Fate / replay night   作:JALBAS

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キャスターの行動を見逃せなくなった事と、受けに回って翻弄され続けた経験から、一転攻めに回る士郎。
どんどん、好戦的に変わっていきます。
但し、何の勝算も無く無謀に突撃する訳ではありません。アーチャーのように、敵を観察して冷静に対処します。




《 第六話 》

 

士郎の気迫に圧され、凛達もその日の内に柳洞寺に攻め込む事に同意した。

日が沈んだ後、一行は衛宮家の門の前に集まり、柳洞寺に向かう。

到着するなり石段を駆け上がり、境内を目指す。

山門の前に差し掛かったところで、アサシンが行く手を塞ぐ。

「アーチャー、ここは任せたわ。あいつを引付けて、私達が通る道を開けて!」

「了解した。」

すかさず、凛が指示を出す。しかし、セイバーがそこに口を挟む。

「ま……待て、アーチャー。私は、彼と再戦を誓った。ここは私が……」

「駄目だ!」

セイバーの言葉を、士郎が遮った。

「ま……マスター?」

「遠坂の判断は正しい。ここは、アーチャーに任せるんだ。」

「し……しかし、それでは私の誓いが……」

「マスターの指示に従えないのか?セイバー!」

士郎は、セイバーを怒鳴りつけた。その剣幕に、セイバーだけではなく凛も驚いている。アーチャーだけは、無表情で士郎を見詰めている。

「……わ……解りました、マスター……」

少し項垂れて、セイバーは士郎の指示を受け入れる。

「……じゃあ、お願い!アーチャー。」

改めて、凛は指示を出す。無言で反応し、アーチャーは双剣でアサシンに斬り掛かる。そうして、アサシンを石段の脇に追い込んでいく。

「今よ!」

凛の合図で、士郎達は一気にその横を駆け抜ける。

そして、山門をくぐって行く。

 

士郎達が山門をくぐった後、アーチャーはアサシンに問い掛ける。

「意外だな?すんなり侵入者を見逃すとは……そもそも、お前はセイバーとの勝負に固執していたのではなかったか?」

「ふっ、仕方あるまい……気に喰わぬ女狐とはいえ、私の主だ。その命には、従うしかあるまい。」

「何っ?!」

アーチャーは、一旦後方に飛んで間合いを取る。

「どういう意味だ?」

「どうもこうも言葉通りよ……セイバーとあの小僧どもを通すのは、キャスターの指示でな。私の役目は、ここでお前を足止めする事よ。」

「何だと?」

「判らぬか?もうお前達は、あの女狐の罠にまんまと嵌っているのだ。」

 

 

 

境内に辿り着いた士郎達を、待っていたかのようにキャスターとそのマスターの葛木が迎える。

「遠坂に衛宮か?」

葛木が言う。

「間桐だけでは無く、お前達までマスターとはな……魔術師とはいえ、因果な人生だ。」

士郎が、葛木に問う。

「葛木、あんた、キャスターに操られているのか?」

「その質問は的を射ていないな、衛宮。仮に私が操られていたとして、その者にそんな自覚があると思うのか?」

いきなり質問の矛盾点を突かれ、士郎は顔を顰める。

「く……そう言うのなら、あんたは正気って事だな?なら、その上でキャスターのやっている事を容認しているのか?」

「キャスターがやっている事だと?」

「そいつはここに巣を張って、町中の人間から魔力を集めてる。ここ最近の昏睡事件は、全部そいつの仕業だ。このまま放っておけば、いずれ死んじまう人間も出るだろう。」

「成程、それは初耳だ……だが、それは悪い事なのか?衛宮?」

「何だって?!」

葛木の回答に、士郎も凛も愕然とする。

「キャスターも、随分半端な事をしているな。一息に命を奪った方が、効率がいいだろうに。」

「あんたは、無関係な人間が巻き込まれてもいいって言うのか?」

「構わんな、他人が何人死のうと、私には関係無いことだ。私は魔術師では無いし、聖杯戦争とやらにも興味は無い、誰と誰が殺し合おうと構わん……私は、そこいらに居る朽ち果てた殺人鬼だよ。」

「そうか、では、ここで死しても構わぬのだな?キャスターのマスターよ!」

後ろにいたセイバーが飛び出し、葛木に向かって突進して行く。

「ま……待て、セイバー!」

士郎は、セイバーを制止するが、セイバーは止まらない。弾丸の如く葛木に向かって行く。

ただ、士郎がセイバーを止めたのは、葛木の身を案じての事では無かった。

“あいつは、どうやったか知らないがライダーを殺した男だ。魔術師では無いとはいえ、油断ならない。”

