禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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第13話

 美候に止められた二人は席についておとなしく会議に参加した。

 会議に参加しているメンバーは主に5人。イッセーとヴァーリ、そして妖精の幹部らしき三人だ。

 

 小柄ではあるが端正な顔立ちの少年。彼が議長席に座り、向かい合うようにイッセーとヴァーリ、そして人間の姿をした二人の妖精が座っている。

 会議の間、アーシアの美候は外れた席に座って会議の様子を見守っている。

 

「え~。では今より報告会及び今後の方針について話したいと思います。みなさんご存じ議長を務めさせてもらうのはこの俺、妖精王ことオベロンです」

「え!!?」

 

 議長ことオベロンの自己紹介にアーシアが反応した。

 

「お…オベロンってあの真夏の夜の夢の!?」

「ああ、君もシェイクスピア知ってるのか。流行ってるの?」

「い…いえ。別に流行ってるわけではないのですが・・・」

 

 アーシアは何かを言いたそうに、チラチラとオベロンを眺めた。

 

「…ああ。たしかに今は人間の姿をしてるからね。普段は邪魔だから仕舞ってるんだ。この間羽を出して歩いてるとヴァーリに邪魔だって怒られたんだ。それ以来飛ぶときぐらいにしか出さないようにした」

 

 その視線の意味を察したオベロンは背中から蝶のような羽を広げた。

 

「じゃ、改めて。初めましてアーシアさん。俺が妖精派の統領のオベロンだ。君みたいに優秀な神器使いが来てくれたことはうれしく思う。感謝する」

「い…いえ。私はイッセーさんの勧めでここに来たので・・・」

「だが最終的に選択したのは君だ。彼は決して嫌がる少女を無理やり勧誘するような男ではないからね。・・・よほどのことがない限り」

「・・・」

 

 最後に言葉を濁したようだが、アーシアは聞かなかったことにした。

 

「それにしてもずいぶんな大物を勧誘してきたなイッセー。聖女アーシアってかなりの有名人だぞ」

「そうだっけ?」

「…この前要人リストを渡したんだけど」

「あ、ごめん。読むの忘れてた」

「またかい旦那!?」

 

 イッセーの適当な様子に美候はあきれた。

 

「リアス・グレモリーに関しては報告書通りです。特に追加することもないので終わります」

「て…適当だな旦那」

 

 イッセーの適当な様子に美候はあきれた。

 

「まあいいよ。僕も知ってることを二度も聞くのは面倒だし」

「…そうだな。俺も適当に終わらせたことについては何も言わん。むしろ無駄な手続きは省くのが賢明だ。しかし、少しいいたいことがあるのだがいいか?」

「・・・なんだ?」

 

 イッセーは不機嫌そうにヴァーリにこたえる。

 

「何故俺のグレモリー暗殺計画を台無しにした?」

「それはお前の任務じゃないだろ!!」

 

 いったん息を整えて話を戻すイッセー。

 

「僕たちの任務はリアス・グレモリーと眷属たちの威力偵察だ。なんでいきなり暗殺に飛躍するの!?」

「決まっているだろ。魔王の妹を殺すことで悪魔陣営に疑心暗鬼の種を植えこめ、戦争の火種をつけるためだ。仮に失敗しても威力偵察の任務は達成出来る。合理的だろ?」

「バカ!! それでもし僕たちの情報が悪魔たちに漏れたらどうする!?兵力、財力、国力!全てにおいて妖精派が劣っているんだぞ!!」

「そうならないためにあのゴーレムには堕天使たちから盗んだ技術を使っている。疑いの目は敵対している堕天使たちに行くだろう。そして次の火薬を落とす」

「・・・僕の任務は味方作りと部下を集めること。あんたの任務は情報収集と情報操作。なに余計なことをしているんだ?」

「それだけでは何年経っても三大勢力から弱小種族を守れんぞ。盗んだ情報や技術を使って戦況をより良くすることの何が悪い?」

「それで戦争になったらどうすんだ!!?」

「その考えが生ぬるいと言ってるんだ!!」

 

「そうならないように俺たちは対策をとっている!既に準備も策も万全だ!」

「そういうものは予防のためにあるものだ!まずは起こさないようにすることが先決だろ!」

「やはりお前は甘い!貴様の脳みそはお花で出来てるのか!?」

「お前が厳しすぎるんだよ!あんたの脳みそはトリカブトか!?」

「やめろ二人とも。ここは喧嘩するための場じゃねえぞいい加減大人になれよ」

「「・・・チッ!」

 

