僕と騎士と武器召喚   作:ウェスト3世

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親子

「王族暗殺集団の…トップだって!?」

 明久は息を飲む。よりによって自分の目の前にいるのが何故暗殺者なんだ!?と驚愕の行状を出さずにはいられない。

「んで、そこにいる坊主…。」

 サングラスをかけた男はジッと明久を見つめる。

「オレはそこにいる王女様を手っ取り早く殺したいんだが、お前が退くというなら特別お前は見逃してやる。だが、お前が抵抗するというなら、お前も殺すがどうする…?」

 その言葉に明久は困惑の表情を浮かべる。その表情を見た姫路は、

(明久君を巻き込んではいけない…。ここは…。)

 と、明久を巻き込まないためにヒメージ三世は自ら自身の命を敵に差し出すことを決心する。しかし…。

 

 ドギャぁああッ!

 

 明久は男に思いっきり木刀を振るう。

「ブッヒィイイィイイ」

 豚みたいな声を上げて、男は巨体な身体が吹っ飛ぶ。

「悪いけど、僕は誰かを見捨てるなんてことは出来ない。」

 明久は逃げるのではなく、戦う…。ヒメージ三世を守る道を選んだということである。

「そうかい、交渉決裂って訳だ。」

 男は懐から金属バッドを取り出す。

「『召喚武器』を使わないの?」

「フン、オレの召喚武器は戦闘向きじゃないんだよ。お前みたいなガキにはこれで十分だ!」

 男はブンッと勢いよくバッドを振るう。がモーションが大きいせいか、明久にはこんな攻撃屁でもない。以前、戦った相手、土方の方が攻撃の速度は圧倒的に速い。

 つまり、王族暗殺集団は威勢が良いのは名前だけで戦闘力的には下級騎士並のモノである。

 しかし、それでも彼らの名前は王都中に響き渡っていた。しかし、圧倒的な戦闘力で名を響かせたのではない。彼らの殺人方法は毒殺、寝込みを襲うなどいかにも陰湿なやり方で殺すのである。

 しかし、一対一(サシ)の勝負では下級騎士レベルの戦闘力しか持っていない。

「うおおおおおおおおおおッ!」

「あああああああああああッ!」

 明久とサングラスの男は絶叫する。

 サングラスの男が金属バッドで明久の急所を狙う。しかし、明久はその金属バッドを素手で受け止める。

「な…ッ」

 金属バッドを封じられた男には攻撃手段がない。

「うオオオオオオオオッ!」

 明久は男の股間に木刀を思いっきり命中させる。

「ぐあああああああああっ」

 絶叫した後に男は静かに地面に突き、倒れる。

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 もう、随分前のことである。

 ある一人の少女が知る世界は常に王宮の中で、外の世界を全く知らない。そんな彼女が母親と初めて城下町を歩いた時のことだ。

 彼女はピンク色と目立つ髪に、王女が着るドレスととても目立ち、周りの視線はその少女に集中していた。

 そこで母親は大事な用があるとのことで、ここの公園の子供達と一緒に遊んで待ってなさいと言う。

そうして母親は去ってしまう。しかし、困ったことに少女は外の人間とどう接すればいいか分からない。

 子供たちはとても無邪気に遊んでいる。しかし、人との接し方が分からない彼女はただそれを眺めていることしかできない。

『おい、明久。パスいったぞ!』

『え?パス?パスポート?』

『違げーよ、ボールのパスだボケ!』

 少女は思った。自分もあの中に入れるなら普通の子供として生まれたかったと…。こんな王族という権力とかはいらない。ただあの中に入りたい。

 そんなときボールが彼女の下に転がってくる。ボールを追いかけてきた少年は少女と目が合う。少年はあまり見かけない姿なせいか、その少女を見て目を丸くさせるが、すぐにその表情は消えて、

「君も一緒に遊ばない?」

 と笑顔で話しかけてきた。

 少女は心の中がパアアッと晴れた感覚がした。どの子供たちも自分の姿を見て引け目を感じていた者たちが多かったのにこの少年だけが唯一自分に手を差し伸ばしてきた。

「…うん…」

 少女はゆっくり返事しする。

 

