初めましての方は初めまして、それ以外の方はご機嫌ようです。
最近、お仕事やらスマホの修理やら事故にあったやらで忙しく、小説を更新出来ませんでした…
ごめんなさい
その日は本来、ありふれたただの休日になる筈だった。
「このバケモノが!!」
「____________________________________________________」
「ユー、リ…」
しかし、ありふれた休日にはならなかった。
彼達に刻まれた運命がその日、大きなうねりをあげた…
朝の7時半、一部の例外を除いて誰しもが平等に朝の日差しを浴びながら通学、通勤をするその時間、少年もその例外に外れる事なく通学をしていた。
少年の名前は丹童子夕璃。
父譲りの高い身長と母譲りの明るい茶髪、整った顔だか愛想がなく、ぶっきらぼうなイメージを抱かせる少年である。
夕璃が通った道にいる者は皆、例外なく夕璃に視線を向ける。
それもそうだろう。夕璃は今年の4月に高校二年生となった訳だが父より受け継いだ遺伝子の為か人より身長が高く、190の大台を超えて今も尚、伸び続けていた。
そんな、周りの好奇の視線の中、夕璃は小さく溜め息をつく。
(はぁ、帰りてぇ…)
幼い頃はまだ人並みだったが小学校を卒業する頃からグングンと伸び始め、今では頭一つ分以上に飛び抜けてしまった身長を猫背のように丸めて目立たないようにして歩く。
もう、いっそ学校をフケる事さえ視野にいれる事さえ考え始めるとビッタン!!と大きな音と共に強い衝撃が走る。
瞬時に背中を叩かれたと理解し、後ろを振り向くと何年もの付き合いになる見慣れた顔の少年がいた。
「うっす、ユーリ。朝から暗い顔してるな!」
「…イッセー、おはよう。お前は相変わらずテンション高いな」
背中を叩いたのは幼なじみと言っても過言ではない少年。
名前は兵藤一誠。愛称イッセー。お向かいに住むクラスメイト。
そして、自身を誰よりも理解している数少ない貴重な友人である。
「いやぁ…昨日、元浜から新作を借りて見たら凄くてな!」
「イッセー、別に見るなとは言わないけど程ほどにしとけよ?ただでさえ、元浜と松田と一誠は三人で一組のエロ坊主だと思われてるんだから。まぁ、お前は女子とかにセクハラはしてない分マシなのかも知れないけど」
そう、この兵藤一誠は学園ではある意味有名な人物の一人である。
丸刈り頭の男、松田。
眼鏡を掛けている元浜。
そして、三人の中で最も名の知れた男が兵藤一誠。
三人とも悪い意味でこの学園で有名な人物たち。
一誠自身は知らないが見た目は悪くなく、寧ろ整った顔立ちをしていて熱血漢でお人好しである一誠は極々一部ではあるが人気がある。
そんな彼の少ないながらのファンを悲しませるのもどうかと要らぬお節介を少し焼いてしまう。
「分かってるよ。一番のダチの忠告ぐらい俺も聞くさ。あと、残念ながらお前も含め四人組だとも聞くぞ?」
一番の友達と言われ、少しこそばゆく感じ、頬を掻きながらもエロ坊主三人組に含まれつつあるのを苦笑する。
しかし、一誠は勿論、他の二人も自身に素直なだけで悪い人物ではないので嫌いになれなく、何だかんだで世話を焼いてしまう。
これは母に似たのかも知れないなと一人、自己完結しながらも学園と向かっていった。
私立駒王学園。
それが夕璃が通う学園の名だ。
何でも、つい最近共学化を果たす前までは女子高であった為、女子と男子の比率が一般的な学校とは異なり女子の比率が高い。
その割合は女子が7男子が3と言う正に一般的な学校とは正反対の比率である。
そんな学校へと夕璃が進学した理由は二つ。
数少ない友人である一誠に誘われた事と家から近いという二点である。
しかし、そんな安易な考え(主に家から近いという理由)で学校を決めた事を既に一年以上在学した今では若干の後悔をしている。
(…周りの視線が痛い)
男子が少なく、更に夕璃自身が他より目立つ為に周りの目を集める。