「お待ちなさい!セイバー!」

キャスターは、突進するセイバーを阻止しようと光弾を放つ。

しかし、その光弾は悉くセイバーに弾かれる。

「な……何ですって?」

セイバーの体をオーラのようなものが覆い。魔術を無効化している。

“す……凄い。セイバーの耐魔力は、ここまで強かったのか?アーチャーだって、あの光弾を躱すしかなかったというのに……”

一気に間合いを詰めたセイバーが、葛木を一刀両断した……

と思われたが、葛木は肘と膝で、セイバーの剣を受け止めてしまった。

「何?」

「侮ったな?セイバー!」

そして、素早くセイバーの頭部に一撃を加える。

「ぐっ……」

とっさの反応で致命的なダメージは避けられたが、体勢を崩すセイバー。そこに、葛木の正拳が矢の如く飛んで来る。何発かは交わすが、何発かは喰らってしまう。

茫然と、その光景を見詰める士郎と凛。

「う……うそ……」

「拳が、魔力で強化されているのか?」

「良く交す。動体視力というより、勘の鋭さ故か?」

僅かな隙をついて、葛木が右手を繰り出す。正拳と判断して後方に躱すセイバー。だが、葛木はとっさに手を開き、その指をセイバーの喉元に突き刺した。

「ぐはっ!」

更に、その手で首を握り締め、そのままセイバーを吊り上げる。

「ぐわあああああああっ!」

「だ……駄目だ!セイバー!」

このままでは、セイバーもライダーの二の舞と、叫ぶ士郎。

ただ、セイバーもそのままやられはしなかった。とっさに葛木の腕を切り払おうと。剣を動かす。

しかし、葛木もそれを察していたのか、セイバーの首を絞めるのを止め、そのままセイバーの体を振り回して山門に向かって投げ飛ばした。

「セイバー!」

「そんな……馬鹿な?」

山門に叩きつけられ、項垂れるセイバー。かなりのダメージを喰らい、直ぐには起き上がれそうにない。

「マスターの役割を、後方支援と決め付けるのはいいがな、例外は常に存在する。私のように、前に出るしか能の無いマスターも居るという事だ。」

 

 

 

山門では、アーチャーとアサシンの攻防が続いていた。

だが、アーチャーの剣では、アサシンを倒すのは難しかった。

「どうした?そんな事では、いつまで経ってもここを圧し通る事などできぬぞ。」

「確かにな……」

アーチャーは後方に飛び退いて、再びアサシンと間合いを取る。

「私も、サーヴァントとしてマスターの身が心配だ。ここで、時間を食っている訳にはいかん。」

アーチャーの体から、白いオーラが立ち昇り始める。

「私の真髄を見せよう……I am the bone of my sword.」

「何?」

「Unkown to Death. Nor known to Life.」

魔力の渦が、アーチャーを包み込む。

そしてアーチャーは左手を前に翳し、最後の呪文を唱える。

「Unlimited Blade Works.」

突如、周りの景色が一変する。見渡す限りの荒野、そこには無限の剣が、まるで墓標のように刺さっている。

「これは……固有結界か?」

「ご覧の通り、貴様が挑むのは無限の剣……剣撃の極地、その身に受けるがいい!」

 

 

 

「上等、セイバーは面食らってやられたけど、要は近付かれる前に倒せばいいんでしょ?」

凛は、葛木に向かってガンドを放つ。だが、素早い動きで全て交わされ、あっという間に間合いを詰められてしまう。葛木の正拳が凛を捕えようとしたその時……

「遠坂っ!」

士郎が割って入り、葛木の正拳を弾いた。

「え……衛宮くん?」

士郎の両手には、アーチャーと同じ白と黒の夫婦剣が握られていた。

「何ですって?あの坊や……投影魔術を?」

今度は、キャスターが驚く。

「うおおおおおっ!」

葛木の正拳を、士郎は夫婦剣で悉く弾く。一度聖杯戦争を終盤まで戦い、アーチャーの戦闘をその目に焼き付け、セイバーに鍛えられた士郎の剣術は、それまでとは比べものにならない程上達していた。

