第22話
「ふあ~あ」
翌日の朝、僕はあくびしながら庭の手入れをしていた。
昨日は大変だった。ライザーを倒した後、景品にリアス・グレモリーとグリフォンに乗って夜の空を飛ぶとうロマンチックな展開になったんだけど、ライザーが弱すぎて不完全燃焼な僕には地獄だった。
ムカついたからあの赤毛牛を突き落とし、一人でグリフォン乗りを堪能した。着飾った服がマジで邪魔だったけど、グリフォンに乗れたから帳消しにしてやる。
いや~、馬に乗るものいいけど、グリフォンもなかなか良いよね!一日中乗って楽しんだよ!
グリフォンはよくキメラティックな生物言われているが実は違うんだ。彼らはただライオンや鷲に似ている部位があるとうだけで合成獣ではなく……(この後一時間ほど話が続くので省略)
つまりグリフォンはペガサスに次いで最高の騎乗生物ということだ。え?ユニコーン?・・・あいつ凶暴だからな~。知ってる?ユニコーンは象やライオンにも立ち向かるほど勇敢な動物で…(この後30分ほど続くので省略)
「ちょっとイッセー!昨日はどういうこと!?」
「ごめ~ん。つい興奮して」
「嘘よ!!」
あ~ハイハイ。家の前で早朝から喚かないの。近所迷惑でしょ。
「それで、何の用? まさか突き落としたことを文句言うため?」
「やっぱり突き落としたんじゃない!!」
うっさいよ。グリフォンと触れ合う時間に比べたら、お前なんかと話す時間なんてごみ同然だ。
「学校では大人しいのに、なんで私の前ではいつもそうなるのよ!? 皆の前じゃ猫被っちゃって!!」
「別に猫を被ってる気はないよ。ただ僕はTPOをちゃんと弁えて、ぶっちゃけるタイミングで出してるだけ。猫を被ってる気はないよ」
「それを猫被るっていうのよ!?」
いやそれは違うでしょ。僕はエチケットに徹しているだけ。人間の腹の中に汚い内臓が詰まっているのと同じように、心の奥底にも汚い願望や欲望があるものだよ。それを隠し、眠らせているのが理性や人間性という皮だ。
この皮を被ることを猫被りと言えるであろうか? 僕は言えないと思うね。
「…はあ~。まさかこの私がここまでコケにされるなんて。これでも私は二大お姉さまと持て囃されているのよ?」
「知ってるし君は美人だと思う。けど美人だからって常に贔屓されたり好かれると思ったら大間違いだよ。世の中なめすぎ」
「……貴方のタイプじゃないってことかしらね?」
「どストライクだよ。君の顔と体はたしかにタイプだけど中身が……」
「それどういう意味!?」
そのままの意味だよ。君は美人だけど中身が嫌いだ。すぐ感情的になるし、自制効かないし、すぐお家から貰った権力や金に頼る。
「…でも以外ね。猫被って大人しいフリしてる貴方にも、ちゃんと女に興味があるんだから」
「当たり前じゃん。僕も一人の人間だよ。トイレにも行くし自慰行為だってする。僕も欲望を持つし汚いものがあるんだ。僕はただそれを制御しているだけ。ていうか、人間ってそういうものでしょ?」
「……ふ~ん」
赤毛は目を細くして僕に密着した。この顔は何か馬鹿なことを企んでるな…。
「ねえイッセー、そういうのって息苦しくない? 全部ありのままにして生きたいと思わない?」
「じゃあ君は全裸で走り回ってその辺で糞して、適当な相手と場所時間問わずに交尾するの?」
「………」
「しないよね?やっぱり下品だと思うでしょ?それと同じ、欲望に溺れる自分なんて認めたくないから僕はエチケットに徹しているんだ。周囲のためという理由もあるけどね」
エチケットとは誰のためにあるのか。それは周囲や社会のためというより、自分のためにあると僕は思う。
誰だって下品な自分は見たくないだろうし、他人に下品な人だと思われたくないだろう。だから僕たちはエチケットという服を着ている。
無論周囲のためという理由もあるけど、それはあくまで二次的なもの。一番はやっぱり自分が品のある人間だと、自信を持つためにするものだ。
「欲望や感情に溺れて生きるのと、素直に従って生きるのって違うと思うんだ。欲望は本来僕たちの一部でしかない。なのにたった一部分のみを神聖視したり全肯定して、理性や知性を否定するのは可笑しいんじゃないの?」
「け…けどやっぱり欲望を尊重してありのままに生きるのが……」