 これがヒメージ三世が初めて明久と会った話である。

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

「怪我はない?」

「はい、いろいろ巻き込んですみません。」

「いや、君に怪我がなくて良かったよ」

 明久はニコリと微笑む。

 その微笑みを見たヒメージ三世は思った。初めて会ったときもこの少年はこんな微笑みを放っていたな…そんな記憶がふと甦る。

「吉井君ッ!」

「き、木下さん!?」

「ってコレ…。」

 優子はたどり着いて一番最初に目にしたのは明久にやられたサングラス男である。

「吉井君が倒したの?」

「う、うん。まあ」

 優子が妙に真剣な表情だったので、倒しちゃいけなかったのかな…と不安を覚える。

 しかし、返ってきたのは意外な言葉だった。

「ありがとう」

「へ?」

 あまりに意外な言葉で明久は一瞬ポカンとする。何か悪いモノでも食べたのではないかと疑ってしまう。

「王宮から連絡があったの。王族暗殺集団が姫君を狙ってるって…。間に合わないと思ったんだけど、アナタのおかげで助かったわ…。」

 そう言い、彼女はニコと微笑む。しかし、すぐに態度がいつものような態度に戻り、

「まあ、助かったけど、この程度であんまり調子乗らないでよね…。」

 と、ツーンとした態度で視線を明久から逸らす。

「…う、うん」

 結局、彼女は褒めたのか褒めてないのかよく分からない。

 すると、優子と行動を共にしていた秀吉が、

「姉上、は正直じゃないの…」

 秀吉は「やれやれ」とため息をつく。図星なのか優子は「…なっ!」と声を上げる。

「あのまま、褒め言葉で終わってれば男子的にはポイント高いんだが…」

「…同感。」

 秀吉に続き雄二とムッツリーニが説明に補足を加える。

「アキ、お姫様と何をしてたのかキッチリ教えてもらうわよ!?」

 しかし、美波だけは三人とは別のことに対して喋っていた。

 三人に指摘された優子は

「うるさいッ!」

 と一喝。しかし、その表情には頬に赤みも感じられた。

 そんな彼らのやり取りに明久は「何やってんの?」という視線を向ける。

 そんなやりとりをしてる時だった。

「瑞希ッ!」

 野太い老人の声が聞こえる。その場にいた全員、その声の主に顔を向ける。

 そこにいたのはカヲール二世だった。

 

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 何年か前のこと…。ある少女は幼くして両親を失う。

 カヲール二世はその少女を知っていた。彼女はカヲール二世の妹の娘、つまりは姪である。時々だが、カヲール二世は妹の家にお邪魔すると、必ずと言っていいほど、その幼い少女が小さいからだで一生懸命出迎えてくれる。しかし、少女はそれを楽しんでるようだった。

 だが、突然彼女の両親は死ぬ。彼女はただ一人残されてしまう。そのときの彼女の瞳には一転の光もない、闇に近い色を放っていた。カヲール二世を出迎えてくれた時のような明るい表情がなかった。

「……。」

 カヲール二世はその少女を放っては置けなかった。というより、一人にさせてはいけないと考えた。そのため、カヲール二世は妹の娘を自分の娘として育てる決意をする。

 自分が生きてる間はこの少女を懸命に育てよう。カヲール二世は死んだ妹に誓う。

 ちゃんと彼女がまた、笑顔になれるように…。

 

 

 ――――――――――――――――――

 

「瑞希…」

「お…母様」

 カヲール二世の表情は叱るときみたく険しい表情をしている。

 周りは沈黙し、ただ風の音だけが強く聞こえる。

 カヲール二世はゆっくりヒメージ三世に近づく。そして…

 

 パシーン

 

 カヲール二世は自分の娘を力強く打つ。

「お…お母様…。」

 その光景を見た明久達は驚愕の表情を浮かべる。

 カヲール二世は厳しい表情のままだ。しかし、この表情は少しずつ歪んでいき、

「あまり年寄りに心配かけさせんじゃないよ」

 そしてカヲール二世は、ヒメージ三世を抱く。

「良かったよ、アンタが無事でホントに…。」

「お母様…」

 カヲール二世の目からは溢れるほどの涙が出ていた。普段、こんな表情を見せない彼女だがそこにっは確かに王としてではない、母親としての愛情が感じられた。

「お母様…ごめんなさい…私、私」

 母親の涙につられたのか、ヒメージ三世からも涙が浮かぶ。

 

 二人は本当の親子ではない。しかし、本物の親子以上に愛情が感じられた。

(いいな、親子って…)

 明久は自分の親も生きていたらこんな感じだったのかな…と想像する。




 

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