僕と騎士と武器召喚   作:ウェスト3世

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次の標的

 夜の静寂した街に再び黒い影が訪れる。

 

 …ジャリ、ジャリ…。

 

 不気味な音を立てて男は暗い街の中を歩いていく。―――その時―――。

「そこで止まって貰います。」

 黒尽くめの男の前に現れたのは清水美春だった。

「…『第五国家騎士』、清水美春だな…。」

「そうですが、何か?」

「オレが此処に来るのをお前は分かっていたのか?」

「いいえ、ただの推測です。アナタは木下さんを襲った時も、小山さんを襲った時も『夜』でしたから…。ここで待ち伏せてました。夜に襲うとは卑劣ですね」

「何故、小山を襲ったのもオレだと分かった?」

「それもただの推測です。霧島さん、木下さんが襲撃された時も必ず『黒尽くめの男』が名前に出てきました。なら、今回の件もアナタが関わっていると考えるのが妥当かと…。」

「…フ…。警務部隊隊長なだけあって感が鋭いな…。だが、ちょうど良い。オレも次の標的(ターゲット)はお前と決めていた。ホントはその前に『第六国家騎士』を消すつもりだが、ソイツの正体はオレも知らないからな…。」

 第六国家騎士の正体、つまり雄二のことだが、雄二が国家騎士であったことは王族しか知らない。黒尽くめの男でもそれは知らないらしい。

「何故、国家騎士を狙うんです?それも位の低い順から消していこうとしてるようですが…。」

 すると、男は「フ…」と笑い、

「…国家騎士といったら、フミヅキを代表する騎士だ。その騎士がいなくなれば、勢力は衰えるハズだ。」

 清水は表情を険しくし、

「アナタは敵の軍の者ですか?」

「いいや、このフミヅキに住まう人間さ。」

「アナタの話を聞く限り疑問しか生まれません。何故、同じ国に住まう者が国家騎士を狙うんですか?それに、国家騎士でもないアナタがレベルの高い『召喚武器』を扱えることにも疑問を感じます。アナタは何者ですか?」

 すると、男は低い声で、

「知る必要はない。ただ、お前たちは無残に消え失せればそれでいい。」

 その言葉は鳥肌が立つほど酷く冷たいものだった。

「そう簡単にはいきませんよ」

 すると、清水の後ろから警務部隊の隊員達が次々現れる。

「隊長、アレが黒尽くめのヤツですかい。アレはコスプレですか?」

「沖田、今、この場でコスプレの話は重要視することですか?」

 場違いなことを言う沖田に清水は睨みつける。

「…ホゥ、数で攻めれば何とかなると思ったんだろうが…。清水、それは失策だったぞ。何人で攻めようとオレの足元にも及ばない。」

 黒尽くめの男はまるで敗者を見るかのような目で清水を見る。仮面で顔が隠れどんな顔をしているか分からないが、そこには禍々しい闘気を感じた。

「…悪いけど、僕も参戦するよ」

 建物の屋根の上からメガネをかけた男が現れる。

「ホウ、お前まで来たか…。『第四国家騎士』、久保利光…。」

 数は約20人、そしてその中には国家騎士が二人…。この勝負は警務部隊が勝利するものと思えた。 

 しかし、現実はそうならなかった。

 

 

 ――――――――――――――――――――――

 

「「「試験召喚(サモン)!! 」」」

 20人いる警務部隊隊員は武器を召喚する。それに少し遅れて久保と清水も武器を召喚する。

「試験召喚(サモン)!」

 久保は槍、清水は銃を召喚する。

 久保の武器は『シューラ・ヴァラ』。『鋭利な投槍』を意味する。インドの英雄ラーマの武器で聖者ビスバーミトラより授かった神々の武器である。

 一方、清水の武器は『ジャッジメント』。『断罪者』を意味する。

「フン…。『鋭利な投槍』(シューラ・ヴァラ)に『断罪者』(ジャッジメント)か…。少しは楽しめそうだ…。」

 すると、男の姿が消える。しかし、これは戦闘を引いたわけではない。

「皆さん、ちゃんと武器を構えてください。何処から攻撃が来るか分からないので…!」

 その瞬間―――――――。

「ぐああああああああああああッ!」

 隊員の叫び声が聞こえる。そして、ボトッと何かが落ちる。叫び声を上げた隊員の腕だ。

 そこにはいつの間にか黒尽くめの男が立っていた。

「てめええええええええッ!」

 沖田は黒尽くめの男に斬りかかる。

 

 ドゴオオォッ!!

