バイザーを無事仲間にして三日後の朝、僕は学生らしく自分の席で次の授業の準備をしていた。
赤龍帝だろうが、禍の団だろうが、学生は学生だ。所詮は隠れ蓑だが、学生としての仕事は全うしなくちゃいけない。
「おはようイッセーくん。今日も可愛いね」
「ありがとう」
隣の席の女子が挨拶したので適当に返す。いちいち面倒だけど挨拶は大事だ。無視するわけにはいかない。
言っておくけど、別に僕は女に興味がないわけではない。むしろ興味津々だ。
この学校の制服はまるでエロゲーの学校みたいに少しエロい。胸を強調するあの服装、正直ここの女学生はあんな恰好をして恥ずかしくないのかと疑う。
けど同時に思う。あの強調されているおっぱいを揉みくちゃにしたいと。あんなことやこんなことをしてみんなのおっぱいを・・・ぐへへ。
『(相棒、顔に出そうになってるぞ)』
「(おっと悪い)」
ドライグに言われて僕は急いで取り繕う。
ほとんど女の園状態の教室できもい笑いをしていれば、翌日からは変態として白い眼で見られてしまう。そんな惨めな思いはしたくない。僕は繊細で傷つきやすいんだから。
いや、それ以前に僕自身が許さない。
何事もエチケットは必要だ。誰だって朝起きたら歯を磨き、顔を洗う。基本的なことだ。今どきの小学生でも守っている。
だから僕は・・・
「おお!それ今週のグラビアじゃん!もう手に入ったのか!?」
「ああ!おっぱいもお尻もまる出しでかなりいいぜ!」
こいつらが大嫌いだ。
「うっさいわね猿共! 少しはイッセーくんを見習いなさいよ!」
「黙れ!女子供が俺たちの趣味に口を出すな!脳内で犯すぞ!」
「きゃ~~~! やっぱこいつら猿よ!交尾することしか頭にない下品なケダモノよ!」
失礼な。動物だってもっと考えているぞ。
よく欲望の塊をケダモノって表現するけど、動物の欲望にはしっかりゴールがあるから。人間や悪魔みたいに見境ないことはないからね。
「ホントにきもい!ここはこの物静かなイッセーくんを見習いなさいよ!」
「・・・え?」
いきなり巻き込まれたので僕はつい驚いてしまった。なんで僕を名指しに?
「イッセーくん学級委員長だよね! だったら何かいってちょうだい!」
「…あ~。そういえばそうだったな」
誰も委員長やりたがらなかったから僕が立候補したんだった。前から黒板消しとか先生の手伝いとか普通にやってたから完全に忘れてた。
まあ名指し、しかも義務があるならば仕方ない。僕がなんとかするか。
僕は机から立ち上がり、あの二人組に近づいた。
「お…お前は園芸部の兵藤一誠!?成績も運動神経も中の中で地味なくせしてモテモテのわれらが敵!」
「何故お前はそんなにモテるんだ!?俺たちは常に罵られているのに!!」
そりゃ僕はお前らみたいに変態行為してないからな。
ここの女共は男に飢えている。現に陰キャラの俺でも女子はデートに誘ってくれるぞ。
僕でもこうなんだから、普通にしてりゃお前らもモテるのに…。
「ええい!お前の話など聞く耳もたん!」
「そうだ!お前のせいで俺たちは覗きが出来なくなったんだ!」
「覗きが出来ない?・・・ああ、ガーデニングのあれか」
去年の春ごろ、僕は園芸部活動の一環として校舎の壁に蔦を生やしたことがある。
特に武道館の壁がすごかった。少し種を蒔いて育てて、ブーステッドギアギフトを使ったらジャングル状態だ。まあ、僕が独自に改良した植物だから害虫対策はバッチリだし何度もメンテしているので実害はないが。
けど一応やりすぎたことは反省している。今度は絶対あんなことはしない。何度もほかの生徒たちから頼まれているけど絶対しない。
話を戻そう。なんでも俺のやらかした蔦壁は覗き防止に役立っており、女子たちには好評なのだ。
もし壁に穴が開いても生い茂ってすぐに防ぐし、直に覗こうとしても蔦には棘が生えている。だから外からの覗きに対しては鉄壁を誇っているらしい。
・・・僕は暑さ対策に用意したんだけどね。正直、元女子高で女子たちの発言権が高いこの学校で覗きに走る阿呆が出るとは思ってなかった。ま、気に入ってもらえるならそれで嬉しい。
「いや、そもそも覗き自体がダメでしょ。僕はこの学校と生徒たちに貢献しただけだ」
「黙れこの偽善者!男のくせに女子たちに屈しやがって!」
「そうだ!俺たちの神聖な行為の邪魔をするな!」
覗きが神聖って…。一体こいつらはどんな邪教を信仰してるんだ?
