ガチヤリ。ドアのぶが開いた。
中に入ってきたのは四人の男だった。黒いシルクハットのような長めの帽子をかぶり、緑と赤の色鮮やかな制服のようなものを着ている。左右の腰にはそれぞれ棒と剣がさしてある。
(こいつらもみんな厳つい顔じゃの。きっとブタ男と同種じゃな。どうせ夢も叶わんなら道連れじゃ!)
そう直感したチェリーはなるべく元気がないように見せるため下に視線を集める。近づいた瞬間に首に噛みつき、頸動脈を噛みきるつもりだった。もはや彼女に躊躇する気はない。
四人の男たちは最初、部屋に漂う血の匂いに顔をしかめ、ブタ男を見てさらに顔を険しくした。
そして最後に血まみれになった一人の少女を見つけ、もともと険しかった顔は憤怒の表情に変わった。
比較的先頭にいた帽子から金髪が漏れている男はすぐに左側の腰にさしてある剣を抜いて少女に近づいた。
(こい、こい、こい、)
そしてあと一歩で射程圏内というところにまで入った。
が、不意に厳つい男たちの中でも一際厳つい大男が何かに気付いたように口を開いた。
「待て! 」
大男の声に反応して金髪の男は歩みを止めた。顔はとても不満そうである。
そんな金髪の男に大男はため息をついた。そしてゆっくりとブタ男の口辺りを指差し、その後少女をさして静かに言った。
「メルシーを使え」
大男の言葉に金髪の男は雷に撃たれたように固まり、その後少女を驚愕の表情で見たあと、頷いた。
右手に持っていた剣を腰の鞘にしまい、右側の腰にさしてある棒を抜いた。そして棒を少女に向け小さく言う。
「スリープ」
次の瞬間棒から煙のようなものが飛び、少女の周りを漂う。5秒程漂ったあと煙は段々と消えていった。
そうして意識を失った少女は守備隊により身柄保護兼重要参考人として本部にある留置場に連れていかれることとなった。
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(ある守備隊の団員)
俺の名は光速のラインバック、守備隊入隊二年目で赤組に抜擢された期待のホープだ。赤組はメンバー10人というまさに少数精鋭の部隊であり逮捕や潜入など危険の多いところだ。まあつまりは無能には出来ないってことだな。はっはっは。
「おい新人、うるさいよ。黙って仕事しろ。」
ちぇ、注意されちまったぜ。実力社会のここでは弱ぇ奴なら無視することもでるるんだけどなーこいつは無理だな。
今俺に注意した奴はこの赤組でも三番手の実力を持つからな。
キンリート・カルロス。金髪のロン毛のいけすかねぇ野郎だけど年が俺とたった4つしか違わなくてこの実力は正直尊敬してる。まあ口うるせぇ野郎だけどな。
「どうしたんですか先輩。なんかイライラしてませんか?」
俺の横にいた同期のケビンが言った。眼鏡を抑えながら言ってるのがなんか腹立つ。このネクラ眼鏡め。ちなみにこの眼鏡は報告書を書くふりして落書きを書いてやがった。ホントにこんな奴が同期とか悲しすぎるね!
「うん? いや別にイライラしていたわけではないぞ。お前らがあまりにも集中していないからな。今期は外れかもな。」
な、なんだとう? 俺が外れの訳があるか! 外れは横にいるやつだけだよ。
「そうなんですか? てっきり僕は例の女の子のことが気になってるんじゃないかと思ったんですけど。ちなみに外れは隣でぶつぶつ言ってるラインなんとかだけですよ。」
あー? なんだとテメェ喧嘩売るつもりかぁ? いいぜ勝ってやるぞその喧嘩ぁ。
「女の子? 何を言ってるかわからないなー。あーそこにいるなんとかバックが外れなのは同意だ。ただし付属で眼鏡もついているがな。」
あーテメェ金髪くそ野郎、誰がなんとかバックじゃこの野郎ぅ。まあ眼鏡が俺のオマケっていうのはあってるかもな。
「えーそうなんですかー。意外でしたー。でも変だなぁ副隊長があのときのカルロスの顔はひと三人位殺せるっていってたんですが。確か今日あたりに意識が回復するから会いにいく予定じゃないんですか?」
「ぐ、あ、会いに行くのではない。尋問だ。彼女は重要参考人だからな。」
お、金髪が返答にどもるなんて珍しいな。さては図星だな。
「凄くかわいいって噂ですけど彼女。もしかして職権乱用ですか?先輩。」
眼鏡も畳み掛けてくるな。ここは乗るしかないか。
「先輩きめぇっすね。」
数秒後光速のラインバックは地に沈められた。
余談だが彼への周りからの評価は馬鹿とか空気読めないやつというマイナスな物が多い。
「あ、言っときますけど、この鈍足のリュックサックの方が付属ですからね。まあ誰の目から見ても明らかでしょうが。」
余談だがメガネも同じくらい不評だったりする。
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(む、ここはどこじゃ?)
チェリー(仮)は目を覚まし、自分がフカフカのベッドで寝ていることに気がついた。
(ワシはどうしたんじゃっけ?)
チェリーは必死に記憶を辿ってみるが、最後の部分だけ思い出せなかった。確か自分は四人の男に襲われ、道連れにしようと画策したはず、いくら悩んでもそこまでしか彼女は思い出せなかった。
「ワシは無力じゃの」
ぽろっと出た自分の言葉に彼女は酷く傷ついた。かつてあれほど夢のためなら全てを投げうってでもやるという情熱があった彼(彼女)だが、度重なる出来事でかなりメンタルが弱っていた。
ひとりでに涙が流れ、頬をつたう。声は出さずただ涙を流すだけ。その光景は彼女にとっては辛いものだったがもし誰かがこの光景を見ていたのなら一瞬で惚れてしまうだろう。それほど美しかった。
否、見ている人物はいた。ドアを少しだけあけ、バレないように息を潜めていた。誰から見ても変態であるそいつは少ししてこの場面を誰かに見られると不味いと気付きすぐにその場を後にした。
ドアの目の前に金色の長い髪が落ちているのを眼鏡をかけた真面目そうな青年が見つけたそうで、犯人の変態はその後陰から金髪の変態と呼ばれているらしい。
続く。
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