僕と騎士と武器召喚   作:ウェスト3世

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監視初日

 

「…耳がジンジンする。」

 耳元で大声で優子に起こされた明久。

「私に起こされたくないなら、自分で起きるようにしなさいよ!まったく…」

 優子はイライラした態度で明久に言う。

「さあ、今日も訓練所に行かなきゃいけないんでしょ?朝食の支度を…」

 優子が朝食の準備をしようとする。すると、冷蔵庫から次々と食材を取り出す。

 そこで明久は妙な違和感を感じる。

「…アレ…?」

 それもその筈。明久はお金をほとんどゲームや趣味に使ってしまい、食費にまわす金など、ほとんどない。そのため、冷蔵庫は何も入っていないハズなのだが、優子は次々と食材を出す光景に不自然さを感じた。

「あの、木下さん。冷蔵庫は空っぽだったハズだけど…。」

 明久は恐る恐る優子に話しかける。すると優子は、

「ああ、それなら私が食材を買っておいたわ。何もないっていうのも流石に可哀そうだし。」

 その言葉を聞き、明久はパアアッと目を輝かした。

(木下さんって普段はピリピリしてるけど、ホントは優しい女の子だったんだ)

 明久は優子に感動する。…しかし…。

「棚に要らなそうなゲーム、漫画が何冊もあったから全部売り飛ばして食費を手に入れたの」

 優子は笑顔で食材をあさる。

「……えっ!??」

 明久は石化したように固まる。そして暫く固まってから急いでゲームや漫画の置いてある棚を見る。漫画とゲームであふれていた明久の棚は見事に空っぽの状況だった。

「う…そ!?」

 明久はガックリと膝を落とす。明久にとって漫画、ゲームとはお宝同然だったのだ。貧民的な自分でもこのお宝さえあれば富豪くらいの裕福さを持っていると思っていた明久は、その裕福さが一気に消えて、一気に貧民に成り下がった気分だった。

「お金の使い方を考えないからイケないのよね。」

 優子は当然でしょ、という口調で朝食用の食器を用意していた。

「………」

 明久はその最もな言葉に何も言い返す言葉がなかった。

 ハア…と下を向き、溜め息をつくと、ボンっと爆発音がする。

「…え…何?」

 急にフライパンから煙がモクモクと出始める。

「あの木下さん?」

 呼びかけると何故かビクッとしていた。そしてどんどん木下さんの顔が赤面していく。

「………。」

 明久はこの爆発音、そして優子が赤面する理由を理解した。

「木下さん、もしかして料理苦手…だったりする。」

 本人を傷つけない様、間接的な感じで問いかけるが、優子はますます顔が赤くなり…

「うるさいッ!」

 と、照れ隠しに明久を殴ってしまう。

「り…理不尽な…。」

 すると、優子は白状するように、

「仕方ないじゃない、私、料理苦手だし…。でも、吉井君は多分料理出来ないだろうし…私なりに頑張ってみたのよ…。」

 プライドの高い優子が珍しく弱音を吐く。何故か勝手に料理が苦手と判断された明久はムッとする。しかし、

(こういう高い地位に就いている人でも苦手なことはあるんだな…。)

 明久はそう確信する。そしてフライパンを拾い上げ、今度は明久が料理の準備をする。

「何やっているの?」

 キョトンとした表情で優子は明久に何をしているのかと、問う。

「料理の準備だけど…。」

 当然かのように明久は言う。明久はフライパンに油を引き、そこに二枚のベーコンそして卵を割る。ベーコンエッグを作ろうとしているらしい。

「ここは一応僕の家だからね…。家事は僕がやるから、木下さんは監視任務をそのまま続行してくれればいいよ。」

 明久はニコリと微笑む。

 優子は未だに赤面のままの状態で、

「う…うん。」

 と、素直に返事をする。何故か妙にあっさりしていた。

 ベーコンエッグを作りながら明久は、

(早くこの監視任務終わってくれないだろうか)

 と、早く解放されたい気持ちでいっぱいだった。昨日までは食糧には困らされたものの、あの一人で過ごす自由な生活。再び戻って来る日を心の底から待ち望んでいる明久だった。

 

 ☆☆☆

 

 朝食を終え明久はいつも通り訓練所へ向かう。訓練所は騎士でいう学校みたいなところだ。

 当然監視の為、優子も同行する。

「おはようございます。」

 明久は西村教官に挨拶する。それに引き続き優子も

「おはようございます。」

 と挨拶する

「おお、木下。陛下から聞いたぞ、随分と大変な任務を任されたようだな。」

「ハイ。」

「申し訳ないが、吉井を頼む。今まで指導するのに、こんなに苦労した訓練兵は初めてだ。」

「いいえ、教官のせいではありません。」

 そんな二人のやり取りに不満を持った明久だが、それ以上に不満を持つことがあった。

『おい、見ろ。吉井のヤツ美人連れてきやがったぞ。』

『クソッ、バカの癖に』

『アイツだけは俺達の同類だと思ったのによ…。』

 他の訓練兵たちは妙に殺気を放っていた。

「おい、明久。どういうことだ?」

「へ?何が?」

 雄二の真剣な質問に明久は戸惑う。

「お前みたいなバカでブサイクなヤツが木下優子のような美人で位の高い騎士と一緒にいるなんて不釣り合いすぎるだろ。」

「雄二、バカでブサイクなのはそのまま返すよ。」

 明久は雄二との付き合いは長いが、いつもイラッとさせられるのが、今みたいなサラッと毒舌を言うことだ。

 そんな雄二だが昔から策略を練ることには物凄く長けている。だから、問題を起こした時にせよ、明久だけでは犯行がバレテしまうことも、雄二が一緒だと犯行を隠すことが出来たりする。雄二に頼らなきゃ言い逃れが出来ないのが何だか悔しい。