しかし、それでも幼少期から殺人術を仕込まれた葛木には及ばない。徐々に、追い詰められて行く。

「遠坂!援護を!」

「わ……分かったわ!」

凛が、後方からガンドで葛木を狙う。それによって、士郎は何とか葛木と互角に戦えるようになる。

「セイバー!立てっ!」

更に、士郎は叫ぶ。

「は……はい……マスター。」

士郎の叫びで、ようやくセイバーは立ち上がる。

「セイバー、お前はキャスターを討て!」

「はい!マスター!」

士郎の指示に、即座に反応し、キャスターに向かって突進して行くセイバー。

「そうはさせないわ!」

キャスターが、士郎達に向かって右手を上げる。すると、地面の中から、無数の骨のゴーレムが湧き出してくる。そして、士郎と凛に襲い掛かる。

「ちょっ……ちょっと、何よこの数!」

慌てて、ガンドでゴーレムを攻撃する凛。当然、それで手一杯になり、士郎の援護が出来なくなる。

「ぐっ……」

そうなると、途端に士郎は劣勢になる。

「ま……マスター?!」

思わず、足を止めてしまうセイバー。

「止まるな!」

そんなセイバーに、士郎は叫ぶ。

「キャスターさえ倒せばこいつらは消える!俺達を心配するなら、一秒でも速くキャスターを倒せ!」

「は……はい!」

士郎の言葉に、再び突進を開始するセイバー。

「ちっ!」

キャスターは再び光弾を放つが、やはりセイバーには通じない。そのまま、セイバーがキャスターを斬り裂くと思われたが、寸でのところで、セイバーの動きが止まった。

以前アーチャーを捕えたのと同じ、霧状のオーラがセイバーを包み込む。キャスターが今迄動かなかったのは、ここにセイバーを誘い込むためだった。が……

「……こんな程度か?」

ガラスが割れるように、その呪縛は崩壊した。アーチャーにも破られた呪縛が、セイバーに通じる道理は無い。

しかし、そんな事はキャスターは百も承知だった。要は、僅か一瞬でもセイバーを止められれば良かったのだ。その一瞬の間に、キャスターはその右手に持つ歪な短剣を振り上げていた。

「ここまでよ、セイバー。」

キャスターは、その短剣でセイバーの胸を刺す。

「うわあああああああああっ!」

凄まじい魔力の放出が起こり、苦しむセイバー。

「な……何?セイバー……うっ!」

突然、士郎の左手の甲から、令呪が消失する。それはキャスターの左手の甲に移り、新たに三つの令呪が刻まれる。

「ふっふふふふふ……ははははははははっ!」

高笑いするキャスター。

「驚いたかしら?これが私の宝具、ルールブレイカー!この世界にかけられたあらゆる魔術を無効化する、裏切りと否定の剣。契約は成立したわ。これからは、私がセイバーのマスターよ。」

その場に蹲って、未だ苦しむセイバーに、キャスターは言う。

「貴女もこれで私と同じ、主を裏切り、その剣を私に預けなさい!」

呆然とする、士郎と凛。

“あいつのあの剣に、そんな力が……”