 

 攻撃は外れたらしい。しかし、その斬撃は岩を両断するほどの威力だった。

「流石は『神剣の使い手』と言われるだけあるな…。沖田総悟…。」

「黙れ、お前と話す気は一切ない。」

 沖田は再び黒尽くめの男に刃を向ける…が、

 

 ザクッ

 

「お…沖田副…隊長…。す…すみま…せん」

 男は警務部隊の隊員を盾にし、沖田の攻撃を防ぐ。

「てめええええええええええッ!」

 沖田は絶叫する。

「後ろががら空きだ。沖田」

 すると、沖田は背後から斬られる。

「沖田ーーーー!」

 清水は必死に彼の名を叫ぶ。まだ生きてるようだが、傷は深そうだ。

 しかし、男は舞うかのように次々、警務部隊の隊員を西洋剣で切り裂いていく。

「ハアアアアアアアッ」

 久保は『鋭利な投槍』(シューラ・ヴァラ)を投げつける。が、しかし…。

「フ…。良い武器だな。」

 男はゼウスの盾『アイギス』を召喚する。恐ろしいほどの魔力を持つ盾だ。

「…そんな、バカな…!」

 今の一撃で確実に仕留められると思った久保には予想外の出来事だったらしい。そして…。

「…っ!」

 男は素早い動きで久保を西洋剣で突き刺す。

 そして、最後に残ったのは清水だけだった…。しかし、あまりの圧倒的と言っていい強さに清水は

体全身が震えていた。既に、戦意消失してしまうほどだった。

「フ…。怖いか…?」

「こ、来ないでください!」

 清水は震えながら銃を構え、そして放つ。

 銃弾は凄まじい速さで男を貫通すると思われたが、男はそれを軽々躱す。

「…甘いな…。」

 しかし、銃弾は方向転換をし、そのまま黒尽くめの男を追いかける。

「…追尾型か…!?」

 そして、銃弾は男に命中したハズだった。

「…アイギスの盾!?」

 銃弾は男に命中したのではなく、『アイギス』に命中する。 

 他に攻撃の手段がない清水は銃をポロリと落としてしまう…。だが、そんな様子も気にせずに男は少しずつ清水に近づく。そして絶叫と共に、鮮血が噴きあがる。

 

 

  ―――――――――――――――――――

 

 翌朝――――――。

 

「バカな…!? 警務部隊が全滅!?」

 竹原の報告にカヲール二世は唖然としてしまう。

「正確には六人は生存しております。その内三人は警務部隊隊員。その内一人は副隊長の沖田君、もう二人は国家騎士の清水さんと久保君。しかし、生存してるとは言え、全員重傷です。」

「――――――――――っくそッ!国家騎士が三人も…!こんなことは今までなかったのに…」

 カヲール二世の顔には不安と焦りがある。国を代表する騎士が三人も襲撃され、状況は絶望的である。そして、敵が狙うのは国家騎士、警務部隊と、有力な騎士ばかりを狙う。フミヅキ中の騎士たちの不安も昨日に比べ一段と高まっていく。

「…ックソッ!」

 しかし、それはカヲール二世も同じだった。

 

 フミヅキは不安に包まれていく。

 

 

 ―――――――――――――――――――――――

 

 国家騎士消失と言う件で、訓練所も強制的に休みを取る形となった。

「ふァあああああ…」

 大きなあくびをして起きる明久。既に時間は11時30分。いくら休みでも普段なら優子が8時くらいには起こしてくるのだが…。

 すると、隣ではまだ優子が布団にもぐっていた。

「アレ…?」

 …おかしい…。今までどんなに忙しくても優子は起こしてくれたのに今日に限って起こしてはくれなかった。

「おーい、木下さーん。朝だよー。てか、あと少しで昼だけど…。」

「……。」

 返事がない。

「きょ…今日は特別に木下さんの好きな料理作っちゃうけど…。」

 返事がない。

「木下さん、布団の上にゴキブリ乗ってるけど…(ウソ)。」

「イヤアアアアアアアアッ!」

 すると、優子のとび蹴りが明久の顔面に直撃する。

「ぐぴゃああああああああっ!」

 

 ようやく明久達の朝が始まる。

 

 

 

 

 




 すみません、今回残酷な描写が結構あったと思います。

 それと久しぶりに明久を登場させました。

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