 美候に止められて二人は喧嘩をやめた。

 

「とりあえずヴァーリ、お前の提案は却下だ。俺たちは別に三大勢力に滅んでほしいわけじゃない。ただ滅びたくないだけなんだ。あと、君の提出した案件もまだ確実ではないだろ?」

「・・・ッチ!」

 

 盛大にヴァーリが舌打ちする。それを見たイッセーはニヤニヤとしながらヴァーリを煽った。

 

「ねえどんな気持ち?今どんな気持ち?」

「煽るんじゃねえよ旦那」

 

「今後の方針は変わらない。いつも通り裏工作を中心にして三大勢力をかく乱させつつ、僕たちはばれない様に勢力を広げる。くれぐれも無茶はしないでね二人とも」

 じゃ、会議はこれにて終わり。具体的なことはお前らに任せる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖精派たちが本拠地にしている小屋には特殊な魔術がかけられており、見た目の割にはかなり部屋が多い。それに伴い廊下も長いのだ。

 

「…君が、新たに俺たちの同志になったアーシアか」

「・・・あ、そ…そいうことにあります」

 

 ばったりとアーシアとヴァーリは遭遇してしまった。

 

「(・・・ど、どうしましょう・・・)」

 

 アーシアはヴァーリが苦手だ。彼女の恩人であり、尊敬するイッセーが蛇蝎のごとき嫌っているのだ。イッセーを絶対的な存在とみているアーシアが彼同様に嫌うのも無理はない。

 しかしアーシアはイッセーとは別人。たしかになんとなく嫌うことはあっても、それだけで彼同様に嫌うのはどうかと彼女は考える。

 よって苦手意識を払拭して、まずは挨拶をすることにした。

 

「こ…こんにちは」

「ああ。こんにちは」

「「・・・」」

 

 会話終了。元からアーシアは会話上手でもない上、ヴァーリも寡黙な性格だ。挨拶からの進展など期待できない。

 

「…ちょうどいい。向こうで話さないか?」

「え…?」

 

 しかし意外にも、ヴァーリからきっかけを作ってくれた。

 ここでイッセーがいるのならまた喧嘩になっていたかもしれないが、生憎彼は次の作戦を立てるため不在。よってアーシアは暇つぶし感覚でついていった。

 

 案内された部屋は談話室だった。木造の机と椅子がある以外は何もない寂しい部屋。そこでアーシアとヴァーリはとりあえず座った。

 

「は…初めまして。ほ、ほほほ!本日から妖精派の看護師見習いに赴任しました! 私はアーシアです!」

「そんなに固くならなくてもいい。知っての通り俺はヴァーリ。最強の白龍皇をやらせてもらっている。職業は・・・軍人かな?」

『軍人というよりは元帥とかそんなとこだろう。あと、お前が最強ならイッセーは最優か最高になるだろうな』

「うっさい。今はあのメルヘン野郎の話を持ち出すな」

 

 ヴァーリは苦虫を噛み潰したような顔で言った。

 

「あの~。…お、お二人って仲悪いのですか?」

「当たり前だろ、あんな自分勝手ですぐキレて、感情を抑えず、欲望に溺れるサルなんか」

『全部お前に帰ってるぞ』

「うるさい。今はもう昔のことだ。今の俺は義のある戦いとかつての夢を目指す白龍皇だ。あんな甘ったれた夢を未だに持っているバカと一緒にするな」

『どっちもどっちだバカ』

「・・・・・・」

 

 アーシアはヴァーリのアルビオンとのやり取りを白い眼で見ていた。

 

『白龍皇と赤龍帝は過去から争いを繰り広げていた。二人も例に漏れず、苛烈な争いを展開していたのだが・・・この二人は特に熾烈なものだった』

「へ・・・へえ~」

 

 白龍皇と赤龍帝の仲の悪さは有名である。世間知らずのアーシアは聞かされてないが、ここにきて三日間、嫌というほど聞くことになった。

 

『二天龍を宿した者たちが戦う理由はそれぞれだ。戦争が原因だったり、異性の取り合いだったり、宗派の違いだったり、単に気に入らなかったり・・・。その中でも最も争いが過激化するのが思想の違いだ。