セックスが神聖なものという考えはまだわかるよ? 僕のメンバーも性魔術に精通しているのがいるし、娼婦として活動しているのもいる。
だけどね、コソコソ隠れるようなわいせつ行為を神聖視する輩はとても認められないね。
「…ねえ君たち。君たちはなんでこの学校に来たの?変態行為して女子に嫌われて喜ぶドマゾなのか?」
「そんなわけねえだろ!俺たちはハーレムを作るために来たんだよ!」
「そうだ!」
…ああ、やっぱ僕はこいつらが嫌いだ。今確信した。出来るならこいつらを怒りに任せてぶん殴ってやりたいって。
本気でモテたいならおしゃれするなり口説くテクニックなり身に着ければいいだろ。今どきの中学生もモテるために流行についていこうとしたり、怪しげな心理テクニックの本などを読んで女子を口説こうと頑張っている。
お前ら見た目はそれなりにいいし、片方は勉強、もう片方はスポーツ万能なんだから切っ掛けなんて作り放題だ。
だが、こいつらの変態性が全てを台無しにしている。欲望に溺れて行動した結果、全てのプライス面をぶっちぎでマイナスに引きずり落としているのだ。
実にバカバカしい。自業自得だ。自分で自分の価値を下げている。こんなバカがどうやってモテようか。
「別に僕は性欲をなくせなんていう気はない。僕にも人に言えない性癖の一つや二つぐらいあるしね。だけど、そういうのは隠すのがエチケットだと思わない?」
ここで爆発するのは得策じゃない。せっかく今まで大人しくしてたのに、変に目立ってあいつらの目につくのが面倒だからね。
「ふざけんな!俺たちはこのあふれる情熱は止めることが出来ねえんだよ!」
「そうだ!俺は自分にうそをついていきたくない!取り繕うなんて御免だ!」
・・・うん、やっぱ話通じないわこいつら。完全に自分の欲望に溺れている。
僕は欲望に正直な人間は好きだけど、欲望に溺れる人間は嫌いだ。そういう人間は欲望で周囲を巻き込んで欲望に滅ぼされるから。こんな間抜けを誰が好きになる?
「ふ~ん。じゃあさ、お前らは腹が痛いからって道路で糞する?」
「「は?するわけないじゃん」」
なに言ってんのコイツといった目で僕を見る二人。
…こいつらに非常識人って思われるのは凄い癪だな。
「お前たちの行為はそれと同じだ。欲望によって人間性を放棄している。まだ獣の方がマシだ」
「黙れ!俺らの行為はそんな下賤なものではない!」
『だからお前らの行為が糞だってんだ!』
「「へぶし!」」
渋い声が聞こえたかと思いきや、勝手に左腕が二人を殴り飛ばした。
殴り飛ばされた二人はそのまま窓を突き破り、地面に落下する。
「ま…まずい!」
一応心配だったので下を見下ろしたのだが、運よく繁みに頭を突っ込んだおかげで致命傷は避けることが出来たようだ。
「…おいドライグ」
『…すまん。なんかこの変態見てると異様にムカついてしまった』
左腕から申し訳なさそうな声が流れる。
いや、あいつらをぶっ飛ばしたのは問題ない。問題なのはこのクラスで目立ってしまったことだ。
ここの生徒会は少し厄介なので関わりたくない。だから今まで面倒ごとを避けてきたのだが…。
「やったわよ!イッセーくんが変態二人組を退治したわよ!」
「これでやっと学校に平和が訪れる!」
「「「「やったー!イッセーばんざーい!」」」
人を殺しかけたというのに、クラスの女子たちは大喜びした。中には男子も交じっており、俺を尊敬の眼差しで見ている。
この学校での男子の地位はかなり低い。ただでさえ少数なのだから肩身の狭い思いをしている上、変態二人のせいで男子を敵視する女子もするのだ。それはもう針の筵だったろう。ぼっちの僕には関係ない話だけど。
「イッセーくん!今日はお祭りよ」
「そうよ!ほらイッセーくん!」
「え、ちょ・・・な、なに?」
熱気が伝染して胴上げまで始める。それだけに留まらず、隣のクラスまで騒ぎを聞きつけ、事情を理解するとさらに騒ぐ始末となった。
…結局、その日は授業が出来る状態にはならなかった。
この後知ったのだが、あの二人は全治一か月で病院行きになったらしい。なのに怪我を負わせた僕は処分なし。逆に教師陣からも感謝された。怪我させた僕がいうことじゃないけど、本当にそれでいいの?
・・・まあ、覗きとかしても停学処分にならないからな。この学校マジで洗脳されてるんじゃないの?
「(来る学校・・・間違えたかな?)
『(だろうな。この学校は・・・おかしすぎる)』
拙作のイッセーは性欲も強いし変態性もありますが、他人の前で出すことはありません。エチケットと称して自制しています。
ボロが出たり話のネタとかで自制しつつだすことはありますが。
欲望に正直で向き合っている人は好きですが、逆に欲望丸出しの相手だったり欲におぼれている相手は嫌っています。
そもそも、オープンスケベって堂々と変態行為をしたり性欲におぼれるとじゃないって思うんだよね。