前回の話の続きを執筆しようかとも思いましたが、すみません。理由があって過去編をやることにしました。
前回の話の続きじゃないことに関してはすみません(汗)
アリス
時間は二年前へと巻き戻されていく。
これは明久とある少女の物語である―――。
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「吉井ィ------ッ!!」
「ギャアアアアアアアアアアアッ!」
吉井明久15歳。
彼は今、鬼のように疾走してくる西村教官から逃走しているとこだった。
彼は今日で今年百回目の遅刻だった。その為、明久は日ごろの行いが悪いため、西村教官と二者面談を行う予定だった。いや、行っていたのだが、行っている最中に一本の電話が入ってきた。西村はその電話を無視するわけにもいかず、電話を取るのだが、明久はその隙を見て、密かにその場から逃れた。
しかし、そんなことをしたら、余計西村教官を怒らせることは彼自身が一番よく知っている。そして、逃れることが出来ず、結果このような状態となる。
「…ゲッ…!」
彼が行きついた先は、人気のない行き止まりの場だった。
「…う…嘘…!?」
明久の表情は今にも泣きだしたそうな表情だった。そして彼が足を止めると共に、同時に足を止めた教官の表情をうかがう為に恐る恐る教官の方に顔を向ける。
「ハッハッハッハッハッ」
実に心地の良い笑顔だった。
「ハッハッハッハッハッ」
その心地の良い笑顔に明久も笑顔を浮かべる。
「……ハッ!?」
しかし、同時に教官の背中からは表情とは裏腹に恐ろしいほどの殺気が込み上げていた。
「吉井、ここは人があまり通らない場所のようだな。」
「そ、そうですね」
「オレは知らなかった…。吉井がこんなにもオレの拳を恋しがってるとはな…」
「…!…うぇqbhふえbふえhうふぉ!?」
明久は思わず人間とは程遠い言語で悲鳴に近い言葉を上げる。
彼は理解したのだ。西村教官が何を言いたいのか…?つまり、此処は人が全く通らない場だ。だから、西村教官がいくら明久を殴ってもそれに気づく人間はいない。
「え、え~と…。す、すいません。ト、トイレに行きたいんですけど…」
流石にトイレなら行かせてくれるだろう…。その隙に逃げることを考えた明久だが…。
しかし、西村は感心したような表情で、
「ホゥ、今までトイレしながらオレの拳を受けたいと言った生徒はお前一人だけだぞ、吉井。」
「ええええええええええええええッ!?」
あまりの予想外の言葉に驚きの声を上げずにはいられない明久。どうやらトイレをすることも許されないらしい。、仮にしたとしても、西村教官の拳を喰らいながらするハメとなる。
「え…ちょ…」
すると、西村教官はポキポキと関節を鳴らす。彼の筋肉は普段よりもむき出しの状態となる。そう、この状態は間違いなく戦闘隊形に入ってる証だ。
「……フンッ!」
すると、西村教官はさらに筋肉をむき出しの状態にする。その反動で、彼が来ていたスーツはパンッと破裂し、素肌が顕わになる。
「行くぞ…。吉井」
「ぎゃ…ぎゃああああああああああああああああああああッ!」
明久の無残な悲鳴だけが響き渡る。
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翌朝―――。
HR(ホーム・ルーム)が始まるまでまだあと十分はある。
そんな中、雄二、秀吉、ムッツリーニはその時間を会話で潰していた。そしてそんな会話の盛り上がってる最中、いつものメンバーにある人物がいないことに気づく。
「そういや明久いないな…。」
「ウム、忘れておった。」
「…………。」
雄二の言葉に秀吉は「そういえば」という反応を浮かべる。ムッツリーニはエロ本を読んでるので、雄二の話は聞いていない。かなり集中してるようなので、邪魔しない方が良いみたいだ。
「そういや、アイツ二者面談どうだったんだろな?」
「ウム。遅刻百回目とか言っておったの」
雄二と秀吉は明久と西村教官の二者面談を頭の中で想像してみる。浮かぶのは鬼のような形相で明久を怒鳴りつける西村教官。それは恐ろしくもあるが目に浮かぶ光景である。
「アイツ…。生きてるかな…?」
「さあ…?」
「まあ、今度ちゃんと墓参りには行こうぜ。」
「そうじゃな。」
話は進み、遂には明久が死んだと仮定する。二人は墓参りに行く気満々である。
ちょうどその時――――。
「おはよう」
挨拶をかけてくる声がする。振り返ると、そこには明久本人がいた。彼の顔には殴られたような傷が残っているが、雄二たちが想像したほどの怪我ではなかった。
「おう、まだ生きてたか…。」
「何、殴られたいの?」
昨日殴られたストレスのせいか、明久は雄二のその冗談半分の発言に怪訝そうな表情を浮かべる。
