僕と騎士と武器召喚   作:ウェスト3世

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日常編
騎士の国


 ここ、日本は騎士の国である。日本にはたくさんの騎士が住んでいるが、その中でも最も有力な騎士たちが住んでいるのは王都、文月だった。

 そして、文月の騎士の戦い方は特殊である。自身の武器を召喚して戦うのである。この召喚した武器を『召喚武器』という。

 武器の強弱は何故かテストの点数で決まり、そのテストの点数が高ければ高いほど武器の威力は高くなる。しかし、武器の力を使えば使うほど点数は減っていき、0点になると武器は消えてしまう。(補習あり)。また、そうならないように点数は日ごろから補充しとかなきゃいけない。でなければ、『召喚武器』の本来の力を全く引き出せないからだ。

 しかし、一見便利そうなこの武器も実は召喚出来る場所が限られている。王都の文月はどこでも召喚できるが、それ以外では限られた場所でしか召喚できない。この武器を召喚できる場所を『試験召喚フィールド』と言う。

 また、これらのシステムを総合的に『試験召喚システム』である。

 この『試験召喚システム』を考案したのは現在、皇帝の座についているカヲール二世(藤堂カヲル)である。

 数年前まで小国に分裂していた日本だったが、その統一を果たしたのは当時、最も勢力のあった文月の軍だった。他の有力な小国の軍も文月軍との戦いによる敗北で従属を余儀なくされる。そうして今の日本は出来ている。

「この召喚システムのおかげで、王都の騎士は一層強くなったねぇ…」

 カヲール二世は満足げに笑う。この国の発展は全て自分のお陰だと言わんばかりの笑みだった。

「そうですね、ババ…じゃなくてカヲール王妃。」

 側近の竹原は素っ気ない返答を返す。眼鏡をかけたいかにもクールそうなオッサンだ。礼儀正しい雰囲気を余所っているのだろうが、何処か誤魔化せていない。

「おい、今ババアって言いそうだったよな?おい!」

 カヲール二世は側近を睨みつける。

「いいえ、なんでもありません。ババア」

「今こそババアって言ったよな?おい!」

 そんな王と側近のやりとりの中…。

「た、大変です!王様!」

 ある一人の騎士がカヲール二世の下へと駆けつける。焦燥を纏った表情だ。

「何だ、騒がしい!」

 カヲール二世はただでさえ側近にババア呼ばわりされているのに、その他の問題事を抱える予感を背中に感じ、苛立った表情を見せる。

「また、あの『バカ』がやらかしましたぁアアアア!」

 叫び声にも近い騎士の報告にカヲール二世は「ハア」とため息をつく。その『バカ』と呼ばれる者に心当たりがあった。

「まーた、あの『バカ』かい…。」

「い…いかが致します?」

 恐る恐る騎士が尋ねる。すると…。

「あの『バカ』にはアイツを送る」

「アイツですか」

「アイツだ。」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 王都の町はたくさんある店で人々がにぎわっていた。王都の町というだけあって、店の商品などもそれだけ豊富にそろっていた。

 しかし、そんな賑わいとは別に、どうでも良いような物事で賑わっている者達がいた。

「雄二、そのソーセージは僕のもんだよ!」

「てめェ、明久。コレはオレが買ったソーセージだ。返してもらおう!」

 にぎわっている理由はソーセージの取り合いだった。一人は長身で赤髪をワックスでツンツン立てた少年と、一人はいかにも思考能力の鈍そうな少年だった。

「雄二は良いよね?毎日『食』という文化を楽しめて!でも僕は毎日が塩と砂糖の毎日だ!何が食文化を大切にしろだ、バカヤローッ!」

 思考能力の鈍そうな少年はまず食文化に文句をつける。

「やかましいッ!何、食文化に文句付けてんだ!食費をゲームにまで扱うお前が悪い!」

 続いて赤髪の少年が怒鳴る。とても正当された意見のようにも聞こえる。

「いい度胸だ、雄二。なら剣を交えて、勝った方が勝ちってのはどうだい?」

 雄二と呼ばれる少年は一瞬戸惑った表情を作っていたが、すぐに返答をする。

「いいだろう、ぜってえ負けねえ!」

 ソーセージの取り合いごときで何故か二人の間には殺気が漲っていた。そんな二人を町の人々はハラハラした表情で見ていた。

「試験召喚、サモンッ!」

「サモン!」

 明久と呼ばれた少年は木刀を、雄二と呼ばれる少年はメリケンサックを召喚する。

 

 明久             雄二

 

 数学  22点    vs 数学 33点

 

「うおおおおおおおおおおおおおおッ!」

 二人の剣と拳が交わろうとするその刹那…。

 ギイイィイイイン!

 金属を弾く音がする。雄二と明久の攻撃を受け止めたのだ。

「そこまでよ、二人とも」

 目の前に一人の少女が現れる。

 少女は二人を下賤なものを見るような瞳で見下した。

 


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