僕と騎士と武器召喚   作:ウェスト3世

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奪われた武器

 『雷切』(らいきり)…。又の名を『千鳥』(ちどり)。

 今現在、高城雅春がこの刀を所有しているが元々は彼の武器ではない。なら、元々この武器の所有者は誰なのか…?

 答えは元第六国家騎士の坂本雄二の武器である。

 この武器と頭の回転を生かした雄二の先方は負けなしだった。そんな雄二は皇族からは『神童』とまで呼ばれていた。

 ただ、その負けなしの雄二もある戦いで初めての負けを経験することとなった。

 そう、六年前の高城雅春との戦いだ。

 高城雅春は嘗て若いながらもカヲール二世の側近に勤め、たくさんの人々から信頼を得ていた。また、フミヅキ唯一の術士でもあり、彼の存在は大きかった。

 幼かった雄二も彼を信頼していた。

 しかし、ある時だった…。

 彼は王族の側近から犯罪者という汚名を被ることになる。

 理由は彼の死霊術が原因していた。

 ちょうどその頃、王都の街中では町人が行方不明になるという事件が多発していた。原因はその時はよく分かってはいなかったが、後にそれは高城の仕業と判明する。

 彼は死霊術を使い、『人造人間』(ホムンクルス)を造ろうとしていた。何故そんなものを造ろうとしていたのかは分からない。しかし、そのためには、何人もの人間の魂が必要不可欠だった。

 そのため、彼は町の人々を襲い、その魂を人造人間(ホムンクルス)を造るために使用したのだ。

 しかし、こんなことが当然許されるはずもない。

 カヲール二世は七人の国家騎士に彼の討伐を命じた。

 そして七人は散らばって町中を探し回って彼を探した。

 そこで彼を一番最初に見つけたのが雄二だった。雄二は迷いなく彼に斬りかかった。

 しかし、雄二と高城の戦力差は圧倒的なものだった。雄二は一瞬でやられてしまう。雄二は何が起きたか分からずただ茫然と倒れるしかなかった。

 彼の攻撃が全く見えなかった。そして、何が起きたかさえも分からぬまま倒れる。

 そして、高城は雄二の所有していた『雷切』(らいきり)を奪い、自分の物へと変換した。

 そこで受けた傷と武器をを奪われたことで彼は国家騎士から下級騎士へと降格する。

 『神童』が経験した初めての負けだった---。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「懐かしいですね…。あのときの君はまだ小さかったのに、よくまあ成長しましたね」

