僕と騎士と武器召喚   作:ウェスト3世

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根本恭二と小山友香

「あ~、クソッ!」

 カヲール二世は苛立つように溜め息をついた。

 一つは高城と死霊兵について。もう一つは脱獄した根本恭二についてだった。

 正直、高城との戦いに向けて何かと準備しなければならないものがたくさんあるのだが、根本の脱獄の件も放っておくわけには行かなかった。

 騎士達の意識も根本よりも高城の方に向いているが、根本を放っておけない理由があった。

 それはある上級騎士から根本恭二らしき人物が違う町にて目撃したという情報だった。

 本来、その目撃が確かなら直に捕縛すべきなのだろう。

 しかし、根本ほどの相手を捕縛するとなると上級騎士以上の騎士が必要となるわけなのだが、力のある騎士を今、このフミヅキから外したくないというのがカヲール二世の考えだ。

 高城との戦いに向けて上級騎士は一人、二人でも戦力は必要となってくる。

 なら、どうするのが一番なのか――――?

「…分からん」

 カヲール二世は鼻を穿りながらボソッと呟く。

 今、根本恭二は何処で何をしているのだろうか―――――?

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 まだ、日本という国がフミヅキとシワスという二つに分裂して争っていた頃だ。

 ヤヨイという町は根本恭二の住む町だった。

 この町は昔、フミヅキ兵に次々と虐殺されるなどで甚大な被害を及ぼした。

 そのとき根本恭二もその襲撃から友人二人と共に逃れたが、友人二人は殺され、生き残ったのは恭二だけだった。

 それから約10年くらい経とうとしているが、町はそんな痕跡を一つも残さず、パレードなどで賑わっている。

 根本恭二は町の中でも比較的人の通らない場所に居た。

 そこには慰霊碑が立っていた。それは10年前の虐殺の被害者の魂を癒すために、そう思いを込めて造られた。

 慰霊碑には犠牲者の一人一人の名が刻まれていた。そこには根本の嘗ての友人たちの名も刻まれていた。

 もう10年―――。しかし、あの惨劇は今も根本恭二の記憶から消えることはない。それどころか昨日のことのように甦ってくる。 

「…真子、和夫…。」

 嘗ての友人の名を呼ぶ。

 あの時から根本恭二はフミヅキが憎くて仕方なかった。そのフミヅキに復讐を計画する為に彼はわざとフミヅキの騎士となり、最終的には第一国家騎士と上りつめた。

 だが、二年前彼はフミヅキの国家騎士を次々と襲い、最終的にはカヲール二世をも殺そうと考えていた。

 しかし、吉井明久との戦いでその計画は破綻され、フミヅキの最下層にある牢獄『無間』へと入れられる。彼はそこで終身刑という刑を科せられる。

 しかし、どういうことか彼は今、このヤヨイという町にいる訳なのだが…。

「……ッ!」

 そこで後ろから人の気配を感じた。

「やっぱり此処に居た。」

 後ろを向くとそこには一人の少女が立っていた。

「…友香か…。」

 彼女は第六国家騎士の小山友香。

 二年前の国家騎士が次々襲われるという事件で彼女も国家騎士の為、根本により剣で刺され、倒れたが、今はその傷もすっかり癒え、再び国家騎士として責務を果たしている。

「何故、お前が此処に居る?」

 根本は不思議そうな表情で訊く。すると小山は、

「何故、じゃないわよ。アナタが脱獄なんてするからフミヅキ中大騒ぎしてるわ。」

 と小山は言う。

「大騒ぎ…か。だがフミヅキは今、高城の襲撃で問題視すべき視点がそっちに向いているハズだと思ったんだけどな。」

 と根本は言う。

「アナタ、そのことを知ってたの?」

「知ってるも何も、オレを牢獄から出したのは高城だしな。」

「…え!?」

 小山は驚きを隠せず声を上げてしまう。

 つまり彼の脱獄は、根本自身の力で脱獄をしたのではなく、高城が根本の脱獄に協力したということになる。

 しかし、そこで納得できる点もあった。

 根本が入っていた牢獄は脱獄したと思われる痕跡が一切残されていなかった。

 しかし、高城程の相手なら痕跡を一切残さず脱獄するというのも可能である。それに高城がまだカヲール二世の側近を勤めていた頃、彼は時空間を操る術を扱えたという。

 痕跡を残さず脱獄できるには十分な理由になる。

「アイツはオレに協力するよう迫ってきた。フミヅキを崩壊させるにはオレの力が必要だと。まだ返答はしてないが、オレと組んでアイツにあるメリットと言えば強力な戦力を得られるってのと、フミヅキを憎んでいる、潰したいという心情。互いの利害が一致しているから行動しやすい。そう思ってんだろうな。」

