僕と騎士と武器召喚   作:ウェスト3世

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 過去編の後なんで時間設定が分かりにくいと思いますが、死霊術士編の続きです。
 
 一応二年が経過した設定となっております。


完結編
二年後


 高城との戦いを経て二年が経つ。

 明久や雄二が必死に対抗しても彼の力には到底及ばなかった。

 そして、明久は自分の力が足りなかったせいで常に自分の監視役として傍に居た優子が命を落としてしまった。

 あのとき、もし自分に力があれば、誰も死なずに済んだ…。

 その思いは二年経った今でも続いている。

 そして、この二年で彼もフミヅキも大きく変わった。

 根本の一件や高城との戦いで国家騎士は多大なダメージを受けた。

 そして、当然、国家騎士は人数が不足していた。

 今現在、国家騎士の頂点に立っているのは吉井明久だった。彼はフミヅキ一の問題児からこのたった二年でフミヅキを代表する騎士に上りつめたのだ。

 それは、もう誰も失いたくない彼の一途な思い、そして覚悟によるものだった。

 そして、二番目には霧島翔子。第三国家騎士には一度下級騎士に降格した坂本雄二が再び昇格したことで再び彼は『神童』の名を取り戻す。そして第四国家騎士は今まで通り久保利光。第五は清水美春。第六には小山友香。第七には土方十四郎がその座につく。

 再び国家騎士達は勢力を取り戻す。

 しかし、国家騎士にはそれぞれ『従者』と呼ばれる剣士がつくことになっている。

 これは新しい方針で、今まで国家騎士は幾度となく命を狙われ続けてきた。その対策として、カヲール二世が一人一人に優秀な剣士を配属されることとなった。

 明久にも優秀な剣士が配属される。

 彼女の名前は木下優衣(きのした・ゆい)。亡くなった優子と秀吉の妹だった。階級は上級騎士だ。

 年は明久よりも三つ下で16歳だ。小柄で顔も優子や秀吉と全く変わらない。性格も優子そっくりで唯一違うところがあるとすれば、彼女の髪型がポニーテールという部分だけだろう。

 

 普段、国家騎士は王宮で寝泊まりしている。カヲール二世が彼らに部屋を貸し与えるのだ。

 国の重要な騎士ともなると王のそばに置いとくのが安心…というのが考えだろう

 当然、国家騎士の従者も王宮で部屋を貸し与えられている。それだけ王宮は広い建物ということだ。

 従者の優衣はいつも朝の六時過ぎには目を覚ましている。そして七時に明久を叩き起こすのが彼女の一日のスタートだ。

「あの、明久さん。起きてください。」

「……フガッ……」

 しかし、豚みたいな声を出すだけだった。そこで体を揺すり起こしてみるが効果はほとんどない。

「いい加減起きてください」

 最終的に踵落としで叩き起こすことになる。

「ぎゃあああああああああああああああッッ!!」

 明久は悲鳴の叫びを上げる。

「おはようございます」

 優衣は気真面目な声であいさつをする。

 明久も痛みを堪えながら「ぁ…お…おはよ」と言う。一日がスタートする。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 明久は夢を見ていた。その夢は決して初めて見るものではなかった。

