禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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所詮は作り話なのである程度は抜けてもいいと思いますが、聖剣編はその限度を超えてあまりにも抜けすぎている。正直、これは作り話だからって流せるものではないと私は感じました。
みなさんはどう思いますか?


第27話

 放課後。帰宅する者もいれば部活に精を出す者もいる時間。オカルト研究部もまた部活に取り掛かろうとしてたのだが、今日ばかりは事情が違った。

 部室には部員以外に白いローブを纏った少女――来客が2人いた。客人はリアスと朱乃が座るソファーの対面に立っている。

 小猫はリアスの後ろで控え、木場は全員から離れた位置で壁にもたれた。

 イッセーはリアスの隣に座っており、偉そうに靴を脱いで胡坐をかいて、肘掛けに手を置いている。とても客人を迎える態度ではなかった。

 

「この度は会談を受けていただき感謝する。私はゼノヴィア」

「紫藤イリナよ」

 

 青髪に緑のメッシュが入った少女に続くように、隣にいる栗毛の髪をツインテールにした少女も名乗った。

 

「初めましてお二方。僕は…リアス様の右腕のようなものです。ささ、そんなとこに突っ立てないでさっさと座ったらどうです?」

「ええ。ではご厚意に甘えて(なんて無礼な態度だ。悪魔に組する時点で救えないものだと思っていたが、ここまでとは……)」

 

 客人を迎えることなく、偉そうに座ったままのイッセーを見て軽蔑するゼノヴィア。

 しかし彼女は顔に出さない。いくら相手が野蛮な悪魔と悪魔に隷属する愚かな人間とはいえ、自分には命に代えてでも果たさなくてはならない使命がある。

 そのためには下賎な連中とも対等に接してやらなくてはいけない。助かったな下種な男。……そんな態度が彼女から漏れ出ているのをイッセーは見逃さなかった。まあ気にしてないが。

 

「先日…」

「断る」

 

 ドンと、イッセーは堂々とした態度でゼノヴィアの発言を遮った。

 

「……まだ何も言ってないのだが?」

「分からないのか? 君たちの次の言葉が要求だろうがお願いだろうが脅迫だろうが。僕たちは一切を拒否する。

 ここはリアス・グレモリーの領地だ。決して君たちの属地ではない。よって君たちの干渉は一切受け付けない」

 

 毅然と、見下した態度でイッセーは宣言した。

 譲渡はしない。撤回など持っての他。これ以上言うことなど何一つない。だからさっさと去れ。彼の態度はそう物語っていた。

 

「ど…どうやら悪魔は礼儀を知らないようだな……。ミカエル様が送った使いである私たちにこの態度とは……」

「礼儀がないのは君たちのほうだ。何の連絡も寄越さず、何の手土産も寄越さず、使いを送って一方的に要求するだけ。

 君たちがそういう態度をとるならば、僕たちも相応の対応をする。それだけだ。シンプルで当たり前のことだろ?」

 

 

 

「出ていけ。君たちのような無礼で野蛮な狂信者がこの町に踏み入り、空気を吸う権利はない」

 

 

 

「貴様!!今置かれている状況を理解しているのか!!?」

「そうよ!ふざけるのもいい加減にして!!」

 

 二人はキレてイッセーに聖剣を向ける。しかしイッセーは動じることなく、それどころか感情任せに怒鳴る二人を見下しながら言葉を紡いだ。

 

「ああ理解している。グリゴリ幹部の一人、コカビエルが教会の管理している聖剣6本のうち三本を奪って逃走。この街に潜伏していることをね」

「……そ、そこまで理解しているのか!?」

「ああ。捕獲した神父さんが親切に話してくれた。……君たちが聖剣を回収しに来ることも、そして残り4本のうち2本の聖剣を君たちが所有していることも」

「…どこの背信者だ?即刻断罪してやる!!」

 

 たしかに聖剣を盗まれたことをしゃべったのはその神父だが、イリナたちが来ることは言ってない。真っ赤なウソだ。そして、同時に二人の聖剣が残り半分の聖剣だという確証もここで得た。

 剣を突き立てられているのはイッセーだというのに、追い込まれているのはゼノヴィアたちの方。イッセーが言葉を紡ぐ度に彼女たちは追い込まれ、武器で脅すその有様は逆に余裕のなさの表れだった。

 

「君たちは無断で使いを送り、我らの領土で無断に戦闘を行った。その後処理を誰がやったと思っている? その上謝罪もなしに貴様らの要求を呑めだと……ふざけるな。

 大体、聖剣を奪われたのはそっちの失態だろ。何故僕たちがその損害を被らなくてはならない。せめて謝罪の言葉と慰謝料は必須だと思うが。

 もう一度言う、君たちの失態によって我らは損害を被った。その上でさらにお願いするのならば、相応の誠意を見せろ」

「!!!? だ…黙れ悪魔に味方する人間が!!何も知らない分際で好き勝手なことを言うな!!」

「そうよ!私たちには命よりも大事な使命があるの!貴方たちの事情なんて知ったことではないわ!!」

「君たちはブーメランという言葉を知っているかい?君たちの言っていること、まんま君たち自身に返ってきているよ」

 