「それで、アナタはどうするつもりなの?」

 小山は訊く。

 もし、このまま根本が高城と協力関係になるというのなら友香は国家騎士として、これを黙って見過ごすことは出来ない。

 しかし、根本は…。

「いや、アイツとは組まない。今の俺にとってフミヅキはどうでも良いしな。」

 と吐き捨てたように言う。

「そう。」

 すると小山は少しだけ安心したような表情を見せた。

 根本は少し疑う様な表情で、「オレを殺さないのか?」と聞いてくる。

 さらに、

「オレはお前を殺そうとした。オレとしちゃ、殺されても文句は言えないはずだが。」

 と言ってくる。

 すると、小山は何も迷うことなく「殺さないわよ」と言う。

「ハッ。いいのか?オレを信じて。オレは嘘ついてるかもしれないぞ?」

 と嫌らしく言ってくる。

 しかし、小山は表情を変えずに、

「昔から恭二の嘘ついてるときの顔は知ってるから。嘘かホントかぐらい直ぐ分かるわ。」

 と少し微笑みながら言う。

 根本は少し戸惑ったようにして目を逸らした。

「ただ、恭二は不器用だから…。辛いことも辛いって…言ってくれれば良いのに言わないから。言えば、二年前みたいな事件にならなかったんじゃない?」

 小山は言う。

「…チッ。」

 根本は何を知った風なことを…とでも言いたげな表情で舌打ちをする。

 小山友香は実際、仕事をしてるときはピリピリとした雰囲気を出すのだが、個人として話す場合は和みがあった。

 しかし、その和みは根本の心の中で罪悪感のようなものが生まれてくる。

 何故、そんな彼女を自分は殺そうとしたのか?初めて、自分に対して憎しみを覚える。

 

 

「…交渉決裂…ですか。」

 

 

 急に殺気のようなものが向けられる。

 殺気を発していると思われる方は後方。根本、そして小山は後方へと振り向く。

「君の返答には期待していたのですが…。」

 不気味な笑みを浮かべ現れたのは高城雅春だった。

「ハッ。勝手に期待すんなよ。初めからお前は殺すつもりだったしな。」

 根本は苛立つようにして言う。

「でも、僕の力なら君の大切な人を生き返らせること…。出来たんですけどねぇ」

 高城は自分に協力しなかった根本を後悔させるような口調で言う。すると根本の眉がピクリと動く。

 実際、友人を生き返らせたくないと言えば、それは嘘になる。今でも会いたくて会いたくて…。そんな思いが込み上げてくる。あんな残酷な死を何故受け入れなければならないのか、まるで分からない。

 それでも根本は高城の言葉に承諾し、首を縦に振ろうとはしなかった。

「確かに…。オレは今でもフミヅキが憎い。アイツらのせいでオレの失ったものは多すぎる。だから、もう一回、真子や和夫に会ったらそれは幸福…なんだろうな」

 それが根本の本音だった。しかし、根本は「けどな」と言葉を続ける。

「死んだ相手と再会するなんて不可能だ。二度と会えないのが死。死んだヤツにもう一回会えるなんていう都合のいい世界は何処にもねぇよ。」

 根本はそう告げる。

「ハハッ。僕ならその不可能を可能に出来るのに…。」

 高城はからかうように言ってくる。

「可能、不可能なんてもんだいじゃねえ。分かったら、お前は…」

 根本の言葉が途切れる。

 そして同時に彼の姿は消え、空気中がとてつもない冷気に包まれていく。

「分かったらお前はとっとと死ねよ。」

 根本は高城の背後に回りこみ、冷気に包まれた剣『氷の剣アルマッス』を召喚する。そして高城の首筋を目がけて剣を振るう。

「…っ?」

 しかし、根本の攻撃は弾かれた。

「狙う場所は良かったですけど、背後とは最大の死角です。そんなところに何も防御を施さないとでも?」

 高城の背後には藍色の闘気を帯びた盾が高城を攻撃から護った。

「今のは確実に殺せると思ったんだけどな…」

 根本は舌打ちをする。

「本当に死角を狙うとはこういうことを言うんですよ。」

 高城は一瞬で根本の背後に回りこみ、そして、素早く『魔剣グラム』を召喚して首を落とそうとするが…。

「…おや。」

 高城の斬撃は防がれる。

「恭二に手は出させない。」

 小山は『不滅の聖剣』(デュランダル)を召喚し、ギリギリのタイミングではあったが、高城の攻撃を防いだ。

「ホゥ…。デュランダル…。良い剣を持ってますね。」

 高城は関心そうに言う。

「おい、友香。お前、オレを助けて良いのかよ?」

 根本は少し鬱陶しげに言う。

「勘違いしないで。恭二には言いたいことがいっぱいあるから死んでもらっちゃ困るのよ。」

 友香は鬱陶しげな恭二を気にせず言う。

「チッ、しょうがねぇな」

 根本はそう言い、地面を蹴って跳躍する。そして、友香は真っ直ぐ高城に目がけて剣を振るう。

「ハッ。そんな一方的な攻撃で…。」

 高城は何だ、それは?とでも言いたげな顔で二人を見る。

 しかし、友香は真っ直ぐ突き攻撃をすると見せかけて、手首を動かし、突き攻撃から斜め斬りへと攻撃方法を変える。

 それは、ほぼ一瞬の出来事で常人にはそんな出来事は見えないだろう。いわゆるフェイントだ。

 高城はそのフェイントに少し驚き、回避が少し遅れる。

 そして、その上に上方から根本の強烈な斬撃が加わってくる。が、それもギリギリで止める。

「やりにくいですね…。」

 そう高城は呟いた。

 そして、一回距離をとり、彼は懐から腕輪を取り出す。

 そして、その腕輪をはめて「二重召喚(ダブル)」と発動キーを口にする。

 高城の手にはもう一つの剣、『竜殺しの剣』(バルムンク)が召喚される。

 

 

 

 

 

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