 その夢は根本との戦いであの黒い剣を召喚する際に見た夢だった。

 その少女は金色の髪を靡かせ、自分に黄金の剣を差し出そうとしていた。

「アナタならこの剣を扱うにふさわしい。アナタならきっと扱える。」

 そう告げ、その少女の姿は消えていったのだが、その少女は今、また此処にいる。

「…君は誰…?」

 明久は少女に聞く。しかし、少女は何も答えない。

 ただ、優しい微笑みを浮かべるだけ。そして少女はこう言った。

「いずれ近い内に会えるでしょう…その時まで…」

 そう言い彼女は明久から去っていく。

「ま、待って…」

 明久は必死に追いかけようとするが、もう彼女の姿は消えている。

 代わりに足元には小さな花が咲いていた。

「この花は…」

 見たことのある花だった。何処か懐かしい…。そんなことを考えている時だった。

「ぎゃああああああああああああああああッッッ!」

 明久は咄嗟に叫び声を上げる。何故か顔がとても痛い。明久はゆっくり瞼を開ける。

「おはようございます」

 気真面目そうな声だった。彼女は木下優衣(きのした・ゆい)。優子と秀吉の妹である。

 そのため、優子と秀吉と顔もそっくりで、見た目の違いなどほとんど分からないほどだ。唯一ポニーテールであることが区別する鍵だ。

「ああ、おはよ」

 明久は気怠そうに返事をする。顔がとてつもなく痛いのは彼女の踵落としのせいだろう。

 彼女の起こし方は特殊で何故か叩き起こすという方法しか知らないらしい。そのため、明久は苦痛に耐える朝を毎日のように送っている。

「あの…。優衣ちゃん。もう少し優しく起こしてほしいんだけど…。」

「そう思うなら自力で起きるようにしてください」

 キッパリと言われてしまう。それに、彼女の言うことは正論だ。一つも狂ったところなどない。

 だが、やはり踵落としはどうなのか…?そう思わずにはいられない明久だった。

「は~。じゃあ朝食にしようか…。」

「…そうですね」

 そう言い、明久は朝食の支度をする。今日も忙しいんだろうな~と考え込みながら材料を用意する。

 忙しい…とは言ってもこの二年間は特に何が起きたわけでもない。特に町の人々が襲われるようなこともなく、異国から攻撃を受けると言ったこともなく実に平和な二年だった。

 この二年で変わったことはやはり明久自身が下級騎士から国家騎士と急速的な成長を遂げたことである。

 実は毎年毎年、国家騎士昇格試験というものがある。その試験の出場条件は上級騎士であることが条件となる。

 しかし、二年前、明久は雄二と共にその試験に参加できるようカヲール二世に嘆願した。

 

 ***********

 

 

「お願いします。この試験に参加させてください!」

 明久と雄二は二人して土下座する。そんな二人を見たカヲール二世は

「何、寝言言ってんだい。国家騎士?馬鹿言うな。お前たちは何で自分が下級騎士やってるか分かってるハズだよな…?」

 カヲール二世は今まで出したことのないような怖い表情で言う。

「…はい…それは…」

 明久は息を飲んで言う。

「そうだ。力がないから下っ端やってる。そうだろ?」

 カヲール二世は低い声で二人を睨みつけるようにして言う。

「確かに、お前たちは下級騎士の中じゃ戦闘力はある。戦闘力だけに関しては国家騎士にも対抗できる力を持っているかもしれない…。」

「…はい」

「だが、それじゃ足りない。なんだ?大事な者亡くした?だから下っ端のお前らが一番上を狙う?ふざけるな!どんなことがあっても順序は絶対だ。下級騎士はまずは中級騎士になれるよう努力しろ。お前らのやろうとしてることは無謀って言うんだよ。」

