禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

14 / 77
第14話

 拠点の近くのお花畑。そこでアーシアは妖精たちと遊んでいた。

 

「お、アーシアこんなとこにいたのか」

「あ、イッセーさん」

 

 イッセーを見つけたアーシアは妖精たちに挨拶してイッセーに走り寄った。

 

「ご苦労様です。お仕事は終わりですか?」

「ああ。僕のするべきことは全部終わった。あとはほかの部署に任せるよ」

「そうですか…」

 

 アーシアは少しうつむいた。

 

「…どうしたの?」

「・・・イッセーさん、私…聞いてしまったんです。・・・今まで教会が何をしてきたのかも・・・そして、主が死んだのも・・・」

「・・・・・・そうか」

 

 イッセーはそれだけ言った。

 彼は慰めの言葉もかけない。ただ一言だけこぼし、

 

「…正直な話、僕はアーシアを100%庇う気はない。君は力を自分の意志ではなく、聖書の神にゆだねた。自分から自分で力をどう使うか考えるのを放棄して、神に全部丸投げしたんだ。だから、君は教会に利用された。・・・それでも教会がクソなことに変わりないんだけどね」

「・・・はい。分かってます。私、今までこの力について真剣に考えてなかったかもしれません。ただ力を与えられたから使っていた。…そんな感じがします」

 

「けど、これからは違います。私、困っている人や傷ついてる人を助けたいからこの力を使います。主とか天使さまとか関係ありません。私は、私が助けたいからこの力を使います」

「……」

 

 だが今日からは違う。そんないい加減な、バイト感覚ではない。私は困った人を助けるためにこの力を使う。

 その目にはもう迷いはない。ただ自分の道をまっすぐ見ていた。

 

「けどこれって主に逆らっていることになるんですよね。…やっぱり私は悪い子ですね」

 

 舌を出して言うアーシア。イッセーはそれを見てため息をついた。まるで馬鹿を見るかのように。

 

「・・・何か言いたそうな顔ですね?」

「何も。僕はアーシアのことを簡単に神を信じる頭の軽いビッチとか、簡単に轡替えする尻軽なんてこれっぽっちも思ってないよ」

「おもっきり口に出してるじゃないですか!!」

「ハハハッ。冗談だよ」

 

 イッセーはアーシアのグルグルパンチを避けながら答えた。

 

「別にいいんじゃないの?悪い子で」

「…はい?」

「僕は教会のいい子ちゃん共が嫌いだ。神のいうことをはいはい聞いて、何の疑いもなく妄信的に動くあいつらが大っきらいだ」

「…そ、そうですか……」

 

 少し前までいい子ちゃんだったアーシアは顔を引きつらせながらもイッセーの話を肯定する。

 

「あいつらはセラフや教会上層部を全く疑おうとしない。神は正義、間違うはずがない。そう信じきって奴らは力を振るう責任から逃れようとしている。自分で考えようとしない奴隷だ」

「だから利用される。主以外の神を異教徒と断じて殺す。要は使い勝手のいい駒なんだよ。それに比べたら悪い子のほうが万倍マシだ」

「……」

 

 心当たりがあまりにもありすぎる。アーシアは気まずそうに黙った。

 しかし、たとえはアレでもその心は伝わった。

 

「じゃ、そのための一歩だ。今日はみっちり勉強だよ。まさか、何もせずに願いが叶うなんて思ってないよね?」

「分かってます!覚悟は出来てます!」

 

 アーシアを引き連れながら、イッセーは笑った。

 

「じゃあ最初にレイナーレたちと会ってもらう。自分を殺そうとした相手と会うのは苦痛だと思うけど、彼女も一員になった以上君と顔を合わせることになる。……耐えられるか?」

『…あいつらのことを奴隷とか言わなかったか?』

「うるさい。あれは少し興奮して大げさに言ってしまっただけだ」

 

 話の腰を折ろうとするドライグを黙らせて、元に戻す。

 たしかにレイナーレたちを捕らえて強制的に働かせてはいるが、一応福利厚生は保証してある。

 彼女たちはイッセーと敵対していた上に、勝手な行動をしたせいで追放されている。居場所があるだけまだマシだろう。どこかの白龍皇からは甘いと言われそうだが。

 

「そんなの大丈夫です。さ、行きましょう」

「……そうか」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。