 二人は今よりガキでな、ヴァーリもイッセーも今のように義や利を優先するのではなく、自分の欲望を優先して感情任せに暴れていたのだ。

 ヴァーリはただ暴れまくるだけの暴走族、イッセーは過度な自然保護を謳うエコテロリストだった』

「・・・エコテロリスト?」

 

 アーシアは聞きなれない言葉に首を傾げた。

 

『政治的なテロリズムで敵の自然環境に損害を与えることを意図するテロ行為、環境に害を与えると見なした活動を妨げることを理由に行われるテロ行為の二通りがある。主に後者の意味が大半だな

 まあそれはどうでもいい。とにかく、イッセーは冥界の生物を守る活動をしていたのだよ』

「え?それっていいことじゃないですか」

「ああ、理想そのものはな。だがそのやり方が問題だ。あいつは自分の価値観に反する者や反対する者には容赦がない。たとえ相手に相応の理由があったとしても、知るかそんなのと言わんばかりに踏みにじりやがった」

 

 ヴァーリはさらに熱くなりながら続ける。

 

「要するに、あいつは相手に対する尊重など一切なく、自分の価値観や優しさこそ絶対という観念を敵に力づくで押し付けることが平和に繋がると勘違いしてやがったんだ!!

 何が正しいか、っていう命題は本当に難しい。優しさだけで解決できる問題なんか本当は少ないし、問題の大半は相手の悪意ではなく世の不条理なのがほとんどだ。・・・だがあいつは自分に逆らう相手を一方的に悪役に仕立て上げ、自分のことしか終始考えない感情論で片付けようとした!

 そのくせ自分が相手を虐げる立場になっても全く反省しない!指摘しても相手のブーメランだけ指摘して一切の弁解はない!論点をすり替え!相手を悪役に仕立て上げ、相手の発言を無価値化しやがる!!」

 

 

「俺はそんなあいつがムカついて仕方がなかった!きれいごとだけは上手くて!努力するポーズだけとって!それに伴う行動はしない!ブーメラン発言ばかりで、都合が悪くなると論点すり替え!それができなかった相手を悪者に仕立て上げ!それもできなくなると力で無理やり通して有耶無耶にするあのくそ野郎が!!!!」

 

 

 

『あまり人のこと強く言えんぞ。あいつが感情のみによる解決だとしたら、お前は暴力のみによる解決だ。それにお前もブーメランだからな』

「…あまり昔のことは言うな」

 

 ヴァーリは舌打ちしてごまかす。 

 

『まあ、そんな過激な思想のバカ同士が出合えばどうなるかは想像の通りだ。陰惨な殺し合いを繰り広げ、何度も死にかけて、なんやかんやあって今の二人になった』

「なんやかんやって何ですか!?そここの話で一番重要ですよ!!どうやってイッセーさんは今みたいに優しくてせこくて言葉巧みに人心掌握出来る人になったんですか!?」

『それはまた後日』

 

 アルビオンはそうやってスルーして話をつづけた。

 

『しかしその欠点が解決した今もこの二人の仲は未だに解決してないのだよ。やはり蓄積された負の感情というものはなかなか払拭できないものでな、まだ妥協点を見出すことが出来ず、争いが続いている。まあアレだ。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いというものだ』

「そ・・・そういうものですか」

 

 アーシアは戸惑いながら言った。

 

「いや、昔のことはもういいんだ。今のあいつは大分話の通じる奴だし、頼れる男になった。・・・こんな短時間でよくもあそこまで成長したと感心したている」

『お前もな、ヴァーリ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分テキトーなこと言ってくれるじゃん、クソ白髪」

 

 

 

 

 

 

 

「き…貴様イッセー!!? ノックもなしに部屋入るな!!」

「何度もしたよ!なのに反応しなかったのはお前じゃん!!」

「うるさい!いつも揚げ足取るような話しやがって!これだから理系は!」

「うるさい!くだらない建前だけ振り回しやがって!これだから文系は!」

 

 

 

 

「け・・・結局なんであの二人仲悪いのですか?」

『…性根の似た者同士って異様に仲悪いよな』

『だな。大した理由もないのによくケンカするんだよな、あの二人』




イッセー「え?僕の契約悪魔の紹介はいつだって?・・・自分の弱点を簡単に話すと思う?・・・僕が契約悪魔の名前を相手に教えるときは、そいつを殺す時だけだよ」
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