 カヲール二世はそう言い後ろを向く。そして、「分かったら帰れ」と言う。

 しかし…。

「力が足りない…?そんなこと十分承知でお願いしてんだよ!」

 雄二は怒気にも近いような声で言った。

「自分の力の無さには十分嘆いた。」

 続いて明久も言う。

「…だから何だ…?」

 カヲール二世は蔑むように言う。彼女もこの国の王。二人の騎士の為に国の規律を破ることは出来ない。

 しかし、二人も頭を上げようとしない。意地でも試験に参加しようとする。それだけの思いがあった。

「…こんな馬鹿な騎士は初めてだね…。」

 カヲール二世はハァとため息をつく。

「そこまで言うなら見せてもらおうか…。お前たちの実力を…」

 カヲール二世は言う。

「だが、お前たちは他の上級騎士にはない特別試験と言うのも行ってもらう」

「「…特別試験…?」」

 明久と雄二は声をそろえて言う。何だそれは?と混乱したような表情を浮かべた。

「簡単だ。私と戦い、私の片膝つかせたらお前たちに国家資格を与える。」

 カヲール二世はフッと笑う。明久と雄二も「やった」という笑みを浮かべたが…。

「だが、もう一度聞く。お前ら本当にこの試験に参加するか…?」

 カヲール二世は禍々しい殺気を帯びた武器を召喚する。その武器の名は『天叢雲剣』(あまのむらくものつるぎ)。スサノオがヤマタノオロチの尾を斬ったことで知られる刀だ。

 カヲール二世は他にも『八坂勾玉』(やさかにのまがたま)、『八鏡』(やたのかがみ)などの計三つの武器を持つ。これらすべてを『三種の神器』と言う

 カヲール二世は警告しているのだ。碌な覚悟がないのならこの試験を下りろ。死ぬぞ…と。

 しかし、彼らの瞳には何の迷いもなかった。

「そうか…。なら頑張りな」

 明久と雄二は「はい」と返事をする。これが彼らが国家騎士になる第一歩だった。

 

 

 ************

 

「まさか、あのガキ共があんなこと言うなんてね…。」

 カヲール二世は豚丼を食べながら言う。既に12杯目を迎えようとしている。

「しかし、よかったんですか?ババア」

 竹原が恐る恐る聞く。恐る恐る聞いてる割にはババアと言う。

 しかし、今までこんな事例はなかったため、やはり不安なものはある。

「ああ。どうせ今回も上級騎士の中に合格者は現れない。だが、アイツらなら…」

「合格できると…?」

「まぁね…」

 

 そんな出来事から二年経とうとしている。

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「明久さん。食べ物がボロボロ零れてますけど…」

「…え?」

 明久はボーとしてるところを優衣に言われ明久はビクッと驚いたように反応する。見ると自分の足元に朝食が零れていた。

「いや、ゴメン。ボーッとしてて」

「それは見れば分かります」

「…あ、いや。考え事だよ。」

 ジーッと見つめてくる優衣に慌てるようにして言う。

「…そういえば、一昨日ベットの下を掃除してた時こんな物を見つけたんですけど」

 コーヒーを飲もうとした明久はブッと噴きだしてしまう。

「…ちょ…え?嘘」

 それは正真正銘、一般世間では「エロ本」という名で知られる書物だった。しかし、表紙のカバーは『フミヅキの歴史』といういかにも学者的なものなので中身が大したものじゃないと分かった途端がっかりさせられる。

「今、ボーッとしてたのも…。」

「いや、違う。決してそんなことは考えてない。イヤ、誓います。」

 明久は何度も頭を下げる。

 そんな中、優衣は『フミヅキの歴史』という表紙カバーをとる。そして一ページめくる。そして、二ページ、三ページ。胸の大きい女性ばかり出ている。

「そうですか。明久さんは巨乳の女性が好みなんですか…」

 優衣は自分の胸部を手で覆いながら言う。

「……。」

 すると、明久は無言になる。

「あの、どうしました?」

「いや、優衣ちゃん。君は巨乳と言うほどの胸じゃ…むしろ貧乳……ブッヒュアアアアアアアアアアッッ」

 明久は急に空中へと舞う。そして壁に後頭部をぶつける。優衣は明久を片足で踏みつけ、

「何ですか?セクハラですか?セクハラなんですか?」

 優衣は顔を真っ赤にして言う。話を持ち出したのはそっちじゃないか…とふてくされたような表情をするが、失言したのは確かだ。

 そんな中、優衣の携帯が鳴る。優衣はそれに出る

「はい。もしもし」

 明久は誰だろうと気にした目で彼女を見る。そして電話を終えた彼女は、

「明久さん、陛下がお呼びです。」

「え、ババアが?」

 きっと任務だろう、そう思いながら明久は準備を始める

 

 

 


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