただけだった。

「何しろあちこちの木々にぶつかったからの、途中で落っこちてしまったんじゃろうな」

「うーん、それだけじゃ探しようがないなー……」

「はぁ? 探しようあるだろうが」

 メツがレックスの頭を、軽く手で押す。

「木々にぶつかったってんなら、何か折れた枝とかあんだろ?」

「なるほど、よしいこう!」

 そういうとレックスはじっちゃんを両手で抱えて、首の後ろに垂れ下げた、サルベージの時に使うヘルメットに入れた。丁度良くフィットし、セイリュウはおおーと歓喜の声を上げた。

「ほほー、こりゃ楽ちんじゃわい!」

 じっちゃんをヘルメットに仕舞い込むと、レックスとメツはまたも森の奥へと進んでいった。

「そういえばレックスよ、一つ聞きたかったんじゃが」

 後ろのヘルメットから声が投げかけられる。

「なに、じっちゃん?」

「お主、先ほどから胸に紫色のコアクリスタルがあるじゃろ。あれはいったいなんじゃ?」

「ああ、それは――」

 レックスがこれまでの経緯を話そうとしたその直前、突如肩を強くつかまれた。はっと振り向くと、じっと前を見据えているメツがいた。

「どうしたの、メツ?」

「シッ、なんか聞こえねぇか小僧」

 レックスは耳を澄ませてみる。すると金属音が小さいが遠くから響いている。

「え……あ――この音、誰か戦っている!」

「それに大気中のエーテルも震えてやがる。こいつは間違いねぇな」

 ニアと、そのブレイド・ビャッコがそこにいる。レックスはメツに頷くと、駆け出していった。

 すると案の定、ニアとビャッコが一匹の巨大なグロッグに襲われているのが見えた。

「どうやら消耗しているようじゃの、レックス!」

「分かってる!」

 レックスはすぐさま武器を抜き払い、メツはエネルギーをレックスの剣に送る。禍々しい闇のエネルギーが凝縮された瞬間、レックスは思い切り武器を振った。剣から放たれたエネルギーはまっすぐグロッグへと向かい、直撃した。

 グロッグがよろめいたのを見て、ニアとビャッコはこちらを振り向く。そして、ニアは目を見開いた。

「手を貸すぞ、ニア!」

「レックス――なんでここに!?」

 状況の変化についていけないニアだったが、メツがニアの前に立つ。

「話はあとだ嬢ちゃん! 今はこいつをぶっ倒すぞ!」

「おっしゃる通りです。今こそ反撃の好機です!」

「――っ、わかった!」

 状況は後で整理すればいい。とにかく、目の前の障害を取り除かない限りは、始まらない。

 

 

 夜が更けて、レックスたちは火を囲んでいた。温かい焚火を囲みながら、ニアたちと共に状況整理をし始めた。じっちゃんがこんなにも小さくなってしまった経緯や、レックスとメツとの出会いの話も、ここでした。

「――なるほど、そいつと楽園にね」

 メツを見ながらニアは呟く。ニアは楽園の存在を完全には信じてはいない。けれど、天の聖杯メツがいるのだからただの想像上の物ではないことも認めつつあり、否定的な言葉は出さなかった。

「ちゃんとお礼言ってなかったね。助けてくれてありがとう。ビャッコから聞いたよ、アンタがここまで運んでくれたって」

「巨神獣様、ありがとうございました」

「例には及ばん。お前さん達もレックスを助けてくれたんじゃからの」

「いいよ、別に――」

 そういうとニアは少しだけ視線を逸らした。

「しっかし便利なもんだねえ、巨神獣ってのは」

「全ての巨神獣ができることでは――」

「その話はいいよ、もう」

 レックスがぶっきらぼうに吐き捨てるとじっちゃんはじっとレックスを睨んだ。

「いいよもう――じゃないわ! 何じゃその言い草は! そもそもお前がそんなわけのわからん仕事を引き受けたのが原因じゃろがい。じっちゃんはここでのんびりしててよ、といって飛び出していきおって――」

「あーはいはいわかりました。俺が全部悪いんです、すみませんごめんなさい」

「テキトーに謝りおってからに……まったく、反省の色が見えん」

「そりゃできないよ」

「……何でじゃ?」

 レックスの返答にじっちゃんは小さな腕を組んで問う。

「だってオレがあの場所にいなけりゃ、メツはあいつらの言いなりに――」

「ふん、言うじゃねえか」

「――そんなの絶対だめだ。あんな奴らにメツは渡せない」

 神妙な声で語られた訳に、じっちゃんはただ唸り、言葉は発さなかった。

 

 

 

 その後、いろいろあった位置に地であったのですぐに眠気が来てしまい、レックスとニア、そしてビャッコは火の回りで寝てしまった。しかし、メツだけは火の近くの小さな湖で、一人佇んでいた。

「何じゃ、まだ起きていたのか」

 セイリュウは、パタパタと小さな羽根を動かして、メツの隣へと飛んでいく。メツはちらりと見やると、ああと答えた。

「なんだか眠れなくてな。困ったもんだぜ」

 メツは湖の奥にある樹木を見上げた。

「そういや、挨拶が遅れちまった。久しぶりだな、セイリュウ」

「――うむ。昔に比べて、少しは丸くなったかの」

「ま、いろいろあったしな」

 メツは、目を細めて俯いた。

「――レックスに命を分け与えてくれたこと、礼を言おう。そのうえでききたい。レックスにした話、あれは本意か?」

 つまり楽園にいくという話だ。メツは瞳を閉じ、何かを堪えるような表情をした後、頷いた。

「――ああ、本意だ」

「そうか――ならば信じよう。ほかの誰でもない、お前さんの言葉を」

「ありがとな。それに、俺にはもう一つ目的ができた」

「シンと――ヒカリか」

「ああ。あいつらをこのままにはできねぇ。というより、あの状況がすでに訳分かんねぇんだ」

「確かにな。500年の時がたったとはいえ、なぜあの二人がともに居るのだろうか」

「――ま、天の聖杯の宿命って奴だ。受け入れるさ」

 メツは乾いた笑いを浮かべる。セイリュウは、笑っていない。

「巻き込むのか、レックスを」

「……できれば巻き込みたかぁねえさ」

「尤もあの子はこっちがいくら拒絶しても首を突っ込むだろうがな」

「ふん、厄介なドライバーだよ。きちんと教育しておけよ」

「それは無理な相談じゃ。――お主の胸のコアクリスタル、半分になっとるの。お前さんも背負ったということか」

「そういうこと、かもな」

 メツは頭を掻いた。だが、目はいたって真剣だ。

「――レックスを、頼んだぞ」

「ああ」

 そういうと、セイリュウは寝床へと去っていく。メツは後姿をただ見送るだけだった。まだまだ、眠気はこないようだ。

「……チッ、むしろ眼が冴えちまったな。ま、ガキばっかだし見張りでもしてるか」

 メツは腕を組みながら、目の前に広がる湖を見つめていた。 




膝枕させたかったけどホモになっちゃうから……

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