禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

18 / 77
第18話

「みんな行くわよ!」

「「「はい!」」」

 

 あれから10日が経った。え?修行期間を省略するなって?・・・あんなのポーズだよポーズ。何の意味もない。

 キツい言い方かもしれないけど、僕には何の意味も見いだせなかった。だって基礎訓練をただ延々としただけだよ。・・・そんなんで強くなれるか!!あんなの素人が趣味で筋トレしたみたいなもんだよ!!

 

 訓練(?)の内容はこうだ。木場裕斗と木刀で打ち合って剣を覚えて、塔白小猫と組手して格闘技を覚えて、姫島朱乃と魔術の扱いを教えてもらって、リアス・グレモリーの監督の元筋トレして、悪魔世界の勉強して・・・本当に意味のないものばかりだ。

 

 僕は神器があるとしても、設定上一般人。なのにたった10日基礎訓練しただけで悪魔倒せるの?・・・どんだけ悪魔弱いんだよ。

 向こうは何年も努力してるってことは、その年月を超えるほどの努力を、そして経験を重ねてきたということだ。それを素人がちゃんとした指導者も付けず、たった10日間お遊び同然の筋トレしたぐらいで超えられるの?

 

 あと、あいつら僕に武術の説明をしてくれたんだけど、まったくわからなかった。抽象的な言葉が多すぎるんだよ!素人相手に感覚で物言うなよ!ちゃんと最初の知識から教えろよ!僕はそういう非論理的な話が嫌いなんだよ!!

 僕のだけ訓練内容多すぎるんだよ!たった10日間だけなんだから、付け焼刃くらいしかできないのに、内容のない訓練ばっかさせてんだ!そんなに覚えられるわけないじゃん!もし僕がマジで素人なら何一つ身につかねえよ!しかも内容が薄いし!!

 結局中途半端なんだよこの筋トレ期間は!ただ強くなるという漠然な目的だけで、何を習得するか、どういった方針でやるかなんてのは何も決まってない。計画性のない、素人が趣味でやる筋トレ程度だ。これで一体何が身につくというのか…。

 しかもこの期にあいつら悪魔社会について教育しようとしたんだよ。バカでしょ?一秒も時間が惜しいのに、今しなくてもいいことさせるなんて。だからあの時は我慢できずに後にしろって言ってやったよ。

 

 

 つくのは練習したっていう自信だけ。努力を演じることでメッキをはるだけだ。

 

 

 けど指摘してしまったら僕がこちらの世界を経験していることがバレてしまう。だから僕は黙ってスルーした。……非効率なものをやるのは本当に苦痛だったよ。

 

「(いや、今思えばちゃんと忠告しておくべきだったか?)」

 

 たしかに訓練の内容そのものを指摘するのはまずいが、方針や目的に口出しするのはアリだったと今更ながら思う。

 例えばメンバー一人一人に個別訓練を受けるとか、プロを雇って訓練内容を作り指導してもらったり。・・・って、全部プロを雇えば解決してたじゃん。

 

 グレモリー家はかなり大きな資産を持つといわれている。だから優秀な指導のプロを雇うなんて簡単だと思うのだが…。あいつはそんなことも思いつかないのか?

 いや、もしかしたら両家が今回の縁談を成功させようと妨害している可能性もある。それなら同情するが、万が一のために自由にできる資産貯めとけよって言いたくなる。

 

 話を戻す。今考えると、こいつらに僕の指導なんて出来るわけがないのだ。

 だって、コイツら自体技術はそんなにないし、ぶっちゃけ今までの能力も才能だけでやっている節がある。

 木場裕斗はただ剣をブンブン振るだけだし、塔城小猫はテレビで見た総合格闘技をマネしてるだけ、姫島朱乃やリアス・グレモリーは魔力弾の使い分けが出来ない魔力砲だ。

 こんなのが才能のない相手にちゃんと指導したり教えることなんて出来るはずがないのだ。だって自分の力もロクに使いこなせず、使い方も分からないのだから、他人の特性を見極め、どこを伸ばせばいいのかを考えるなんて出来るはずがないのだ。

 

