禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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第23話

「どうした木場裕斗?君の剣はこんなもの?」

「ま…まだだ!」

 

 僕は木場裕斗の木刀を受け流し、すれ違いざまに腹へ一撃を入れる。といっても軽く当てる程度だ。まあ次の攻撃、柄によるアッパーを顎に入れてやったけど。

 

「ガハッ!?」

「何度も言ったでしょ?やばくなったらすぐ逃げろって。なんでそのスピードを活かさないのかな?」

「こ…この!!」

 

 木場裕斗は僕に木刀を振り下ろすも、この距離では大して威力が出ない。だから腕を掴んで簡単に防ぐことが出来た。

 バカだねえ~。この距離なら膝蹴りか剣の柄による打撃だよ。なんで斬撃に拘るのかな~。

 

 僕は掴んだ腕を捻り、木刀を取り上げながら拘束した。

 

「……また僕の勝ち」

「………そうだね」

 

 木場裕斗はかなり落ち込んだ声で敗北を認めた。

 

 御覧の通り、僕たちは剣の稽古をしている。なんでも前回のライザー事件であまり活躍出来なかったことを悩んで、今度こそ活躍するためにこうして剣のお稽古に励んでいるらしい。

 

 

 でも悲しいかな。彼のしていることってただのポーズなんだよねぇ…。

 

 

 いや、その心意気は立派だよ。練習も大事だし、彼の主を想う気持ちも本物だと思う。

 けど鍛錬するなら、ちゃんと意味と目標のある事をしないと。ただ闇雲に剣をぶんぶん振ってるだけじゃ、時間と体力と気力の無駄。せっかくやる気があるのに、ちゃんとしないと意味なんてないんだ。

 だからもう見ていられなくなった僕はこうして組み手の相手をしたり、アドバイスをすることにした。

 

 前回は正体を隠すために黙っておいたが、もう我慢できない。今はもう信頼値稼いでるから変な方向には疑われないはず……と思いたい。

 

「ねえ、なんで同じ位置から剣を振るうの?もっと移動しなよ」

「え?それってどういうこと?」

「君の強みはそのチャンバラごっこじゃない。悪魔の駒によって強化されたスピードだ。剣を振る速度も移動速度もライザーの騎士を超えている。だからそっちをもっと有効に使うんだ」

「……ちゃ、チャンバラごっこ…………」

 

 僕の言葉に傷ついたのか、木場裕斗は木刀を落として落ち込んだ。

 

「ああチャンバラごっこだ。君はただ剣をぶんぶん振ってるだけ。バラエティの特番みたいに、ただ居合の技術を見せたりするだけなら十分だと思うけど、殺し合いやルール無用の試合じゃあんまし役に立たない」

「そこまで言うかな!?」

 

 言うよ。だって大事なことだもん。

 剣を振ったりパンチの練習さえしていれば強くなるわけではない。それはあくまでも強くなるための訓練の一つに過ぎないのだ。

 無論、何もしないよりは強いけど、それだけでは足りない。防御、足運び、隙の作り方等々、勝利を掴むために習得するべきことはたくさんある。それらを全て習得して戦闘の玄人だ。

 

 例えば僕は相手を挑発したり騙したりして隙を作らせる。戦いの技術も才能も経験も劣る以上、こうして有利にしなければいけないのだ。

 ……そう言うとあの戦闘狂は『そんな小細工に頼っているからいつまで経っても強くなれないんだ』とかぬかしやがった。余計なお世話だ。

 

 話を戻す。結論を言えば、剣をぶんぶん振ってるだけのコイツはただのチャンバラごっこだ。剣を振る技術は褒めてやるが、他も覚えろこのバカ。

 

「だから君には自分の技術の活かし方、バトルスタイルを確立させる必要がある。それで、僕は似非テクニックタイプではなく、スピードタイプと見る」

「え…似非……」

「そうだ。君の武器は剣術ではなくそのスピードだ。だから君のバトルスタイルをはっきりさせるため、足りないものを埋めようと思う

 君は今からヒットアンドウェイで僕と戦うんだ。スピードずくでかく乱して、スピードずくで畳み込み、スピードずくで回避し、スピードずくで勝利しろ」

 

 僕は木場裕斗の木刀を拾って彼に渡す。準備体操と情報収取は終わり。さあ、ここからが本番だ。

 

「大丈夫だ。君は僕と違って何年も剣を握っている。才能も十分だ。経験も才能も技術もあるんだから、後はコツをさえ掴めば僕なんて簡単に倒せるよ」

 

 

 

「ずっと同じ場所でボーとするな!それでは折角のスピードも宝の持ち腐れだ!」

動き回って敵を攪乱しろ!自分の位置を把握させるな!」

 

 木場裕斗の後ろに回り込み、見えない位置から木刀を足に振り落とす。

 

「かく乱だけじゃない。良い場所も先に奪い取れ!戦いにおいて場所取りは勝利の一歩だと思え!」

 

 反撃しようとしたので、木場裕斗の攻撃が届かない位置を取ってまた木刀をあてる。

 

「攻撃される前に敵の弱点を付け!防御する時間を与えるな!スピードで一気にたたみこめ!」

 

 こちらの位置を捉えて攻撃してきたので、パワー系の魔神の力を借りて攻撃力と防御力を増強。力で防御して、力で彼の防御を崩した。

 

「やばいと思ったら逃げろ!そしてもう一度敵の懐に飛び込んで弱点を付け!」

 