 イッセーは二人が熱くなる様子を見てクツクツと笑った。

 そしてすぐに冷たい仮面のようなポーカーフェイスでこう宣言する。

 

「テメーらが僕たちの事情を無視し、テメエでやったことを棚に上げ、一方的に要求するというのならば相応の態度に出る。別に戦争を仕掛ける気も君たちを害する気もないが、下手に出る気はもっとない。

 降りかかる火の粉は振り払わせてもらうよ、侵略教徒さん」

「こ……の!!異教徒が!!!!」

 

 二人は聖剣を振り下ろそうとする。しかし誰も動かない。一番近くにいる小猫さえも。

 代わりに、彼らの顔はこう物語っていた。『ああ、一番剣を向けちゃいけない人にやっちゃった』と。

 

「「あぐッ!」」

 

 突如二人の体が強張り、聖剣はイッセーの眼前数cm前で止まった。

 

「やっぱしケダモノ以下の狂信者には暴力しか交渉手段はないのか…。本当に残念だ」

「な……何を……」

「簡単だよ。この扉を通る際、毒ガスが出るようになってるんだ。無味無臭のね。あれは普通にしてれば何も問題ないけど、こんな風に急激な運動をすれば毒の回りが良くなって発症するんだ」

 

 イッセーは聖剣をどかしながら答える。

 この説明はウソだ。もし本当に急激な運動で毒が回るのならば、運動を必要としない殺し方では発動しないし、もし何かあって動かなくてはいけない状況に発症したら、とんでもないことになる。

 毒の正体はライザーの件と同様、赤龍帝の力によるものだ。前回予想以上にうまくいったので今回も使っただけである。

 

「正気か!?お前たちのような汚らわしい存在ごときにコカビエルを倒せると本気で思っているのか!!?」

「君たちにブーメランって言葉知っている? 僕らではコカビエルに勝てないって言うけどさ、それは君たちも同じだ。聖剣は悪魔に対しては有効でも、堕天使相手には少し面白い性能のついた剣に成り下がる。むしろ数が多い以上、僕たちが有利と言ってもいい」

 

 力では勝てないので、言葉でなんとかしようとする。しかし先ほどまで言葉でボロクソに打ち負かされていたのだ。今更勝てるはずがない。

 

「悪魔の領地を侵し、無断で調査や戦闘をした癖に謝罪もなし。使者さえ無礼を働いた。その上任務も達成できなさそうなんだから、これ以上付き合う必要はない。口実はこれでもかというぐらい揃ってるんだ。……君たちは帰ってもらう」

 

 イッセーは二人を見下す。そんなことも分からないのかと、なんでお前らを使者にしたんだと言いたげに。

 

「二人とも、このバカを段ボールに詰めて郵便に出して。支払いはあっち持ちで」

「ちょ…ちょっと待って!このままじゃ帰れないの!!」

「私たちには重大な使命があるんだ!だから達成したいと死んでも死にきれない!」

「知らん。さっさと帰れ」

「「こ…この悪魔~~~!」」

 

 イッセーは無情にもせっせと段ボールに二人を詰める。

 

「これでも大分慈悲深いぞ。本来なら首チョンパかダルマにされても可笑しくない立場なんだぜ君たちは。それを生きて帰してやるっていうんだから、泣いて感謝してほしいよ」

「ちょっと待って所長。……どうせならチャンスを与えてあげようじゃないか」

 

 しかし、ここで木場が余計なことをした。




ゼノヴィア達の態度って使者にしてはあまりにも無礼だと思う。
自分たちの失態で聖剣という兵器を奪われ、無許可で領地に侵入して勝手に暴れ周り、使者は謝罪も手土産も寄越さず、その上更に要求する。その上要求の対価は払わない。……これって国際的に見たら信じられないよね。
これでもし任務を達成できる人材なら泣く泣く飲むかもしれませんが、ゼノヴィアたちを見るとその可能性も限りなく低い

こんなに悪い条件揃ってるのに飲む奴なんているのか?

こんな理不尽で傲慢で一方的な要求をさらりと受け入れるあたり、あいつ領主の自覚ねえなと、所詮はポーズだけ口だけだと思いました。

どれか一つならまだ「作り話だからいっか」って流せますが、こうも連続すると「こいつちゃんと描写する気あんのか?」って苛立っちゃって……。
私が短気なだけでしょうか?

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