そんな事は誠に残念であるが慣れつつもあった、が本日は何時もと違った。
一誠との会話が弾み、前を見ていなかった為にコントよろしく、教室のドアの上ふちに頭を強打したのだ。
今でもクスクスと笑い声が聞こえ、仕舞いには「丹童子くんって意外と天然?」などの言葉が聞こえる。
自分としては声を大にして「俺は天然ではない!」と叫びたいがそんな事すれば注目は必須。
人並み程度の度胸しかない夕璃は黙ってその言葉を耐えるしかないのだ。
しかし、そんな周りからの生ぬるい視線も悲鳴と共に霧散する。
ハッと顔を上げれば女子にセクハラ紛いの台詞を吐きながら騒ぐ元浜と松田。その隙に近くに寄ってくる一誠がいた。
「あー、何だその…ユーリ、とりあえずドンマイだ」
「そうだぞ、ユーリ。あんまり周りを気にするな」
「気にしてるから周りも気にするんだから」
一誠が気遣いの言葉をかけてくると何時の間にか戻ったのか元浜と松田も声をかけてくる。
この友人達は自分をお人好しだとを言うがそれはお前達もだろうと思いつつもありがとう、助かったと礼を述べた。
三人も気にするなとニカッとした笑みを浮かべる。
「うっし、ユーリが元気になるようにこれをやろう」
松田がどこからか鞄を取り出し、中から大量の本を机にドカドカと音を立てて山積みにする。
その本は肌色が七割以上を占める本。
つまり、エロ本だった。
机に山積みにされた本を見て元浜と一誠はすげーなどと感想を上げていたが夕璃はと言うと…
「や、やめろーっ!!」
顔を真っ赤に染めて席を立ち、大声を上げて一度は霧散した視線をまた集めていた。
思わず叫びを上げたその日の放課後、夕璃は珍しく一人で帰宅していた。
決して、夕璃が怒って一人帰っているなどの理由ではなく、自宅に三週間ぶりに両親が帰ってくるからだ。
現に一誠からは共に帰ろうと声を掛けられ、昇降口までは共にいたが、両親が久しぶりに帰宅するから急いで帰る事を伝え、全力疾走で帰宅したのだ。
その時、一誠は「相変わらず、アルマさん達が好きなんだな…まぁ、夕璃らしいけど」と苦笑いしながら呟いていたのだがそんな事があったとは知らず、そこそこ距離のある自宅へと三分も経たずにつく。
全力疾走して上がった息を整えながらも家の鍵を開けようとすると…
「「おかえりなさい、夕璃。そしてただいま」」
三週間ぶりの両親が後ろに立っていた。
「どうですか、学校は?」
「はい、母さん。相変わらずイッセー達と騒がしいけど充実した日々を過ごしてます」
19時を少し回った時間、夕璃は父と母と三人で会話をしながら食卓を囲んでいた。
目の前に座るのは母の丹童子ルリ。
高校生の息子がいるにも関わらず、若々しく二十代にしか見えない優しく、美人な母である。
なんでも、良い所のお嬢様だったらしく、とある事件を気に父と出会ったらしい。
「そうか、一誠くん達とか…久々に会いたいな」
「分かったよ、父さん。明日辺りにでも言っておくよ」
その母の隣に座るのが父、丹童子アルマ。
身長の高い自身よりも更に身長が高く、小柄ら母と並ぶと更に目立つ。
父も母と同じで子持ちには見えないくらい若々しい。
二人共に自身が自慢出来る両親だ。
「一誠さん達と仲良くするのですよ、夕璃。きっと、彼達はあなたの生涯の友達になるでしょうから」
「今時珍しいまでに真っ直ぐな目を持ってるからな、一誠くんは」
「はい、父さん母さん」
こうして夜は友人の話をしながら更けていく。
「えっ!?彼女が出来た!?本当か、イッセー!?マジか!?おめでとう!!」
「ありがとう、ユーリ!お前だけだぜ、祝福してくれたのは…」
翌日、両親と話込んだ為に遅刻ギリギリで登校した学校で会った一誠から驚くべき報告を聞く。
なんと、昨日、念願であった彼女が出来たとの事。
名前は天野夕麻と言うらしく、昨日のあの後、校門で告白されたらしい。