「うるせえ…」

 雄二はメリケンサックを召喚する。当然こんな武器が高城に通用するとも思っていない。だが、この状況下は逃げられるものでもない。

「どうやら、僕に武器を奪われてからは随分と非力な生活を送ってたようですね…」

「フン…。安心しろ。オレはこの生活も気に入ってる。武器が奪われて何もかもが悪かったわけじゃない」

 そう、雄二は降格して再び下級騎士となってから明久という悪友を得たのである。彼とはよく意見の食い違いが生じるが、彼は雄二にとって一番の親友でもある。

「けど、やっぱり自分の武器が奪われたままってのは腑に落ちねえ…。雷切は返させてもらうぜ…」

「面白い…。今の君に何が出来るのか見せてもらいましょうか?」

 そう言い、高城は姿を消す。そして、既に高城の刃は雄二の心臓を貫こうとしていた。

 しかし、雄二は素早く背中を後ろに曲げその攻撃を躱す。柔軟を生かした回避技だった。

「よく躱しましたね…。昔の君なら今の一撃で確実に死んでました。」

「昔とは違うんだよッ!」

 すると雄二のメリケンサックから閃光が生じる。嘗ての武器『雷切』のように電撃を纏う。

「ゥォラアアアアアアァッ!」

 雄二は電撃を纏った拳で高城に殴り掛かる。

「やはり…成長してますね…。僕はどうやら君を嘗めていたようだ。」

 雄二の攻撃を喰らった高城だが、何処か余裕そうな表情を浮かべる。

 すると、彼は雷切を再び構える。

「…『千鳥鋭槍』(ちどりえいそう)…!」

 雷切の刃の纏った電撃が槍状に伸びる。槍上に伸びた電撃は雄二の腹部を貫通する。

「ガハッ…!」

 雄二は力が抜けたように膝をガクンと落とす…。

「終わりだよ、坂本雄二…」

 高城は刀を振るい上げる。そしてその刃は真っ直ぐ雄二に向かって振り落される。

「ォオオオオオオオオォッ!」

 雄二は高城の腹部に拳を入れる。

「…っ…。」

 瞬間、高城は雷切を手放してしまう。そして手放された雷切は雄二の手元に渡る。雄二は何の迷いなく雷切を握る。

 久々に握る愛刀の感覚に嘗ての『神童』という名前が甦ってくるようだった。

「…行くぞ…『雷切』…ッ!」

 雄二の手に渡った雷切は雷雲すらも呼び出しそうなオーラを放っていた。

「…成程…。これでようやく君と全力で戦えそうですね」

「ああ、そうだな…!『千鳥流し』ッ!」

 雷切から流れるような電撃がバチバチと音を立て高城を襲う。しかし、高城は顔色一つ変えず、その電撃を素手で払い除ける。

「…な…ッ…!?」

 その予想外の行為に驚く雄二だが驚いてる暇はない。気を抜けば自分が殺されてしまう。雄二は刃の先を高城に向けてく。

 しかし、高城は躱そうとする素振りを見せず、その刃を指先で止める。

「何だ…こんなものですか…」

 高城は呆れたように言う。雄二はまたもその予想外の行為にただただ驚いていた。

「終わらせましょう…」

 高城は新たな剣を召喚する。黄金の輝きを放つ剣である。しかし、その輝きは何処か禍々しさも感じる剣だった。

「…『竜殺しの剣』(バルムンク)…ッ!」

 『ニーベルンゲンの歌』に登場してくる大英雄ジークフリートの剣である。

 バルムンクと雷切が刃を交える瞬間だった。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 霊園に居た明久と優子。明久の過去を聞き、優子は明久に何て言葉を返せばいいか分からなかった。

 どんな言葉をかければ一番彼を元気づけられるのか…?しかし、それが分からない。

 何か言葉を返したいと思うものの、いざ口を開いても言葉とならない。

 きっと明久に言葉を返せるのは実際に明久と同じ立場に立った人間こそが明久の気持ちを分かってあげられる…。そう思った。

 そんな沈黙の時間がしばらく経った頃、優子の服のポケットから携帯の着信音が鳴る。霧島翔子からの電話だった。

「はい、もしもし。」

『優子、今すぐ王宮に来て…。』

「え?どうしたの、急に…。」

『説明は王宮の中でする…。だからすぐに来て。緊急事態…。』

「う、うん。分かった」

 そう言い、優子は電話を切る。

 緊急事態ということは何かが起こったのだろうが…。

「ゴメン、吉井君。私、王宮で召集をかけられてるから、行くね」

「あ、うん。いってらっしゃい」

 そう言い、優子はすぐに姿を消す。明久は手を振り、見送る。

 

 グギュウウウウゥ

 

 再び空腹の音が鳴る。明久はふと、すぐ傍に生えていた雑草に目をつける。先程はお供えの花を口にしたが、流石に自分が供えた花を自分で食べるのは何処か図々しい気がした。

 しかし、自然に生えている雑草ならば、図々しいなんてことはあるまい。そう思い、明久は雑草をむしり、それを口にする。

「…うん。意外にイケる?」

 どうやら彼の味覚は破壊されてるらしい。その証拠に彼は親指を立てながらその雑草を噛んで飲みこんでいる。

(よし、今までは食料が無くなったら塩と水の食生活だったけど、これからはおかずに雑草だ。) 

 既に考え方がホームレス並になっている。彼の将来が心配だ。

 その時、ズン…ッと重たい振動がかかる。そのせいか、霊園から見て東の方角からは、煙のようなものが見える。

「…何だ?」

 明久は何が起きたか分からなそうな顔をする。

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――

 

 