「アキ、どういうことなの!?正直に言いなさい」

 雄二の次には美波が明久に迫る。

「イヤ、何かその…。」

 必死に説得しようとするが何処から話せばいいのかが分からない。

 明久は必死に話す内容を考える。

(参ったな…。雄二はともかく、美波にはそれなりに詳しい説明をしないと納得してくれないんだよな…。バカだから)

 明久は「やれやれ」と言わんばかりのため息をつく。

 しかし、明久の状況は窮地に立たされている。他の訓練兵達(男の)が明久に向ける殺意が時間が経てば経つほど、強くなっていく。

「…こ、困った。」

 早く説得しないと、ここの訓練兵は嫉妬心が強い。このままでは本気で殺されてしまう。

「静かにしなさい!」

 そんな時、優子がざわついた訓練兵達を静める。

「私は陛下から吉井明久の監視任務を任されているだけよ。決してこんなバカと仲が良いとかじゃないから!」

 すると、

『そうだよな、通りでおかしいと思った。』

『任務でもなけりゃ、こんな美人と一緒なんて有り得ないもんな』

『何だ、吉井、俺達を裏切ったわけじゃないのか。』

 誤解が解けたのは良かったが、優子のあの言葉で誤解が解けてしまうことに、明久は納得いかずにいた。

 

 ☆☆☆

 

 ここの訓練所は勉強はもちろん、戦術も当然学んでいる。

 今日は実戦日だった。

 訓練兵たちは訓練用のグラウンドに集合する。

「え~、今日は前回の予告通り、実戦訓練を行う!」

 すると、「えー」とやる気のない声が上がる。それもその筈。この実戦訓練で相手に負けたら、負けた人物は西村教官の補習が待っているからだ。

 そんな地獄の為に「死ぬ気で頑張ります」なんて言う人物はいない。

 この実戦訓練の内容は教官が対戦相手を呼び出し、呼ばれたモノは前に出て、戦う。『召喚武器』の点数がなくなった、もしくは相手に圧倒された人物は負け…とルールは簡単なのだが…。

「どんな訓練もイヤだけど、この訓練は一番嫌だよ。」

「みんな、嫌な顔してるのに鉄人は笑顔なんだよな…」

 そう、訓練兵全員がこの訓練を嫌がっているのに、西村教官はこの実戦訓練の時間になると、異様に機嫌が良い。

「確かにの。でも、明久と雄二は良いではないか。ワシは召喚武器が全く戦闘向きではないからの。」

「…同感。」

 そう、秀吉とムッツリーニは騎士兵であるにも関わらず『召喚武器』があまり戦闘向きではない。

 秀吉は治療の召喚武器で医療に関係した武器でムッツリーニは感知タイプの召喚武器である。どちらも戦闘専門の武器ではない。

 しかし、明久と雄二も戦闘タイプであるとはいえ、召喚できる武器があまり攻撃力のない武器である。明久は木刀、雄二はメリケンサック。国家騎士レベルになれば魔剣レベルの武器が召喚できるのだが、それに比べたら二人も戦闘タイプと言えるほどの戦闘力は持っていない。

「よし、吉井明久。前に出ろ。」

「え~僕?」

 最初に呼び出されたのは明久だった。

「アキ、頑張ってね」

「明久、頑張るのじゃ」

「いや、今まで負けた記憶しかないんだけど…。」

 すると、ネガテイブになっていた明久に雄二は、

「明久、オレは知っている…。」

「…へ?」

 妙に雄二が真剣な表情だった。

「もう力を隠さなくても良いだろ。今こそお前の本当の力を解放する時だ。」

「…雄二…」

 しかし…。

(イヤ、今までも結構全力出したはずなんだけど…。)

 そんなことを考えていると、

『何!?吉井は実はスゴイ力を持っているのか!?』

『どうせ、いつものジョークだろ』 

『一体どんな力が…!?まさか、卍解か!?』

 と、一気に明久は注目される。が、それは明久にとってプレッシャーだった。

(雄二め、図ったな)

 雄二の方を向くと、雄二はニヤニヤしていた。

 人の不幸を喜ぶとは…と雄二に殺気を向ける。

「僕の対戦相手は誰だろう…?」

 すると、西村教官は対戦相手の名前を言う

「土方十四郎…。前へ。」

「…なっ!?…」

 土方十四郎(ひじかた・とうしろう)。彼は点数は高くないが剣術の腕が評価されているせいか戦闘力はそれなりに高い。

 ちなみに、一部の女子に人気がある。

「トシ―、頑張れよ。」

「土方さん、救急車くらいは呼んであげますぜ。」

 土方の親友、近藤君、沖田君は土方を応援する。

「……。」

 僕と土方は前に出て対面する。

 




 急に銀魂キャラ(土方)を出しましたが、話はついていけたでしょうか?
 ちなみに銀魂のキャラを知らなくても全然大丈夫です。クロスオーバーのつもりはないので。
 ただ単に登場させてるだけなので。
 話が分かるように投稿するよう頑張りますので、これからも温かく見守って欲しいです。
 

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