「尊重するのと妄信するのは違うよ。君たち悪魔は欲望を崇拝しすぎてそれ以外の大事なものを見ようとしないだけじゃないの?」
「そ…そんなことは……」
僕がそう言うとリアス・グレモリーは黙った。もうこの話は終わりだ。正直腹が立つ。
「…ねえ、あの時ライザーを倒した技は何?」
「ああ、リミット・ドライブのこと?」
「…リミットドライブ?」
「そう。龍の力を極限に発揮することで出せる切り札だ。その代わり使ったあとはパワーダウンするけどね」
僕はそれらしい嘘をついた。これも前に嘘ついた神器の設定同様、元ネタは仮面ライダーだ。
「それで、用はそれだけ?」
「…本当にかわいくないわね。顔はこんなに可愛いのに…。貴方、使い魔欲しくない?」
「……使い魔?」
使い魔。よく聞くものは陰陽師の式神が代表的な例であろう。魔獣や妖怪などを支配下に置いて雑用などをさせる。用はパシリだ。
僕の使う使役魔法もまた使い魔を作る方法はあるのだが、数自体は多くない。え?魔神とは違うのかって……全く違う。
彼らは決して僕の手下になったわけではない。僕と契約して力を貸してくれる協力者というだけで、契約を打ち切るのは僕と魔神双方にある。
というか、使い魔はパシリのようなものだから、どこぞの虚無の使い魔みたいに戦う必要はないのだ。それはまた別の存在になってしまう。それをなんていうだんっけ?…後でドライグにでも聞くか。
話を戻す。使い魔がほしいかどうかっている話か。…欲しいに決まっている。
僕は既に100体以上の使い魔がいて日夜情報収集や雑務を行っているのだが、組織が大きくなるにつれてもっと数を必要としている。だから新たに迎える必要があるのだ。
何よりもモフりたい。哺乳類鳥類昆虫類は問わない。ただ生き物と触れ合いたい。魔獣や幼獣ならたとえ爬虫類や両生類でも触り過ぎでストレスが溜まることはないのだから、存分に触れ合える。
「ぜひお願いします」
そのあと、僕は魔獣や妖獣が跋扈する森でおもっきりモフりまくった。植物観賞やバードウォッチングも楽しんだし、使い魔や新しい植物の種もいっぱい手に入れた。
なんか匙とかシュトリとか頭に残ってるけど知らん。……あれ、うちの生徒会ってどんな人だっけ?
「…やはり、彼がそうなのか?」
とある薄暗い部屋、魔王ことサーゼクスは書類を眺めてため息をついた。
書類の内容はイッセーについて。書かれている学歴は多少特殊ではあるが、神器を使って良からぬ何かをしていたり、ほかの陣営に所属している跡は一つもない。
だからこそ不自然なのだ。
「…君はどう考えるんだ、グレイフィア?」
「……おそらく、巧妙に隠しているのかと」
「……そう考えるのが妥当だよね」
ボロこそは出ないが、神器を使った経歴や他陣営に接触したような節がちらほらとある。決定的な証拠が出ないだけで、状況証拠や矛盾は十分あるのだ。彼が何か裏でコソコソしている形跡だ。
何よりも彼の神器が怪しい。報告では龍の手の亜種であり、基本形態で力を倍化させ、筋力と速度と技術をそれぞれ上げる第二形態が存在するらしい。そして切り札としてリミット・ドライブという技があるらしい。
……どこかで見たことある設定。悪魔の駒そのものではないか。
速度は騎士、筋力は戦車、技術は僧侶、そしてリミット・ドライブは女王。ピッタリ一致している。
嘘臭い。こんな似たような設定の神器なんてあるのか?
というかそんな特殊能力のある神器など聞いたことがない。龍の手の亜種や突然変異と言えばそうだが、それでも何か胡散臭く感じる。何かが引っかかる。
疑いの根拠はライザーとの1件。彼を見定めようと無理やりライザーと戦わせた件だ。
確かに自分は彼がライザーを打倒してリアスを取り戻すことを考えた。様々な罠でライザーを安々と翻弄させた彼ならばまた別の罠でライザーを倒せる。そう期待していた。
しかし彼は一撃で倒した。あの技は必殺技のようなもので、一撃でライザーを倒した。いくらその後パワーダウンするというデメリットのある技でも、たった一撃で倒せるのか?……どうにもそう思えない。
怪しい。決闘前のゲームでも妙に戦い慣れていた。リアスを使って牽制して迂回した後に殲滅、罠を張る手順も妙に手馴れていた。
もしかして彼こそ自分たちの探している赤龍帝なのか?