一誠と共に写る写メを見る限り、長い黒髪に初々しさを感じる笑顔と抜群のスタイルの女の子だった。
隣に写る一誠とお似合いだと素直に思えた。
「何?松田と元浜にはまだ言ってないのか?」
「いや、言った。けど…『 なんでこんな美少女がイッセーの彼女なんかにぃぃぃぃ!』とか『世の中のシステムが反転したとしか思えない……。イッセー、まさか犯罪でも起こしたのか?』とか言われた」
「いや、まさかあの二人でも流石に…すまん、ありえるな」
寧ろ、あの二人だから血涙を流しながら騒ぐなと考え、思わず謝ってしまう。
「いや、ユーリが謝る事じゃねーよ。まぁ、そんな理由があって嬉しいんだよ…ところでユーリ、そのだな…」
「どうした、イッセー。言い澱むなんて…馬鹿素直で思った事を何でも言うお前にしては珍しいな」
「うっせぇ。それが…夕麻ちゃんを近々デートに誘おうと思うんだけどさ、どんな場所に行けば良いと思う?」
あぁ、なるほど。
一誠の人生初めての彼女をデートに誘う。
それはどんな人でも初めての体験には緊張や不安、様々な感情が心に湧き出てくるのだろう。
夕璃には勿論、デートどころか恋愛経験など皆無。
しかし、友の頼みなのだからと真面目に考えこむ。そして、フッと両親の姿が思い浮かんだ。
そう言えば母が話てくれた昔話にデートの話があったではないか。
「これは昔の母さんと父さんのデートの話なんだけどさ」
「アルマさんとルリさんの?…それは参考どうのこうのは別にしても気になる!」
「何でも、初デートは鎌倉の方に行ったが、そんなお金を掛けないデートだったらしい。学生らしく、父さんの思い出の場所とかに行ったらしいぞ」
「そうか…背伸びせずに自分らしく、って事か…ありがとうな、ユーリ」
自分に経験が無いために父と母の話しか言えなかったが、それでも一誠には思うところがあったらしく、いつものように右手を前に突き出してくる。
その右手に「それは何よりだ」と言いながら自身も同じく左手を突き出し、拳を合わせる。
これが一誠と夕璃の昔からの感謝の表し方。
助けて貰った側が腕を突き出し、助けた側がそれに拳を合わせる。
「さて、授業の準備するか」
「おう!…って、宿題忘れてた!ユーリ、ノート貸してくれ、頼む!!」
「構わないけど、今度ジュース一本な?」
「サンキュー!」
この時はまだ気付いていなかった。
運命の足音が直ぐそこまで来ているのを。
「暇だ…」
一誠に彼女が出来たと報告された日から数日が経った日曜日、夕璃は特にやる事もない為に散歩の途中に寄った町の一角にある広い公園で一人虚しくたい焼きを食べていた。
この数日間の間に父や母はまた急ぎの仕事が入ったらしく、今頃は自身の叔父や叔母に当たる人物達と遠く離れた海外を飛び回っているであろう。
その為、一人でいるには広すぎる家にはあまり居たいとは思えずに気が赴くままに町中を散歩して回っていた。
思えば、十数年と生きた人生の中で友人という友人は僅かにしか出来た事がなく、趣味という趣味がないのもあり休みの日は大抵が一誠に遊びに誘われ過ごしていた。
(一誠が友人じゃなかったらその僅かな友達もいなかったんだよな、俺)
そんな自身の僅か十数年の人生に苦笑いが込み上げる。
一誠は自分とは違って自分に正直で、正直過ぎる為に勘違いされやすいが友人作りが上手い。
対して自分は常にぶっちょう面という自覚もあるし、素直に自分を表現する事が苦手だ。
今回、一誠に彼女が出来たのだからこれを機に少し変わってみようと心に決めたその時、聞き慣れた男の声と見知らぬ女性の声が聞こえた気がした。
「…今の声、一誠か?」
デートがどんな感じなのかと野次馬根性が湧き出し、からかうついでに様子を見てみようと決め残っていたたい焼きを口に放り込むと声の方向へと向かった。
「…な、何なんだよ、コレ」
「あら?何処から入ってきたのかしら、この人間は」
「に、逃げ…ろ、ユーリ」