 だから何度か目を盗んで昼寝した僕は悪くない。本を読んで時間をつぶした僕は悪くない。分身や幻影を使って自由時間を確保した僕は全く悪くない。マジやってらんねえもん。

 

 

 

 

 

 ま、ちゃんとコミュニケーション取ってグレモリー眷属といい仲を構築したけどね。ちゃんと爆弾も仕掛けてね。

 

 

 

 

 

 

 とまあ、このようにちゃんと僕は仕事をしている。じゃ、今回もちゃっちゃと終わらせますか。

 

「みなさん緊張しないでください。・・・既に奴の攻略法は編み出しています」

「「「え!!?」」」

 

 だが大丈夫だ。駒がどれだけ愚図でも能力だけは買っている。

 認めてやろう。お前たちの能力だけは素晴らしい。その能力を宿している悪魔たちは全然使いこなせてない、能力頼りのバカばかりだが使いようによっては役に立てる。

 

「ええ。では今から説明します」

 

 さあ、せいぜい僕の駒として働いてくれ、グレモリーとその愉快な仲間たち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上になります。では何か質問は?」

「…ないわ」

「すごいねイッセーくんこんな方法を思いつくなんて」

 

 ライザーの倒し方を説明すると、なんかめっちゃ称賛さえた。…おいおい。こんな簡単なことも思いつかないとか大丈夫か?

 

「異論も質問もないなら問題ないよ。みんな、がんばって」

「「「うん!」」」

 

 解散して部屋から出て行ってしまう。…ちょっと待って。解散していいって雰囲気出したけど、だからってリアス・グレモリーと二人っきりにはしないで。

 

「・・・ありがとう、イッセー」

「…うん」

 

 ほら、やっぱり面倒なことになっちゃったよ。あ~、部屋から出るタイミング逃しちゃったじゃん!

 

「けど君の家は本気で結婚させたいようだね。こんなチート化け物の得意分野で戦うことを強制させるなんて…。どう見たって出来レースじゃん」

「ええ。だけど貴方が思いついたライザー攻略法があれば大丈夫。確実に相手を始末すれば万事解決よ」

「…けど婚約を解消しても、また別の相手と結婚を要求されるよ。そこはどうするつもり?」

「そ…そのうちなんとかするわよ!」

 

 リアス・グレモリーは目をそらし、声を荒げた。こりゃ考えてないな。

 

「そんなに結婚が嫌なら、家を出ていくというのもいいと思うよ。お前勉強できるらしいから奨学金で通うものいいし、何なら行方くらまして親に請求させるのもアリだぞ」

「…私は別に家を嫌っているわけじゃないのよ」

「え? でも部長こんなに結婚嫌がってるじゃん。貴女の家が名家である以上、そういった話からは逃げられないんじゃないの?」

「そ、それはそうだけど…でも自分の婿は自分で選びたいの!

 私はグレモリー家の娘であることに誇りを持っているし、家を継ぐつもりよ。貴族としてのプライドを捨てるつもりも、役割を放棄する気もない。だけど、自分の婿は自分で決める。これだけは譲れないの」

「…」

 

 自分の結婚相手は自分で決めたい。…なるほど、実に当たり前のことだ。

 僕だって結婚相手を勝手に決められるのは嫌だ。その上結婚相手が自分と気が合わず、むしろ嫌悪しているタイプなら猶更だ。だからごねるグレモリーの気持ちもわかる。

 

 けど、彼女は場合はそういかない。

 

「そう。ならこれが終わったら婚約者探しを始めようね。近いうちにリストアップして会いに行くんだ」

 

 お家同士の結婚。それ自体は悪いとは思わない。たしかに恋愛感情とかその人の相性とかも大事だとは思うけど、それはあくまで“一つの要素”だ。すべてではない。

 

 

 だって、結婚って恋愛感情だけでするためのものだとは思えないんだよね。

 

 

 結婚とは家庭という一つの“組織”を作ることだと僕は思う。組織を運営する以上、時には感情を排したり、ある程度の妥協が必要になる。決して楽しいことだけではないし、感情のままにしていけるものではない。むしろ苦しい時の方が多いのではないか。