「おーい、席につけ!HR(ホームルーム)を始めるぞ!席につけ!」
明久より少し遅れて入ってきたのは西村教官だった。
「よし、まずはこの前の日本史のテストを返すぞ!呼ばれたヤツから前に来い!」
テストという言葉が出た瞬間、訓練兵達の顔は「うわぁ」と嫌々な表情へと変わる。
その最もな理由としては西村教官は点数が悪い順にテストを返してくからだ。
「まずは…。お決まりの吉井!貴様だ」
「ハイ」
点数は0点。ここまでやる気のない点数は他にはないだろう。しかし、明久は「これはおかしい!」という顔をする。
「先生、ここの問題は当ってるハズなんですけど!」
「ん?そうか。採点をつけ間違えたか…。」
そう言い、西村教官は明久のテストを見る。しかし、西村教官はすぐに「ハァ」と呆れたように溜め息をつく。
「おまえ、969年に起きた他氏排斥事件を何て覚えたんだ?」
「え?『アンコの変』です。」
すると、ドッと周囲から笑いを浴びせられる。明久はそれに気づかず、「え、何?」という表情を浮かべる。
「アンコの変じゃなくて『安和の変』(あんなのへん)だ!ボケ!」
「早く言えよ…。」
「授業聞いてなかったのは誰だ?ん?」
西村教官はギョロと鋭い眼で睨みつける。その睨みには明久も何も言い返せず、ただ「ハイ」と言うしかない。
「よし次…。土方」
「ハッ!?ちょっと待て!オレはそこまで点数悪くないはずだぞ!?」
土方はどうやらこの日本史テストには自信があったらしい。それなのに明久の次に呼ばれるのはどう考えてもおかしかった。
「…ここの名前欄…。どういうことだ?」
「あァ?名前?」
西村教官の言いたいことがイマイチ理解できない土方。しかし、反抗的だった土方の態度はすぐに焦りへと変わる。
名前欄には「土方十四郎」ではなく、「ちんかす」の四文字になっていた。
「ハアアアアアアアアアアッ!?ちょっ…待ッ…?」
土方はちゃんと「土方十四郎」と書いたはずだった。それだけにこの現状が理解できない。
つまり、他の生徒の誰かの仕業となるわけだが…。
「クソッ!」
土方はバッと後ろを振り返る。一体誰がこんな「ちんかす」という下品な四文字を入れたのか…?
すると、シンとした教室に一人だけニヤリと不気味な笑みを浮かべている男がいた。その男と土方は目が合う。それに気づいた男はグッと親指を立てる。
「総悟オオオオォオオオオォッ!」
土方の名前欄に「ちんかす」と書いた張本人は沖田だった。こんな名前を書かれていい気持ちはしない。しかし…。
「土方は後でオレと二者面談だ。」
「は?イヤ、待て」
何故、そうなる!?と抗議しようとする土方だったが…。
「うるさい、席につけ」
「クソッ」
無理やり席に戻される。
「よーし、次。近藤。」
「はい…。」
「お前コレどういうことだ?」
「いや、ゴリラです。」
「イヤ、そーじゃなくて」
解答用紙の裏には本物そっくりのゴリラが描かれていた。
「お前は日本史を嘗めてるのか?」
「イヤ…。それはアレです。自分を動物に例えたらこんな感じかな…みたいな…。」
すると、沈黙が訪れる。訓練兵全員は西村がどんな反応をするか予想できた。しかし、近藤に関しては、自分の絵がどのように評価されるかウキウキしてる様子だ。
「近藤…」
「はい…」
すると、近藤の股間に西村の拳がクーリンヒットする。
「ゴフッ!」
そして、再び西村はテストを返却し始める。
そして順番は最後になり…。
「アリス・セイラ―」
「はい」
呼ばれたのは金色の華やかな髪に淡いブルーの瞳をした小柄な少女である。成績は優秀で男女共に慕われている存在だった。
「よくやった。満点だ。」
「ありがとうございます。」
アリスはニコリと微笑む。西村教官も感心したような表情を浮かべる。しかし、明久に目を向けた瞬間、西村の目は鋭くなり、
「吉井、お前もアリスを見習って精進しろ!」
「ハイ…」
何で自分だけ…。明久はそう思いながら渋々返事をする。
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そして、今日の一時限は実戦訓練。武器を召喚した実際の戦闘訓練である。
西村が二人ずつ呼び出し、その二人は戦い合う…一対一の戦闘をモデルとした訓練だ。
最初に呼び出されたのは…。
「吉井明久、アリス・セイラ―。前に出ろ」
「はい」
「えっ?ちょっ!ウソでしょ!」
名前を呼ばれ堂々返事をするアリスに対し、名前を呼ばれ「嘘でしょ?」と嫌そうな表情を浮かべる明久。それもその筈。アリスの成績は上から数えて一番目。それに対し、明久は下から数えて一番である。
「いいから、さっさと出てこい、ボケ!」
「…はい」
成績トップの少女と最も悪い成績を誇る少年の戦闘が始まる瞬間だった―――。
まだ過去編の本題には触れてません。
すみません。