士郎は、キャスターのルールブレイカーを凝視する。

「宗一郎様、もうお下がり下さい。その者達の始末は、セイバーにやらせます。」

「うむ……」

葛木は、士郎達から離れ、後退する。襲い掛かっていたゴーレム達も、後退して士郎と凛を囲むようにして待機する。

「さあセイバー。貴女の、元マスターを仕留めなさい!」

「ふ……ふざけるな……誰が貴様などに……」

逆らうセイバーに、キャスターは令呪を使う。赤い波紋が、セイバーを包み込む。

「いいえ、従うのよセイバー。この令呪がある限り、身も心も私には逆らえない!」

「う……うううっ……」

懸命に抵抗しようとするが、令呪に操られ、セイバーはゆっくりと立ち上がる。そして、士郎に向かって歩き出し、徐々に剣を構え、最後には走り出した。

「し……士郎!」

「来るな!遠坂!」

近寄ろうとする凛を制止して、士郎は静かに呟く。

「トレース……オン……」

一本の剣を投影して、向かって来るセイバーに叫ぶ。

「止めろ!セイバーっ!」

「?!」

それは、とっさの懸けだった。

本来の倍の場数を踏んでいる士郎は、窮地に追い込まれた経験が豊富だった。

この土壇場でも取り乱す事も無く、冷静に判断を下す。

“セイバーの耐魔力は、令呪に対しても抵抗している……現に、始めは命令に逆らおうとした。今の突進も、セイバーの全力とは思えない。なら、更に障害を増やしてやれば……

まともに行っても、俺がセイバーに一撃を入れるのは不可能だ。だが、お互い密着すれば……

ここで、急所さえ外せれば……“

セイバーの剣が、士郎を貫く。

しかし、セイバーの必死の抵抗で、剣は急所を逸れ、士郎の左肩口に突き刺さった。

「ぐはあっ!」

「士郎っ!」

凛は、悲鳴に近い声を上げる。

しかし、士郎の口元は笑っていた。今、士郎とセイバーの体は、完全に密着していた。

「う……うううっ……」

突然、セイバーが苦しみ出す。士郎に刺さった剣が消え、彼女は士郎から離れる。

「うわあああああああああっ!」

再び、セイバーから魔力の放出が起こる。そのセイバーの胸には、士郎が投影した短剣が刺さっていた。それを見た、キャスターが驚愕する。

「そ……そんな馬鹿な?あ……あれは?!」

セイバーの胸に刺さった剣は、正に、先程キャスターが使った“ルールブレイカー”だった。

キャスターの左手の甲から、令呪が消失する。そして、士郎の左手の甲に、新たに三つの令呪が刻まれる。

「え?……ど……どうなってるの?これ?」

訳が分からず、困惑する凛。

「な……何故?貴方が私の宝具を……ま……まさか、ひと目見て、複製したと言うの?」

狼狽えるキャスター。

「ふ……」

そこまでやって、力尽きて士郎は倒れ掛かる。

「マスター!」

すかさず、セイバーがそれを抱きかかえる。

「ええい、ならば!」

キャスターは、再びゴーレムを動かし、士郎達を襲わせようとする。

が、その時、無数の光の矢が雨のように降り注ぐ。それは、士郎達を囲むゴーレムを一掃する。

「アーチャー!」

凛が見上げる上空に、アサシンを倒して駆け付けたアーチャーの姿が。

「遅くなった。あとは任せろ。」

言いながら、アーチャーはキャスターに向かっても矢を放つ。幾多もの光の矢がキャスターに襲い掛かる。

「ちいっ!」

キャスターは飛行して交わすが、矢はどこまでも追尾して来る。

 

セイバーは、悲痛な表情で傷付いた士郎に言う。

「も……申し訳ありません。マスター……私が迂闊なばかりに、貴方をこんな目に……」

「……そんなことは……いい……」

「え?」

懸命に士郎に詫びるセイバーに、士郎は冷静に命令を下す。

「今度こそ……キャスターを討て……ここで……確実に……」

「は……はいっ!」

セイバーは、即座に立ち上がり、キャスターに向かって駆け出して行く。

キャスターは巨大な魔法陣を張って、追尾して来るアーチャーの矢を何とか相殺した。

が、その直後、目の前にセイバーが現れた。

「な……」

「はああああああああっ!」

セイバーの剣が、キャスターを一刀両断する。

「ああああああああああっ!」

断末魔の叫びと共に、キャスターは消滅していった。

「やった!」

歓喜の声を上げる凛。

セイバーも凛も、これで全てが片付いたと油断していた。そして、ある人物の存在を、一時忘れていた。そう、キャスターのマスター、葛木の存在を。

キャスターを失っても、葛木の戦いは終わっていなかった。彼は、セイバーがキャスターに向かうと同時に、士郎に向かっていた。

「士郎?!」

凛が葛木に気付いた時には、もう士郎は葛木の射程圏内だった。キャスターの魔術による強化は無くなっても、その戦闘力は常人を遙かに凌駕している。ましてや、セイバーの剣に体を貫かれ、満足に動けない士郎に葛木の暗殺拳を防ぐ術は無い。

セイバーも、凛も、もう間に合わなかった。

だが、アーチャーは違った。彼は、葛木の動きに気付いていた。しかし、あえて動かなかった。それは、士郎を見殺しにするためではなく、ある事を確認するためだった。

今にも、葛木の拳が炸裂するかというところで、俯いたまま士郎は呟く。

「ゲイ……ボルク……」

葛木の拳が士郎を捕らえるより一瞬速く、赤い槍が葛木の心臓を貫いた。

「……」

断末魔の声を上げる事も無く、葛木はその場に崩れ落ちた。

「え……あれは?」

「ランサーの……槍?!」

驚いて、呆然と佇む凛とセイバー。

キャスターの宝具に続き、士郎はランサーの宝具まで投影して見せたのだ。それも、ただ投影しただけでは無い。まるで持ち主のように、宝具としての魔力まで再現して見せた。

「や……やはり……」

だが、アーチャーだけはその投影自体では無く、別な事に衝撃を受けていた……

 






士郎は傷付きましたが、奇襲は成功し、キャスター陣営は全滅しました。
正義を貫くために、決して負けられない、死ぬわけにはいかない士郎。
そのためには、非情に徹し冷徹に行動していきます。
一度に契約解除と再契約を何度もさせられて、セイバーは振り回されっ放しです。
おまけに自らの手でマスターを傷付けてしまい、一人落ち込んでしまいます。
ただ、士郎はそんな事何とも思っていません。もっと大きな、決定的な裏切りを一度受けて、サーヴァントはそういうものだと割り切ってしまっていますから……
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