 追撃してふっとばす。ただ後ろに引くだけではいくらスピードがあっても無駄だ。

 

「パワーは数で補え!一回で足りないなら10回!それでもダメなら100回だ!」

 

 攻撃に耐えてカウンターでぶっ飛ばす。

 

「どうした?文化部ごときに体力で負けて悔しくないのか?もっと根性見せろ腰抜けが!!」

「うぐぅあ!!」

 

 僕は倒れている生徒に檄を飛ばす。

 この僕が監督を務める以上、半端は許さない。ぬるい部活のなんちゃって練習ではないのだ。せめて体育学校レベルの練習は覚悟してもらうぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、なんで君は神器の力を有効に利用しないの?」

「……え?」

 

 出来の悪い生徒をボコる生活から一週間、今は神器を使っての訓練も入れるようになった。

 そこで気になったのは木場裕斗の神器使い。昨日、魔剣創造について調べたのだが、この神器は思っていた以上に便利で応用性が高い。

 例えば使い手の筋力や速度を上げる魔剣、炎や毒などの付与効果のある魔剣、矢除け効果や追尾機能のある魔剣など。もう創れない魔剣はないのではと思わせるほど、様々な魔剣を作れるらしい。

 しかしこれらは偽物なので本物と比べると効果も耐久度も低く、時間が経てば消えてしまう。つまり使い捨ての劣化魔剣製造機だ。

 よって中には剣を爆弾に変え、使い捨てなりの使い方をした猛者もいるらしい。

 

 このように、彼の神器はかなり使えることが分かった。

 

「君はなんていうか……同じ剣ばっか作っている。もっと作れないの?ショーテルやソードブレイカーとか」

 

 そう、何も魔剣創造は特殊な力を持つ剣だけではない。刀やバスタードソードなどはもちろん、ショーテルやソードブレイカーなどの癖が強い剣、更に蛇腹剣などのゲテモノまで作ることが出来る。

 よって魔剣創造は剣を振るう技術よりも、あらゆる刀剣を使いこなす器用性の方が大事なように僕は思う。まあこの場ではそれを知らないフリをするけど。

 

「ショーテル、ファルシオン…ね。それは僕にはちょっと相性が悪いんだよ」

「………は?」

 

 相性が悪い?苦手分野?……そんなのは言い訳だ。

 

 総合格闘技でも組技や寝技が得意でも、打撃が苦手な選手はいくらでもいる。しかし彼らは全く打撃が出来ないとうのはまずない。たとえ得意分野ほどではないにせよ、苦手な技で勝つこともあるのだ。

 その選手は言った。なにも完全に克服する必要はない。少しコツをつかんで使い物になればいいのだ。

 僕もそう思う。苦手なものは克服とはいかなくても、せめて使える程度には直すべきだ。

 

「(…いや、そこまでは少し早いか)」

 

 全ての刀剣を使いこなすとは言わずとも、使える程度にはなってほしい。じゃないとコイツではなくコイツの神器が可哀想だ。

 しかしコイツはまだバトルスタイルをまだ確立していない。つい最近までただ剣をブンブン振っていただけなのだ。いきなり癖の強い剣を使えるとは思えないし、余計なことして崩したくない。

 

「(本格的な神器の訓練も同様か。コイツはそこまで器用じゃない)

 

 木場が神器を戦術的に使えつようになれば、飛躍的に彼は強くなる。しかし今はバトルスタイルの矯正に手一杯だ。これ以上詰め込んでもうまくいくとは思えない。

 それに、本来未知の分野である神器の使い方を僕が知っているとなれば、いくら信頼値が大きくても色々と疑われる。今は魔王に監視されている以上、迂闊な真似は出来ない。

 第一、コイツ神器を使いこなせるほど器用な性格をしていない。今はただスピード任せに剣を振るうことしか出来ないコイツが、いきなりそんな器用な真似が出来るはずがない。

 

 要するに、あらゆる刀剣や魔剣を使いこなすレベルにはまだ早いのだ。……情報では昔から剣を振るう修行をしてたと言われているのに、所詮はポーズか。

 

「じゃあ宿題だ。どういった魔剣が作れるか、そしてその魔剣はどんな風に使って自分のバトルスタイルに取り込めるのか、どんな風に使って自分の弱点や苦手分野を埋めるか考えてきて」

「うん!」

 

 だから僕は考えさせることにした。今はバトルスタイルを軸に鍛え、神器をどうやってバトルスタイルに取り入れるかを自分で考えさせる。そうすることでレベルを上げることにした。

 そもそも誰かのおんぶにだっこ状態では強くなれない。訓練期間中はそれで伸びるかもしれないが、いつかは独り立ちして、一人で強くなっていかなくてはならない。そのためには自分でどうやれば強くなれるのか、どう自分の力を使えば強くなっるか考える頭にしなくてはいけない。

 これはその訓練だ。自分で考えて自分で答えを作れ。

 

「分かった。……ありがとうイッセーくん」

「いいよ別に」

 

 僕は適当に流す。

 別に僕は君のことを百%思って接しているわけじゃない。僕には僕の思惑があるのだし。

 

「(本格的な神器の利用法はプロを使うか。そういや聖剣創造を持つ神器使いが英雄派にいたらしいし)」

 

 今は仲間のフリをしているけど、いつかは本物の仲間になろうね、木場くん。




木場とかいうホースオルフェノクもどき、剣の修行より神器の修行とかしたほうが強くなれると思うの。だから君は一旦剣をブンブン振るのやめて、もっと神器使いこなそう?
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