一誠は確かにいた。
しかし、服を紅に染め、顔色が白くなった姿で…
夕璃は反射的に一誠の元へと向かい容体を確認する。
どのような事をすればこうなるのか分からないが一誠の腹には穴が開いており、血が流れていた。
急いで自身の服の袖を破り、自身に血が付く事も厭わずに傷口へと当てるが流れ出る血があまりに多すぎる。
思わず舌打ちをしてしまうが何もしないよりマシだと思い、逃げろと呟く一誠を無視して携帯で救急車を呼ぼうとするが何かが携帯を貫き、ガラクタへとなる。
誰だと視線を向けると黒い翼を羽ばたかせて空を飛ぶ女の姿だった。
確か…一誠に見せて貰った写メに映っていた女、天野夕麻。
訳も分からないままだがそれでも理解が出来た事が一つだけあった。
「あら?意外と美形じゃない。どう、私達について来る気はない?可愛がってあげる」
親友が目の前の女に殺されかけた事。
許せない。
コイツだけは許せない。
ズタズタにして微塵にしても足りない。
「何よ、その目。この至高の堕天使となるレイナーレ様を睨むなんて死にたいのかしら?」
「黙れ、クソ女。俺の親友を殺そうとしたな。お前だけは塵も残さずに消す」
普段の夕璃と長く付き合いのある一誠は気がついた。
今の夕璃は何かが普段と違う。
まるで鋭く、そしてその分だけ脆い刃。
「消えろ、バケモノ」
夕璃の周りに突風が吹き荒れ、夕璃を体内から現れた闇よりも暗い黒の宝石が包む。
ビキビキと音を立て、数秒経つと水晶が割れる甲高い音と共にそれは現れた。
何処までも無骨なドス黒い鎧を身に纏った夕璃が。
「______________________________________________________________________________________」
聞くものを戦慄させる声にもならない叫びをあげながらそれは高さ数十メートルに浮かぶ天野夕麻…否。
堕天使レイナーレへと向かい、脚力に任せた跳躍で襲い掛かる。
「クッ!!唯の脚力任せの跳躍で此処まで跳んでくるなんてバケモノ…ねっ!!」
レイナーレは目の前で起きた事に少し放心するが、夕璃が跳び掛かってきたことにより片翼だけを羽ばたかせ半身をずらし、夕璃の体当たりと呼べるような拳による攻撃を回避する。
レイナーレへの攻撃が外れ、憎しみに支配された夕璃はそのまま地にへとその拳を炸裂させる。
凄まじい轟音と大量の砂塵を伴い、地は割れ、深さ数メートルのクレーターが出来たのを見たレイナーレはゾッと背中に寒気が走った。
自身が人間よりも遥かに頑丈な肉体を持つ堕天使だとしても間違いなくそれ相応のダメージを貰う一撃だった。なら…短期決着で夕璃を殺す。
それがレイナーレの出した答えだった。
堕天使特有の光の鎗を最大出力で手中に作り出し、未だに獣のような雄叫びを上げる夕璃に投合する。
夕璃が起こした轟音に匹敵する爆音を上げ、空中に舞った砂塵が夕璃の姿を眩ませた。
(…殺った)
間違いなく自身の出せる最高威力の攻撃を放ち、勝利を確信する。
だが、それは一瞬で絶望へと変わった。
「____________________________________________________」
未だに巻き起こっている砂塵から見えた無傷の夕璃とその叫び。
一瞬だが目が合った瞬間にそれを見た。
布切れのようにズタボロにされて既に息絶えた自分。
それでも攻撃と言う暴力を止めようとしない怪物。
怪物の背後にある仲間だった三人の肉片。
「っ!!!」
アレにはどうあがいても勝てない、殺されると本能的に悟ったレイナーレはその場に黒い羽を残して逃げ去った…
その数分後、この地の裏の支配者、リアス・グレモリーが目にした光景は…
「ウオォォアアアァァァァッ!!!」
真っ赤な血に濡れた少年と空に慟哭する一人の少年だった。
…次回は未定です。
さて、鋼も書かないと…
來々來李