ここで疑わしきは罰するの精神で彼を問い詰めるべきではと考えるも、その考えはすぐさま理性によって却下される。
彼は既にリアスの協力者となり、信頼関係を築いている。もしリアスに言えば憎まれ口を言うであろうが、彼女はイッセーを眷属同様に愛して信頼しているのだ。
だから深い一歩を踏み出すことが出来ない。公務よりも妹を優先するこの王には、妹に嫌われるような手段は出来ないのだ。
それに何度も言うように証拠がない。たしかにライザーを一撃で倒した威力には驚くものの、今まで様々な罠でライザーを翻弄した彼ならば、そう見せかけた罠を作れる可能性だってあるのだ。
「…僕たち悪魔も早く神滅具を見つけないと、ほかの陣営に遅れてしまう。それになんとしてでも赤龍帝だけでも見つけないと」
「彼が赤龍帝と思われたのですが……間違いなのでしょうか?」
「どうだろうね。たしかに赤龍帝という証拠はあるけど、どれも決定的じゃない。せめて彼が禁手化してくれたら分かると思うんだけど」
白龍皇は既に堕天使陣営の元にいる。だから全陣営が血眼で探しているのだが、影しか見当たらないのだ。そう、赤龍帝が起こしたと思われる事件しか・・・
「今日もまたやられたよ。貴族悪魔の一人が赤龍帝率いる軍団に一家全員皆殺しにされた」
「……そうですか」
ここ近年、貴族悪魔が何者かに殺害されているという事件が多発していた。悪魔たちは必死に犯人を逮捕しようとするもスルリと警備網を抜け出し、時には突破して今なお逃げ続けている。
ただ逃げてくれるだけならまだいい。彼らはこちらが追ってるにも関わらず、襲撃してくるのだ。
まるでお前らの警備網などざる同然だと言わんばかりに。何処に隠れても無駄だと言わんばかりに、貴族悪魔たちをピンポイントで襲撃してくる。
そしてまた逃げる。貴族悪魔を殺してからは、用のないものには興味がないとすり抜けていく。まるで最初からそこにいなかったかのように。
その正体こそ最凶の赤龍帝。赤い龍を模した鎧を纏う最悪の存在だ。
彼について分かっていることは四つ。
まず彼が妖怪や精霊、そして悪霊などのあらゆる種族の軍団を率いる将軍であること。種族はバラバラだが統率されており、全員凄まじい魔力や妖力を持っている。
次に彼が赤龍帝の力を完全に使いこなしていること。軍団の後方支援も兼任しており、回復や強化や付加など、軍を率いる者ならば誰もが欲する強力な力を持っている。
更に赤龍帝本人が凄腕の魔術師であること。彼は様々な術を使う。一瞬で移動する術や一瞬で城壁を創る術、更にあらゆる物を盗む術など、その種類は多岐に渡る。
最後に使い手本人の高い作戦実行力。彼は俯瞰的に物事を進め、絶妙なタイミングで魔術と赤龍帝の力、そして部下を使う。その手腕はレーティングゲーマー第一位に匹敵する。
この四つの力を用いることで赤龍帝は悪魔たちを苦しめてきた。
今代の赤龍帝は今までとは違い、己の正体を巧みに隠し、三大種族に敵意を持つ上、集団を巧みに使って戦う。おかげでサーゼクスを含む三大種族のトップたちは赤龍帝対策に頭を悩ませていた。
そして今回、疑うに足りる存在を見つけた。
「罠を仕掛ける手際の良さ、小隊とはいえ完璧に率いるあの統率力。特殊な魔術や赤龍帝独特の力こそ使わなかったが、あれは私の恐れる赤龍帝の感じと似ている気がする……」
サーゼクスはどこか確信めいた物言いでそう言った。
証拠としては弱い。ただの偶然の方が説得力がある。だがそう思わずにはいられなかった。
「たしかに彼が赤龍帝の可能性はあります。ですが疑う理由としては弱いかと」
「…そうだね。僕もリアスと仲良くしてくれる子を疑いたくない」
しかし所詮はシスコンで尻に敷かれているダメ魔王サーゼクス。シリアスな空気は一瞬で消えてしまった。
「とにかく今は確かな証拠も確証もない。ただ似ているだけで疑ってしまえばキリがない」
「ええ。ですから見張りを続けるべきかと。それよりも次の書類をお願いします」
「…はい」
サーゼクスはグレイフィアから資料を受け取る。そのとき、イッセーを監視している水晶から、にやりと笑みを浮かべる映像が流れたのだが、サーゼクスたちは気づくことがなかった。
皆さんご察しの通り、サーゼクスの言う最凶の赤龍帝はイッセーのことです。足がつかないのは魔神の力を借りているからです。
貴族悪魔を襲撃した後、しれっとした顔で日常生活に戻ってます。貴族悪魔の命を奪っていながら、友好そうな態度(?)でリアス達に接触してます。