「失礼します」

 優子はノックし、カヲール二世の部屋に入る。

「来たか…。優子」

 部屋に入るとカヲール二世はカロリーメイトをやけ食いしていた。しかし、顔の表情はいつも以上に真剣である。

「おい、竹原。モニターを用意しろ。」

「指図すんな、ボケ」

 そう言いながらもせっせとモニターの準備をする竹原。

「コレを見てくれ。」

 モニターに写ったのは長身の男だった。

「この人は…?」

「高城雅春…。昔、私の側近を勤めていた男だが、コイツは禁忌を犯した為、前任の第一国家騎士、吉井玲の手により殺されたはずだった。」

「ハズ…?」

 妙な言葉遣いをするカヲール二世に怪訝そうな表情を浮かべる優子。いまいち状況を掴めないようだった。

「優子、死霊術って聞いたことあるかい?」 

「…まさか…っ」

 ようやくカヲール二世の言いたいことを理解した優子。そして同時に顔を青くする。

「そのまさかだ。コイツは死霊術で転生したのさ。そこで先程まで坂本雄二が高城と一戦交えていたが、どうやら敗北したらしい…。」

「…は?敗北も何も彼は下級騎士のハズです」

 そう、優子は雄二が元々国家騎士だったという事実を知らない。そのため、混乱したような表情を浮かべる。

「いいや、アイツは下級騎士に降格したのさ。元々はこの国を代表する騎士さ…。『神童』って言葉くらい聞いたことはあるだろ?」

「は…はい」

 優子もその名前には聞き覚えがあった。頭脳的な戦闘をすることで王都中を騒がせていた。しかし、『神童』が雄二を指す名だとは思わなかった。

 いや、そんなことよりも優子が驚いたのは『神童』と呼ばれる雄二がやられたという事実であった。

「いいかい、そこで大体状況は把握しただろう…。そこで任務を言い伝える。霧島と二人で坂本を救出しろ。ただし、高城とは戦うな…。」

「は…?どういうことですか?私達が戦わなきゃ王都を攻められる可能性が…」

 可能性があると言おうとする優子だが、その言葉はカヲール二世の言葉でかき消される。

「分かってるさ!だが、六年前、前任の国家騎士がほぼ全員係で刃向ってもヤツとの力の差は歴然だった。唯一、吉井玲だけがアイツと真面に戦り合えたが、その玲さえも命を落とした…。もう六年前の二の舞にするのは御免だよ!」

 カヲール二世のカロリーメイトを握る手は震えていた。これ以上、自分の力の無さで騎士達を死なせたくないというカヲール二世の思いでもあった。

「…陛下…」

 その気持ちは優子も何となくだが心に沁み込んでは来る。だが、それは国のトップの判断としてはペケだ。力の差が何であろうとこちら側が迎え討たねば、王都の崩壊をただ待つだけになってしまう。

 そんな迷いと不安の中、感知能力を発動していた竹原が新たな報告を告げる。

「陛下、今、敵のいるフミヅキ教会から高城と坂本とはまた別の人物の気配を感じ取りました。」

「誰だい?」

 竹原は感知能力を最大に発動する。そこにいた人物は意外な人物だった。

「吉井明久です…。」

「よ、吉井君が…!?」

 優子は心臓の鼓動が早まるのを感じた。それは不安と焦りによるものだった。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――

 

 先ほどの振動…。明らかに地震によって起きた揺れではなかった。何か力と力のぶつかり合いによって起きた振動…。そんな風にも感じられた。

 明久はその振動の理由が気になり、揺れが起きたと思われる場へと足を運んでく。

 すると、そこには教会が立っていた。その周辺は爆発でも起きたかのように地面はえぐれ、近くの木には刀でつけられたような傷、そして地面にはところどころ血痕が残っていた。その血痕は教会へと続いていた。

 あそこに一体何があるのか…?明久は教会の中へ入ることにする。

 

 ギイイイイ…。

 

 古びたドアはゆっくり開く。

 教会の中は思っていたよりも広く、天井も高く、そして中央には十字架が張られていた。

「おや、いらっしゃい」

 奥から現れたのは身長の高い男だった。そして男の隣には誰か倒れていた。いや、誰かという表現はおかしい。何故ならその人物は明久のよく知る人物なのだから…。

「ゆ、雄二…?」

 明久は大きく目を見開く。驚きを隠せない表情だった。

「明久…。逃げろ」

 雄二は体中の痛みを必死にこらえ喋る。

「明久?」

 しかし、反応したのは明久でなく、雄二の隣にいた長身の男だった。

「もしかして、君は吉井玲の弟、吉井明久君ですか…?」

 明久はその質問には答えず、雄二の隣に立つ長身の男の顔をよく見る。それは、何処か見たことのある顔だったからだ…。

 そして明久の脳内は六年前に巻き戻される。玲はある一人の術士と戦っていた。その術士は今、雄二の隣に立っている長身の男と姿が重なる。

「お前、まさか…。」

 長身の男はニヤリと微笑む。

「一応、初めまして…。と言っておきましょう、吉井明久君。僕は高城雅春。六年前、君の姉を殺した男です。」

 それを聞いた瞬間、明久の心の中で沸々と煮えあがるような感情が込み上げてくる。

 そう、怒り―――――。

 目の前に立つ男は姉の憎い仇である。

「お前が…姉さんを…」

 明久の周囲から黒い闘気が発せられる。その闘気は明久を囲むように取り巻いていく。

「試験召喚(サモン)…!」

 明久は黒い剣を召喚する。黒い剣は禍々しい殺気を放っている。明久はその剣をギュッと握り締める。

「ホウ…。」

 高城は興味深そうな声を上げる。今にも明久が襲い掛かりそうな状況にもかかわらず、その剣から発せられる闘気に感動していた。

「ぅああああああああああああああああああッ!!」

 明久は強く握り締めたその剣を高城に向ける。

 

 因縁の戦いが幕を開ける瞬間だった―――――。

 

 

 

 





 次の投稿がもしかしたら遅くなるかもしれないです(汗)
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