 ソースは僕の家族。僕はかなり変わっている子供でよく両親に迷惑をかけていた。小学生の頃はボッチでよく学校を抜け出して本を読んでいたし、中学校は不登校。我ながら自分勝手なガキだと僕は自己嫌悪している。・・・まあ、博士号取れたのは僕の変態ぶりのおかげなんだけど。

 話を戻す。とにかく、僕のせいで両親はとても困ったらしい。ちゃんと働けるのか、社会に出られるのか、そんな話をいつもしていた。

 

 こっそり陰から両親が話している様子を観察していたとき、見てしまった母親の涙を今でも覚えている。

 

 話を戻す。結婚というものは決して恋愛感情だけでしていいものではないのだ。

 育児、家事、仕事、家族サービス、親戚付き合い・・・あらゆる仕事が待ち受けている。これからは恋愛で付き合っていた時期とは比べものにならないほど厳しく、そして恋愛感情だけで乗り越えられるものではない。

 だから僕は恋愛脳や理想だけで結婚を考える奴は家庭作るなと思う。理想を超えた男でない限り、絶対に後悔するから。

 

「そして君は貴族。婚約者を見つけるのも仕事の一つだ。そのうえ今は貴族悪魔が少ないからその数を増やそうと躍起になっている。なら猶更婚約者を見つける重要性は分かるよね?」

「そ…それはそうだけど私は」

「バカ!愛は座って待ってもやってこないよ!自分で探し、そしてつかむものだ!」

 

 僕は少し強めに怒鳴った。リアス・グレモリーは反抗することなく、代わりに身体をビクンと震えさせて驚く。

 

「僕の短い人生で学んだことの一つだ。チャンスとは待つものではなく、探すものだと。そして見つけたらそれを掴みに行くものだと」

 

 チャンスとは意外と転がっているものだが、それを掴むには探す必要がある。隠れた宝を探すかのように見つけるものなのだ。

 何事だってそうだ。勉強だって、スポーツだって、そして戦いだって。チャンスというものは自分で探そうとしなければまず見つからない。

 そして見つけたら掘り起こす。少し手を伸ばせば掴めるものもあれば、走らなくては手に入らないものまである。とにかく見つけたら手を伸ばすことだ。

 もちろん掴んだだけではダメ。それをうまく利用しなければ己の望む結果は手に入らない。ラッキー任せでは絶対に成功しない。

 

 チャンスというものは待っているだけでは決して手に入らない。ラッキーぐらいは起こるだろうがそれだけだ。ご都合のようにラッキーで全てが解決するなど有り得ないし間違っている。

 

 だから探せ。そして動け。そうしてこそ初めてチャンスを掴む資格が手に入るのだ。

 そして掴んだら最大限に利用しろ。運任せで都合よく全部解決するのは薄っぺらいラノベだけだ。・・・そんなラノベ読んだことないけど。

 

「モタモタしてるといい男はどんどん捕まえらえれて、残りはライザーよりもひどい男ばかりになるよ」

「そ・・・そんなことあるわけ・・・」

「貴族悪魔は少ない上、ほとんどがプライドの高い奴ばっかなんでしょ?なら殆どがライザーみたいな男って考えてもいいんだよね?」

「・・・」

 

 正直な話、ライザーも貴族悪魔ではマシな部類だ。あれは少し矯正すればもっとマシになる。

 今まで様々な下種な貴族悪魔を処理している僕がいうのだ。間違いない。

 

「ほら、ならちゃっちゃと勝ってちゃっちゃと婚約者問題片づけるよ!」

「わ…分かったから背中たたかないでよ!もう!」




余談ですが、DDの特訓や努力シーンって、私には中身のないポーズにしか見えないんですよね。
部活でのトレーニングってちゃんと意味がありますし、やる前に目標とかを設置します。ですからその目標と意味から外れないように意識してやる必要があるんですよね。
ですけどイッセーたちのトレーニングってそういう意味や目標とかを考えず、勢いだけでやっている感じがします。
ライザーの件だって普通ならトレーナーつけますし、夕食なんて作る余裕なんてありません。
第一、なんで一秒も無駄にできないのに、あのタイミングで悪魔の勉強をさせるの?やるの遅すぎだろ。
皆さんはどう思います?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。